「第18回言論NPOメンバーフォーラム/ ゲストスピーカー: 石破茂氏」報告

2010年4月27日

第18回言論NPOメンバーフォーラム
 4月22日、都内ホテルにて、言論NPO第18回メンバーフォーラムが開催されました。今回は、自由民主党政務調査会長である石破茂氏を講師にお招きし、「日本の未来をどう描き、実現するのか―日本のリーダーに問う」をテーマとして、議論が行われました。


 まず、代表工藤が、言論NPOが昨年12月に行った有識者アンケートから、日本の未来に向けての競争が政治の中で始まっていないこと、政党政治に対する不信が広がっていることを説明し、この大きな政治の変化の中でどのように自民党を立て直し、日本の未来のためにどう責任を果たすのか、について石破氏からお話をお聞きしたいと問題提起しました。これに対して、石破氏は自らの政治家としての体験を踏まえて、今の政党や政治家の求められている覚悟や政界再編をどう考えるか、日本の将来に向けた国家の根本問題に関する考えを一時間に渡り、一気に熱く語りました。前日には舛添要一氏が離党するなど大揺れが続く自民党ですが、日本の政治の行方に参加者の関心は高く、約30人の言論NPOのメンバーや関係者との意見交換も白熱しました。(発言の詳細は後日公開します)
 

 石破氏は発言の中で、議員の離党や新党結成に揺れる自民党の現状について触れ、現行の小選挙区制に根本的な原因があると指摘し、ご自身は「小選挙区論者」でありつつも、それを機能されるためにも、現行制度を取り巻く環境整備が必要不可欠である、との立場を明らかにしました。

 小選挙区制へ移行すべきと考えた契機について、石破氏は、中選挙区時代は派閥が政党の機能を果たしていて政党は派閥の緩やか集合体というのが現実で、自民党議員同士が一番仲が悪く、同じ党の議員で政策の議論を深めることができなかったこと、選挙区では地元の利益を優先して主張し、当選するとその主張を議会で覆すということが行われやすいことなどを挙げ、自身が、金日成時代の北朝鮮を訪問した際に「この国は必ずいつか日本や北東アジアの重大な脅威になる」と感じた経験を明らかにし、「国会議員が外交や安全保障といった国家の根幹にかかわる問題についてまっとうに議論できる政治にしなければならない」と考えたこと、などを説明しました。 

 とりわけ最後の点について、石破氏は「政治家の仕事は、国家のためにどうしても必要だが、国民が必ずしも歓迎していないものについて、その必要性を国民に説得し、それでもだめなら強制することだ」という清水幾太郎氏の言葉を引用し、「政治家がみんなが喜ぶことばかりを言っていたら、国は倒れる。問題は、それを言うに値する政治家、政党なのかということだ」と述べました。

 そして、現行の小選挙区制をうまく機能させるために必要な要件として、①地方分権の着実な実行、②政党法の制定、そして③政界再編の三つを挙げ、「今はこの三つがどれも成し遂げられないまま、この制度だけが走っている。どれかからでも手をつけてやっていかないと、この混迷は続くばかりだ」としました。

 具体的には、まず①については、段階的に地方分権を着実に実行していくというプログラムを作成することで、国会議員が国家の根本問題について取り組む環境をつくる必要性を訴えました。また、②政党法の制定については、「私たち政党は、政党助成金ということで税金をいただいている。しかし、そうして利益は受けているのに国民に対してほとんど義務を果たしていない」とし、「国民から利益を享受するならば、政党における意思決定のシステム、政党における代表者の決め方、経理のありかた、そういうものをきちんと国民の前にディスクローズし、いかなる義務を果たすべきなのかを明らかにしなければならない。そうでなければ、政党は国民の期待に応えられる存在にはならない」と述べ、政党改革に意欲を示しました。

 最後に石破氏は、③政界再編の必要性について触れ、「政界再編の軸は、財政や外交、安全保障など、国家の根本の問題をどう考えるかということでなければならない。これに対して私たち政治家がどれだけ国民に対して語るか、一票を入れてくれる有権者にどこまで責任を持てるかが重要だと思う」と指摘しました。

 そして「政治家の最後の仕事として、日本の安全保障体制の在り方、他の国とどのような関係を創っていくかということを考えたい。外交にしろ財政にしろ、まじめに考えない国はいつか滅ぶ。その引き金を引くようなら、議員をやっている意味はない」とも述べ、自身の政治家としての強い覚悟を表明しました。



 その後参加者との間で活発な議論が行われました。これらの議論を踏まえ、代表工藤は「言論NPOはマニフェスト評価をしているが、そこでは政策の体系性を問うている。財政や安全保障といった根幹の問題について政党が体系性のあるマニフェストを打ち出せば、有権者は政党がこの国の未来を本気で考えていると感じるはずだ。日本の政党は有権者の真剣さを見誤っている。言論NPOは参院選に向けて今から準備し、徹底的に政策を評価していきたい」と述べ、議論を締めくくりました。

 4月22日、都内ホテルにて、言論NPO第18回メンバーフォーラムが開催されました。今回は、自由民主党政務調査会長である石破茂氏を講師にお招きし、「日本の未来をどう描き、実現するのか―日本のリーダーに問う」をテーマとして、議論が行われました。