東京会議2018 パネリストインタビュー

2018年3月13日

今後は日本国内だけでなく、世界のメディアも招くことが重要に

t.jpg【フランス】
トマ・ゴマール氏(フランス国際関係研究所(IFRI) ディレクター)

 今年の会議は非常に良かったです。去年も既に良かったのですが、さらに改善が見られたと思います。議論の質がかなり良くなったと思います。この会議は初回から参加していますが、東京会議の重要性はより高まると自負しています。

 次回以降の東京会議に期待することは、果たして国際情勢がどうなるのかによるところが大きいと思います。こういう会議によってフレンドシップが醸成される、そしてメンバーの間で意見交換ができるという意味では重要です。ただ、日本国内のメディアに報道してもらうだけでなく、世界のメディアも招くということは、最近の時代では重要だと思います。この会議が新しいステップを踏むのであれば、そういうターゲットを狙ってもいいのではないかと思います。


経済と安保で、来年はさらにアップデートされた議論に期待する

051fddf7b02d671c7a99f215f541fe62edeba130.jpg【アメリカ】
ジェームズ・ゴーリアー氏(外交問題評議会(CFR)上級客員研究員)

 来られて本当にうれしかったです。私はワシントンDCの外交問題評議会から来ましたが、世界中の人たちと東京でいろいろと対話でき、生産性の高い議論になりました。実際、今の世界の情勢、特にこの地域の現状について自由に話ができました。そして、未来の国際秩序というテーマは、今議論する最も重要なテーマだと思いますが。G7の国々の意見も、そしてブラジルや中国といった新興国の人たちの意見も聞けるという、素晴らしい会議だったと思います。

 今後の東京会議に関しては、果たして経済、そして安全保障でどのように事が進んでいくかによると思います。ただ、アメリカも含むグローバル全体でWTOに対してコミットしていますし、北朝鮮に関しては、おそらく来年の今ごろにはもっといろいろなことが見えてきて、より良い対話ができると思います。だから、来年、経済と安全保障の議論がフォローアップされることに期待しています。


北朝鮮を巡り、各国の足並みをどうそろえていくかが課題

j.jpg【イギリス】
ジョン・ニルソン・ライト氏(王立国際問題研究所(チャタムハウス)シニア・リサーチ・フェロー)

 今回、すごく良い機会で、今、差し迫ったいろいろなことを議論できたと思います。これは国際秩序に対する脅威もそうですし、国内政治もそうですし、国際政治についても話ができたと思います。ポピュリストの台頭は民主制度を非常に不安定化させていますし、国際秩序に対してもそうであると思います。

 あと、今回の会議に先立ち、トランプ大統領と金正恩委員長が今年5月に対話しようということが決まりました。しかし、このような対話をもって安全保障危機に対応できるかについては、悲観的に見ています。ただ、二人が対話を始めることによって、アメリカと北朝鮮の関係に人間性がもたらされ、今後何週間、何か月も通じて安定化がもたらされるのであれば、良いことだと思います。日本政府にとっては、この地域、特にアメリカと日本との間に緊張感をもたらすのではないかという懸念もきっとあると思います。ただ、韓国、日本、アメリカの連携した対応はこれまでもあったわけですので、来年以降に向けては、このような同盟国の足並みをどうそろえていくか、またヨーロッパなど他の国々の国益とも歩調を合わせていくことが重要だと思います。

 民主主義については、有権者にとってもっと意義のある活動をしなければいけないと思います。トランプ大統領は絶対主義的な動きをしようとしていますが、安倍首相のような方が、民主主義の重要性について、国民をもっと巻き込む形で働きかけてほしいと思います。


回を重ねるごと議論に深みが増している「東京会議」

m.jpg【カナダ】
ロヒントン・メドーラ氏(センター・フォー・インターナショナル・ガバナンス・イノベーション(CIGI) 総裁)

 私はこの会議に最初から参加していますが、毎年、議論がどんどん広く深くなっていると思います。そして議論の中身、また参加してくださっている方々もどんどん面白くなっていると思います。

 自由、民主主義と現代の問題を北朝鮮情勢と結びつける、ないしはこれからのG7の首脳会議、また日本の来年のG20の議長としての役割など結びつけることができると思います。私にとっても、工藤さんや言論NPOが選んでくださったテーマが非常に豊かな経験につながっています。

 これから考えるべきこととして、2つ挙げられると思います。まず一つは、各国は変革をもたらす新しい技術が果たす役割、国の発展、そして国際的な動きにおいて何ができるかをもっと考えるべきだと思います。今年G7、G20では、いずれも労働の未来を取り上げることになっています。これらは、教育や社会的で安全なネットワークに関することであると同時に、AIを含め労働にも大きく変化をもたらすと思います。もう一つは、こういった小さなテーブルについていない一般の人々と話をすることが大事だと思います。できれば参加者、政治家、学生、学者がどのように考えるか、そういった会場の人たちとのやりとりがあればよかったと思います。そうなるとオペレーションや議論は複雑になると思いますが、プラスになるのではないでしょうか。


G7への提案に、各国シンクタンクがさらにコミットする仕組みづくりを

986c6067803a19cc1cf5106b16cc2665bdd2030d.jpg【ドイツ】
ギッタ・ロースター氏(ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)会長特別補佐)

 今年の東京会議は非常に示唆に富んだものだったと思いますし、非常に重要なポイントを得ることができ、大変時宜を得た会議だったと思います。特に、最近の北朝鮮問題を考えるのに大変タイムリーだったと思います。また民主主義そのものや、様々な民主主義の脅威について話すことは重要でした。日本とドイツはかなり似通った経験をもっており、同時に、私たちは擁護すべき価値を共有しています。ですから、10カ国のシンクタンクが一緒になり、このような日本政府の方々の話を伺うことは大変重要だったと思いますし、レベルも非常に高かったと思います。これだけたくさんの重要な方々と今日の政治について話すことができて本当に来て良かったと思います。

 今後の改善について、これまでのように非公開と公開セッションの両方を続けるべきだと思いますが、もう少し東京会議の議論の中身をもっと英語で広めることが重要だと思います。それともう一つ引き続き、G7以外の国から人を招いてはいかがでしょうか。例えば、来年はロシアの高官などを呼んではどうでしょうか。「東京会議」が採用しているG7の首脳に対して声明文を提案するという発想は良かったと思いますが、もう少しドラフティングができれば、一緒になって最初の会議でその中身を共有し、色々と一緒に書くという作業があれば良かったと思います。もう少し時間をかけてほしかったですが、全般的には本当に価値ある機会だったと思います。ここに来て色々な示唆を得られたと思いますし、非常にオープンなディスカッションだったと思います。


直面する課題をさらに掘り下げて議論できる場にしていきたい

o.jpg【シンガポール】
オン・ケンヨン氏(S.ラジャトナム国際研究大学(RSIS)副理事長)

 今回の「東京会議」は非常に良かったと思います。個人的にも色々なことを学ばせていただきました。日本国内の状況、周辺国の状況をよく知ることができました。

 今後に向けてですけれども、私たちはもっとディスカッションするということに合意しています。もっと課題を掘り下げて、日本、朝鮮半島で起きていること、さらにはどのように日米同盟を強化できるのか、安全保障問題、北東アジアにどうすれば平和を構築できるのか、といった点についてディスカッションすることが今後必要です。ですので、全体的には大変参考になる会議だったと思います。私個人にとって、とても良かったと思っています。


「東京会議」をさらに発展させるために、中露の参加も検討すべき

MHI_5340.jpg【イタリア】
エットーレ・グレコ氏(国際問題研究所所長)

 今年の会議は、朝鮮の問題だけではなくて、グローバルな問題についても話す機会になり、私たちに非常に貴重な機会を与えてくれたと思います。特に、今後、民主主義がどうなるか、民主主義が直面している外部からの圧力について議論することができましたし、今後、国際協力をいかに推進していけるかということ、特に、G7でいかに強化できるかを議論したことが、今回の「東京会議」のベースだったと思います。私たちは、自由な民主主義国家としてもっと努力をし、国際機関や体制にもっと力を与え、アジェンダを前に進めていくべきだと思います。とりわけ、貿易自由化の問題、私たちの主権国家のコーディネーション、マクロ経済政策、グローバル化の影響の緩和、特にグローバル化から取り残された人たちのために何ができるのか、という議論が、広範にわたってできたと思いますし、今回の議論は、今後につながっていくと思います。

 今回の「東京会議」は、非常に成功したいと思いますが、まだ改善できる部分はあると思います。我々の間でもいくつかの可能性を話し合っていますが、例えば、場合によっては、もっと多くの市民社会の方々を招くということも議論しましたし、もっとインタラクティブなディスカッションをしてはどうか。公開フォーラムにおいても、双方向にするということ、今後の議論の中には、ロシアのような国、中国の代表に参加してもらうということもあり得ると思います。


専門家同士だけではなく、聴衆からの意見も取り入れた会議に

s.jpg【インド】
サンジョイ・ジョッシ氏(オブザーバー研究財団(ORF) 理事長)

 「東京会議」に今回出席させていただきましたが、本当に驚くような成功であったと思います。いつも自分の国を離れ、そしていつも色々な視点、考えを聞くということは有用だと思います。とりわけ色々な地域の人たちの意見を聞くことは有用だと思います。今回の「東京会議」にも色々な参加者がいらっしゃいました。北朝鮮情勢、民主主義の未来、自由秩序の未来についてお話しすることができました。これらはいずれも世界の人々が注目している関連性が強い問題です。ですから、お互いから今回学んだ量は驚くべきものだと思いますし、色々な視点を聞かせていただきました。私たちはお互いに対する理解を深め、お互いの立場を十分に理解し帰ることができます。こうした理解は極めて重要です。今の世界はまだそうなっていませんが、もっと多極化しなくてはならないという風に思っています。それが私の視点です。

 会議をさらに向上させるためには、今後参加を増やすことが重要でしょう。例えば、色々な国をもっと増やしていったり、そして範囲を広げたりという可能性を探るべきです。そしてもう一つの方法としては、もっとやりとりを増やすということです。直接一般市民と、一方通行ではなく双方向で話をし、もっと質問してもらうということが有用であると思います。専門家同士が話し合うだけでなく、一般の人々の意見を聞きたいと思います。


朝鮮半島の安全保障のため、日米韓での議論を作る必要がある



5ef5f02422375552317236d8e755b4b6eadd9769.jpg【韓国】
文聖默氏(国家戦略研究統一戦略センター長)

 まず招待してくださりありがとうございます。素晴らしい場所で著名な専門家の方々と非常にタイムリーなテーマについて議論できて非常によかったと思います。特に、日本政府は朝鮮問題の核問題を解決するために重要な役割を果たしていますし、言論NPOもそのような役割を果たしていると思います。今回本当におもてなししてくださり感謝しております。

 今回はG7とオブザーバーが参加して幅広いテーマについて話しあったと思います。しかし韓国の立場からすると、北朝鮮問題や朝鮮半島の安全保障のために、日米韓と周辺国はどのように協力していくのか、それについてテーマの幅を狭めて、そしてたくさんの時間をかけて議論した方がよいのではないかと思いました。今回たくさんの方が参加したので、正直一人一人が発言する時間が少なくて、十分な議論をするには少し制限があったのではないかと思います。ですので、今後はもっと専門的なテーマに範囲を絞って踏み込んだ議論ができればよいと思います。


韓国と日本のシンクタンクが議論する舞台をつくるべき

7aa7d99085c38a739b2350d9508d6eeb46b8324b.jpg【韓国】
尹德敏氏(韓国外国語大学校首席教授)

 個人的に光栄と思います。いつも言論NPOの会議は非常に素晴らしい企画、アジェンダでやるということで非常に感銘を受けました。これからのご発展をお祈りいたします。

 私は今回、オブザーバーとして参加しましたが、シンクタンク同士の協力関係は非常に大事だと思います。ただ一つだけ、韓国のシンクタンクも一緒に入れてやった方がいいのではないかと思います。もちろん言論NPOと韓国のシンクタンクのバイのやりとりが必要なのですが、やはり色々価値観を共有している韓国と日本のシンクタンク同士の話し合いがもう少し必要だと思います。


非公開と公開の組み合わせで行う「東京会議」の仕組みは非常に有意義だ

3d810c193568f62354c7c62141fabc49ccf4be63.jpg【中国】
劉鳴氏(上海社会科学院国際関係研究所所長)

 非常に成功した会議だったと思います。まずトピックが非常に時宜を得ているトピックでした。今私たちは、貿易通商、核不拡散、グローバル化など、多くのグローバルな問題に私たちは直面しています。ですから、これらのトピックを取り上げた今回の会議は時宜を得ていてよかったと思います。

 二番目に申し上げたいのは、非常に高官の方々もいらっしゃり、そして防衛大臣自らも参加されて、演説をされました。これは日本政府当局としての見解を表明してくださったという意味で非常に重要だと考えます。さらに、幅広い層からの参加を得ました。世界10カ国のシンクタンクが参加し、さらにオブザーバーがシンクタンクとして中国、韓国から参加し、様々な見解、多様な意見が表明されました。こうした点は、この「東京会議」の非常に特徴的な点だと思います。4点目として申し上げたいのは、この「東京会議」は非公開対話と公開対話という二つのアプローチが存在していることです。公開対話は日本のいわゆる一般の方々が会議の聴講をすることができ、社会的な啓蒙の役割を果たしました。一方で、非公開対話は、非常に詳細な、深掘りをした議論を行うことができました。この会議に対する二つのアプローチというのがとても興味深く価値の大きなものだったと思います。

 今後の課題としては、参加者が取り上げる課題についての共通の知識をもっている必要があると思います。今回様々な国々からシンクタンクのメンバーが集まりましたが、トピックによって、例えば北朝鮮といったトピックに関しては全員が同じような知識をもっていないということも散見されました。こうした点は課題であると思います。ですから、いくつかのトピックスについては、具体的、専門的な知識というものをもっておいた方がより価値の大きくより興味深い、より深掘りした議論につながると思います。

 もう1つは、公開セッションに関して提案したいと思います。次回やはり時間をとって質疑応答を聴衆と行うという提案です。聴衆側から質問してパネリストが回答するという直接の双方向の対話をもつということです。ですからパネリスト間における議論のみではなく、いわゆる一般の方々がこのようなディスカッションに参加することが必要になると思います。


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