言論NPOシンポジウム「ニッポンNPOは民の主役になり得るか」開催

2004年3月18日

2004/3/15 (月) 言論NPO シンポジウム
「ニッポンNPOは民の主役になり得るか―民の可能性と役割を再考する―」報告

場所:日本財団 2F大会議室


「ニッポンNPOは民の主役になりえるか」シンポジウムは白熱論議
 ―官に頼らず民主導で競争力のあるNPOめざすべき、との声

言論NPOは3月15日午後6時半から約2時間半にわたって、東京港区赤坂の日本財団ビル大会議室で、日本財団後援のもと、シンポジウム「ニッポンNPOは民の主役になりえるか」を開催しました。NPO関係者のみならず、行政関係者、さらにNPOが新たな時代の役割を担える存在になれるのか知りたいという言論NPO会員ら約100人がパネリストらの白熱する議論に耳を傾けた。最後は聴衆も議論に加わったが、官に頼らず民主導で競争力のあるNPOをめざすべきだ、というパネリストの問題提起に賛同する声もありました。


今回、言論NPOが掲げたシンポジウムテーマは、次のようなものでした。

「パブリックの役割を民が担うため、日本には多くのNPOが存在し、挑戦が始まっています。しかし、日本のNPOの動きが、民の可能性をドラステッィクに変え、NPOが民の分野でメジャーな担い手になる方向は見えていません。日本のNPOのどこに問題があるのか。それを考えながら、私たちは日本の大きなシステム転換の中で、民の可能性、力をもっと幅広く考え直してみたいと考えました」

シンポジウムは、2つのセッションに分かれ、まず、第1セッションでは前三重県知事で現在、早稲田大学大学院教授の北川正恭氏(言論NPOアドバイザリーボードメンバー)が「日本における民の可能性とNPOの役割」について講演、続く第2部のセッションでは、北川氏を交えて、上山信一慶應義塾大学教授、田中弥生東京大学工学部助教授、宮本巌キューラ・メディックス会長、そして工藤泰志言論NPO代表の5人でパネルディスカッションというスタイルをとりました。

まず、北川氏が、自らの国会議員としての政治家経験、その後の三重県知事時代の経験を踏まえ、時代が大きく変わってきたこと、端的には政治や行政が、法律や財政資金、権限をつかって行う供給先行型(サプライサイド)の社会システム、成長パターンに限界が見えてきており、むしろいまは民が主導で動く時代になってきたこと、その担い手の1つがNPOであり、NPOが民の自立型、参加型の社会システムにしていくことが必要だ、と強調しました。

とくに、北川氏は、「行政の現場では問題先送り体質と、常に上におうかがいをたてて自らが責任をとろうとしない状況が根強い。自治体の末端の市長は県知事に、さらに知事は総務省や財務省に指示を仰ぐ。そうやって問題が先送りされ、あげくは実現するまでに約3年かかったケースがある。NPOがこういった状況を打破する役割をになう時期に来ている」と指摘しました。

この問題提起を引き継ぐ形で、第2セッションのパネルディスカッションが行われました。

まず田中氏が、1998年12月にNPO法ができてから、1万3000ものNPO法人が誕生したものの、これは一種のNPOバブル現象に近いものであること、しかもNPOなら何でも許されるとばかり存在が問われるようなものまで出現していることを明らかにしました。

上山氏は、米国でのNPO事例を引き合いに、NPOが"NON PROFIT ORGANIZATION"(非営利活動組織)ではなく、同じNPOを、"NEW PUBLIC ORGANIZATION"(ニュー・パブリック・オーガニゼーション)といったイメージでとらえて活動することが必要と指摘しました。

上山氏によると、米国では官が上からつくるようなNPOではなく、クラブ組織的なものから始まってパブリックな経営のもの、さらにはそれが高じてNPOが大学などを経営するまでになり、社会の変革の担い手になっている、という話です。

その問題に関連して、病院の院内感染の問題に取り組んでおられる宮本氏は、自らのパブリックな性格の強い事業に関して、株式会社組織でいくか、NPOでいくか悩んだこと、しかし採算性のある経営体、そして透明性や説明責任が伴う経営にするためには、株式会社組織でいく方がいいと判断したことをあげ、NPOには限界があるのではないか、という問題指摘をしました。

上山氏は、スワン株式会社のように社会貢献型の株式会社で、知的障害者の人たちを中心に月給制を導入してパンの製造販売をイキイキやっている例をあげ、NPOにも新しい枠組みをつくれる余地が多いことを指摘しました。

このあと、NPOが民の主役になっていくには、評価システムなどをしっかりつくり、外部の評価に耐える組織にすることが課題であるという点に議論が及びました。

北川氏は議論を締めくくる形で、三重県知事時代に、民間のNPOからいろいろ知恵やアイディア、意見を得て参考になったことを明らかにし、官がやるよりも民が効率的にやれることが多いこと、NPOがむしろ行政や官にチャレンジしていくこと、そのためにもNPOが競争力のあるNPOになり社会のシステム破壊者になることが重要だと強調しました。

このあと、会場の参加者から意見表明や質問が相次ぎ、議論に花をそえました。

参加者には、今回のシンポジウムをどう受け止めるかアンケートの形で意見を求めましたところ、「NPOの現状や課題、さらに民としての課題が何か理解できた」「NPOだけでなく企業も財団法人や公益法人など民が、行政に安易に依存せず、むしろ行政から自立することの必要性がよくわかった」といった声がありました。