言論NPOは5月12日、東京都内の言論NPO事務所内で、「東京会議」の評議会を開催しました。この評議会は、「東京会議」の戦略的な方向性や、世界的な課題にきちんと見合うための論点等を当会議の実行委員長に提言するために組織されています。今回の会議には、当会議最高顧問の岸田文雄・前内閣総理大臣と、評議員12名(オンライン出席、代理出席を含む)が参加。3月開催の「東京会議2025」の総括や、「東京会議2026」に向けた課題整理などが行われ、来年の会議に向けたスタートが切られました。司会進行は武藤敏郎・株式会社大和総研名誉理事が務めました。
その冒頭、岸田最高顧問が挨拶を行いました。その中で岸田最高顧問はまず、「ロシアによるウクライナ侵略やトランプ関税などを受けて、国際社会の秩序が大きく変わろうとしている」との認識を示した上で、「そうした状況の中で今年3月、米国においてはトランプ大統領の初の施政方針演説が行われ、中国においては全人代が開催されるという絶妙なタイミングで、『東京会議2025』は開催された」と振り返り、今回の会議がきわめて時宜を得たものであったとの認識を示しました。
岸田最高顧問はその上で、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序や多国間主義、多角的自由貿易体制の維持など、こうした大きな理念、方向性を日本から世界に向けて発信した『東京会議』は、重要な世界会議として国内外で高く評価されている」としつつ、国際的な高評価を受けていることに関しては、「いかに多くの国々が同じ危機感を抱いていたということの表れではないか」との見方を示しました。
また、「島国で資源のない我が国においては、法の支配や自由貿易、多国間主義といった理念なくして、国際社会で生きていくことはできない」として、日本にとってもこの「東京会議」の取り組みはきわめて重要であることを強調。その上で、「大切なのは、こうした課題に対して、日本の外交、あるいは国際社会がどう向き合っていくか、ということであり、それを後押しするために『東京会議』や言論NPOは今後どのような発信をし続けていくのか。これが大きな課題だ」と挨拶を締めくくりました。
続いてマイクを握った言論NPO代表の工藤泰志は、「トランプ大統領の『力による』自国第一主義の行動が広がる中で、多国間主義を守り抜くという姿勢を明確に打ち出し、主要10カ国シンクタンクと合意し、議長声明として世界に強いメッセージを提起した」「その絶妙な開催のタイミングも相まって、多国間主義の擁護に強い決意を示す日本の姿勢と『東京会議』の存在は、内外で大きな注目を集めた。ミュンヘン安全保障会議やライシナ対話と比較しても、多国間協力に向けた国際的結束を強く打ち出したこの会議は、国際会議としての存在感を称賛する声が相次いだ」などと総括。
また、最終日の会合で「政府や特定の利害関係から独立して「行動(DO)」する集団(TANK)を目指す。そして、世界のシンクタンクと新たな協力関係を構築したい」旨を表明したところ、各国の出席者から大きな賛同を得たとしつつ、この具体化に向けた協力を各評議員に求めました。
その後行われた意見交換では、各評議員から「東京会議2025」を成功と評する総括が相次ぎました。「東京会議2026」に向けた課題整理としては、「混迷する世界で、どのように国際秩序と民主主義を守るのか。この点を追求する姿勢を今後も貫くべき」ということを確認しつつ、「アジアの視点をどう具体化するか」「政府の外交や他の世界的会議との連携」「各国の主要シンクタンクとの連携」といった検討課題が各評議員から提示されました。
その後も、現下の世界情勢をめぐって活発な意見交換が行われるなど、今回の総括会議は盛会のうちに終了しました。
言論NPOは5月15日には、「東京会議」の第二弾イベントとして、世界各国の元首脳やノーベル平和賞受賞者のチームである「エルダーズ(The Elders)」との共催でフォーラムを開催します。本フォーラムでは岸田文雄最高顧問と工藤が挨拶を行う予定となっています。議論の模様につきましては、言論NPOウェブサイトやSNSでお知らせいたしますので、是非ご覧ください。