協力者からのメッセージ

明石 康(言論NPOアドバイザリーボード、国立京都国際会館理事長、元国連事務次長)

 2021年に20周年を迎えた言論NPOは、大きすぎる問題意識に踏みつぶされそうにさえ見える。まだ21世紀も5分の1しか過ぎていないのに、日本の抱える問題はもとより、アジアと世界の問題がこの国の将来を今までと全く違ったものにしそうにみえる。

 日本の前に立ち塞がる政治、外交、経済、社会、文化や科学などについて、望ましい未来を考え、選択肢を選び、それに達しようとする国外の人々と本当の思いを語り合うことが必須になってきたことをひしひし感じる。

 この10月26日に終わったばかりの「東京―北京フォーラム」は、言論NPOにとって、17年目の会議だったが、日中両国の参加者たちがやっと胸襟を開き、共通の問題を認識しあうところまできた感じがある。日米、日中、動揺するアジアとアフリカ、それに加えて世界の問題は困難になるばかりであり、気候変動や変異の続く新型コロナ問題などについて、真の解決策を見出すことは世界中のシンクタンクにとっても至難の業に見える。

 この国の存在感が益々小さくなっていかないためにも、私たちは意見を戦わせ、解決策を語り合い探しあう以外にはない。内外の知識人の参加を得て、益々難しくなる解答を目指して、「言論NPO」を支えながら、より大きな成果を求めて進んでいくしかない。

茂木 友三郎(キッコーマン株式会社 取締役名誉会長 取締役会議長)

 言論NPO創設20周年、誠におめでとうございます。設立以来、「議論の力で強い民主主義をつくりだす」という考えのもと、活動を展開してこられたことに、敬意を表したいと思います。

 世界を取り巻く環境は、激しく変化しております。権威主義的な価値観の台頭など、国際秩序が揺さぶられており、民主主義国家は、国際協調を推進し、世界を安定に導く必要があります。

 言論NPOは2005年から中国、2013年から韓国との民間対話を継続的に実施しております。あわせて日中、日韓の共同世論調査を行うなど、その活動は国際的にも高い評価を得ております。

 極めて大きな時代の転換期を迎える今、民間の問題意識を高めるためにも、言論NPOの役割はこれまで以上に重要なものとなってきております。

 この20周年を機に、言論NPOが「議論のプラットフォーム」として、積極的な民間対話を更に推進していくことを期待しております。

大橋 光夫(言論NPOアドバイザリーボード、昭和電工株式会社名誉相談役)

 「東京ー北京フォーラム」は今年17回目を迎えた。一言で言えば、「継続は力なり」だ。

 敢えて問題点を上げれば、特に近年、 国家関係 を政治、経済、安全保障等の分科会に分けて議論することの難しさだ。

 かつては、中国の世界的影響力が比較的小さく「政冷経熱」の言葉に象徴されるように、鄧小平最高指導者や胡錦濤国家主席、温家宝国務院総理の時代には、この二つを切り離して語り実行することも可能であったが、中国が国際的に政治、経済ともに日本を凌駕する今日、それぞれの分野ごとに分科会を設けて議論することで、非現実的結論を導くことになりはしないか、今後の課題と感じた。

 日本と中国とは2000年を超える長い歴史があり、日本は同盟国アメリカと全く同じ政策を取れるのか、必ずしも国論は一致していない。

 従って、「言論NPO」の役割は、比較的自由な民間の立場から、将来へ向けて、更なる建設的な意見交換を行うことであろう。

    

 所詮、地球はひとつであり、人類は皆な地球人だ。地球温暖化対策一つとっても、国家間の利害を超えた、民族を超越した、全世界の人類共通の課題なのだ。

 国家、国民の概念は過去のものとなる日が、世界連邦が立ち上がる時が、将来必ずやって来る。

 言論NPOは、その時へ向けて貴重な役割りを果たす、と私は信ずる。

小倉 和夫(言論NPOアドバイザリーボード、国際交流基金顧問、元駐韓国・駐フランス大使)

 今回行われた衆議院議員総選挙の結果を見ても分かる通り、日本国民の中央政界の政治に対する真の意味での関心や参加意識は高いとは言えません。また、多くの国民は現状に不満を持ちながらも、全体として特定の理念に基づく大きな変革を望んでいないように思われます。

 こうした状況の下で大切なことは、国民一人一人が国政に対する責任感と参加意識を高めることでしょう。そのためには国民一人一人の意見の発表の場を広く提供することと、市民に直接かつ継続的に政治的メッセージを届けることが重要でしょう。

 そのためには、世論の動向を終始見極めつつ、市民に対して問題意識を高める発信を継続して行っている言論NPOのような団体の活動が極めて重要だと思います。その際、言論NPOがこれまで行ってきた活動に見られるように、国際的視野を忘れないことが大切でしょう。

 これからの言論NPOの活動において特に期待したいことは、中国の台頭と、朝鮮半島情勢の不安定、ミャンマー情勢に見られるような東南アジア各国の政治の動揺などを踏まえ、日本の国際社会における役割のあり方について、国民一人一人の問題意識を高めるような活動を教化してほしいことです。

 そのためにも言論NPOの活動を支援する方々の増大と連帯を望む次第です。

宮本 雄二(言論NPOアドバイザリーボード、宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)

 言論NPOが、ついに創立20周年を迎えることができたことは慶賀に堪えません。私は、「東京-北京フォーラム」の関係で2007年に北京において初めて工藤代表とお目にかかりました。このフォーラムも私にとり実に画期的かつ重要なものでしたが、それ以上に、工藤代表の日本の民主主義への熱い思いに深い感動を覚えました。その時から、すでに14年が経ちます。決して平坦な道ではなく、試行錯誤の連続であり、挑戦の連続でした。その中で、工藤代表の揺るぎない信念、それを支えるスタッフの献身的協力、そして何よりも言論NPOを支えていただいた多くの方々のご尽力により、20周年を迎えることができました。

 世界は間違いなく不確実な歴史的過渡期に入り、日本は不退転の大改革をしなければ明日はない状況に追い込まれています。その根幹に日本の民主主義をどうするのかという大問題が横たわっています。「日本の民主主義と将来の課題に立ち向かう"言論の舞台"を提供する」という言論NPOのミッションが、今日ほど時代の中心に座ったことはありません。

 さらなる発展のために、より多くの皆様のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

藤崎 一郎(中曽根平和研究所理事長、元駐米大使)

 世に七不思議ありという。言論NPOにもあるだろうが、そのうち3つだけ書く。

 ひとつは、中韓という手ごわい相手と世論調査を武器に厳しい年月もつないできたことである。これは国益に大きく貢献した。

 ひとつは、シンポジウムにこれはという人を連れてくることである。現役の政治家、官僚が忙しい日程を差し繰って参じてくる。英語もしゃべらない工藤代表が世界のトップランクのシンクタンクを回ってスピーカーを連れてくる。永年語学を鍛錬してきた身から見ると「どうしちゃったんだ」という気がするくらいだ。

 ひとつは、組織の身軽さである。よくあんな数人であんな大規模な会議がアレンジできるものだと思う。たった数人のブレーンが怒涛のように集まるインターン学生を率いて会議を遺漏なく運営する。終わると、その日のうちに結果がウエブで詳細閲覧可能になる。

 20年間、工藤マジックを見せてもらった。次の20年にも期待している。

川口 順子(言論NPOアドバイザリーボード、武蔵野大学国際総合研究所フェロー、元外務大臣)

 言論NPOの設立20周年を心よりお祝い申し上げます。

 この20年は変動の時代でした。9.11、米中関係悪化、IT技術の進歩、気候変動の影響増大。そして今、COVID-19と一層の格差増大。今後世界も日本も、増大する不透明性の中で、海図なき航海を強いられることになるでしょう。

 今日本に期待されているのは、変化を先取りし、その方向に自らと世界を変える力です。民主主義国家では、その力を持つのは国民です。政治やマスメディアを変えるのは私達です。私達が考える力を持っているかどうか、情報を適切に取捨選択できているかどうか、何をなすべきか判断できているかどうか、発信できているかどうかが問われていると私は考えています。

 言論NPOはそのためのプラットフォームです。質の高い情報や考えるための切り口を提供し、世界に日本を発信する活動にこれまで成果を上げてきました。今後のさらなる発展に大きな期待を寄せております

増田 寬也(言論NPOアドバイザリーボード、日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)

 言論NPOが設立されて20周年を迎えた。まさに「継続は力なり」である。

 ここで世界の動きを見ると、1980年代のサッチャーやレーガンによるグローバルな市場経済中心の潮流は、今やトランプの台頭や英国のEU離脱など自国経済至上主義へと変化している。また、GAFAなどの出現によって富の偏在や貧富の格差が新たな課題として浮上している。さらに、コロナなどのパンデミックにより、多くの人々が日々の生活に苦しんでいる。

 本来、こうした場合にこそ、政治が先頭に立って問題解決を図らなければならないが、現在、民主主義国家と言われる各国の政府は、その期待に十分に応えられていない。これは我が国においても全く同様である。安易なポピュリズムに流れることなく、今一度、民主主義の進むべき道筋を見つめ直すことが、早急に必要となる。

 言論NPOは、これまで我が国で唯一と言って良い程、良質な言論空間を提供してきた。この役割は今後益々増大していくであろう。工藤代表や関係する皆さんのさらなる活動に大いに期待したい。

松元 崇(言論NPOアドバイザリーボード、国家公務員共済組合連合会理事長)

 「日本の民主主義を強くする」という目標を掲げて、工藤代表が言論NPOを発足させて20年。心から、お祝いを申し上げたい。

 この間、政権交代が行われ、多くの政党が政権参加の機会を持った。しかしながら、政策議論が十分に深まったかと言えば、まだまだであろう。国際的にも民主主義は、中国政府による香港の言論統制に見られるように多くの課題を抱えている。実は、言論NPOの活動も、ポピュリズムが跋扈する中で、一部ジャーナリズムからのいわれのない誹謗中傷に直面したりした。

 そのような様々な事態を乗り越えながら、言論NPOは、世界的シンクタンクである米国の外交問題評議会(CFR)が2012年に設立した世界20カ国のシンクタンク会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」に日本から唯一選出され、しっかりとした評価を確立している。これからも、工藤さん以下の言論NPOスタッフの一層の活躍を期待したい。日本の、そして世界の民主主義のために。

田中 達郎(言論NPO理事、シティグループジャパン、シニアアドバイザー)

 言論NPO創立20周年を心よりお慶び申し上げます。「勇気あるリベラリズム」を標榜し一貫して中立性、独立性、非営利を保ち、国際協調、真の民主主義のための「言論外交」を追求してきた工藤理事長以下関係者の皆さんの努力に敬意を表します。

 世界を取り巻く環境は益々厳しい。地政学的課題、人口動態、社会経済経営的課題、気候変動を始めとするESG/SDGs的課題等々、そして日本はそれぞれに日本的課題も抱えている。今正に我々は現実を直視検証し、確り戦略を練り、グローバル化の中で「民主主義国家ニッポン」の立ち位置を明確にしていかなくてはならない。

 そうした中で日本を代表するシンクタンクとして言論NPOの役割は益々重要になっている。常に世界のプロを相手に論陣を張るというミッション。一方で若い仲間たちに輪を広げ将来の日本を真剣に考え議論する場を提供し、様々な課題解決を追求するというミッション。具体的な活動を通じ国内外から広く信頼される「言論NPO」、20周年を機に更なる躍動を心から願って已みません。

岡本 薫明(言論NPO理事、前財務事務次官)

21世紀のスタートとともに立ち上がった言論NPOが20周年を迎えます。しかし、この20年で国際経済社会そして民主主義そのものがこれほどまでに変容することは誰が予想できたでしょうか。第4次産業革命といわれる急速なデジタル化の進展による技術革新は、とてつもないスピードで社会、経済を変化させ、中国の台頭等により国際秩序も大きく変動しています。コロナ禍はこの変化をさらに加速させています。そうした中、先進国の中でも民主主義が大きく揺らぎつつあります。誰もがあらゆる情報にアクセスできる反面、何が客観的で中立的なのかの判断が非常に難しくなっています。

この広大な情報の海の中で、物事の本質に向き合い、中立かつ信頼できる立場で発信をするアイランド(島)が求められていると思います。この20年まさにその活動を進め、国際的にも信任を得てきたのが言論NPOです。皆様とともにこれからの世界を議論していきたいと思います。

川西 京也(言論NPO理事、K&S綜合会計所長、TKC全国会顧問)

 私は市井の一介の税理士ですが、8年ほど前ある会の懇親会でたまたま理事長の工藤さんと席が向いになり、そこで「世論」と「輿論」は違うよねという話題で意気投合し、その後弊所にお見えになった時に会議室に飾ってあった石橋湛山の色紙を見て盛り上がったのが言論NPOとの関わりの始まりでした。

 世の中にはこんなにまじめに社会のことを考えている人がいるということに驚きました。

 「議論の力」で強い民主主義を作り出す。皆さん手弁当で真剣に議論しています。

 多くの人が平時と思っているときに、民主主義や紛争を議論する人の輪を広げることは多大な労力を必要とします。

 世界の歴史は紛争の歴史とも言えます。戦争のない自由にモノが言える社会は何の努力もなしで得られるものではありません。一人一人が当事者意識をもって社会に参加しなければなりません。

 言論NPOが核となって建設的な議論の輪が広がっていくことを期待し、私も努力したいと思っています。

近藤 誠一(言論NPO理事、近藤文化・外交研究所代表、元文化庁長官)

 人類社会にはいま大きな危機が忍び寄っている。気候変動やパンデミック、民主主義や資本主義の綻び、そしてAIの悪用・誤用である。いずれも自ら引き起こした問題でありながら、その巨大さと複雑さ、そして短期成果主義という風潮ゆえに、政府も大企業も根本的解決策には手をつけられない。メディアも事態の表層を追うのみで、問題の本質を論じる意識に乏しい。

 いまこそ市民自ら過去の叡智と試行錯誤の成果である民主主義の価値を再認識し、社会の基盤に引き戻さねばならない。

 この問題意識を最も鋭敏にもち、活動してきたのが「言論NPO」である。時代のうねりや社会の無理解に翻弄されながらも、まっしぐらに健全な言論による社会の成熟化のために進んできた功績は大である。これからも様々な困難に立ち向かいながら活動を発展させていけるよう、人的にも財政的にも支えていかねばならない。テクノロジーの発展に目を奪われて、人間の良心を置き去りにしてはならない。

相澤 弥一郎(言論NPO理事、欅興産株式会社代表取締役社長、元日本青年会議所会頭)

 非営利のシンクタンクとして我が国のトップを走り続けてこられた工藤さんをはじめとする皆さん、本当におめでとうございます。私が青年会議所の若手メンバー時代、衰退と混迷の我が国において、民主主義というものはどうあるべきなのか悩んでおりました。そんな中で大変な熱意で行動しておられる工藤さんのお姿に感銘を抱き、また多くの刺激を与えてくださいました。

 民主主義とは、取り巻く環境の変化とともに、常にメンテナンスされるべきものと考えますが、政治以上に国民の意識を高めることが大切で、議論の力で民主主義を強くするという役割は我が国でさらに増しているものと考えます。

 我が国が初めて経験する人口減少社会において、そのありようを議論していくことが求められていると思います。

 民主主義の一翼にかかわれる喜びを持って、ともに活動していきたいと思っております。

山口 廣秀(日興リサーチセンター理事長)

 言論NPOは2001年11月に設立され、今年で20周年を迎えられました。誠におめでとうございます。

 この間の言論NPOの活動には目を見張るものがあります。2005年には日中の民間対話のプラットフォームとして「東京-北京フォーラム」を立ち上げ、私も2010年から参加しています。その後、「日韓未来対話」、「日米対話」、「アジア平和会議」、「東京会議」を相次いでスタートさせるなど、極めてアグレッシブに日本と世界をつなぐ活動を続けてこられ、そのバイタリティには改めて敬意を表したいと思います。

 現在世界は歴史的な分岐点に立っています。グローバリズム、多国間主義、自由貿易主義などこれまで世界の政治経済社会を支えてきた重要な理念が、ナショナリズムの台頭と世界の分極化の下で行き詰まりをみせています。他方、気候変動への取り組み、感染症対策、人口動態への対応など、世界が一致協力して解決していかなければならない課題は山積しています。言論の力で様々な課題の克服に努めてきた言論NPOの真価がこれからまさに問われようとしています。国際協調の再構築のため、世代を超え、国を超え、地域を超えた対話の重要性はますます増大しています。言論NPOへの期待が一段と高まっていると言っても過言ではないでしょう。

 言論NPOのさらなる活躍を祈念しています。

田中 弥生

 20周年おめでとうございます。

 営利企業という形態をとらず、また、資本を有しないNPO法人という形態で20年にわたり活動を続けることは大変だったと思います。

 また、当事者意識に基づいた責任ある言論空間を作るという活動は、災害救援や弱者救済のような活動とは一線を画すものですので、一般にはなかなか理解されにくいという苦労もあったかと思います。

 こうした中で、多くの人々の想いと支えがあるからこそ、20周年を迎えることができたものと思います。

 言論NPOの使命に基づけば、未だ道半ばだと思います。人々への感謝の気持ちを忘れずに、初志貫徹で突き進んでいって欲しいと思います。

大塚 陸毅(東日本旅客鉄道株式会社顧問)

この20年で世界情勢は一変しました。中国の台頭、イギリスのEU離脱、民主主義と権威主義の対立、気候変動、難民問題。ますます複雑化、不安定化する世界情勢において、我が国も大変難しいかじ取りを求められています。

 特に、アジアとの関係をどう築くかという点は、これまでにない世界的な関心事となっています。近年、国際社会における我が国の存在感低下が叫ばれておりますが、地政学的に見ても日本に課せられた期待、役割は大変大きいと言えます。今こそ日本が積極的に議論を主導しなければなりません。

 残念ながら現在の日中関係は必ずしも良いとは言えません。しかし、対話を閉ざすべきではありません。20年間アジアを中心に対話を継続してきた言論NPOの役割はますます重要になるでしょう。引き続き言論NPOが積極的に民間対話をリードすることを期待しています。

中尾 武彦(みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長・前アジア開発銀行総裁)

 言論NPOの20周年、おめでとうございます。民間の活動を通じた各国間の関与が大事だという工藤泰志代表の信念に賛同する人々が増えています。民間企業の幹部、学者、大臣レベル、行政の経験者など、幅広い専門家が参加していることに意味があります。コロナ禍でほとんどの会合がオンラインとなるなかでも、日中、日韓、日米欧などのフォーラムで活発な議論がなされています。

 私自身、本年10月中旬に開催された第17回東京⁻北京フォーラムの冒頭のディスカッションにパネリストとして参加しました。両国の外交、経済、安全保障のハイレベルの専門家が、思った以上に、中身のある率直な意見交換を行うことができたことに勇気づけられました。そして、両国関係に難しい問題もあるなかで、その場で議論するだけでなく、対話や平和の重要性を確認する共同声明をとりまとめるという言論NPOの取り組みに敬意を表したいと思います。

 いずれリアルの会合も復活してくることでしょう。今後も各国間の相互理解を深めるための一層の努力に期待しています。

松田 学(松田政策研究所代表、言論NPO監事)

現職の小泉総理(当時)を始め、政、官、財、学、メディア界など、日本の各界を代表する論者たちが勢ぞろい...20年前の言論NPO設立パーティーが昨日のことのように思い出されます。当時は、工藤代表とともに、私が属していた財務省の有力OBなど多数の方々に「日本に本格的な政策論の舞台を創りたい」と協力を求めて行脚していたものですが、運営自体は資金面の制約から常に「今が正念場」...。

 その後、様々な困難を克服して、現在では、世界的に危機に直面する民主主義を立て直していく上でも、国際社会では日本を代表する言論機関とされる存在にまで成長しました。健全な民主主義のインフラ創りは、言論NPO設立以来のミッションですが、先般の総選挙をみても、日本の未来に向けた意味ある選択肢を有権者に提示できる政治は未だに実現していません。

 今後、言論NPOが議論の場にとどまらず、現実を動かす大きな力へと育っていくよう、皆様と力を合わせていきたいと思います。

篠沢 恭助(公益財団法人資本市場研究会顧問)

 多種多様多重の情報が生み出されている中、言論NPOは20年に亘る実体験、実評価を踏まえた情報と主張と発信をしつづけています。

 多量の情報がとびかう中で、これほど貴重なものはありません。特にこれから最重要となって来る中国との情報についてその真正な価値は益々注目されるでしょう。

岡村 健司(内閣官房参与、前財務官)

 言論NPOは、有識者達が、傍観者にとどまらず当事者として、日本の針路に責任を持って発言・行動するためにローンチされたと聞いた。この20年を振り返る時、そのユニークな強みは注目に価すると思う。

 第一に、「包摂性」。官民学のコミュニティをつなぎ、分野横断的な事象を取り扱う。自分は、政府の一員の立場で、また国際経済・金融の分野から参画してきたが、ビッグピクチャーの中での意見交換に目を開かされることが常であった。

 第二に、「非組織」。組織の枠やマンデートから自由であるがゆえに、柔軟性・機動性・変化への即応性が確保される。いわゆるビューロクラシーの対極である。

 第三に、「東京からの発信」。国際社会にとって有意なメッセージを、日本発で世界に送ることに軸足を置き、実績を積み重ねてきた。これは一朝一夕にして成るものではなく、日本にとって大きなアセットである。国際社会の現場で汗をかいてきた私にとって、その思いは特に強い。

 次の10年、言論NPOの更なる前進に強い期待を寄せている。

中曽 宏(大和総研理事長、前日本銀行副総裁)

 民主主義の危機が叫ばれ、外交・安全保障上の問題がますます大きくなる中、言論を通じて課題を解決しようという言論NPOの活動に期待されているものはまことに大きい。建設的な議論を避ければ政治的には狭小なナショナリズムが台頭しがちとなり、自由な議論が失われれば経済的には縮小均衡と長期停滞に陥る恐れがある。民主主義の維持・発展と資本主義の深化のためには、今こそ各界のオピニオンリーダーによる議論を活性化させる必要がある。

 20年継続してきた実績を活かして、理念や理想だけではない、現実的で頑健な議論を蓄積する役割を、言論NPOがこれまで以上に担っていくことを願っている。

水野 雄氏(匠総合研究所代表)

 工藤泰志代表が、"議論の力"をキーワードに、政府とは独立した非営利のシンクタンクとして「言論NPO」を創立し、「既存メディアの報道のあり方等の課題に取り組み、民主主義の機能を強化させる」という命題に尽力されてこられた姿に共感してきました。

 私の場合は、例えば「東京‐北京フォーラム」の実行委員等を務めさせていただきましたので、悪化する日中関係の将来を憂いての活動ぶりを肌感覚で実感し、また代表の真剣さも承知しています。国益を第一義に考え、日本の課題解決に対するミッションに挑み続け、その本気度にも感銘してきました。

 今では活動領域も広がり、「東京会議」を舞台に、地球規模の課題にも取り組み、国際的なオピニオン形成にも尽力されています。日本を代表する多くの知識層も理解・支援し、いつしか20年も継続されていることに敬意を表すると共に、この活動が今後も発展を遂げながら、継続されることを祈念しています。

香田 洋二(元自衛艦隊司令官)

 言論NPO二十周年おめでとうございます。海自OBの私は言論NPOのFlagship Projectである「東京-北京フォーラム」の安全保障対話部門に2012年から参加しております。習近平国家主席の足跡と重なるこの期間を通じた中国の関係者との直接討議は、安全保障や軍事という両国の立場が大きく異なる領域おいて、中国の考えや両国の違いの原点までを直接確認しつつ意思疎通を行える唯一の機会でした。その間、絶望感に苛まれて落ち込んだこともありましたが、両国対立の主因の一つである双方の誤解や一方的な思い込みに基づく発想という「固い氷」が溶ける微かな兆しを少しずつ体感できるようにもなりました。

 同時に日中間の隔たりはいまだ大きく、溶かすべき氷の量は圧倒的です。しかし、そうであるからこそ言論NPOの活動の意義が更に大きくなり、世界の安定に貢献するものと確信しております。

古川 禎久(法務大臣、衆議院議員)

 学生時代、愛国心の塊のような韓国人留学生Yさんと親しくなりました。二人でよく酒も飲みました。新宿あたりで、侃々諤々おおいに語り合ったものです。いつも決まって、零時を過ぎたあたりからお互いの本音がむき出しになりました。Yさんが日本のこういうところが嫌いだとおっぱじめるので、こちらも負けじと反撃する。こうして始発電車が動くまで延々とやるのがお決まりでした。あれから30年以上たちますが、私たちの友情、信頼関係は今も変わりません。

 日韓関係が激しくきしむたびに、Yさんのことを思います。二人が仲良くケンカしたように、国同士も普通に侃侃諤諤やり合える関係になればよいのに、と思います。

 言論NPOは、まさに侃侃諤諤とやり合える場を創り続けて20年。良い時も悪い時も、ひたすら侃侃諤諤の対話を続けることで、友情と信頼関係を育み続けておられます。言論NPOの高いお志に心から敬意を表し、今後益々のご発展をお祈り申しあげます。

岩本 敏男(NTTデータ相談役)

 設立20周年おめでとうございます。私は東京―北京フォーラムを中心に15年以上お世話になっていますが、中国とのビジネス関係は四半世紀を超え、中国には多くの知己がいます。最近では経済同友会中国委員長として、「どのように中国と向き合っていくか」について報告書として発表してきました。その骨子は、企業経営者が自ら現地に赴いて、自分の目で「中国の今」を追い続けることが必要ということです。

 言論NPOは中国のみならず世界各国の有識者との連携・対話を重視し、様々な取り組みを展開されています。米中対立が激しさを増す中、世界各国で分断が起き民主主義の価値が改めて問い直されている現在、こうした対話によって相互理解を深め、世界を前進させていく取り組みは大変貴重なものです。人々の行動は得られる情報の量と質により決定されます。信頼関係の醸成もこれなしでは生まれません。その意味からも言論NPOの今後の活動に大いに期待しています。

河野 克俊(前自衛隊統合幕僚長)

 日本の安全保障環境は厳しさを増している。とりわけ米中対立が我が国の安全保障に及ぼす影響は深刻だ。本年4月の日米首脳会談で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記された意味合いは大きい。日米同盟は、基本的に日本有事の際の同盟だったが、今後は地域の平和と安定を創造する同盟へと深化していくことになろう。今年3月デビッドソン前インド太平洋軍司令官は、米上院軍事委員会で「台湾への脅威は今後6年以内に明らかになる」と証言した。台湾有事は日本有事に繋がる可能性が高い。中国による台湾軍事統一を抑止する体制の整備が日米の今後の最重要課題だ。

 一方で、中国との対話も重要だ。防衛交流については、2012年の尖閣列島国有化を契機に閉ざされた。対話がなければ疑心暗鬼を生む。言論NPOは20年に渡り中国との対話を継続しており、このような厳しい状況だからこそ言論NPOの果たす役割は益々大きくなるものと思う。

吉田 徹(同志社大学政策学部教授)

 シンクタンクは、次の時代の最善の選択肢(オルターナティブ)を示すために欠かせない国家と社会の頭脳です。その中でも、言論NPOは日本で数少ない民間・独立系のシンクタンクであり、しかも内政と外交の両次元にまたがって、精力的な民間外交を担っています。いかなる党派性を持たず、民間の出資でもって成り立つシンクタンクであることは、優れたシンクタンクであることの証左であり、信頼を寄せてもらうためのグローバルなスタンダードです。日本では稀有なそのようなシンクタンクが20年間続いてきたことを過小評価すべきではありません。

 人新生時代、新たな権威主義政治の台頭、AIによるシンギュラリティ下での労働、情報社会の中の自由と安全、核拡散、グローバルな人間の移動、国際社会を安定させる覇権国の不在等々、国際社会が直面している問題は数えきれないばかりか、増える一方です。言論NPOがそうした課題について長期的かつ客観的視野から積極的に取り組んでいかれることを願って止みません。

坂尻 信義(朝日新聞ゼネラルエディター兼東京本社編集局長)

 このたびは誠におめでとうございます。私が言論NPO代表の工藤泰志さんと出会ってから、ほどなくして工藤さんには弊紙・朝日新聞の「フロントランナー」という大型記事にご登場いただきました。2014年8月のことです。経済同友会の元代表幹事、故・小林陽太郎さんに工藤さんが初めて会ったとき、小林さんから「私も仲間に入れてほしい」と言われ、工藤さんが号泣したというエピソードが、とても印象に残っています。

 私にとって言論NPOといえば、なんと言っても「東京-北京フォーラム」です。四川、香港、北京に計10年間ほど暮らしましたが、国同士としての中国とのつきあい方は、いまだに正解を見いだすに至っていません。そんな巨大な隣国と、粘り強く議論を続け、平坦でない道を前を向いて歩み続ける言論NPOの皆さまには、心より敬意を表します。ますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます。

小野田 治(日本安全保障戦略研究所上席研究員、元航空自衛隊空将)

 言論NPO創設20周年誠におめでとうございます。

 言論NPOの活動にお招きいただいた2012年当時は、尖閣諸島の問題で日中関係は最悪の時期でした。互いに非難の応酬で建設的な議論が困難な中で、両国の間で戦争を起こしてはならないと工藤代表は説き続けました。日中の民間外交だけでなく米国や韓国、欧州を交えた多国間の議論の場で平和と非戦を訴えて来ました。多くの外国人有識者が率直に議論を展開する場が生まれました。国会議員の積極的な参加により、より現実的な議論が展開してきました。

 こうした議論の発展と深化は、工藤代表を中核とする言論NPOのたゆまぬ創意と努力によるものだと思います。今日、我が国を取り巻く情勢は、ますます複雑性と困難性を増しています。「議論の力によって平和をもたらす」言論NPOのバイタリティ溢れる活動に今後も大いに期待しております。

神保 謙(慶應義塾大学教授)

 20周年誠におめでとうございます。20年前の設立前後に、工藤代表が「新しい言論の場を作りたいんだよ」と熱い思いを、駆け出しの研究者だった私に語ってくれたことを思い出します。NPO運営を取り巻く環境が厳しい中で、愚直に言論の大切さを一貫して唱え続けたことが、内外多くの方々の支持と共感を得たのだと思います。言論NPOの理念と活動に微力ながら奉仕したい、というのが20年後の私の思いです。

 民主主義や平和の大切さを説くことは、決定の権力や現実主義を前にして、ときに弱々しく響きがちです。それでも言論人の世論調査、政党のマニフェスト評価、主要国との対話によって、言論の力を導き出し、民主主義や平和のために何をすべきかという行動を促した功績は、どのシンクタンクも達成し得なかったことです。工藤代表と言論NPOスタッフを祝福し、今後のご発展をお祈りいたします。

島田 太郎(東芝執行役上席常務最高デジタル責任者CDO、東芝デジタルソリューションズ社長、東芝データCEO)

 いかなる状況においても、対話を続ける事は大切だと思っております。特に日本の様に海に閉ざされた国は、独自の考えや、印象で物事を判断しがちになります。言論NPO様は、このややもすると日本人が億劫になるような事に、一貫として取り組まれて来た事を驚きと共に、賞賛させて頂きたいと思います。

 もう一つの日本の問題は、言うべき事や、聞くべき事を控えてしまう事だと思います。しかし特に言語や習慣も違う国の間で、恐れずに主張したり、聞いたりする事は極めて大切だと思います。この点においても言論NPOの皆様の功績は大きいと思います。先日の日中の会議でも申し上げましたが、人類にとって地球は既に小さすぎる状況になりました。手遅れになる前に、世界の問題を一緒に解決できる様に、今後も言論NPO様が活躍続けられる事を、祈念しております。

飯山 俊康(野村證券代表取締役副社長)

 言論NPO設立20周年を心よりお祝い申し上げます。

 地政学的な大きな変化により、政治、経済、安全保障など様々な社会秩序が不安定化しています。加えて、コロナ禍、急速に進む脱炭素化への取組み、デジタル技術の進展といった変化への対応力の差が、国家同士あるいは同一国家内における社会分断の要因となっています。

 分断や格差がとりわけ注目される現在において、社会課題を言論の力で解決することに取り組まれてきた言論NPOに寄せられる期待は益々大きくなっています。社会の分断が深まり、当事者間でコミュニケーションを取ることが困難な時ほど、国家や特定の利害から独立した立場で対話のチャンネルを開けておくことが重要です。

 この20年間、どのような状況においても常に本音の対話の場を提供し続けてきた言論NPOが、社会課題の解決に向けて更に大きな役割を担われることを期待しています。

渡辺 哲也(経済産業研究所(RIETI)副所長)

 20周年お祝い申し上げます。

 世界は米中対立、パンデミック、気候危機等大きな地殻変動の中にあります。パックスアメリカーナの上に日本が経済成長を享受してきた時代は終わり、我々が長らく当然の前提としてきた国際経済システムが大きく揺らいでいます。米国も中国もアジアの国々も生き残りをかけて必死に世界の情報を収集し戦略を立てています。

 日本も今こそ「失われた30年」の閉塞感から抜け出し、成長と分配の好循環を実現し、グローバルに高いアンテナを張っていく必要があります。

 工藤代表のリーダーシップの下、世界へ目を開き、安全保障、民主主義、自由経済の根本を問い続け、現代日本のBeacon(灯台)の役割を担う言論NPO。日本の未来へ向け、更なる大きな一歩を踏み出すことを期待します。

萩原 豊(TBSテレビ ニューヨーク支局長)

 「民主主義が後退するのは、この仕組みを機能させるための、主権者側の力が活力を失っているからです。この日本にアメリカのような、分断を持ち込ませる、わけにはいきません」。

 米・ニューヨークを拠点とする私のもとに、新年、工藤代表から届いたメールの一文です。その言葉に、はっとさせられました。ジャーナリストは、「公正中立」を求めるが故に、"客観的な観察者たれ"という心が働きます。しかし、工藤代表の言葉には、<民主主義を機能させる><日本を分断させない>という主体性が読み取れます。これは、ジャーナリストを含めた言論人の責務のはずです。

 私が身を置く米国では、左にCNN、MSNBC、右にFOXを筆頭に、メディアの分極化が加速し、「言論」が分断を助長している側面があると言わざるを得ません。こうした時代だからこそ、言論NPOの役割が、今後一層、日本に、世界に重要なものとなるでしょう。創立二十周年を祝福し、益々のご発展をお祈り致します。

河合 俊明

 言論NPO創立20周年おめでとうございます。

 民意に添いながらも人間の劣情に支配されたポピュリズムに陥らない為には、深い知性と高い倫理に裏打ちされた政治・行政が求められます。係る理想の民主主義実現の一助となるべく積極的に活動されて来られた言論NPOのこの20年の活動に敬意を表します。最近は複雑化する国際情勢下、特に各国有識者との交流、意思疎通を通した言論外交に注力され、主に中韓との関係改善に貢献されていると思います。

 しかしながら、茲許本邦に於いて公文書改竄等、「民主主義の根幹」とも言うべき「情報公開・共有」が蔑ろにされる事態が散見されます。健全な民意は正確な情報共有の上に築かれるものと思います。係る面の状況改善についても従来以上に粘り強く発言・活動して行かれる事を期待します。今後共、日本に於ける民主政治の質向上にご尽力されますようお願い申し上げます。

近藤 久洋(埼玉大学大学院人文社会科学研究科教授)

 言論NPOが2021年11月21日に創立20周年を迎えることに大変喜ばしく思います。独立した社会科学系のシンクタンクが、20年間に渡り顕著な活動を行ってきたということは、少なくとも日本においては非常に貴重なことといえます。

 言論NPOが活動の柱として重視する「日本の課題」、「世界の課題」、「北東アジアの平和」など、現在の高度に複雑な社会的課題は、一般的知識や単一の専門分野の知識があれば対処できる問題ではありません。言論NPOはまさに「言論の舞台」を提供することで、各研究分野の知識人が各分野の知見を「発散」し、学際的な提言に「収束」させることに寄与してきました。そのことで、公共政策の決定・選択に不可欠な専門的かつ広範なインプットを、政治家・官僚だけでなく、国民にも提供してきました。

 今後も、言論NPOというプラットフォームにおいて日本国内の知識人が切磋琢磨し、世界各国のシンクタンク・知識層とも連携し、政策の質的向上がなされるものと期待をしています。

和田 大樹(オオコシセキュリティコンサルタンツアドバイザー、清和大学非常勤講師)

 言論NPOの皆様、20周年おめでとうございます。

 私は地球規模課題や国際テロ問題でお世話になっております。この20年間で国際的なテロ情勢もイスラム過激派だけでなく、極右テロのグローバルな拡がりも大きな問題となり、今年夏のアフガニスタンにおけるタリバンの実権奪還が今後のテロ情勢に与える悪影響も懸念されます。

 国際政治の主軸が伝統的な安全保障に回帰していますが、テロや気候変動、感染症、貧困や経済格差などグローバルイシューは依然として多くの課題に直面しています。また、私は研究者だけでなく、民間のセキュリティコンサルティング会社にて企業の危機管理(駐在員の安全・保護、地政学リスクなど)に従事していますが、経済アクターの間でも国際政治や安全保障の知識が求められる時代になっていると強く感じます。

 言論NPOはさまざまなイシューを取り上げるだけでなく、学者や政治家などと企業人との交流がもっと盛んになる最前線のプラットフォームとしてご活躍されることを大いに期待しております。

古谷 浩一(朝日新聞論説委員)

 20周年、おめでとうございます。

 外交には、政府だけではできない領域がある。そう訴え、民間の立場から積極的な言論活動を続けてきた工藤泰志代表の問題意識に深い敬意を表したいと思います。特に隣国との複雑な関係において、言論NPOの役割とその存在感は年々、確実に高まってきているのではないでしょうか。

 様々な日本の声を海外に発信し、またその逆に他国の多様な知見を日本に伝える。今後も言論NPOの活動がさらに活発に広がっていくことを祈念します。

マニヤン麻里子(TPO代表取締役)

 20周年という大切な節目の年に言論NPOに出会い、参加することを決めました。

 私は5年前に起業をしました。子供を抱えて働く中で、今自分が子供世代の社会に向けた課題解決をしていかなければならない、と思ったからです。自分自身の子供が社会に飛び立つまではあと少し。一つでも多くの課題を解決したいと、日々の活動に取り組んでいます。

 その子供たちは日仏二つの国籍を持っています。私は日米仏の3カ国で育ってきました。「国際結婚は、大変なのでは?」と良く聞かれます。歴史も教育も何もかもが違うからでしょう。しかし、違いがあるからこそ、より多くの対話を心掛け、家族で自分たちなりの新しい考え方や生き方を創り出しています。

 国家間も同様に、違いがあるからこそ多くの対話を重ねることで、新しい価値を生み出すことができるのではないかと思っています。言論NPOを通じて「対話」を私たち世代、そして子供世代にまで広げていきたいと思います!

岩渕 美智子(東洋大学法学部元助教授)

 貴重な活動を20年間に渡り継続されてきたことに深く敬意を表します。

 「国内外において民主主義が危機にある」というのは誰しも思うところです。それを食い止めるには、広く国民の間で健全で活発な議論が展開される必要があります。そのための専門的かつ客観的な知識や情報を提供しているのが言論NPOです。

 私は今年言論NPOの20以上のフォーラムに参加し、他では聞けない掘り下げられた議論と新鮮な情報に接することができました。また日韓、日中関係が悪化する中、日韓未来対話及び東京-北京フォーラムも全日参加し、各々の国のエキスパート同士の率直な意見交換に「こうした交流こそが今一番必要なことだ!」と強く胸を打たれました。

 議論による民間外交を徹底して実践する日本で唯一無二の存在である言論NPOの活動に多くの方々が参加し、日本が国際平和の構築に貢献できることを願って止みません。

鎌倉 千秋(NHKアナウンサー)

 言論NPO20周年の取り組みに心より敬意を表します。

 毎年秋になると発表される「日中共同世論調査」は、私もニュースを読む立場から、毎年注目して参りました。データはまさに時代の鏡であり、両国民感情の複雑な交錯の現れでもあります。感情の悪化に気を落とす一方で、これまでにない変化に希望を見出すところもありました。

 そしてこの調査をもとに2021年初めて、パネリストの一人として参加し、この揺るぎない日中対話の枠組の中で自分の取材経験を述べさせていただきました。また、長年日中関係の構築に努めてこられた諸先輩方が率直に考えをぶつけ合う姿を見て、国際相互理解は「対話から始まる」という両国間の信念を改めて強く感じた次第です。

 次の日中関係を担う世代の一員として、私たちも積極的に臆することなく"対話"を続けていきたいと思います。

松田 亜有子(アーモンド株式会社代表取締役)

 言論NPO設立20年、おめでとうございます!

 クラシック音楽史上最大のスターにして革命家ベートーヴェンは、王侯貴族層しか聴くことのできなかった音楽を市民層へ拡げました。シラーの『歓喜に寄せて』より「すべての人間はみな兄弟である」と高らかに歌われるベートーヴェンの交響曲第9番は、今も地球上で燦然と輝いています。

 第9の構想はベートーヴェンが22歳ボン大学で学んでいた時と言われています。青年期の着想から30年、思想の軸はぶれず完全無欠の交響曲が仕上がりました。ベートーヴェンは意図的に誰もが参加できるように作曲し、市民が主役となり、市民が創り上げる世界をつくりました。人類愛を歌い上げる普遍性を前面に押し出した、この音楽の前と後では、大きく音楽が変わります。

 言論NPOが誕生して20年。私は代表の工藤さんとベートーヴェンがいつも重なります。言論NPOが創る"対話"の重なりが、ベートーヴェン交響曲第9番のように歴史を変えていくのではないか、と、これから言論NPOによるどんな交響曲が生まれていくのか、楽しみです。

山岡 浩巳(フューチャー経済・金融研究所所長)

 言論NPOが20周年を迎えられた事を、心よりお慶び申し上げます。

 歴史上の大国が衰退や失敗の途を辿るとき、そこには内向・排他的傾向の強まりが共通してみられます。他民族を積極的に登用し、外の情報を熱心に収集したローマ帝国が、末期には内向きになり、情報から遮断され、滅んでいった姿は象徴的です。私がかつて勤務したIMFでも、対話自体を拒むようになった国々の経済が、破綻に突き進む姿を見てきました。

 そして今、本来ならば世界の交流と相互理解を促すはずの情報技術が、新たな分断の要因にもなっています。人々の嗜好に合わせ、データ分析やAIによって自動的に選択され提供される居心地の良い情報の中に、各人が閉じこもる傾向も強まっています。

 この中で、各国間で意見を率直にぶつけ合える関係を民の力で築く言論NPOの取り組みは、まさに時代が求めるものと感じます。これまでの活動に敬意を表すると共に、益々の発展を願っております。

前田 浩智(毎日新聞社主筆)

 民主政治のほころびが目立っています。合意過程を重要視するが故に、意思決定に時間がかかりすぎるというのが大きな欠点だというのです。

 その疑念を新型コロナウイルスとの闘いが増幅しました。米国で感染者が世界最悪となったことが象徴的に映りました。一方で、感染者が最初に確認された中国は都市封鎖や国民監視などの対策を強権政治により一気に進め、感染拡大を抑え込んでみせました。

 しかし、だからといって日本が民主政治の旗を降ろすという選択肢などないでしょう。より多くの人が参加する政治の方がより大きなエネルギーを生み出すと考えるからです。

 そこで大切になるものは国民の納得です。たとえ手間がかかっても、議論を尽くし、納得の基礎ができていれば、合意は大きな推進力を持つはずです。

 20年前、言論NPOが責任ある議論の舞台を作ろうとスタートしたのはいまのような事態を見据えていたようにも思います。その役割はさらに高まり、言論NPOにとっても、日本の民主政治にとっても、ここからが本当の正念場なのかもしれません。

 創立20周年、おめでとうございます。ますますのご奮闘、ご発展を祈念申し上げます。

伊藤 俊行(読売新聞東京本社 編集委員)

 たしか13周年か14周年か、あまり切りの良くない記念パーティーで、工藤泰志代表から突然、一言話すように「無茶ぶり」されたことがあります。

 その時、言論NPOが七転八倒しながら、ともすれば「青臭い」と切り捨てられがちな理念を掲げて活動している姿が共感を呼ぶのだという趣旨の話を、させてもらいました。

 今も組織の図体は小さく、そのくせ、やっていることは手を広げすぎではないかと心配するぐらい、国際的で野心的です。数年前と同様、「相変わらず七転八倒を続けているな」というのが、設立20周年に寄せての感想です。

 20年も続けるだけで立派です。とはいえ、どれだけ工藤さんが信念やエネルギーを持っていても、スタッフのみなさんが代表の"暴走"に付き合い、支えなければ、何一つ継続できなかったはずです。スポンサーや支援者の中にも、「やれやれ」と思いながら、青臭い理念を信じてつきあっている方もいらっしゃることでしょう。そんな「財産」を失わなければ、25周年、30周年と活動は続くことでしょう。期待を込めて、願っています。

川北 省吾(共同通信社編集委員室次長・論説委員)

 20年前に発足した「言論NPO」。一人の占者がそれを見通していた事実はあまり知られていない。

 当時、出版社で論壇誌を手掛けていた工藤泰志さんは、既成ジャーナリズムの限界を感じていた。多くの人と出会い、数々の論考を世に出してきたが、日本は政治・経済の課題解決を先送りし、一向に変わらない。

 もんもんとする日々の中、知り合いから占い師を紹介された。ジャーナリズムの対極にある占術の世界。半信半疑で会ってみると、こう告げられた。「あなたはこれから自立する局面に追い込まれます」

 「自分は何をすれば」と問い返す工藤さんに、占者は告げる。「何もしなくていい。そのうちに物語が始まる」。程なくして、その言葉が現実となる。論壇誌の休刊。出版社退社。小林陽太郎氏との出会い...。言論NPOは「天の時」を得て産声を上げたと言えるのかもしれない。

 この20年はそこから「人の和」を育み続けた歳月だったろう。心を通わせ、民主主義に水を注ぎ、平和をつくる-。粘り強い取り組みに深い敬意を表するとともに、「言論の場」を通じた「より良き市民社会の形成」に少しでも参画していければと思います。

 言論NPOのますますのご発展をお祈り申し上げます。

古城 佳子(青山学院大学国際政治経済学部教授)

 米中対立の深刻化、さらに世界的な権威主義の伸長と民主主義の退潮が見られる現在、こうした状況がやがて世界の分断にまで発展していくことが懸念されています。

 しかし、分断を避けるためには対話が必要ですが、世界ではそうした取り組みが少なくなっています。各国の論壇を見ても、「どちら側に付くべきか」などという議論に終始している。こうした状況の中では、協調のための場を意図的に作らないと、対立のマインドがますます広がっていってしまいます。

 また、将来を担う若い世代が民主主義を支持しなくなると、やがて権威主義の世界が到来します。ですから、若い世代に民主主義の価値を伝え、信じてもらえるような取り組みが必要であり、そのためにもやはり対話です。

 もっとも、こうした状況の中では、どうしても国益を背負ってしまう国家同士の対話は難しい。そこで国家間以外のチャネルを増やすことが必要になりますが、こうした中で言論NPOがこれまで20年間の活動の中で取り組んできた民間対話の重要性はますます高まっています。

 国家から離れすぎると影響力がなくなってしまう。かといって近すぎると国家の代弁者になってしまう。これからの言論NPOには、そうしたバランスを取りながら市民により開かれたトラック1.5とも言うべき協調の場をさらに作っていくことを期待しています。

名前 名前(肩書)

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