米・外交問題評議会(CFR)のウェブサイト記事「国連創設80年: 新たな地政学時代における共通の未来に向けた改革」にて、代表・工藤のコメントが掲載されました。
本年、世界は終戦80周年を迎え、日本も敗戦と広島・長崎への原爆投下の悲劇の日に、核廃絶と世界の平和を考える式典が盛大に行われた。だが、80周年を迎えた国連の核不拡散のための行動は、日本からも見えにくくなるほど形骸化している。日本人の意識は私たちが毎年行う世論調査にも、はっきりと示されている。
最近の調査は、日本人の国連に対する意見を明確に示している。言論NPOが昨年実施した調査で、現在の国連が「機能している」と回答するのは22.6%に過ぎない。本調査は今年9月も行うが、現状のトランプ政権の国連機関に対する行動を考えると、消極的な回答はさらに増加するだろう。
国連が信頼を失った理由は、常任理事国の安保理での拒否権問題にある。現在、常任理事国であるロシアが他国を侵略し、住民を虐殺し、核で威嚇しても、拒否権で国連は動けない。3年経っても世界は、戦争を終結させることに失敗している。
明石康元国連事務次長は、著書「国際連合」で、「国連は万能ではないが無力でもない」と語っている。あくまでも国連は、政府間の機関であり、大国の行動に縛られるのは当然である。しかしながら国連加盟国の大多数がコンセンサスに達した場合は、大国もそれを無視することはできない。
今こそ、国連は世界の平和と安全の維持に集中すべきである。それこそが国連憲章の前文が示した創設時の使命であり、いま問われているのは国連の存在理由だと考えるからだ。
国連創設を主導した常任理事国は、どのように国際の平和を守るかを明らかにしなければならない。ビジョンがないならば、総会は、国連の再建を提起すべきである。
日本で今、最新鋭の原子力潜水艦を奪取した日本人艦長が独立を宣言し、各国の原子力潜水艦と連携した国連軍の創設を目指すという、極めて突飛な内容の映画が話題を呼んでいる。この背景には、世界のガバナンス不在に対する国民の不安が存在している。
国連の再建を目指すならば、このような大きなビジョンが必要である。世界でこうした議論が始まれば、日本人の意識は期待に変わるだろう。
今、国連に必要なのは国連再建を主導できるリーダーだと考える。
原文は、米外交問題評議会のウェブサイトにて公開しています。