座談会「被災地の救済と復興、市民に何ができるのか」

2011年3月20日

座談会「被災地の救済と復興、市民に何ができるのか」

 3月20日(日)、言論NPOにおいて、座談会「被災地の救済と復興、市民に何ができるのか」が行われました。今回は、代表工藤の他、早瀬昇氏(大阪ボランティア協会常務理事)、堀江良彰氏(難民を助ける会常任理事、事務局長)、堀久美子氏(UBS証券コミュニティアフェアーズディレクター)、山岡義典氏(日本NPOセンター代表理事、法政大学教授)、言論NPO理事の田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)が参加しました。


工藤泰志 冒頭で代表工藤は、今回の緊急企画について、「震災発生から1週間が経った。いま何が求められているのか、市民はどんなことで被災地の役に立てるのか。今必要な情報を沢山の人たちと共有するために、皆さんの経験を話してもらいたい」と述べました。

早瀬昇氏 まず、いま緊急に求められていることについて、早瀬氏は、「被災地へのアクセスにコストがかかっている現状では、いま私たちにできることは物資よりも支援金、義援金によるサポートだ」と述べました。

山岡義典氏 また、「先日の対談で義援金は被災者の生活を復興させるための直接的な援助、支援金は被災者をサポートする組織を支援する資金という区分があったが、支援金の場合、どうやって支援すべき団体を見分けるのか」との工藤の問いかけに対し、山岡氏は「世界中から同様の問い合わせがあるが、資金が有効に利用されるためには、募集側が出口、つまり使われ方、支援先を明確に決めておく必要がある」と述べ、日本NPOセンターが開始した東日本震災現地NPO応援基金を紹介しながら、募集側としても透明性のある受け皿を早急につくる必要性を指摘しました。


堀江良彰氏 次に、被災地から見て今、何が必要になっているかということについて、堀江氏は「仙台ではたしかに物資は届き始めているが、スポットごとであり、面でカバーできていない。仙台でこの状況であり、仙台以北の地域などではさらにひどい状況が続いている」と現地の現状を説明しました。

 山岡氏は、「とにかく当面は命を守る段階が暫く続くだろう」と述べた上で、「周辺地域でボランティアセンターなどの拠点が徐々にでき始めたら、全国からのボランティアのコーディネーションが始まっていく。全国の人々を募り、ある程度プロとして動くことができる人をそうした拠点に配置していくことが求められている」としました。また、各地への移住が進められている状況も踏まえ、移住先でのボランティアコーディネートの必要性も訴えました。


 早瀬氏は、現時点ではまだ被災地の受け入れ態勢が万全ではないことに触れ、「被災地に出向くことだけが私たちにできることではない。コーディネーターとしては、資金集めのプログラムに参加するなど、被災地に行かなくても応援したいという多くの人々をどう参加させるかということを考える必要がある」と述べました。


 そして最後に、今後私たち市民に必要になることについて、議論が行われました。早瀬氏は、「災害復興の中心は、あくまでも政府と企業。ボランティアは、そうした主体ができない、一人ひとりの生活に寄り添うような活動をこそ行うべき。その際、単独で何かしようとするよりも、プロの機関と連携しながら、集団で行う方が効果的だ」と述べるとともに、「ボランティアコーディネートの際には、指示待ちの人が増えるのを避けるために登録制は控え、市民が現地で自発的に動けるように仕組みを作るべきだ」とも指摘しました。

 山岡氏は、「今は緊急事態ということで人が集まりやすいが、今回の復興にはかなりの時間がかかる。持続的に関心を持ち、関与していくことが必要だ」と述べました。

堀久美子氏 堀氏は、「企業側からすれば、今はいかにお金を集めて提供するかということが最重要課題。その上で、長期的な観点からさらに効果的に資金を使っていただくために、今回の災害対応だけではなくて、NPO法人自身の基盤強化にも有効に使ってもらい、フィードバックをいただけるような流れを作っていきたい」と述べ、自社の取り組みも踏まえながら今後の方針を説明しました。

田中弥生氏 田中氏は、「平成23年度にはNPO法人に関する大きな税制改正が予定されていたが、それが現在止まってしまっている。いまは喫緊の課題に取り組むべきだが、復興は長期戦になるので、ぜひこの税制改正は国会を通して欲しい」と述べるとともに、「阪神大震災から現在を振り返ると、寄付とボランティアに消極的な風潮がこれまではあった。今回を機に、NPOは積極的に市民とつながって欲しい」と指摘しました。

 最後に工藤は、「今回の震災を受けての動きを見ていると、市民の力はやはりすごいと感じる。ぜひ、NPOには市民と深くつながってほしいし、僕たち市民は政府が動かないのであれば積極的に意見を言っていくべき」と述べ、今こそ前向きに、社会のために自信を持って未来に向かって動こうと呼びかけました。

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