次の日本をつくる言論

「2008年 日本の未来に何が問われるのか」 / 発言者:北川正恭氏(全5話)

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第4話:ローカルパーティーの誕生で政党政治の再生を

 今、政党の堕落は厳しく追及しなければいけないと思います。私たちがマニフェスト運動を始めたとき、それは、政党は政策で勝負してほしいという、いわば「脱無党派運動」でした。すなわち、多様な価値観があって変化するときに、それを最大にまとめ上げて政策に具体化するのがパーティーであり、公党の仕事ではないか。いわゆる無党派がどんどんふえてくるということは、政党の頽廃ではないのか、堕落ではないのかということでした。ですから、やはり国政選挙も個人の資格、あるいは個人的な情実ではなく政党を中心とした政策できちっとした政権運営をしていこう。これを目的としてマニフェスト運動をしたところからいくと、まるっきり政党が排除されて、知事選などでとんでもない有名人が出てきたら、またそれをどちらが早く推薦するかといった現象がみられるのであっては、政党の存在意義がはっきり問われます。

 新しい価値を生み出せずに、あらゆる政党がまだ既得権益を擁護せざるを得ず、新しい価値をつくっていく勇気がない。そこで、タレントやテレビに出ている人、そこで激しい物言いをする人や、はっきりと自分を主張できる人を応援するということになる。ですから、政党こそが大反省をして、そしてやるべきことはきちっとやり、約束したことはつらくても断固やるという、政治への信頼感を戻さなければいけないと思います。

 政党の堕落ということもありますが、実は地方分権が効いています。従来は、いわゆる右肩上がりの財政収入が幾らでもありましたから、中央が1回集めた税金を、国会議員などを使って、あれもこれもと堂々とデリバリー、再分配できていました。そこで政党が頼りにされたという仕組みだったわけです。それは利益供与であり、利益誘導です。ですから、国全体の借金が800兆円という財政破綻に近い状態になり、それができなくなってきている。こうなると、地方分権推進法が進んで自立しなければいけないわけですから、かつての中央政党のグリップが効かなくなってきた。その流れです。

 ですから、この流れをもっと促して、地域ではローカルパーティーというものも出てこなければならない。地方の政治が分権になり、行政も分権になってくれば、地方のローカルパーティーも生まれてくるのが必然なのです。中間的な会派や院内会派のようなものが市議会の中でプライベートにできているという動きがみられますが、それを外へ出すととローカルパーティーです。そういう動きは随分出てきています。

 無党派がふえ、政党が信認されていない状況では、そこに新しいテーゼや理論をぱっと出した政党が出れば、政権をとれるはずです。勇気あるきちっとした理論があって、つらいけれども、10年後にはこういう世界像を描く、日本の将来像を目指す、こういうことが今の政権にはできていません。低姿勢とか、話し合いとか、協調ということは必要なことですが、それはミッションを達成するための手段にすぎません。既存政党の枠組みがかなり揺らぎ、最近の言葉で言えば、賞味期限とか耐用年数を迎えています。

 賞味期限と同じことが政治や政党にも言えるのです。科学文明がもたらした情報社会に対して、ウェブ2.0、3.0にどう応えていくか、2.0、3.0はグローバルですから、世界競争にどう耐えていくかということです。

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発言者

北川正恭氏北川正恭(前三重県知事、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」代表)
きたがわ・まさやす
profile
1944年生まれ。67年早稲田大学第一商学部卒業。83年衆議院議員当選(4期連続)。95年、三重県知事当選(2期連続)。「生活者起点」を掲げ、ゼロベースで事業を評価し、改善を進める「事業評価システム」や情報公開を積極的に進め、地方分権の旗手として活動。達成目標、手段、財源を住民に約束する「マニフェスト」を提言。現在、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、早稲田大学マニフェスト研究所所長、「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」代表。

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