日本の政党や国会を信頼できない、と考える国民が6割を超える―言論NPOは参議院投開票前に日本の民主主義に関する世論調査結果を公表

2019年7月12日

 言論NPOが、7月21日の参議院選の投開票を前に行った日本の民主主義に関する世論調査では、政党や国会など、選挙によって自らの代表を有権者が選ぶ代表制民主主義の仕組み自体を「信頼している人」は3割に満たず、政治が国民から信頼を失い始めていることが、浮き彫りになっている。

 また、日本の将来を悲観視している日本国民は半数近くになっており、政党に日本が直面する課題の解決を期待できないと考えている人は55.2%と半数を超えている。

 こうした政治不信の傾向は20代、30代の若い現役世代に特に目立っており、参議院選選挙の投開票にも影響を与えそうだ。
この世論調査は言論NPOが今年5月から6月にかけて全国の18歳以上を対象に訪問留置回収法で行ったもので、有効な標本は1000人である。


 この調査は、言論NPOが、現状の民主主義の傾向を把握するために世界のシンクタンクとも連携して行ったもので、今年で3回目となる。世界の多くの国で民主主義が試練に直面する中で、それに対する国民の意識を把握する、ことに目的がある。

 今回の調査では、この日本でも代表制民主主義の様々な仕組みが市民の信頼を失い始め、政治不信の傾向が強まっている、ことが明らかになっている。


 国民の信頼を特に失っているのは「政党」と「国会」で、「メディア」と「政府」も深刻。圧倒的に国民の信頼を集めるのは「天皇・皇室」で、「自衛隊」と「警察」が続く

 まず、日本社会を構成する仕組みの中で「政党」や「国会」、さらには「政府」や「メディア」の信頼がかなり低下している。

 例えば、「政党」や選挙で選ばれた政治家が議論し、意思決定を行う現状の「国会」を「信頼できる」と回答したのはそれぞれ22.4%、29.4%と2割台程度しかなく、逆に「信頼できない」は67.6%、60.4%と6割を超えている。

 「メディア」や「政府」を信頼している人も少なく、「信頼できる」と回答したのはそれぞれ32.3%、36.4%と3割台程度で、「信頼できない」は56.6%、54%とそれぞれ半数を超えている。

 こうした傾向を年代別で見ると特に20代に顕著であり、20代で「政党」を信頼できると回答したのは10.9%、国会は13.4%、政府は21%と2割程度以下しかない。

 これに対して、国民の信頼を集めているのは「天皇・皇室」が87.1%と圧倒的であり、続いて「自衛隊」、「警察」が77%、71.6%で続いている。

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 日本の代表制民主主義自体に関しても懐疑的な見方が高まっており、20,30代では「信頼していない」が「信頼している」を上回る。

 こうした調査結果と関連して、選挙で選ばれた政治家が国会で議論を行い、国会で選ばれた内閣が行政を統括する、現状の日本の代表制民主主義自体を、「信頼している」人も32.5%と3割程度である。これに対して、「信頼していない」は24.4%、「どちらともいえない」が24.6%であり、合わせると半数が、懐疑的な見方を持っている。

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 年代別では20代と30代で現状の代表制民主主義を「信頼している」という人はわずかに20.2%、14.2%と年代別で最も少なくなっている。特に20代では「信頼していない」人が26%、30代でも29%あり、「信頼していない」が「信頼している」を上回っている。

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 日本国民の7割は、民主主義は「必ず守るもの」であり、民主主義を機能させるためには「不断の改善や見直しが必要」だと、考えている。ところが、現在の日本が「民主主義の国か」では、「そうは思えない」「どちらとも言えない」が合わせて4割存在し、日本の民主主義が「機能していない」と考える人も2割いる。こうした傾向は20,30代に目立つ。
 この民主主義が機能していない、という層では「忖度が指摘される行政の在り方」を理由にする人が7割近くいる。


 日本国民の23.2%は、民主主義の持つ人権や自由という基本的な価値を重視し民主主義は「必ず守るもの」と考えており、また45.9%が民主主義を機能させるために「不断の改善や見直しが必要」としており、合わせて7割が民主主義を肯定的に捉えている。

 しかし、現状の日本は民主主義の国か、という点では52.1%と半数は「民主主義の国だ」と考えていますが、31.5%が、「どちらともいえない」と感じており、また8.3%がそうは「思わない」と回答し、疑問を覚えている人も6割存在する。

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 こうした日本の民主主義に懐疑的な傾向は、これもまた20代と30代に目立っており、20代で、日本が「民主主義の国だと思う」と回答したのは38.7%、30代は39.9%と4割にも満たない。しかし、「そうは思わない」、あるいは「どちらともいえない」という人を合わせると20代で47.1%、30代で48.6%と、「民主主義だと思う」という層よりも上回っている。

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 現状の日本の民主主義は機能しているか、では、「機能している」が55.5%と半数を上回っているが、「機能していない」も19.8%と2割近く存在する。20代では、機能していると見ている人は42%、30代は47.3%と、半数をそれぞれ下回っている。

 日本の民主主義が機能していない、と感じている人にその理由を尋ねたが、「官邸主導や忖度が指摘される行政の在り方」が69.7%で圧倒的に多く、「選挙の低投票率」の38.9%と「野党の脆弱化」の32.3%がそれに続いている。

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 「現状の自分自身の生活」に6割近くが満足している一方で、「現状の日本の政治」に満足していない人は6割を超え、正反対の傾向を示している

 現状の自分の生活に満足しているかでは、57%が「満足している」と回答しており、これは「満足していない」の37.9%を大きく上回っている。現在の生活に満足を抱いている人は20台未満が60%、60代以上が63.8%で、この二つの層が相対的に高くなっている。

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 ところが、この生活の満足感と、政治に対する満足感は同じではなく、異なる傾向を示している。65.4%と7割近くが、日本の現状の政治に満足してない、と回答しており、年代別では30代(69.6%)と50代(69.2%)にその傾向が強い。

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 日本国民の半数近くは日本の将来に対して「悲観」しており、その理由として、高齢化や人口減少に有効な対策が見えない、との声が8割に迫っている

 日本の将来を悲観視している日本国民は47.2%と半数近くおり、楽観的であるという人の30.9%を大きく上回っている。その理由では、「急速に進む高齢化と人口減少に有効な対策が見えない」が79.2%と突出しており、「社会保障や年金が安心ではなく、自分の人生の将来が不安」の52.5%が続いている。

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 日本が直面するこうした課題の解決を政党に「期待できない」とする国民は55.2%に達し、その理由として6割が「政治家や政党は選挙に勝つことが自己目的化し、課題解決に真剣に取り組んでいない」と回答している

 日本が直面するこうした課題の解決を、政党に「期待できない」と考えている人は55.2%と半数を大きく超え、「期待できる」の22%を大きく上回っている。政党に課題解決を期待できないとの声は、2017年の調査から大きな変化がない。

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 特に、20代、30代に、政党に課題解決を期待できないという傾向が顕著であり、それぞれ「期待できる」はわずか13.4%と15.6%に過ぎず、これに対して、「期待できない」は54.6%、62.2%と4倍程度になっている。

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 この「期待できない」という理由で最も多かったのは、「政治家や政党は、選挙に勝つことだけが自己目的化し、課題解決に真剣に取り組んでいない」が、60.5%と最も多く、「政党や政治家に日本の課題を解決する能力を感じない」が42.6%で続いている。

 政府や官僚に政治を忖度する傾向があり、不明朗な政策運営が見られるは、23.6%である。

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 世界の台頭するポピュリズムに関して、日本では既に広がっていると見る人はわずかに4.8%に過ぎず、大部分は「分からない」か、あるいは、そうした傾向はまだ無いか、広がっていない、と見ている

 世界では人々の不安や不満を利用して支持を広げるポピュリズムが台頭しているが、日本でもポピュリズムが広がっているかを、聞いた。49.9%の半数は「分からない」と回答、「まだそうした傾向は見られない」、あるいは「一部には見られるが全体的な傾向ではない」がそれぞれ、23%と21.5%であり、日本ではそうした傾向が広まっていると多くの国民は感じていない。「既に大きく広がっている」は4.8%に過ぎない。

 ただ、既に広がっている、一部に広がっている、と回答した人にその原因を尋ねたが、3割を超えたのは、将来への不安の41.8%、格差の拡大が39.2%、現在の生活不安が33.5%
である。

【ポピュリズムは日本でも広がっているのか】

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 AIやデジタル技術の発達が、民主主義の未来に与える影響についてはまだ3割近くが、判断がつきかねているが、「民主主義の機能が制限される」「民主主義が否定される」という負の影響を心配する見方も3割を超えている

 AIやデジタル技術の発達によって民主主義の未来がどう変わるかでは、「分からない」が34.3%で最多となったが、「民主主義機能が制限される」が29.9%、さらに「民主主義が否定されていく」が5.4%で、合わせて35.3%と3割を超える人が負の影響を心配している。「民主主義と調和される形で機能していく」との楽観的な見方は18.6%と2割程度である。

【AIやデジタル技術の発達は民主主義の未来をどう変えるか】

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 この世論調査を行った5月から6月で安倍政権を支持する人は39.1%で、支持しない人は33.4%である。評価を決めきれていない人は21.6%である。
 一部のメディアが報じている若者世代に支持が広がっている、という傾向は確認されず、むしろ20代未満や20代は年代別では最も支持率が低い状況である。前問までの結果を合わせて判断すると、この層には政治不信が大きく、あるいは政治への理解が十分に進んでいない状況と言える。

 安倍政権を「支持する」は9.1%、「どちらかと言えば支持する」が30%であり、安倍政権を支持する人は合わせて39.1%と4割近い。これに対して「支持しない」が14.8%、「どちらかと言えば支持しない」は18.6%で、「支持していない」人は合わせて33.4%である。「どちらともいえない」は21.6%

 世代別で見ると最も支持が高いのは40代の43.6%、続いて50代の41.1%であり、最も支持が低いのは20代未満(18歳、19歳)の32%、続いて20代の、33.6%である。一部の報道では、若い世代に支持が広がっているとの報道があったが、この全国的な住民基本台帳に基づく無作為抽出による調査ではそれが確認されない。

 ただ、20代未満の男性のみでは、支持は50%と世代間で最も多くなっている。ただ、20代未満の女性の支持は15.4%に過ぎない。また、2018年との比較で言えば20代の支持は減少しており、20代未満の支持は、「どちらかと言えば支持」よりも「支持」が増えているが、全体数は変わってはいない。

 また、政権発足時と比べて、今が「期待以上」と「期待どおり」と感じているのは合わせて20.2%だが、「期待以下」は27.6%と、「そもそも期待していなかった」は29.6%であり、合わせると57.2%と6割程度が、発足当時よりも厳しい評価を示している。

【安倍政権を支持するか】

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 参議院選では、「日本の将来」を争点とすべきとの声が34%と最も多いが、それを争点に求めているのは30代以上の層に多く、20代や20代未満の若い層には、何が争点か「分からない」という回答が最も多い

 これらを踏まえて、今後の参議院選挙では何が問われるべきかを、聞いた。最も多いのは、「日本の将来」の34%であり、「消費税」や「安倍政権の評価」がそれぞれ、20.3%、19.3%で続いている。米中対立が深刻化する中での「アジアや世界における日本の立ち位置」は5.7%だった。「日本の将来」が全体の34%を上回った世代は30代以上であり、20代未満や20代は「分からない」がそれぞれ40%、33.6%と最も多い回答となっている。

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 言論NPOは、マニフェスト評価を継続的に行っている日本の非営利、独立のシンクタンクであり、米国の外交問題評議会が立ち上げた世界の20カ国のシンクタンク会議に日本から唯一、選出されている。


調査の概要

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