【プレスリリース】言論NPO は東アジア研究院(EAI)と 「第2回日韓共同世論調査」の結果を公表しました

2014年7月10日

⇒ 第2回日韓共同世論調査 日韓世論比較分析結果 はこちら


 日本の非営利シンクタンクである言論NPO(代表:工藤泰志)は、韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)(院長:李淑鍾(イ・スクジョン))と合同で日韓の両国民を対象とした「日韓共同世論調査」を2014年5月から6月にかけて実施し、本日その調査結果をソウルで発表しました。今回の調査は、昨年5月に行った第1回目に続き2回目となるもので、両国民の相手国に対する理解や認識の状況やその変化を継続的に把握することで、両国民の間に存在する様々な認識ギャップの解消や相互理解の促進に貢献することを目的としています。

 今回の調査では、昨年の結果と比べ、日本人の韓国に対する印象は悪化し、韓国人の日本に対する印象はやや改善するものの、7割がマイナスの印象となりました。両国民の7割が現在の日韓関係が「悪い」と認識しており、依然として、日韓の相手国や日韓関係に対する国民意識は厳しい状況にあります。しかし、その一方で、日本人の6割、韓国人の約7割が、悪化する国民感情の現状を「望ましくない」あるいは「問題であり改善する必要がある」と認識していることも明らかになりました。

 言論NPO代表の工藤は、「政府間の対立が継続する中で、今後の日韓の政府間関係に多くの国民が改善を期待できないでいる。こうした状況下で、両国の市民レベルでは現状を改善すべきという認識が強まっていることが明らかになった。日韓の国民の感情対立の背景には、お互いの交流不足や、自国のメディア報道の問題もあり、民間側の自発的な交流や対話が不可欠になっている」と述べています。

 この世論調査の結果を踏まえ、言論NPOは、EAIと共同で「第2回日韓未来対話」(※)を7月18 日にソウルで開催し、両国の有識者がこうした国民間の現状認識に向き合い、日韓関係の困難をどのように乗り越えるかについて、公開議論を行います。


第2回 日韓共同世論調査結果

相手国に対する印象について

日本人の韓国に対する印象は悪化、韓国人の日本に対する印象はやや改善するも、7割がマイナスの印象

 韓国に対する印象を「良い」「どちらかといえば良い」と回答する日本人は20.5%と2割にとどまる一方で、「良くない」「どちらかといえば良くない」との回答は54.4%と半数を超え、昨年の37.3%よりさらに17.1ポイント悪化した。一方、日本に対する印象を「良い」「どちらかといえば良い」と回答した韓国人は昨年よりも増加したが、17.5%と2割に届かなかった。「良くない」「どちらかいえばよくない」との回答は70.9%と昨年に比べ5.7ポイント改善したものの、依然として7割が日本に対してマイナスの印象を持っている。


マイナス印象の理由は、韓国は「歴史問題」と「領土問題」、日本は「韓国側の日本に対する批判」

 韓国人が日本にマイナスの印象を持つ理由は「歴史認識問題」、「領土問題」がそれぞれ7割を超え、他の理由を圧倒している。「日本の政治指導者の言動に好感を持てない」も2割を超えている。これに対して日本人は、「歴史問題などで日本を批判するから」との回答が73.9%で昨年の55.8%から大幅に増加した。一方で、プラスの印象を持つ理由として、日本人は「韓国のドラマや音楽などへの関心」を挙げる人が59.0%と最も多く、韓国では「日本人は親切で、真面目だから」と「生活レベルの高い先進国」が半数を超えている。


日本人の6割、韓国人の約7割が悪化する国民感情を「望ましくない」「改善すべき」と認識

 日本人の29.8%と3割近くが、こうした両国民間の国民感情の状況を「望ましくない状況で心配している」と考えており、さらに「問題であり、改善する必要がある」という回答も31.4%と3割を超えている。これに対して韓国人は、「望ましくない状況で心配している」は23.3%と2割程度だが、「問題であり、改善する必要がある」と考える人は46.4%と半数近くに及び、合計すると69.7%と7割がこの現状を問題視している。この状況を「当然」だと考える人は、日本と韓国でそれぞれ2割程度である。


政府間外交と軍事・安全保障について

現状の日韓関係を「悪い」と考える日本人は昨年より18.7ポイント、韓国人は10.4ポイント増加。今後の日韓関係も現在の厳しい状況のまま「変わらない」と見る人も韓国人で4割近く、日本人で3割を超えている

 現在の日韓関係を「良い」と見る日本人はわずかに5.0%、韓国人で「2.3%」しかない。逆に「悪い」は日本人で73.8%、韓国人で77.8%と昨年よりもそれぞれ18.7ポイント、10.4ポイント増加した。今後の日韓関係に関しては現状の厳しいまま「変わらない」と見る韓国人は38.1%、日本人で32.9%だが、韓国では39.4%、日本人の22.7%が今後もさらに「悪くなっていく」と見ている。


日韓間の政府間外交、日本人では5割以上、韓国人では4割が「機能していない」

 日本と韓国の間で現在、政府間外交が機能しているのか、その評価を尋ねたところ、日本では「有効に機能していない」(「どちらかといえば」を含む)との評価が54.8%と5割を超え、韓国でも「有効に機能していない」(「どちらかといえば」を含む)が38.7%で最多となった。


日韓両国において最大の軍事的脅威は「北朝鮮」、韓国では「日本」が2番目に脅威と感じる国

 日本、韓国ともに最も大きな軍事的な脅威とみなしているのは「北朝鮮」であり、日本人では72.5%(昨年は78.9%)、韓国人では83.4%(同86.7%)である。日本人の場合は、この「北朝鮮」に次いで「中国」を挙げる回答が多く、71.4%(同60.1%)と昨年から増加し、首位の北朝鮮と並んでいる。韓国では、「日本」が46.3%で韓国人が2番目に脅威と感じる国に浮上しており、昨年の調査で2位だった「中国」の39.6%を今年は上回った。ただ、今年の調査では、韓国側は脅威を感じる国を2つに絞って挙げており(日本ではいくつでも選べる)、単純な比較はできない。


韓国では、日韓間の軍事紛争を予想する人が4割を超える

 日韓間の軍事紛争の可能性について、日本では「起こらないと思う」との回答が57.0%と6割近くを占めた。日韓間の軍事紛争を懸念する日本人は、「数年以内に起こると思う」(0.4%)と「将来的には起こると思う」(8.8%)の2つの選択肢を合計しても、1割に満たない。一方、韓国では「起こらないと思う」(47.9%)との回答が最多である点は日本と同様であるが、「数年以内に起こると思う」(6.7%)と「将来的には起こると思う」(34.1%)と、日韓間の軍事紛争を予想する人が4割を超えている。


韓国人は、「日本」よりも「中国」に親近感

 相手国と中国に対する親近感について、日本人の場合、「韓国により親近感を感じる」と回答する人が37.2%と最も多いが、昨年の45.5%から減少した。日本人で次に多いのは、「どちらにも親近感を感じない」の31.8%。これに対し、韓国人は「日本により親近感を感じる」との回答は12.3%(同13.5%)しかなく、「中国により親近感を感じる」人は38.8%(同36.2%)と最も多くなり、4割に迫っている。


相互理解について

韓国人の半数は、現在の日本が「軍国主義」、日本人の4割は現在の韓国を「民族主義」と見ている

 現在の相手国の社会や政治のあり方に対して、韓国人の53.1%が現在の日本を「軍国主義」と見ており、「国家主義」が35.7%で続いている。日本が標榜する「平和主義」や「国際協調主義」はそれぞれ1割にも満たない。これに対して日本人は現在の韓国を「民族主義」とする見方が44.8%と最も多く、「国家主義」が32.4%で続いている。お互いを民主主義の国だとする見方はそれぞれ2割に過ぎない。

日韓両国民の6割以上が、両国の国民感情の背景にメディア報道の影響がかなり大きいと感じている

 両国の国民感情の背景に、日本世論の62.1%、韓国世論の63.6%が「メディア報道の影響がかなり大きい」と回答している。「メディア報道の影響はない」との回答は日本では2.8%、韓国でも4.9%にすぎない。

両国民ともに相手国への渡航経験は2割程度、両国民の8割以上が相手国民に知り合いはいない

 日本人のうち、韓国への訪問経験が「ある」と回答した人は22.5%(昨年は21.4%)、韓国人も24.8%(同23.8%)にとどまり、両国ともに2割にすぎなかった。また、両国民の8割以上が「相手国の国民に知り合いはいない(いたことはない)」と回答しており、両国民ともに相手国との直接交流の度合いが極めて乏しい。


2014年実施「第2回日韓共同世論調査」概要

 日本側の世論調査は、日本全国の18歳以上の男女(高校生を除く)を対象に5月31日から6月22日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の最終学歴は小中学校卒が12.4%、高校卒が48.4%、短大・高専卒が19.3%、大学卒が17.3%、大学院卒が1.2%だった。これに対して韓国側の世論調査は、韓国全国の19歳以上の男女を対象に6月10日から6月25日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1004であり、回答者の最終学歴は小学校以下が8.9%、中学校卒が7.3%、高校卒が34.4%、大学在学・中退(専門大学を含む)が15.2%、大学卒が31.8%、大学院卒が2.5%だった。

 なお、この世論調査と別に、言論NPO及び東アジア研究院は日韓の有識者へのアンケート調査を6月上旬から下旬にかけて両国国内で実施した。日本側は、過去に言論NPOが行った議論活動や調査に参加していただいた国内の有識者など約6000人に世論調査と同じ質問状を送付し、うち633人から回答をいただいた。韓国側は、約5000人の有識者に世論調査から抜粋した全25問のアンケートをメールで送付し、うち424人から回答を得た。これらの回答者は日本及び韓国社会の平均的なインテリ層の姿を表していると考えられ、日韓の世論の調査結果を比較することで、一般的な日本人・韓国人の認識に補完しようと考えた。


【日韓未来対話について】

 「日韓未来対話」は、言論NPOと東アジア研究院(EAI)が日韓に民間対話の力が必要と考え、日韓の対話に取り組むために、2013年5月に共同で創設したものです。日韓には、国民間に強い相互不信があり、基礎的な相互理解も不足しており、それが、日韓関係をさらに悪化させています。この状況を対話の力で乗り越えようと考え、世論調査で国民の認識の動向を絶えず把握しながら可能な限りオープンに議論するという、新しい対話を日韓の間で立ち上げ、両国の未来に向けた議論を始めました。

 言論NPOとEAIはともに、米国の外交問題評議会(CFR)が主宰する国際シンクタンク会議「カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)」の常設メンバーです。2012年3月のCoC創設にあたり、アジアから、日本の代表として言論NPOが、韓国の代表にはEAIが選ばれました。このCoCでのネットワークをきっかけに、言論NPOはEAIと協議を開始し、不安定な東アジアの地域秩序の安定化に向けて、対話の力で日韓の課題に取り組むことを決め、「日韓未来対話」という新しい民間対話の舞台が実現することになりました。


【言論NPOについて】

 言論NPOは「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。言論NPOは、議論の力で「強い民主主義」と「強い市民社会」をつくり出すことをめざし、有権者が政治や政策を判断し、民主主義を機能させるために質の高い議論づくりや政策評価に取り組んでいます。

 また、健全な世論形成をめざす民間外交として、私たちが行う議論はアジアにも広がっています。具体的には、中国との間で2005年より9年間に渡り、世論と連動したハイレベルの民間対話を実現してきました。また、2013年5月には韓国との間にも民間対話の場を創設しました。2013年12月には、「新しい民間外交イニシアティブ」を創設し、東アジアにおいて課題解決に向かうための世論形成の取り組みを強化しています。他方で、2012年3月には米国外交問題評議会(CFR)が設立した国際シンクタンク会議カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)の常設メンバーに選出され、世界の有力なシンクタンクと連携を強化するとともに、世界の課題に対して提言を行っています。

 調査結果の詳細については、こちらをご覧ください。


【東アジア研究院(EAI)について】

 地域が抱える問題について政策提言を行うことを目的に、独立シンクタンクとして創設しました。研究者セミナー、フォーラム、教育プログラム、そして多様な出版物を通じて影響力のある成果を生み出しています。東アジア研究院の調査活動は、外交安全保障プログラム、ガバナンス研究プログラムの二本柱から成り、これらのプログラムが5つの研究センターよって行われています。また、研究タスクフォースを用いて、喫緊した重要な問題にも取り組んでいます。卓越した研究者と政策立案者が協働し、東アジア研究院は革新的で政策論議を反映した研究成果を想像する中心に立っています。韓国で卓越した研究所の一つとして、米国、中国、台湾、その他多くの国々との共同研究を通じ、北東アジアにおける知識ネットワークを創造しています。


本件に関するお問い合わせ:

言論NPO編集局プレス・オフィサー 吉崎洋夫
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