【vol.13】 北川正恭 論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第1回』

2003年1月16日

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■■■■■2003/01/16
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■ 北川正恭  論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第1回』


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2003/1/16 「言論NPO」ウェブサイトが完全リニューアル・オープン!

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■ 論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第1回』
  北川正恭 (三重県知事)

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言論NPOでは今年、「挑戦」をテーマに様々な議論を行なおうと思っています。挑戦
の形はいろいろあると思います。自立して企業を起こす人、あるいは社会に積極的に
関わるために、NPOやボランティアに参加する人もいるでしょう。今回は、三重県知
事の北川正恭知事に発言していただきます。北川知事は今春の知事選挙には出馬しな
いことを決めており、その動向が注目されています。


■「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義

私は新年の一つの挑戦の形としてNPOの問題で口火を切ろうと思っています。

これまでは住民が要求し続けることが民主主義で、それに対して打ち出の小槌を振り
続けることが政治行政の役割だと思われてきました。そうしたこれまでの日本の民主
主義が、根底から覆されて、本当に、民主=民が主役のデモクラシーを、今から我々
は真剣に創造していかなければなりません。そして、その象徴としてNPOがあるのだ
と私は思っています。

ここで私が言いたいのは、その人がNPOという特別な団体に所属しているかどうかが
問題なのではないということです。私が目指すのは、全国民がNPOの発想にたってい
ただくということであり、そういう社会こそが、21世紀の民主主義社会だと思ってい
るのです。そのためには、デモクラシーの「再生」や「生まれ変わり」ではなくて、
「創造」ととらえ、全く新しい民主主義にしていかなければならないのです。


●「官主主義」から本当の「民主主義」の創造

今までの日本の民主主義が果たして本当の「民主主義」と言えたのかどうか。私は、
はなはだ疑わしく思っています。むしろ、「官主主義」とさえ言ったほうが、ふさわ
しいのではないかと思います。すなわち、いわゆるタックスイーターと呼ばれるよう
な団体の皆さんとパートナーを組むことによって、供給サイドに立って税をどうやっ
て使おうかという発想で、これまでの行政は動かされてきたわけです。

確かに未成熟国家から成熟国家になるまでの間は、供給サイドのほうが強く、供給す
ればするほど、商品さえ良ければ砂漠に水を蒔くかのごとくにどんどん売れていった
わけですから、それはそれで結構なことではありました。しかし、成熟した国家にな
り、物不足の時代から物が充足した時代になれば、今度は消費者のほうが強くなりま
すから、当然、顧客が満足する財・サービスしか売れないようになります。

この「顧客満足」の流れは民主主義の世界でも同じなのです。県知事ならば、県民の
皆様がご満足いただく、国ならば国民の皆様がご満足いただける、という行政に切り
替わっていかないといけないのです。本来、税とは「先銭をいただく」ものなのです
から、納税者の皆様の方が主役であるにもかかわらず、行政のほうが主導する文化が
長く続いてしまうと、結局、「予算を下さい」という要望に対して、行政が「では、
予算を分けてあげよう」とか「これだけ配分しよう」というような、全く本末転倒の
話になってしまうのです。それを改めて、民主主義本来の「民」が主役の社会をつ
くっていくためには、「情報公開」に向かうことが必然の流れであり、今、日本はそ
の過渡期にあるということです。

行政のパートナーの圧倒的多数が、許認可、あるいは補助金等の対象者であった時代
は、行政にとっての民主主義とは、そういう団体の皆さんと相談することです。それ
は、政治行政が情報の一手販売を行う情報非公開時代でもあるわけです。それによっ
て、未成熟国家はいわゆるキャッチアップのシステムをつくりあげることができたの
ですが、成熟した国家に成長し、ハードの発達によりインタラクティブかつリアルタ
イムに情報が飛び交うようになって、そこで初めて、自立した市民・県民の皆さんの
存在が浮かび上がってきたのです。それは言い換えれば、「官」から独立して、自分
自身の考え方で自己決定できる人達による本来の自治に向かい始めた、ということで
もあります。

そうした自ら決定して、自ら責任が取れる、自立した市民が多く存在すること、そし
て、その人達が主役になることこそが、ほんとうの民主主義のスタートになるのだと
思います。税を納める方たちと言ってしまうと限定されてしまいますから、学生さん
達なども含めて「こう生きよう」という意志をもって努力する人を総称して、私は
「生活者」と言っているのですが、そういう方たちこそが、主役なのです。これが、
行政サービスの受け手の側から見た本来の民主主義であって、本来の主役がグッと浮
かび上がってくるということが必要なのです。

●上記の記事はウェブサイトにも掲載されております。
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