主要7政党のマニフェストは課題解決のプランとして点数がつけられず ~2019年参議院選挙 マニフェスト評価結果公表~

2019年7月19日

 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は、参議院選挙2日前の7月19日、主要7政党の公約が、日本が直面する課題の解決策として妥当なものかを採点した「マニフェスト評価」の結果を、言論NPOホームページにて発表しました。

 その結果、自民党・公明党ですら10点台にとどまり、野党では最大5点とれる程度であったため、マニフェストとしての体をなしてない公約と言わざるを得ず、今回は公約の点数化を見送りました。

 こうした各党のマニフェスト評価は、言論NPOが2004年より一貫して、選挙の際に独立・中立の立場で実施し、有権者に判断材料を提供するために公表しているもので、今回で12回目となりますが、公約の点数化を見送ったのは初めてのこととなります。

 報道関係者の皆様には、こうした取り組みをぜひご取材・ご報道いただきたく、お願い申し上げます。なお、分野別の評価結果・世論調査結果の詳細については、言論NPOホームページをご参照ください。また、代表・工藤への個別取材も随時お受けしております。


参院選の各党の公約は、日本の課題解決のプランとしては体をなしていない結果に

 言論NPOの公約評価は、形式要件と実質要件の2つの評価基準で実施しています。

 今回、主要7政党の政策は1073項目ありましたが、その多くは目標設定や、達成時期、財源など形式要件すら満たしていない公約がほとんどであり、さらに、日本が直面している少子高齢化や、人口減少の問題に真正面から向かい合い、解決に向けた政策を打ち出そうとする政党は存在しませんでした。

 今回の参議院選挙で政党に説明を求めたかったのは、今、日本が直面している課題を各党がどのように認識し、その解決に向けてどのように取り組もうとしているのかです。しかし、与野党とも公約を課題解決のプランとして国民との約束であるという意識や意欲はなく、多くの公約は選挙目当ての政党の願望やスローガンでした。こうした公約を許していいのか、ということを私たちはむしろ問うべきだと考えます。


公約として形式的な要件すら満たしていない各党の公約

 「形式要件」の評価基準は、政策に理念や目的、達成時期や財源が示されているか、工程や政策手段を明らかにしているか等で評価を行います。7党の1073項目を点検したところ、理念や目的が書かれているのは与党である自民党、公明党で多く見られるものの2割程度にとどまり、野党は1割にとどまっています。さらに、財源については1073項目のうち4つの政策しか言及されておらず、形式要件すら満たしていない公約が大半を占める結果となりました。

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実質要件では、課題を抽出し、
 その課題を実現するための設計や手段を具体的に示した公約は存在しなかった

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 2025年以降、団塊の世代が後期高齢者になり、これからさらに社会保障経費の支払いは急増していきます。そうした負担を誰がどのような形で背負うのか。目前に迫った少子高齢化という問題に対して、具体的な提案をした政党は1つもありませんでした。

 また、政党の公約は給付の増加などの再配分では足並みを揃えているものの、その原資となる安定的な経済成長をどのように実現するのかを打ち出す公約もほとんどありません。また、エネルギーや環境、農業でも、政策目標をどのように設定して、それを実現するのか、その設計が描かれていません。さらに、どのような政策手段を用いようとしているのか、その実現のために、体制やガバナンスをどうつくっていくのか、そうした点について触れている公約もありません。多くの公約は選挙目当ての政党の願望やスローガンであり、これを有権者が公約として受け取ることは難しいのが現状です。


日本の政治・民主主義に関する世論調査結果も公表しています

 言論NPOは参議院選挙を前に、日本の政治や民主主義に関する世論調査結果を公表しました。

 今回の世論調査では、代表制民主主義を構成する日本の政党や国会などを、信頼している人は2割程度に過ぎず、政治が国民から信頼を失い始めていることが浮き彫りになっています。これに対し圧倒的に信頼を集めているのは皇室や自衛隊、警察などとなっています。

 また日本の将来を悲観視している人は半数近くで、政党に日本が直面する課題の解決は期待できないと考えている人は、55.2%と半数を超えています。

 こうした政治不信の傾向は20代、30代の若い現役世代に特に目立っており、7月21日に投開票を迎える参議院選挙にも影響を与えそうです。

 詳細な世論調査結果につきましては、言論NPOのホームページで公開していますので、併せてご覧ください。


【言論NPOとは】

 言論NPOは、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2004年から、政党のマニフェスト評価や政権の政策評価を定期的に行い、試練に直面する民主主義についてアジアや世界のシンクタンクと連携して議論を行っています。2005年には日中間のハイレベルな民間対話「東京-北京フォーラム」を立ち上げ、その後、一度も中断せずに14年間継続し、今では日中を代表する民間外交の舞台になっています。2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から唯一選出され、それ以来、世界を舞台に活動を展開しています。2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、世界のルールベースの自由秩序や多国間主義や民主主義を守り発展させるための事業に取り組んでいます。



【参考資料】

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※具体的な評価基準については、こちらの評価基準を参照ください

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