【座談会】政治システム改革に時間はない

2002年5月15日

sone_y020425.jpg曽根泰教 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
そね・やすのり

1948年生まれ。慶應義塾大学大学院法学部政治学科博士課程修了。98年から99年ハーバード大学国際問題研究所客員研究員を経て現職。著書に『決定の政治経済学』)、『この政治空白の時代』共著等。

genba_k020425.jpg玄葉光一郎 (衆議院議員)
げんば・こういちろう

1964年生まれ。87年上智大学法学部法律学科卒業。福島県議会議員を経て、93年初当選。新党さきがけを経て、民主党入党。政策調査会副会長、国会対策副委員長などを経て、現在衆議院総務委員会委員等を務める。地方分権、外交関係を専門分野にしている。

hayashi_y030416.jpg林芳正 (参議院議員)
はやし・よしまさ

1961年生まれ。84年東京大学法学部卒。三井物産を経て、94年ハーバード大学大学院修。95年参議院議員に初当選。91年に米国留学中、マンスフィールド法案を手がけた。現在、自由民主党行政改革推進本部事務局長。

概要

与野党の若手国会議員と慶大・曽根教授が政治家と秘書、議員と政党のあり方について政策立案という観点から話し合った。議院内閣制である日本の場合には、議員立法を前提とするアメリカのように個別議員に多くの政策スタッフをつけるのではなく、官僚を使いながら政党として政策立案を進めざるを得ない。実質的に官僚が握っている立法権を国会議員が取り戻し、政治主導を実現するためにはどういった課題をクリアすべきなのか。

要約

昨今、政治スキャンダルがいろいろと報じられているが、鈴木宗男氏の問題と辻元清美氏以降の問題は根本的に異なる。それは、「鈴木宗男問題は政治システムの本質とかかわるものであるのに対して、辻元さん以降の問題はかなり矮小化された議論になっている」(玄葉氏)からだ。宗男問題は政と官、立法と行政のあり方について根本的に見直す1つのきっかけとして議論される面があったが、それ以降は、政治資金規正法や詐欺などの法律違反の問題であるからだ。

政治家の従うべき倫理は、個人倫理とは切り離して考えるべきであり、権力を扱う、法律をつくる、国の方針を決めるという本来的な機能から導き出して制度化する必要がある。それはそれとして議論すべきだが、政治家としての政策立案機能の問題とは、はっきりと区別して議論する必要がある。

政策立案や立法が国会議員としての本来の仕事であるはずなのに、日本はその仕事を官僚が握り、逆に行政官が中立的立場で行うべき予算、法律の執行部分に政治家が口を挟んでいる。「執行段階で個別の案件に口を挟む人をロビイストというが、国会議員がロビイストになっているところが一番の問題」(林氏)なのである。今こそ政治家は立法と政策立案の権限を取り戻すべきである。

「能力のある政治家が内閣に入り込んで、霞が関の官僚を使って内閣提出法案をつくる。そのためには、与野党を問わず、政治家はいつも政策を考えなくてはならない」(曽根氏)。そして、「大臣、副大臣、政務官として議員が政府に入り、さらに民間人を政治任命者として連れていって、そこで政策を立案する」(玄葉氏)。もちろん官僚とも調整するけれども、基本的に官僚は運用や執行に専念してもらう。

さらには、政権を取った場合にどういった政策を行うかをマニフェスト(声明、宣言)として、できるだけ具体的に書き込んで準備をしておく必要がある。それがないために、小泉政権は改革の具体化の段階で足踏みする状況が続いているのである。


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 与野党の若手国会議員と慶大・曽根教授が政治家と秘書、議員と政党のあり方について政策立案という観点から話し合った。議院内閣制である日本の場合には、議員立法を前提とするアメリカのように個別議員に多くの政策スタッフをつけるのではなく、官僚を使いながら政党として