工藤のアンケート分析2 -安倍政権への支持率と期待の変化-

2007年1月16日

私たちの調査結果は新聞各紙でも取り上げていただいた。そこでの論調は大体が、安倍政権への支持率が一般の世論調査と比べても著しく低いこと、さらに官僚とメディアの認識動向にかなりの落差が見られることなどに集中している。
官僚が安倍政権に甘いのか、メディアが安倍政権に厳し過ぎるのか。一般の新聞記事を判断材料にしているブログなどでの議論は、この問題に関心が集まっている。

実は私も、この支持率などの低さにある意味でショックを受けていた。集計結果では、官僚も別に政権に甘かったわけでない。全ての集計結果は100日時点での安倍政権に厳しい評価を突きつけていたからである。
最初に「告白」しておけば私自身、そこまで安倍政権に失望はしていなかった。失点は相次いでいるが、仕事はしようとしている。その安倍政権の試行錯誤のプロセスはこの100日の段階ではまだ見守るべきと思っていた。だが、回答結果だけを見れば、私の認識はかなり甘かったことになる。

今回の調査結果は、一般の世論の動向を集約した調査とは性格が異なるものである。回答者のサンプルは350人とかなり少ないが、大学生を除けば、ほとんどが政府の行動や政策内容を直接的な情報も加えて判断できる立場にある。
さらに回答者の大部分は一般の世論に向けて情報や考えの発信者ともなる立場の人たちなのである。この層がわずか100日時点でここまで政権に批判的になるのは、軽視できない問題でもある。この結果をどのように考えるべきなのか。それが、私の問題意識である。

アンケートは昨年の年末、2000人を超える人に電子メールで送付したものである。予算原案の提示や師走の忙しい最中だったが、中央官庁の官僚50人と現場の記者の100人が、年末のぎりぎりまでに回答を送ってくれた。
これに学者や経営者や大学生を合わせた350人の回答を集計したのが、この調査結果である。回答に伴う発言は全てウェブで公開している。回答者がいかに本音でこのアンケートに向かい合ってくれたかは、皆さんで読んで確認していただければと思う。


では、分析に入ろう。まず現状の安倍政権の支持率だが、今回のアンケート対象である政策現場に近い層での支持率は全体で24,0%しかなく、39.7% が不支持と明言している。「どちらとも言えない」という層は34.3%あるが、これまでの一般の世論調査と比べても際立って低い水準である。
これをさらに、政権誕生時の期待と100日後の現在の期待との対比で見ると、「期待以上」は4.6%,「期待通り」は13.4%と合わせても2割に届かず、36%が「期待以下」で「そもそも期待していない」も同数の36%あった。
 この二つの設問結果を並べてみると、現状の安倍政権への支持率は期待の変化と連動していることが分る。つまり、安倍政権になんらかの期待をしている層の中でこの100日間に期待を失った人が多く、それが支持率の低下にも結びついているのである。

もう少し詳しく見ていくと、この支持率の低さと期待の喪失に二つの特徴がある。
第一はメディアの記者の安倍政権への支持率は11%(不支持は62%)に過ぎず、これに対して官僚は支持が44%(不支持12%)とその対比が際立っていることである。安倍政権への支持率では大学生が25%、有識者が25%だから、回答者全体が安倍政権を厳しく評価しているが、その中で現場の一線の新聞記者などのメディア関係者の不支持が突出している。

メディアが権力に厳しい視点を持ち続けることはある意味では適切である。だが、なぜここまで厳しい評価なのかは、もう少し詳しく見る必要がある。これは後で言及することにする。
官僚の支持率は44%だが、私は別にこの水準が高いとは思っていない。政権を支える官僚層がメディアのように不支持が高かったらこれこそ大変な問題であろう。むしろ気になったのは支持率と同数の44%が「どちらとも言えない」と回答していることである。
これを期待の変化を問う第二の設問を加えて分析すると、官僚のなかにくすぶるある傾向が見え始める。全ての回答者と比較して官僚は実に46%と半数近くの人が100日後の安倍政権について「期待以下」と回答していたからである。
安倍政権を支えるべき官僚層が期待を失い始めている事実は、組織経営としては明らかに問題がある。この官僚の回答者は大部分が中核的な省庁の職員なのである。

この安倍政権の支持率で、どうしても気になるのが、「そもそも期待していない」という層が、4割近くも存在している事実である。特にメディアでは48%が「そもそも期待していない」と回答している。
安倍政権はそこまでの逆風下で誕生した政権だったのだろうか。

次回はこの疑問から分析を始めることにする。