北東アジアの変化と民間外交の役割-第2回日韓未来対話報告

2014年7月19日

言論NPO代表の工藤です。いま「第2回日韓未来対話」が終わりました。あっという間に終わったという感じです。今回の対話で、去年始まった対話がようやくスタートラインに立ったという感じがします。多くの日本と韓国の人たちが、いまの日韓問題を解決するためにみんなで話し合いました。しかも、その話を200人くらいの市民が周りで聞いている、そして、市民の質問にも答える。私たちが目指した日韓の間でのオープンな対話、それがようやく一つの大きな軌道に乗り始めた手ごたえを感じました。


市民レベルの歩みがようやく始まった今回の対話

今回の対話で私は、日韓の大きな転機となる新しい変化をどうしても作りたかった。対話の前に行った世論調査では、これまでと違う傾向が出ていました。国民間の感情は依然厳しいものがあるが、お互いを冷静に見て、この状況を解決すべき、という声も出ています。私には、多くの国民が政府間の対立を相対化して距離を置いて見ているように思いました。

その中で私は、今の状況を変えようとする、責任ある声をこの対話で発したかった。その点で、今回の対話は昨年とは異なっていました。多くの人が私と同じように感じたと思いますが、感情的な対立はなく、明らかに未来を意識して、この状況を冷静に見直そうとする声が目立ちました。私は司会をしましたが、最後にはほとんどの人が発言を求め、自分の思いを伝え、具体的な提案を競い合っていました。韓国側からは、こんな発言もありました。最近、韓国のメディア報道を契機に、すでに予定されていたロッテホテルでの自衛隊の式典が開けなくなることがあった。国民の人気を得るために、ナショナリスティックな風潮をメディアが利用している。今回の対話でそう批判したのは韓国のメディアでした。また、韓国の経済人から韓国の政治家に、あなたたちは政治家として日韓問題の解決に向けて何の成果を挙げたのか、といった厳しい質問も出ました。これまでの日韓問題は、相手を責めるだけの議論が多かったが、自分を見つめる傾向が出ている。この変化を私たちはしっかりと理解する必要があります。

私は、問われているのは国内の民主主義の問題ではないか、と指摘しました。私たちは先に発表した共同の世論調査と同時に、有識者のアンケートも行いましたが、有識者の見方は、一般の世論と比べてさらに冷静で、激しい声のクッションになるものです。しかし、現在の日韓の問題について、改善に向けて発言する有識者は両国に何人いるのでしょうか。今、北東アジアで聞こえるのはワンボイスです。本来、民主主義の国では多様な声が尊重されるはずです、そうした声がなかなか聞こえてきません。こうした雰囲気は自ら変えなければなりません。
今回の対話では、明らかに本音レベルの勇気ある発言がありました。お互いの対立を何とかして解決する方向はないだろうか。私たちは、当事者として今の日韓問題に向かい合あいました。私たちが公開で対話を行ったのは、こうした声を社会に伝えるためなのです。


北東アジアで平和で安定的な秩序作りに向かう取り組み

私が今回の対話でもう一つ気になったのは、最近の日韓の対立により、両国は多くの利益を失っているという声が多くの参加者から出たということです。中国の台頭と、アメリカの相対的なパワーの低下から、北東アジアでパワーシフトが起こっています。北東アジアは新しい環境変化に直面しているのです。にもかかわらず、日韓は2カ国間問題に目を奪われ、この変化に全く対応ができていません。アジアが大きく変化する中で、日韓がお互いに協力し合っていく。似通っている環境で、共通利益が多いにもかかわらず、その利益を失っている。こんな内向きな対立を続けているだけで良いのだろうかという声です。大きな機会コストが存在するという声であり、経済学でいう機会費用という概念です。

そのような状況の変化が反映される形で、韓国も中国と関係を深めています。実は日本も韓国と共通の立ち位置に立っているのです。ということはお互いの協力には大きな共通利益が存在する、ということです。

私たちはこの変化やアジアの未来に目を向けることが必要です。そのためにも、対立は乗り越えなければならないのです。私たちが考える北東アジアでの民間外交というのは、北東アジアのパワーシフトの中で、新しく平和で安定的な秩序作りに向かう取り組みなのだなと改めて感じました。


「言論外交」が大きな役割を果たせることを実感

対話では、なぜお互いが重要なのか、そして何をすればいいのか、様々な議論がありました。議論が出たというよりも、皆さん競うようにして発言を求めました。お互いを批判するような発言は殆どなかった。それをこの民間の場で実現できた。そういう光景を見て、この対話は次のステージに上がるのではないかと私は思いました。

私は日本に帰ると北京との対話の準備に入ります。日中関係も依然として厳しい状況が続いています。北東アジアの大きな変化の中で、日本がどういうビジョンを持ち実現していくのか、その役割をどう果たしていくのか、そういうことが問われる段階に来ているわけです。残念ながら、日本国内ではそうした議論もまだ本格的に動いている段階ではありません。政府間では、近隣国同士で対話自体ができずにいるからです。だからこそ、私たちは民間の舞台として、政府外交の半歩、一歩先をいくような新しい議論を始めなければならないのです。しかもそういう議論はオープンで国民がお互いに考えるという形を作っていかなければならない。そうすることによって健全なアジアの未来に向けた世論が出来るのだと思います。そうした世論を促す外交、そういったものを私たちは「言論外交」と呼んでいますが、こういった民間の外交というものが一つの大きな役割を果たせる局面に来たのだなということを改めて実感しました。ということで、ソウルから第二回目の「日韓未来対話」について工藤が報告しました。