安倍政権1年実績評価 個別項目の評価結果 【エネルギー】

2013年12月20日

総論

 安倍政権の環境・エネルギー政策は「原子力の安全性は規制委員会による専門的判断を優先、原発の再稼働は順次判断し、3年以内の結論を目指すこと」、「遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立すること」、「ポスト京都で主導的な役割を主導、温室効果化ガスの長期目標は堅持、中期は目標再設定で現実実効的政策を推進する」が中心的な政策である。

 まず、原子力発電所の再稼働については原子力安全規制委員会が新規制基準を策定し、現在、審査には5電力会社が計7原発14基を申請するなど、自民党が選挙時に掲げた政策は個別に見れば一定程度動き始めており、その点は評価できる。しかし、新しい規制基準づくりに、かなり時間がかかり、全体的な工程の遅れをどこまで取り戻せるかはやや不透明な部分もあり、「3年以内」という目標を達成できるかは現時点では判断できない。

 次に、政府は12月13日、民主党政権の「原発ゼロ」方針からの転換を打ち出すエネルギー基本計画をとりまとめた。原発の位置付けを「基盤となる重要なベース電源」としてその必要性を強調している。一方、前述したとおり原発の再稼働の計画自体が遅れており、再稼働を見極めないと将来の持続可能な電源構成を示すことはできないとして、今回のエネルギー計画では、原発の新増設や、電源のうち原発をどれくらい使うかの明示は見送った。その結果、どの程度の発電規模を原子力で供給するかなどの数値については、次回のエネルギー基本計画の改訂時期である2016年まで先送りすることとなる。

 また、原発の再稼働、原発の将来の稼働率が定まっていないことが影響し、COP19で温暖化ガス排出量を05年比で3.8%削減する目標にとどまった。しかし、数値目標を提示するかどうか、どの省の責任で示されたのか不透明である。また、目標達成に向けた行動計画もない状態である。なお、日本が掲げた目標は1990年度比では約3%増という目標であり、公約で示したようなポスト京都で主導的な役割を果たすことは難しい。一方で、政府は2050年に世界全体で50%、先進国で80%という目標を堅持した。その達成手段として、環境省は2050年までの技術開発の工程表を盛り込んだ「環境エネルギー技術革新計画」を発表し、環境エネルギー技術の開発・普及による温室効果ガス削減を目指す方針を示した。しかし、この目標が提示された当時は、一次エネルギー供給に占める割合における「原発26%」を前提とした計画だった。現時点では40年廃炉ルールを変えることや、原発新規建設の方針も示されていないため、このまま行くと2050年には原発はゼロになるが、それでどう目標を実現するのか、国民に対する明確な説明はなく、評価は低くならざるをえない。

 政府は、今後の日本のエネルギー政策における原発の位置付けを早急に明らかにすると同時に、エネルギー政策のビジョンをどう描き、それに向かってどのような道筋を示すのかということを明らかにし、国民に対して丁寧に説明することが求められている。


安倍政権1年実績評価 個別項目の評価結果 【エネルギー】




































評価項目 評価 評価理由
原子力の安全性は規制委員会による専門的判断を優先、原発の再稼働は順次判断し、3年以内の結論を目指す

3 原子力規制委員会は、原発の新しい規制基準を正式に決めた。これを受け、現在、審査には5電力会社が計7原発14基を申請している。

ただ、全体的な進捗は遅れている。その背景には、規制委において委員の専門分野がバラバラだったため、原子力の安全性についての大局的な観点からの議論がほとんどなされず、津波対策や活断層問題など個別的な論点の議論に時間を取られていたことがある。そのため、新規制基準の策定に時間がかかり、全体的な審査の工程にも遅れが出た。

しかし、原発メーカーの勤務経験者など専門知識を持つベテランスタッフが多い原子力安全基盤機構(JNES)が、規制委事務局の原子力規制庁に統合されるため、実務的な能力が強化され、今後の審査のスピードアップが期待される。

ただ、全体的な工程の遅れをどこまで取り戻せるかはやや不透明な部分もあり、「3年以内」という目標を達成できるかは現時点では判断できない。
当面最優先で再生可能エネルギーの最大限の導入と省エネの最大限の推進を図る

3 資源エネルギー庁がまとめた再生可能エネルギーの発電設備の実績値によると、固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は、2013年度に入ってから稼働が増えてきた。月平均58万kWのペースで伸びており、2012年度のほぼ3倍の伸び率で増えている状況である。

ただし、この伸びを支えてきた固定価格買い取り制度は「3年間は供給者の利潤に特に配慮する」という基本方針があったため、価格が高く設定されていた。買い取りに要した費用は、原則として使用電力に比例した賦課金(サーチャージ)によって回収することになり、具体的には電気料金の一部として国民負担となるが、その負担のあり方についての議論は行われていない。

したがって、再生可能エネルギーの導入は最大限進んでいるといえるが、その達成手段の妥当性に疑問があり、今後も目標を達成できるかどうかは判断できない。

一方、省エネの推進については、省エネ法を改正し、近年、業務・家庭といった民生部門におけるエネルギー使用量が増加傾向にあることを踏まえ、民生部門における省エネルギーを強化する取り組みを促している。
遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な「電源構成のベストミックス」を確立する

2 政府はエネルギー基本計画をとりまとめ、原発の位置付けを「基盤となる重要なベース電源」とした。一方、原発の新増設や、電源のうち原発をどれくらい使うかの「ベストミックス」の明示は見送った。

ベストミックスの確立に向けては大きな課題がある。エネルギーの安定供給を確保するための電力システム改革を進める電気事業法が改正され、「法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保」が実現したが、これによって新たな発電事業者の参入が増加することが予想される。しかし、どの電源を使用するかは自由であり、その自由な市場の中で、政府が考えるベストミックスの構成にどのように誘導するのか。電力システム改革ではその構想が示されていない。

また、自民党は衆院選のマニフェストにおいて、「原子力に依存しなくても良い経済・社会構造の確立」を掲げるなど原発比率引き下げの方針を示していたが、この新しいエネルギー基本計画において再び原発重視の方針に転換したことについて、国民に対して明確な説明をしていない。
電力システム改革を断行する

3 エネルギーの安定供給を確保するための電力システム改革を3段階で進める改正電気事業法が成立した。

地域独占構造の下で柔軟性を失った電力システムを改革するためには、電力会社を越えた権限が必要となるため、広域機関から電力システム改革がスタートすることは評価できる。ただ、権限が集中する広域機関の設立に当たってその強大な権限をいかに適切にガバナンスするか、という問題認識を欠けば、地域独占に代わる新たな強権を生み出すことにつながる。しかし、現状の議論にはその視点がない。

また、「発送電分離」によって、新規発電事業者の参入による競争が激化すると、長期的・大規模投資は企業にとってリスクとなる。そうすると、電力の安定供給に最適であるが、莫大なコストのかかる原子力発電を担う巨大企業の経営体力を奪う可能性があるが、この問題と「エネルギーの安定供給」という電力システム改革の目的をどう調和させるのか。国民に対して明確な説明はない。
ポスト京都で主導的な役割を主導、温室効果化ガスの長期目標は堅持、中期は目標再設定で現実実効的政策を推進

2 政府は2020年までの中期目標として、温暖化ガス排出量を05年比で3.8%削減する暫定目標を示した。

鳩山政権下で打ち出された「1990年比25%削減」という目標値は実現可能性が非常に乏しいものであったこと、原発停止によって電力の9割を火力発電に頼っている現在、大きな削減を実現する具体的手段はないことを考えると、「現実実効的」な目標再設定としては一定の妥当性はある。

しかし、目標達成行動計画を定めずに数値だけ先行して出しているため、どうその数値目標を実現するのか判断できない。

一方、長期目標については、「2050年までに50%削減、先進国は80%削減」という目標を堅持している。

その達成手段としては、環境省は2050年までの技術開発の工程表を盛り込んだ「環境エネルギー技術革新計画」を発表し、環境エネルギー技術の開発・普及による温室効果ガス削減を目指す方針を示した。

しかし、2009年の「温室効果ガス2050年80%削減のためのビジョン」では、上記のような技術開発だけではなく、一次エネルギー供給に占める割合における「原発26%」を前提とした計画だった。現時点では40年廃炉ルールを変えることや、原発新規建設の方針も示されていないため、このまま行くと2050年には原発はゼロになるが、それでどう目標を実現するのか、国民に対する明確な説明はない。




各分野の点数一覧

安倍政権通信簿は2.7点(5点満点)
経済再生
財政
復興・防災
教育
外交・安保
社会保障
3.2
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2.7
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3.3
防災・復興分野の評価詳細をみる

教育分野の評価詳細をみる
3.1
外交・安保分野の評価詳細をみる
2.3
社会保障分野の評価詳細をみる
エネルギー
地方再生
農林水産
政治・行政改革
憲法改正
2.6
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2.2
地方再生分野の評価詳細をみる
3.3
農林水産分野の評価詳細をみる
2.7
政治・行政改革分野の評価詳細をみる

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実績評価は以下の基準で行います

・未着手
・着手後、断念したが、その理由を国民に対して説明していない
0点
・着手後、断念したが、その理由を国民に対して説明している
1点
・着手し、一定の動きがあったが、目標達成はかなり困難な状況になっている
・政策目標を修正した上で着手したが、その修正理由を国民に説明していない
2点
・着手し、現時点では予定通り進んでいるが、目標を達成できるかは判断できない
・政策目標を修正した上で着手したが、その修正理由を国民に対して説明している
3点
・着手し、現時点では予定通り進んでおり、目標達成の方向に向かっている
4点
・この一年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
5点