民主党政権の実績評価から浮かび上がった課題とは

2012年11月15日

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民主党政権の実績評価
から浮かび上がった課題とは


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 言論NPOの工藤です。さて、衆議院の告示まで9日になりました。各党党首の様々な議論が、色々な問題を賑わせているという状況になっています。言論NPOはこの選挙において、有権者の立ち位置に立った議論を開始しなければいけないということで、今日から様々な取り組みを公開しています。


 毎日新聞と合同で行った民主党政権3年間の実績評価とは

 まず、私たちは、民主党政権の実績評価を行い、公開しました。これは昨日の毎日新聞の朝刊でかなり詳しく出ています。言論NPOと毎日新聞が合同でこの評価を行いました。メディアがしっかりとした評価基準で政権や政党の評価を行うことは非常に重要なことだと思います。やはりこの選挙では、有権者の立場に立って、まず政権の評価を行い、政治に問われている課題を明らかにしなくてはなりません。

 その結果、民主党政権は、通信簿で言うと、5点満点で2.2点。非常に厳しい状況になりました。ただ、私たちは、この点が厳しいということを殊更言おうと思っていません。それよりもなぜこのような厳しい点となったのか。そしてこのような状況が、今度のマニフェスト型の政治、そして、今後の本選挙、選挙戦の開始の中で、何を私たちは教訓として考えなくてはならないのか、ということを私はその評価できちっと伝えたつもりです。そして、今日私はそのことについて簡単に触れなければと思っております。


政権交代1年目から破綻していた民主党の政策

 まず民主党政権の実績の評価がなぜおかしかったのか、なぜ低い点数になったのか。これは基本的に3つの理由があると思っています。

 1つは、民主党政権は、まさに鳩山さんのときですが、16.8兆円という形で、自分たちがやりたいことを取り組むマニフェストでした。しかし、その財源を捻出することができなかったということが、今回のマニフェストの失敗の1つの要因になりました。ただこの財源問題というのは、私たちも評価の時に指摘したのですが、はじめからかなり無謀なものだと思っていました。そのため、私たちが行った民主党のマニフェスト評価では実現可能性に非常に大きな問題があるということで、私たちは2009年の選挙の時に、100点満点で20点をつけました。そして、やはり無駄を削減することができなかった。そして、経済の悪化で税収が落ち込んで、予算編成そのものが非常に大きな問題を抱えました。 

 そして1年目から、民主党はこのマニフェストに提起した大部分の公約を断念、修正せざるを得なかったわけです。

 2つの目の要因は、こうした国民に約束した政治課題を民主党は政治主導、または政府に政策を一元化する形でそれを実現しようと思っていた。まさに政府の統治の政策決定、そして遂行のガバナンスというものが1年目で早くも壊れてしまったということが2つ目の大きな要因だと私たちは判断しています。

 それは官邸の中に、国家戦略室というものがあり、それを局に上げて、そこの中で国家ビジョンを作るという話がありました。しかし、最終的にその計画は廃案になり、それは実現されませんでした。そして政党ではなく、政府に政策の決定を一元化するということも結局はできなくなり、1年目の予算編成もかなり厳しくなり、皆さんご存知だと思いますが、当時の小沢幹事長が首相官邸に乗り込んで、正にその場で指示をするという異例な状況になったわけです。

 そして、最終的には民主党は政調会を復活させ、そして党の政策部門が政府の法案を事前審査するということに戻したのです。これは取りも直さず民主党が否定していた自民党政権が行った政策実現のプロセスに全て戻すということでした。結局、民主党は政治主導と言いながら、官邸をベースにした仕組み作りに失敗してしまった。ということが今回の大きなマニフェストの失敗の2つ目の要因になったわけです。


政治は日本が直面する課題からは逃げられない

 ただ、私はこの2つの点よりも、より大きな問題があるのだと考えています。それは、一言でいえば、どんな政治も日本が直面している課題から逃げることはできないということです。しかし、この民主党のマニフェストは、そしてほとんどの政党のマニフェストは日本が直面する課題から、必ずそれを逸らしてしまう、逃げてしまう。それがこの間の日本の政治、日本の未来を見えにくくしている最大の要因だと私たちは判断します。

 例えば、高齢者が増えて、若者がそれを支える社会保障の在り方は、もう持続性がなくなっています。この社会保障のメカニズムを持続的に可能な形に組み替えるということに、政府は取り組めない。膨大な国民の負担が避けられないからです。
 
 しかし、一方で、高齢化の中で年間1兆円ずつ社会保障の関係費が増えて、財源捻出ができなくなり、いまや税収を上回る国債発行、つまり、国債債務が累増して、発散していくという財政破たん手前の状況まできているわけです。

 こうした問題を解決しながら、その高齢化や財政の非常に厳しい中で、日本の経済をどうやって成長させるのか。その姿をまだ政治は提起できない、という状況になっているわけです。そのためには、国民の負担と今の社会的な経済的な構造そのものをかなり大きく再編しないといけない、痛みを伴う改革が避けられません。

 しかし、政治は選挙での投票行動を心配して、今まで国民に提起できていない。民主党政権のマニフェストもそのようなことだったわけです。

 結局はその課題に民主党は強引に戻されます。それが実をいうと、菅政権の参議院選挙の時のマニフェストだったわけです。

 そのとき、菅政権のマニフェストは強い経済、強い社会保障、強い財政。まさにいま私がいったような日本が直面する3つの課題に一気に戻り、それに対して財政再建、そしてその場でははっきり主張しませんが、消費税の増税という問題に一気に政策を変更してしまったわけです。これは日本の課題そのものに政治が向かっていかない限り、基本的に美しい話だけでは、日本の社会そのものを運営することはもう不可能だということを意味しているわけです。しかし、民主党の政権はその変更自体を正式には認めていません。

 そして、ここから出てきた非常に大きな結論、教訓は、日本の政治はこうした課題に関して国民に正直に説明をして、未来に対して課題解決に向けた競争を始めない限り、日本の未来は本当に切り開けないということです。


有権者が主役の民主主義の実現を

 こうした点で考えると、今回の選挙での各政党のマニフェスト。まだ全部そろったわけではないですが、やはり非常に首をかしげざるを得ない。

 ある党は、できないことを言ったのが民主党政権の失敗、だからできる事しか言わない、と言っています。それから、あまり細かく書くとそれが逆に政治の行動を縛ってしまうので、色んな目標を曖昧にしたい、という政党もあります。

 そもそも国民との約束を考えるから政治が小さな行動になってしまう。もっと大きなビジョンを競うべきだという政治家もいます。しかし、皆、共通していることは、いろいろ言い訳をしながら、課題から逃げているということです。

 できることだけをやるのではなくて、いま日本が直面している課題に関して答えを出して競うことが日本の政党に非常に求められていることなのです。

 私たちは今回の選挙は正に有権者がこうした課題に対して、政治がきちっと責任を持って本当にそれを実行して仕事をする気持ちがあるのか、それを私たちは見抜かないといけない、という局面だと私は考えています。

 その点で、私たちはこれからマニフェストの評価、そしてこの課題を政治家一人ひとりに問うて、その内容を皆さんに公開するつもりです。そして、色んな形で政治家にこの争点の問題を問いかけて、その内容すべてを有権者の皆さんに明らかにしていきたいと思っています。

 日本は正に有権者が主役で、この国を動かさないといけない。それが民主主義だと思っています。有権者が自分の納得できる代表を選び、選ばれた代表が有権者の代表として仕事をする。そうしたサイクルを動かすために、告示まで9日しかありませんが、選挙期間を含めると20日余りですが、それに対して、最後まで議論を開始し、評価作業を公開していきたいと思っています。

 その点で、ぜひ私たちの活動を見守ってもらいたいし、また色々と私たちに意見をぶつけていただければと思っています。 



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