「不戦の誓い」はいよいよ実践段階に

2015年10月23日

~「東京-北京フォーラム」開幕直前、フォーラムにかける決意~

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 言論NPO代表の工藤泰志です。今、私は北京にいます。3日前に北京に入りまして、昨日は「第11回日中共同世論調査」結果発表の記者会見を行いました。今朝の新聞各紙ではこの結果が掲載されています。そして、今日はこれから約50人の日本のパネリストの皆さんが北京に到着するのでそれを待っているところです。


北東アジアに平和な環境をつくり出すための第一歩を踏み出す

 今夕の晩餐会を経て、明日から2日間にわたり、いよいよ「第11回 東京-北京フォーラム」での本格的な議論が始まります。私たちは、今回のこの対話で一つの大きなチャレンジを始めたいと思っています。それは、北東アジアに平和な環境をつくり出すということです。私たちはこの北京に乗り込む前に、日本、中国、韓国、そしてアメリカの著名なシンクタンクのトップが勢ぞろいし、東京で4カ国の対話を行いました。この対話に先駆ける形で4カ国の世論調査結果も公表しました。その結果からはアジアの将来において、中国の台頭も含めて様々な紛争の可能性があるということが浮き彫りとなりました。北東アジアでは平和構築のためのガバナンスも機能していないわけですが、そのような地域を何とか安定的で、平和的な環境にしていきたい。シンクタンクトップの皆さんも同じ気持ちでした。また、4カ国世論調査でも、まさにそうした北東アジアでの平和的な環境を求める声が非常に大きいことが分かったわけです。

 私たちは、そうした多くの人々の思いをベースにして、いよいよ本格的な平和構築のための作業に入ります。今回、そのための覚悟を決めたわけです。考えてみれば、一昨年この北京で行われた「第9回 東京-北京フォーラム」において、日本と中国の間で「不戦の誓い」に合意しました。当時は、まだ日本と中国は政府間の関係が悪く、交渉が全面的にストップしているような状況でした。しかし、私たちは、悪化したままの政府間関係の状況を黙って見ているのではなく、市民側からこの地域の平和をつくるために声を上げなければならないと考えたわけです。そして、私たちは「不戦の誓い」を行い、世界に向けて発表しました。その「不戦の誓い」の最後の部分に、「この『不戦の誓い』を日本と中国の2国間だけではなく、北東アジア全体の平和環境のために活用していく。それを進めていく」ということを書き込みました。いよいよ私たちは、その実践段階に入ったと覚悟を固めました。


「平和」こそが日中両国民のこれからの願いであると同時に、今抱えている課題である

 昨日発表した日中共同世論調査の結果では、日中両国民の相手国に対する印象は改善が始まっていました。ただ、歴史認識や、安全保障の環境など、まだまだ両国民の間に不安が広がっていく要素はあります。しかしそれでも、私が非常に希望を持つことができた結果がありました。それは、東アジアの将来を考えたときに、どのような価値観や理念を目指すべきかを日中両国民に尋ねたところ、驚いたことに、日本の7割、中国の6割の人たちが「平和」と答えました。この結果は、「平和」こそが両国民のこれからの願いであると同時に、今抱えている課題であるということを示しています。その思いをしっかりと受け止めて、何としても平和を実現するための作業に入らなければならない。その覚悟を固めたわけです。

 明日から行われる対話では、例えば、安全保障分科会では、両国の安全保障政策だけではなく、北東アジア全体の平和についての議論が始まります。そこでは、日本の自衛隊OBや中国の人民解放軍など多くの専門家が一堂に会して議論します。また、中国はまさにこのフォーラムの直後の26日から5中全会が始まり、そこで来年から始まる5か年計画が決まります。そこで経済対話では、現在、中国経済が世界的なリスク要因になっていく中で、本当に構造改革ができるのか。新しく、大きく経済の構造を変えることは本当に成功できるのか。それに向けて日本と中国の間でどのような協力があり得るのか、ということを、中国人民銀行の首脳も入って議論を行うことになっています。

 その他にもジャーナリストや地方、そして、政治家同士の対話もあります。私たちはこれらの対話を軸に、何とか新しい平和に向けての第一歩を踏み出したいと思っています。この議論の経過はまた皆さんに報告させていただきます。まずは私たちがこれから何をしようとしているのか、ということを報告させていただきました。
ということで、北京から工藤がお送りいたしました。