【vol.70】 アンケート調査「日本のパワーアセスメント―日本の実力(強さ弱さ)の再評価」

2004年3月02日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.70
■■■■■2004/03/02
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●INDEX
■ アンケート調査「日本のパワーアセスメント―日本の実力(強さ弱さ)の再評価」
■ 「第一次 小泉内閣の政策評価書・総論 第3回」
■ 言論NPO 2つのシンポジウムのご案内


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■ アンケート調査「日本のパワーアセスメント―日本の実力(強さ弱さ)の再評価」
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言論NPOは既に、「世界の潮流と日本に問われるもの」と題したアンケート調査を
行っているところですが、それに続き、今回は、日本の実力を再評価するためのアン
ケート調査を実施することといたしました。

日本の実力を適切に評価することは、日本がアジアなど世界と付き合っていく上で
も、日本自らの将来像を描く上でも、そして、日本が世界の中でいくつかの分野で永
続的な優位を確立し、自国の繁栄と安全保障を確保していく上でも、必要な作業と考
えられます。

各分野について国際的に比較した場合の日本の相対的な強さ、あるいは弱さを定性的
に評価していただく形で行います。ここでは、(1) 経済、(2) 社会・教育、(3) 大衆文
化、(4) 科学・技術、(5) 防衛・軍事、(6) 政治、(7) 資源(エネルギー、食料)、(8)
環境、(9) 言論・思想、の9分野を取り上げました。

        日本の将来に向けた議論に、あなたのご参加をお待ちしています。


○アンケートはこちらから
https://www.genron-npo.net/forum/asia/040301_01.html

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■ 「第一次 小泉内閣の政策評価書・総論 第3回」 言論NPO政策評価委員会
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本年7月には参議員選挙が予定されています。言論NPOでは第二次小泉政権の評価作
業を3月頃から開始する予定です。それに先立ち、昨年10月、総選挙前に行った「第
一次 小泉内閣の政策評価・総論」を改めて公表します。我々はそこで、ぎりぎりの及
第点をつけましたが、マニフェスト選挙により誕生した第二次 小泉政権に対しては、
より厳しい視点で評価する必要があると考えます。みなさんのご意見を、ぜひお聞か
せ下さい。


●浮き彫りになった問題点

上記のような全体評価を踏まえて、各分野における詳細な評価作業を通じて、小泉構
造改革が所期の成果を上げ得ていない原因、本質的問題点が浮き彫りになったと考え
る。これは小泉政権のみならず、他の政党にも問われる視点であり、次期総選挙では
こうした問題が十分、議論となることを期待するものである。

第一に、改革に伴う「痛み」とは何かが明確に示されていないことである。改革に伴
う「痛み」とは、例えば、不良債権処理や緊縮財政に伴う失業や企業倒産などがイ
メージされているが、それだけでなくより広く捉えれば、「痛み」とは過去の負の遺
産処理に伴う国民負担や将来の国民負担である。あらゆる改革を断行する上で、国民
負担(受益のサービスの引き下げや負担の増加)の議論はもはや避けて通れないこと
は明白である。にもかかわらず、政治や政党、政府がどの程度の国民負担が必要かと
いう説明を意図的に避けているように思われる。このことが、改革が先送りないしは
骨抜きにされているとの批判が根強い最大の原因である。

例えば、資産デフレが続く下で、多くの銀行が不良債権の処理の加速から実質的に過
小資本の状況に陥っており、銀行の体力不足が不良債権の抜本処理とRCCや産業再生
機構などの枠組みを使った産業の再生を妨げる要因にもなる。銀行に自力で不良債権
を処理する体力がないならば、自立でない銀行の整理と処理原資に国民負担の必要性
を議論し、それを決断する必要がある。この点を回避すると、必然的に政策は曖昧に
なり、問題の先送りと将来におけるさらに大幅な国民負担につながることになる。

こうした「負担」は道路公団の「民営化」や、社会保障制度の改革についても同様で
ある。過剰債務の存在をそのままにした「民営化」企業が市場で存在できる保証はな
く、年金制度改革を始めとした持続可能な社会保障制度を再構築するためには、既裁
定者も含めた厳しい給付カットと保険料引き上げ、公費(税)負担の引き上げが避け
られない。にもかかわらず、現在の年金改革案では、基礎年金の国庫負担2分の1への
引き上げ問題を意識的に棚上げするだけでなく、給付カットと保険料引き上げの「痛
み」を若年世代に先送りする内容となっている。国民負担を現役世代、高齢世代、将
来世代も含めてどのように分担するかというロスシェアリングの議論が正面からなさ
れない限り、改革の進展はなかなか期待できない。

第二は、改革の優先順位付けにおける誤りである。小泉内閣は、不良債権処理と財政
健全化に高いプライオリティーを置いたが、前述した通り、現実には不良債権問題の
解決もプライマリー・バランスの改善もむしろ遠のく結果となってしまった。骨太の
方針の中でデフレの克服が明示されたのは、2003年6月の骨太方針第三弾においてで
あり、当初の小泉政権のデフレに対する認識は甘かったと言わざるを得ない。先にも
触れたが、小泉政権が中期的な財政健全化目標を堅持するのであれば、大幅な財政出
動によらないミクロの経済活性化策の推進が不良債権処理と同程度以上の優先順位を
持って実施されるべきであったといえる。さらに、道路公団民営化や郵政民営化が構
造改革において高いプライオリティーを与えられているが、こうした公的部門の改革
は官から民へと資金の流れを変えることがひとつの目的とされているが、日本経済再
生の上でいかなるプラス効果を持つのかは必ずしも明確に説明されてはいない。デフ
レ克服と構造改革の関係、構造改革相互間の整合性、優先順位が不明確であったこと
が改革の成果が目立って現れていない要因の一つといえよう。

第三に、小泉改革の目標が市場経済原理の貫徹にあるにもかかわらず、公的管理の色
彩が却って強まっている理由は、旧来型の弱者救済的発想の政策運営が未だに幅を利
かせていることにある。公的関与にはその期限、退出などのルールが必要になる。私
たちが問題視しているのは、こうしたルールが定められないまま国民負担の問題が曖
昧にされ、「痛み」の回避策として中小企業に対する過度な信用保証や政府系金融機
関の関与などが進められていることだ。小泉内閣が目指す「市場経済化」の方向とは
明らかに逆行しているように見える。

この背景には国がセーフティーネットとして行うべき最低限の施策、すなわちナショ
ナル・ミニマムはどこまでかという明確な線引きがなされていないことがある。不良
債権の処理促進と中小企業に対する手厚い保護、金融行政における大手銀行と中小地
域金融機関のダブルスタンダード、雇用面における戦略性の乏しいセーフティーネッ
トの拡充、補助金削減と税源移譲を巡る国と地方の対立・綱引き、基礎年金のあり方
を巡る本質的議論の欠如、これらはすべて市場経済原理の対極に、国民各層の自立と
自己責任原則の貫徹がなければならないという当然の帰結が見落とされていることの
証左である。小泉改革を称して将来のわが国経済社会のあるべき姿が見えないとの批
判があるのも、こうした政策間の整合性と曖昧さが背景になると考えられる。

                          ──次号へつづく──


●みなさんのご意見はこちらからお寄せ下さい。
https://www.genron-npo.net/x_form/contact.php

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■ 言論NPOシンポジウム
  「ニッポンNPOは民の主役になりえるか―民の可能性と役割を再考する」ご案内
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パブリックの役割を民が担うため、日本には多くのNPOが存在し、挑戦が始まってい
ます。しかし、日本のNPOの動きが、民の可能性をドラステッィクに変え、NPOが民
の分野でメジャーな担い手になる方向は見えていません。日本のNPOのどこに問題が
あるのか。それを考えながら、私たちは日本の大きなシステム転換の中で、民の可能
性、力をもっと幅広く考え直してみたいと考えました。言論NPOは3月15日夜、新し
い日本のNPOの可能性に向けて議論を行います。


            - 記 -

◆日時  2004年3月15日(月) 午後6時半~9時
◆場所  日本財団ビル 2階 大会議場
     (日本財団ビル: 東京都港区赤坂1-2-2 TEL: 03-6229-5111)
◆テーマ ニッポンNPOは民の主役になり得るか―民の可能性と役割を再考する
◆入場  無料
◆プログラム
【日本における民の可能性とNPOの役割】
 北川正恭(早稲田大学大学院教授、言論NPOアドバイザリーボードメンバー)

【パネルディスカッション】
 パネリスト:上山信一(慶應義塾大学教授)
       田中弥生(東京大学工学部助教授)
       増田秀暁(株式会社スワン取締役)
       北川正恭(早稲田大学大学院教授)
 司会:   工藤泰志(言論NPO代表)


◆詳細、お申込みはこちらからお願いいたします。
https://www.genron-npo.net/about/history/040315_nposympo.html


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■ 言論NPO 第3回アジア・シンポジウム
  「日本のパワーアセスメント―日本の将来設計に向けて」ご案内
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言論NPOは、日本の可能性を冷静に分析し議論しながら、私たちが望めるような国づ
くりの選択肢を提起したいと考えています。その議論公開の場として3月16日(火)
「日本のパワーアセスメント―日本の将来設計に向けて」と題したシンポジウムを開
催します。

これまでの議論を踏まえ「日本の強さ弱さ」のマッピングを提案し、その仮説をもと
に「日本のパワーアセスメント」の議論、そして「目指すべき日本の将来」について
の議論と問題提起を国内外の有識者を交えて行いたいと思っています。

日本の将来に向けた議論の積極的な発展のために、是非、私たちの試みにご参加いた
だければ思います。


            - 記 -

◆日時  2004年3月16日(火) 12:30~18:00
◆場所  経団連会館 14階 経団連ホール
     (経団連会館: 東京都千代田区大手町1-9-4 TEL: 03-5204-1757)
◆テーマ 日本のパワーアセスメント―日本の将来設計に向けて
◆入場  無料
◆プログラム
【第1セッション】『日本の強さ弱さをマッピングする』
 パネリスト: 周基仁(北京大学教授)
        ステファン・レオン(マレーシア戦略国際研究所(ISIS)副所長)
        韓国で交渉中
 コーディネーター:国分良成(慶應義塾大学教授、東アジア研究所所長)
        議論提起 アジア戦略会議メンバー

【第2セッション】『何が日本の強さと弱さなのか』
 パネリスト: 宮内義彦(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長)
        榊原英資(慶應義塾大学教授、元大蔵省財務官)
        チャールズ・レイク(アメリカンファミリー生命保険会社社長)
        その他交渉中
 コーディネーター:横山禎徳(社会システムデザイナー)

【第3セッション】『日本は将来、どんな国を目指すべきか』
 パネリスト: 寺島実郎(株式会社三井物産戦略研究所所長)
        山崎正和(劇作家、評論家、言論NPOアドバイザリーボード)
        横山禎徳(社会システムデザイナー)
 コーディネーター:福川伸次(電通顧問、言論NPOアジア戦略会議座長)


◆詳細、お申込みはこちらからお願いいたします。
https://www.genron-npo.net/about/history/040316_sympoanno.html

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  ┏━━━━━━━━━━━━ 会員募集 ━━━━━━━━━━━━━┓
   言論NPOは、ウェブサイト以外に、出版、政策フォーラム、
   シンポジウムなど、多様な活動を展開しています。

   ●言論NPOの3つのミッション
   1. 現在のマスコミが果たしていない建設的で当事者意識をもつ
     クオリティの高い議論の形成
   2. 議論の形成や参加者を増やすために自由でフラットな議論の場の
     形成や判断材料を提供
   3. 議論の成果をアクションに結び付け、国の政策形成に影響を与える

   この活動は、多くの会員のご支援によって支えられています。
   新しい日本の言論形成に、ぜひあなたもご参加ください。
   https://www.genron-npo.net/guidance/member.html
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 このメールマガジンのバックナンバーはこちらに掲載されています。
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