アジアも民主主義のあり方が問われる局面に直面している
~日本、インドネシア、インド、韓国等5カ国のアジアの民主主義に関する世論調査結果を公表~

2017年9月04日

⇒ 民主主義を守るため、「アジア言論人会議」のような国際連携が重要 ~非公開会議報告~
⇒ アジア5カ国 民主主義に関する世論調査結果 記者会見報告
⇒ 不完全なものだからこそ、民主主義を強くするための不断の努力が必要 ~第1セッション報告
⇒ 民主主義を機能させるため、絶え間なく点検を行う仕組みづくりを ~第2セッション報告
⇒ 民主主義を発展させるために、アジア各国が議論する場の重要性が指摘された ~レセプション報告~
⇒ 民主主義は信頼を取り戻せるか ―ハッサン・ウィラユダ元外相(インドネシア)は語る


 言論NPOは、アジアの民主主義に関する世論調査をこのほど日本、インドネシア、インド、マレーシア、韓国5カ国で実施しました。調査結果では、欧米で揺れる民主主義と比べて、アジアのこれらの国では民主主義自体は信頼されているものの、民主主義が自国で機能していないと考える人や、民主主義に対する疑問が増加しています。特に選挙で選ばれる政党や国会、さらにはメディアなどの対する信頼は各国でも低いものとなっており、民主主義の在り方が問われる事態となっています。

 さらに日本では、自国の将来を日本人の半数近くが悲観的に見ており、さらに自国が直面している課題の解決を自国の政党に期待できないと考える人が6割近くとなっています。
日本やアジアの民主主義国家が直面する課題は何か、今回の調査結果から明らかにしていきます。

【各国調査課概要】

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1.自国の将来をどのように見ているか(日本、インドネシア、インド、マレーシア)
将来に悲観的な理由(日本、インドネシア、インド)

 自国の将来に対して、アジアの4カ国の中で、日本では将来に悲観的な人が多い。日本人の48%と半数近くが、自国の将来を悲観的に見ている。これに対して、インドネシアは89.2%、インドでは60.1%、マレーシアでは50.7%と、自国の将来に楽観的な人がそれぞれの国の回答で最も多くなっており、日本とは対照的な傾向を示している。 日本人が将来に悲観的な理由は、「急速に進む高齢化と人口減少に対して、有効な対策が提示されていないから」が91%で、昨年の調査よりも増えた。


日本人は将来に悲観的だが、その他4カ国は自国の将来を楽観的に見ている

 日本人の48%(昨年39.8%)は、「悲観的である(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」と回答し、「楽観的である(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」の31.3%(昨年20.7%)を上回っている。楽観視、悲観視の双方で10ポイント前後の増加が見られるが、「悲観的」な見方の方が多い構図は昨年と同様である。

 これに対して、インドネシア人では、89.2%と9割近い人が「楽観的である」と回答し、「悲観的である」は9.2%と一割程度に過ぎなかった。

 インド人も、「楽観的である」との見方が60.1%と半数近い。ただ、昨年の75.9%からは16ポイントの減少となっている。「悲観的である」も昨年の19.5%から27.1%へと増加しており、自国の将来を不安視する見方が広がっている。

 今年から調査を始めたマレーシアでは、「楽観的である」と考える人が50.7%と半数を超え、「悲観的である」の36.9%を上回っている。

 自国の将来を悲観する理由として、日本人で最も多いのは、「急速に進む高齢化と人口減少に関して、有効な対策が提示されていないから」の91%で今年もこれが突出している。以下、「経済成長が停滞しており、今後の立て直しの道筋が見えないから」(45%、昨年51%)、「安心できる健康保険制度、社会保障制度が整ってないから」(41%、昨年42.7%)の順で続いている。

 この他、日本人では、「中国の台頭、北朝鮮の問題などで安全保障面の課題が多いから」に、日本の将来の不安を抱く人が37.9%と4割近くになっており、昨年の30.4%から7ポイント増加している。

 インド人では、「政治家は選挙とポピュリズムに傾倒し、国内及び国際的な課題に取り組んでないから」が46.7%(昨年27.4%)で最も多く、これに「社会的及び経済的政策が貧困と格差是正に機能していないから」が41.4%(昨年44.3%)で続いている。インド調査では、いくつかの選択肢で昨年からの大幅な増加が見られる。19ポイント増加した「政治家は選挙とポピュリズムに傾倒し、国内及び国際的な課題に取り組んでないから」に加え、「経済は名目上では成長しているが、その成長の果実が広く一般市民に共有されていないから」では、昨年の13.4%から37.9%へと25ポイント増加した。

【自国の将来をどう見ているか】

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【将来に悲観的な理由―日本―】

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2.政権支持率(日本、インドネシア、マレーシア)

 自国の政権支持率について、この調査時点での日本人では安倍政権の「支持」と「不支持」は約4割で拮抗している。これに対してインドネシアのジョコ政権は85.2%と9割近い支持率となっており、マレーシア人のナジブ政権は逆に「不支持」の方が52%と半数を超えている。


自国への政権支持率は、日本は拮抗、インドネシアは支持が9割、マレーシアは不支持が半数を超える

 自国の政権支持率について、日本人では、安倍晋三政権を「支持しない(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」という回答が42.7%で、「支持する(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」という回答の40.2%と拮抗している。
 インドネシア人では、ジョコ・ウィドド政権を支持する人が85.2%と圧倒的である。
 マレーシア人では、ナジブ・ラザク政権を「支持しない」という回答が52%と半数を超え、「支持する」の37.4%を上回っている。

【政権支持率】

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3.政党に課題解決を期待できるか(日本、インドネシア、インド、マレーシア、韓国)

 自国が直面している課題の解決を、自国の政党に期待できるか、に対しては日本では58.7%と6割近くが、政党には「期待できない」と回答しており、アジア各国と比べて政党への不信が著しく高く、「期待できる」は22.5%にすぎない。  韓国では、「期待できる」と「期待できない」が拮抗している。他のアジア各国は自国の政党に課題解決を期待できる、とする人がマレーシアは86.3%、インドネシアは71.1%、インドでは51.8%といずれも半数を大きく超えている。


自国政党への期待は、日本が最も低く、韓国は拮抗、他の3カ国は期待が上回る

 こうした自国が直面している課題の解決を政党に期待できるか、が次の設問である。日本人では政党に「期待できない(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」という人が58.7%(昨年51.7%)と6割近く存在し、その比率は昨年よりも増加している。「期待できる(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」は22.5%(昨年15.5%)にすぎなかった。

 なお、アジアの日本以外のほかの4カ国に対する設問は、「自国が直面している課題の解決や経済発展を、自国の政党に期待できるか」になっている。

 マレーシアでは86.3%と圧倒的多数が、政党に「期待できる」と回答している。

 インドネシアでも「期待できる」が71.1%と、「期待できない」の25%を大きく上回っている。

 ただ、インドでは「期待できる」が51.8%と半数を超えているが、昨年の85.9%からは34ポイント減少するとともに、「期待できない」が昨年の8.3%から38.4%へと30ポイント増加した。

 韓国では、政党に「期待できる」は46.9%だが、「期待できない」とこの課題解決と経済発展の「両方難しい」を合わせると46.8%となり、見方が拮抗している。

【政党に課題解決を期待できるか】

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4.自国の民主主義は機能しているか(日本、インドネシア、インド、マレーシア)・
自国の「民主主義が機能していない」と思う理由(日本、インドネシア、インド)

 日本とマレーシアでは、自国の民主主義が「機能している」と思っている人はそれぞれ4割程度で、半数に届かない。むしろ、自国で民主主義が「機能していない」がマレーシアでは56.1%と半数を超え、日本でも36.2%存在する。これに対し、インドとインドネシアでは自国の民主主義が「機能している」と判断する人はそれぞれ半数を超え、インドネシアでは69.3%、インドでは59.3%が自国の民主主義が機能していると信頼している。  この4カ国では民主主義が「機能していない」と考える人に理由を尋ね方、その中で最も多いのは、「選挙に勝つことが自己目的となり、政党や政治が課題解決や国民に向かい合う政治をしていない」や「政治や行政の腐敗や汚職が止まらないから」などである。


日本とマレーシアでは自国の民主主義が「機能している」との回答は半数に届かない

 それでは、自国の民主主義は機能しているのか。日本とインドネシア、インド、マレーシアでその質問を聞いている。

 マレーシアでは民主主義が「機能している」(「機能している」と「どちらかといえば機能している」の合計、以後同様)とする国民は37.3%に過ぎず、これに対して「機能していない」(「機能していない」と「どちらかといえば機能していない」の合計、以後同様)が56.1%と半数を超えている。

 日本でも、自国の民主主義が「機能している」と思っている人は43.3%と4割程度しかなく、昨年(46.7%)よりも減少している。これに対して日本の民主主義が「機能していない」と見る人も36.2%と4割近く存在する。

 これに対してインドネシアとインドでは自国で民主主義が「機能している」がそれぞれの国で最も多い回答になっている。

 インドネシアでは69.3%と(昨年47.1%)7割もが自国の民主主義は機能している、と回答しており、インドでも59.3%(昨年65%)と6割近い。ただ、インドには「機能していない」と実感している人も26.9%(昨年28.6%)存在している。

【自国の民主主義は機能しているか】


 日本とインド、インドネシアでは、自国の民主主義が「機能していない」と判断している人に、その理由を尋ねている。

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民主主義が機能してない理由として各国の上位は、
「選挙に勝つことが自己目的となり、政党や政治が課題解決や国民に向かい合う政治をしていない」や「政治や行政の腐敗や汚職が止まらないから」。

 日本で最も多いのは、「選挙に勝つことが自己目的となり、政治が課題に真剣に向かい合っていないから」の46.7%(昨年60.2%)だった。これに「政党が選挙公約を守らないことが常態化し、守れなかったことについて十分に国民に説明しないなど国民に向かい合う政治が実現していないから」(39.5%、昨年45.3%)が続いている。

 それらに、日本の政治状況に考慮して今年新たに設問に加えた「政権が強い力を持ち、反対する人物や勢力に圧力をかける傾向が見られるから」が28.7%で続いている。また「野党の力が脆弱であり、与野党間が適切な競争関係にないから」も17.7%存在している。

 全体的に各選択肢で前年からの減少が見られるが、その中で唯一増加したのが、「政党自体に、課題解決の能力が十分にみられず、まじめに取り組む姿勢も欠けるから」で昨年の11.9%から17.1%へと増加している。

 これに対して、インド人では、「選挙に勝つことが自己目的となり、課題解決に取り組んでいないから」の44.4%(昨年22.6%)が最も多い。これに「政党が選挙公約を守らず、アカウンタビリティを欠いているから」の39.9%(昨年38.2%)と、「女性、宗教的・民族的マイノリティの声が政治に反映されないから」の39.4%(昨年5.1%)が続いている。また、その他の選択肢も軒並み3割以上あり、多くの人が同様の問題意識を持っていることがうかがえる。

 インドネシアでは、昨年同様に「政治・行政側の腐敗や汚職が止まらないから」が63.6%で突出している。

【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐日本‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐インドネシア‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐インド‐】

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5.国民は民主主義体制を支えるどの組織、機関を信頼しているのか
(日本、インドネシア、インド、マレーシア、韓国)

 アジア各国の国民が国内の組織で信頼しているのは、「軍」(日本では「自衛隊」)や「警察」といった実力組織であり、選挙で選ばれる「議会」やその政治家で組織される「政党」、さらには健全な世論形成において役割を期待される「メディア」などへの信頼はどの国でもそう高くない。インドネシアでは大統領と軍と、政府と宗教組織が8割の国民の信頼を集めているが、特に「軍」や「大統領」の信頼は9割を超えている。日本では「自衛隊」や「警察」、「司法・裁判所」への信頼は半数を超えているのに対し、「政党」や「国会」への信頼は2割程度に過ぎない。韓国でも調査期間が大統領選直後ということから、「大統領」への信頼は高くなったが、基本構造は日本と同じである。


アジア各国で「軍」や「警察」に信頼が高い一方、
「議会」「政党」「メディア」への信頼は高くない

 それぞれの民主主義の体制下において、それぞれの役割を果たす様々な機関や組織などが存在する。国民はその中でどのような機関、組織を信頼しているのかを聞いた。

 日本人が最も「信頼している(「とても」と「ある程度」の合計、以後同様)」機関は、「自衛隊」で74.5%の人が信頼を寄せている。これに次いで信頼度が高い機関は、「司法・裁判所」(66.4%)、「警察」(62.7%)だった。「企業」に対する信頼も48.8%と半数近い。

 逆に、日本人が最も「信頼していない(「全く」と「あまり」の合計、以後同様)」機関、組織は「宗教団体・組織」で68.9%の人がこれを「信頼していない」と回答し、「信頼している」は9.1%と1割に満たない。他に「信頼していない」という回答が5割を超えたのは、「政党」(64.1%)、「国会」(60.6%)、「首相」(51%)、「メディア」(50.5%)だった。

 NGOに関しては「信頼している」が34.9%、「信頼していない」が31.6%、「わからない」が33.5%と意見が分かれている。

 インドネシアでは、設問に掲げた全ての組織を6割以上の国民が信頼しているが、その中でも軍と大統領に対する信頼はそれぞれ93.9%、90.8%と9割を超えている。このほか、宗教組織が84.3%、政府が83.5%で続いている。メディアは64.6%、政党は58.7%と相対的に少ない。

 インド人が最も「信頼している」のは、「軍」で71.4%の人が信頼を寄せている。ただ、インド人では各機関に対する信頼度は総じて高く、全ての機関で6割を超え、最も低い「主要メディア」でも61%である。

 マレーシア人が最も「信頼している」機関も「軍」で64.9%の人が信頼を寄せている。また、「公共サービス」に対する信頼も高く、61.5%が「信頼している」と回答している。
逆に、最も信頼度が低いのは「新聞」で60.1%が「信頼していない」と回答している。さらに、「テレビ」に対しても、56.7%の人が「信頼していない」と答えるなど、マレーシア人のメディアに対する信頼度は低い。また「政党」に対する信頼度も低く、58%の人が「信頼できない」と回答している。

 韓国人が最も「信頼している」機関は、「大統領」で84.7%と圧倒的多数の人が信頼を寄せている。これは調査期間が大統領選の直後ということも反映している。その他に「信頼している」が半数を超えているのは、「軍」と「警察」の54.9%である。対照的に、最も「信頼していない」機関は、「議会」であり、83.7%が「信頼していない」と回答している。また、「政党」に対しても82.4%が「信頼していない」と考えている。「メディア」や「NGO・NPO」、「民間企業」に対する信頼も低く、「メディア」は68%、「NGO・NPO」は61.4%、「民間企業」は58.6%の人がそれぞれ「信頼していない」と答えている。

【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐日本‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐インドネシア‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐インド‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐マレーシア‐】

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【国民は民主主義体制を支えるどの機関を信頼しているのか‐韓国‐】

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6.世界の民主主義の状況をどう見ているか(日本、インドネシア、マレーシア)

 世界の民主主義の状況は、アジア各国の民主主義への認識にも影響を与え始めている。世界の民主主義の動向を「世界の民主主義は盤石」「民主主義自体を否定する大きな問題ではない」など楽観視する見方は日本で約4割、インドネシアで半数もあるが、「民主主義は危機的な状況」や「この状況を改善するのは困難」とする見方も日本で26.6%、インドネシアでも36.8%も存在している。  マレーシアでは世界の民主主義の状況に対する評価は楽観、悲観で見方が分かれている。


世界の民主主義の状況が、アジア各国の民主主義にも影響を与え始めた

 現在の世界の民主主義の状況をどのように見ているか尋ねたところ、日本人では「一部の国・地域を除いて、世界の民主主義は磐石である」が9.2%、「民主主義における問題は頻出しているが民主主義自体を否定する大きな問題ではない」が28.8%となり、合計すると38%の人が楽観的に見ている。

 これに対して悲観的な見方は、「ポピュリズムや排外主義の高まりなど民主主義は危機的状況にある」(10.7%)、「民主主義はほとんどの国で問題を抱えており、この状況を改善することは困難である」(15.9%)の2つを合計すると26.6%である。ただ、「わからない」とする人も35.4%存在する。

 インドネシアでは「世界の民主主義は盤石である」が21.1%、「民主主義自体を否定する大きな問題ではない」が32.1%で、これを合わせて半数を超える人は世界の民主主義の状況を楽観視している。しかし、「この状況を改善するのは困難」が21.3%、「民主主義は危機的な状況にある」が15.5%と4割近くが、悲観的に見ている。

 マレーシア人では、「ほとんどの国で問題があり、改善することは困難」が26%で最も多く、「危機的状況」の15.3%と合わせると41.3%が、世界の民主主義の状況を悲観的に見ていることになる。

 これに対し、楽観的な見方は「磐石」が9.8%、「大きな問題はない」が23.8%となり、合計すると33.6%となり、見方が分かれている。

 インドでは多少異なる設問、「この一年で世界の民主主義はどう変わったか」について尋ねたところ、「(世界の民主主義は)発展した」 が47%と半数近い。世界の民主主義について、各国で問題が頻出しながらもその発展について前向きに見ている声が多い。

【世界の民主主義の状況をどう見ているか】

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7.民主主義は望ましい政治形態なのか
(日本、インドネシア、インド、マレーシア、韓国)

 民主主義はどんな他の政治形態よりも好ましいという、見方は依然アジアでは最も大きな声となっている。日本でも45.7%と半数近くが、インドネシアでも60%、韓国でも61.6%と6割が民主主義自体を、望ましい政治形態であると判断している。  しかし、それぞれの国で「一部で非民主的な形態が存在しても構わない」や「どんな政治形態でも構わない」が一定程度存在し、昨年よりもそう思う人が増加していることには注意が必要である。インドではこの二つの選択肢を選ぶ人が44.9%と半数近く存在し、昨年よりも増加している。また、日本でも22.0%、韓国で30%、マレーシアでも40.5%、インドネシアでも31.7%とそれぞれ3割存在し、これに「わからない」と入れると、日本とインドとマレーシアで民主主義に対する疑問や確信を持てていない人が半数を超えている。


5カ国の国民は、民主主主義は望ましい政治形態だと考えているが
非民主的な形態でも買わないとの」回答も一定程度存在している

 民主主義は望ましい政治形態なのか尋ねたところ、日本人の45.7%(昨年47%)が「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」と回答している。ただ、「わからない」と判断しかねている人も32.3%(昨年30.8%)と3割存在する。さらに、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」という回答も18.9%(昨年17.3%)存在する。

 インドネシア人では、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が60%で最も多いが、「どんな政治形態でも構わない」が20.8%(昨年16.9%)、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」も10.9%(昨年21.3%)存在する。

 インド人では調査地域や調査標本も倍増した結果、昨年の調査で57.6%と最も多かった「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が今年は40.8%と17ポイント減少した。また、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」は昨年の34.5%から24.4%へと減少したが、「どんな政治形態でも構わない」が昨年6.6%から20.5%へ増加した。この2つを合計すると44.9%となり、非民主的な政治形態を容認する見方が、民主主義を最も好ましい政治形態とする見方を上回っている。

 一方、マレーシア人では、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が44.3%で最も多く、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」(24.5%)や、「どんな政治形態でも構わない」(16%)よりも相対的に多い。

 韓国人は、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が61.6%で最も多く、今回の5カ国の中で民主主義に対する信頼は最も国民層で高い。

民主主義は望ましい政治形態なのか】

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8.強い政治リーダーは必要か(日本、インドネシア、インド、マレーシア)

 グローバル化や国際秩序の不安定化の中で、強い政治リーダーを国民が求める傾向にあるが、日本、インドネシア、マレーシアではそれぞれ半数を超える人が、「民主的なプロセスを重視し、その中でリーダーシップを発揮すべき」と民主主義としての機能を大事にすべきとの見方を持っている。しかし、インドでは、「多少非民主的でも構わない」や「民主的であるかは重要ではない」と容認する見方が5割を超えているほか、インドネシアや日本でも「課題解決のためには非民主的なリーダーでも構わない」という人が昨年より増えている。


日本、インドネシア、マレーシアでは民主的なプロセスの中でリーダーシップを発揮すべきとの回答が半数を超えるが、インドでは民主的なプロセスにこだわらない人が半数を超える

 この設問では自国の政治指導者のリーダーシップはどうあるべきか、を日本とインドネシア、インド、マレーシアで聞いた。

 日本人では、56.1%(昨年59.7%)の人が、「あくまでも民主的なプロセスを重視し、その中でリーダーシップを発揮すべき」と回答している。ただ、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」と考える人も21%(昨年17.2%)と2割程度、昨年よりもわずかに増加している。

 インドネシアでも、「あくまでも民主的なプロセスを重視し、その中でリーダーシップを発揮すべき」が53.5%と半数を超えている。しかし、「多層民主的でも構わない」(29%)や「民主的であるかは重要ではない」(9.6%)を合わせると38.6%と4割近くが、非民主的なリーダーを容認している。

 マレーシア人も48.5%と半数近くの人が、「あくまでも民主的なプロセスを重視し、その中でリーダーシップを発揮すべき」と回答している。ただ、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」と考える人も23.7%と2割程度見られる。
 
 これに対して、インドの今回の調査結果は昨年と様変わりしている。昨年62.6%で最も多かった「あくまでも民主的なプロセスを重視し、その中でリーダーシップを発揮すべき」が今年は32.9%へと30ポイント減少している。

 その結果、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」の36%(昨年27.8%)が今年は最も多い回答となった。さらに、「強いリーダーシップこそが重要であり、民主的であるかどうかは重要でない」が昨年の6.8%から17.6%へと増加し、この2つを合計すると、非民主的なリーダーシップを容認するインド人は5割を超えることになる。

【強い政治リーダーは必要か】

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9.民主主義の構成要素で最も重要なものは何か
(日本、インドネシア、マレーシア、インド)

 民主主義を構成する要素で、何を重要と思うかでは、4カ国で意見の違いが浮き彫りになった。日本人は「公正、公平な社会、政治制度」を望む声が最も多く、「基本的人権の保障」がそれに続いた。インドネシアでは「経済発展、経済的な豊かさ」が最も多く、「法の支配の徹底」と「基本的人権の保障が」が続いている。マレーシアでは、「法の支配の徹底」が最も多く、次いで「個人の自由の保障」「経済発展、経済的な豊かさ」を望む声が相対的に多い。インドは複数回答のため回答にそう大きな差はないが、「公正・公平な社会・政治制度」と「国民間の平等」がその中では相対的に多い。


民主主義の構成要素で重要と考える回答は各国で意見が分かれる
日本:「公正、公平な社会、政治制度」
インドネシア:経済発展、経済的な豊かさ」
マレーシア:「法の支配の徹底」
インド:「公正・公平な社会・政治制度」と「国民間の平等」が相対的に多い

 日本人が、民主主義を構成する要素として最も重要だと思うものは、「公正・公平な社会・政治制度」で、19.8%の人がこれを選択している。これに次ぐのは「基本的人権の保障」の17.1%で、その他の項目は1割前後にとどまっている。

 インドネシアでは「経済発展、経済的な豊かさ」が29.5%と最も多く、それに「法の支配の徹底」が24.5%で迫り、「基本的人権の保障」が14.9%で続いている。

 マレーシア人では、「法の支配の徹底」が25.4%で突出して多く、これを選択した人が2%にとどまった日本人とは対照的な結果になっている。以下は、「個人の自由の保障」(14.4%)、「経済発展、経済的豊かさ」(12.5%)の順番となっている。

 なお、インド調査では同じ設問を複数回答形式で尋ねている(他の3カ国では単数回答形式)。その結果、「公正・公平な社会・政治制度」が45.1%で最も多い。次いで、「国民間の平等」(44.1%)、「社会、秩序の安定」(42.5%)、「経済発展、経済的豊かさ」(42.4%)、「個人の自由の保障」(42%)、「法の支配の徹底」(41.5%)までが4割を超え、その他の項目を選択した回答も3割程度ある。

【民主主義の構成要素で最も重要なものは何か】

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【民主主義の構成要素で最も重要なものは何か―インド―】

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10.意見集約プロセスへの参加経験の有無(日本、韓国)

 日本人の7割近く、韓国人の6割近くが意見集約プロセスへの参加経験がない。ただ、韓国人では「世論調査」、「住民投票」、「署名活動」で2割程度の参加経験がある。


日韓両国の国民の多くが意見集約のプロセスへの参加経験がない

 「住民説明会」や「署名活動」、「住民投票」など、政治や行政に対する様々な意見集約プロセスがあるが、個人として、または所属するグループの一員として、そうしたプロセスへの参加経験があるかを尋ねた。

 これに対し、日本人では「こういった活動に参加したことはない」という回答が67.7%で突出して多い。経験があるものの中で最も多かったのは「署名活動」の17.6%だった。

 韓国人でも、「こういった活動に参加したことはない」という回答が58.9%で最も多い。ただ、韓国人では、「世論調査」(25.5%)、「住民投票」(22.3%)、「署名活動」(21.6%)などで2割程度の参加経験が見られる。特に、「住民投票」は、日本人(10.3%)よりも2倍以上参加経験が多い。

【意見集約プロセスへの参加経験の有無】

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11.世界の自由と民主主義を守るためにリーダーシップを発揮する国は
(日本、インドネシア、インド)

 世界の民主主義や自由な秩序を守るために、どの国がリーダーシップを取ることを期待できるかを尋ねたところ、米国に今後もリーダーシップを「期待できる」と回答したのは、インドが66.5%で最も多く、日本が56.3%、インドネシアが53.3%である。  中国に対しては、日本人とインド人の6割以上が「期待できない」と回答しているが、インドネシアでは「期待できる」と「期待できない」がそれぞれ4割程度で意見が分かれている。  この他、ロシアについては、「期待できる」と回答したのは日本人では1割程度だが、インド人では6割、インドネシアでも半数近く存在する。また、英国に対してはインド人で「期待できない」との回答が半数あるが、インドネシアでは「期待できる」が半数あり、日本では意見が分かれている。  今回の調査に参加した日本、インド、インドネシアの中では、自国のリーダーシップを期待できる、と回答する人が多く、インドネシアでは9割が自国のリーダーシップを「期待できる」としたが、日本人で日本自身に「期待できる」と回答したのは半数に過ぎず、3カ国では最も自信が小さかった。

 日本人、インドネシア人、インド人に対し、米国や日本など世界の8カ国について、世界の自由な秩序や民主主義を守るためにリーダーシップを取ることを期待できるか否か、その評価を尋ねた。


【米国】

 まず、日本人で「米国」に今後のリーダーシップに「期待できる(「強く」と「ある程度」の合計、以後同様)」と考えている人は56.3%で、「期待できない(「全く」と「あまり」の合計、以後同様)」の28%を大きく上回っている。
 インド人も、日本人同様の期待を見せており、66.5%と6割以上が「米国」のリーダーシップを「期待できる」と答えており、「期待できない」の19.1%を大きく上回っている。
 インドネシアも「期待できる」は53.3%と半数を超えているが、「期待できない」も38.7%とこの3カ国では最も多い。


【英国】

 「英国」に今後のリーダーシップを「期待できる」と考える日本人は39%であり、「期待できない」の35.2%とほぼ並んでいる。
 インド人では「英国」を「期待できない」の方が51.5%と半数を超え、「期待できる」の34.1%よりも多い。
 インドネシアでは、「英国」を「期待できる」とする人は52.3%と最も多く、「期待できない」が39.1%である。


【ドイツ】

 日本で「ドイツ」にリーダーシップを「期待できる」人は43.8%と4割を超えており、「期待できない」の29.5%を大きく上回っている。
 逆に、インドでは「期待できない」の46.3%が、「期待できる」の38.1%を上回っている。
 インドネシアでは、50.6%と半数が「期待できる」と3カ国では最も多いが、「期待できない」も40.3%と4割存在する。


【中国】

 「中国」に今後のリーダーシップを「期待できる」と考えている日本人は14.3%しかおらず、63.9%と6割を超える人が「期待できない」と答えている。
 インド人の意識もほぼ同じで、中国に「期待できる」は20.6%にとどまるのに対して、「期待できない」は65.7%と6割を超える。
 これに対して、インドネシアでは「期待できる」が45%で、「期待できない」の46.6%と見方が分かれている。


【ロシア】

 日本人では、「ロシア」に国際的なリーダーシップを「期待できる」という人は14.1%しかいない(「期待できない」は61%)が、インド人では「期待できる」が60.3%と6割を超えている(「期待できない」は24%)。
 インドネシアでは、ロシアに「期待できる」とするのは48.6%だが、「期待できない」も42.5%あり、意見が分かれている。
 最後に、今回世論調査に参加した日本とインド、インドネシアに国際社会でのリーダーシップを期待できるかを聞いている。


【日本】

 日本人で自国「日本」の国際社会でのリーダーシップに「期待できる」と考えている人は48.6%と半数近い。ただ、「期待できない」という人も36.4%と3割存在している。
 これに対してインド人では、日本に「期待できる」という回答が64.5%と6割を超え、この3カ国でも最も期待が高い。「期待できない」は19.7%である。
 インドネシアで日本に「期待できる」としたのは57.3%と半数を超えているが、「期待できない」も34.3%存在する。
 

【インド】

 インド人で、自国「インド」のリーダーシップに「期待できる」という回答は71.3%と7割を超え、「期待できない」の16.8%を大きく上回った。
 逆に、日本人では、「インド」に「期待できない」が40%となり、「期待できる」の27.9%を上回った。ただし、32.1%が「わからない」と回答している。
 インドネシアでは、48.6%がインドに「期待できる」と答えているが、「期待できない」も42.6%と見方が分かれている。


【インドネシア】

 インドネシアでは、90.3%と9割を超える人が、自国のインドネシアのリーダーシップを「期待できる」と回答している。
 日本人では「インドネシア」のリーダーシップに「期待できない」という人が49.4%と半数近い。一方、「期待できる」は15.7%にとどまっている。
 インド人では「期待できる」が42.4%、「期待できない」が40.7%となり、見方が分かれている。


12.トランプ政権で米国に対する信頼は変わったか(日本、インド)

 日本では、米国に対する「信頼が減少した」が半数を超えている。これに対してインドでは、「信頼が減少した」が31.6%で最も多いものの、「信頼が向上した」も25.8%ある。これと米国への信頼は「変わらない」の14%を併せると、4割近くのインド人が米国に対する信頼を低下させていないことになる。


トランプ政権誕生後の米国に対して、
日本人の信頼は低下したが、インド人の4割は信頼を低下させていない結果に

 最後に、アメリカのトランプ大統領の発言や行動を見て、アメリカに対する信頼がどのように変化したのかを尋ねた。

 日本人で最も多い回答は「信頼が減少した」の50.8%で半数を超えている。信頼関係は「変わらない」と回答したのは22.5%で2割程度、「信頼が向上した」との回答は2%にすぎなかった。「もともとアメリカに対する信頼はない」(9.2%)との回答も1割ほど存在している。
 
 インド人でも、「信頼が減少した」という回答が31.6%で最も多い。ただ、「信頼が向上した」という回答が25.8%あり、これと「変わらない」の14%と合計すると、インド人の4割近くがトランプ大統領の言動を目の当たりにしてもアメリカに対する信頼感を低下させていないことになる。「もともとアメリカに対する信頼はない」は15.1%だった。

【トランプ政権で米国に対する信頼は変わったか】

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