【vol.101】 増田寛也×北川正恭『なぜ今、ローカルマニフェストなのか(6)』

2004年10月05日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.101
■■■■■2004/10/05
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■ 締切迫る! 10/13 (水)「言論NPOフォーラム」ご案内
■ 増田寛也×北川正恭『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 最終回』


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■ 締切迫る! 10/13 (水)「言論NPOフォーラム」ご案内
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テーマは「ローカル・マニフェストと地方の自立」。今、国と地方の関係が問われてい
るなかで、小泉政権が進める三位一体改革の動きが始まっています。また地方では地
方の先見的な自治体からは有権者との契約に基づき行政を行うローカル・マニフェス
トの運動も始まっています。こうした中で、私たちは有権者本位の地方の自立を進め
るための課題やその進め方、さらに国と地方をめぐる新しい日本の再設計について議
論を深めたいと思います。

今回は、言論NPO会員以外の方もご参加いただけます。ぜひご参加下さい。

            - 記 -

◆日時       2004年10月13日(水) 午後 6:30~8:00(開場6:00)
◆場所       日本記者クラブ 10階Aホール (東京都千代田区内幸町2-2-1)
◆テーマ      「ローカル・マニフェストと地方の自立」a
◆ゲストスピーカー 増田寛也(岩手県知事)
          穂坂邦夫(埼玉県志木市長)
          北川正恭(早稲田大学大学院教授)
◆コーディネーター イェスパー・コール
          (メリルリンチ日本証券株式会社マネージングディレクター)
◆参加費      言論NPO会員:お一人様 2,000円
              一般:お一人様 3,000円


◆詳細、お申込みはこちらからお願いいたします。
https://www.genron-npo.net/about/history/041013_forumanno.html

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■ 対談『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 最終回』
  増田寛也 (岩手県知事) 北川正恭 (早稲田大学大学院教授 (前三重県知事))
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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工藤 ローカルマニフェストは運動のプロセスだと思っていますが、この過程の評価
   というのは、そこがまた難しい。これは今の制度にいろんな意味で矛盾がある
   わけだから。

北川 難しいけれどもやらなければ。増田さんに最初にやってもらっても、初めての
   ことだから試行錯誤だと思う。自治憲章もそうでしょう。だけれども、これで
   地方の自立を高めていこうという運動が起こる、そういうふうにとらえた方が
   いい。国の政治はまさにそこへ行かなくてはならない。国と地方のザインとは
   何かといったら、例えば税制の問題であり、ライフスタイルの問題であり、地
   方と地方の関係、そういうことを議論することにならないと。

増田 そうでしょうね。マニフェストをつくる人間の能力が問われて、今度はそれを
   評価する側の能力が問われる。

北川 それをやっていると永遠に百年河清を待つで、まずつくられたということを僕
   は高く評価する。だから、民間が育ってくるということがとても重要だと思
   う。

工藤 最後の質問ですけれども、こうしたマニフェストの動きの結果、地方の自立の
   最終目標というのは、どう描いていますか。

北川 これは私が先に問題提起してみましょう。私は、地方の問題が統治の規模の問
   題に落ち着く可能性は非常にあると思っています。今の北欧ではいわゆる500
   万人から1000万人規模で、例えば負担と給付の関係を見ても、所得の75%の
   税を払っても大丈夫ということを投票率90%に裏打ちされているように市民が
   決めている。いわゆるバイ・ザ・ピープルが行き渡っているというガバナンス
   が実現している。そうすると、この国も道州制から連邦制という形に移行し
   て、500万から1000万人ぐらいの自立した体制の中で連邦制が敷かれて初め
   て、1億数千万のガバナンスができるのではないか。負担と受益の関係があま
   りにも見えにくいという点について、これから議論の対象になっていくのだろ
   うと思っています。バイ・ザ・ピープルという負担と受益の関係、私の税金は
   ここでこのように使われているということが見えてこないと、自分も参画する
   意欲が薄れてしまう。

増田 今の話は統治機構をどうするかの話だと思いますが、僕は国と地方との関係で
   すから、北東北3県で大体400万、東北6県で1000万。だから北東北あるいは
   東北でいうと、今おっしゃったような500万から1000万の中で、3県、4県、
   あるいは6県の集合体の規模であれば、ちょうどそういう議論ができる単位と
   思っています。

北川 それが工藤さんの言うデザインですね。

増田 ただそれを、例えば四国はどうですか、いや四国は規模が少し足りないから
   中・四国を一つの単位にしましょうとか、そういうのはそれぞれの地域でいろ
   んな考え方があると思うので、それは地域が決めていくことだと思います。私
   が統治機構の概念というときに、一国多制度のような考え方をそこに入れ込む
   かどうか、国の中枢の統治機構、たとえば防衛などは別にしても、それ以外に
   ついては一国多制度のような形、例えばアメリカのように州が変われば税制も
   違うという形を日本でも導入するかどうか、そこがまた大きな分かれ道だと思
   います。今までと違うやり方を地域、地域によってつくり出していくというと
   ころにまで踏み込まないと、次に変わっていけないのではないか。

工藤 これは経営側から見れば、それぐらいだったらマネジメントできるという形と
   いう意味もありますか。

北川 経営側だけではなくて、主権者が見える範囲というか、判断できる範囲という
   のは、理論とは別にして、考えていかなければいけない。例えば今度の市町村
   合併でもそうですけれども、分権自立すべきだということで突き放しておい
   て、100人の役場で企画性が持てるかといったら持てない。だから、規模の問
   題は当然あわせ持っていかないとダメだということが、県レベルにおいても起
   こってくる。それは財源的にももはやそういうことをしないといけない。市町
   村合併も結局そこがかなりの理由となっていますが、県レベルでもそういうこ
   とが起こってくるというのは必然だと思います。

増田 そのときに、あともう1つ、特に国民、あるいは県民に申し上げておきたいの
   は、今のEUの動向をよく見ておいていただきたい。あれだけ規模が大きくなる
   と、各国、各地方の文化が消滅するとか、そういうことをご心配される方が非
   常に多い。今まで全然経験したことがありませんから、非常に抵抗を示される
   方もいますけれども、EUがどういう動きをしているかというと、確かに通貨と
   か出入国管理などは25カ国全体でやろうということになり、さらに共通の憲法
   をつくろうとか、そうしたところまで踏み込んでいます。それはやはりアメリ
   カに対する対抗軸をつくらなければいけないという強い危機意識の中でやって
   いるわけです。

   ところが一方で、文化や生活様式などに関していえば、EU内でも徹底的に地域
   にこだわっている。外部の文化や生活様式が自分の地域に浸透してしまうこと
   まで受容すれば、一極集中が始まって強い者が勝つということになる。だから
   こそEUは、他地域の文化だけは徹底して混ぜないようにしている。だから私
   は、経済合理性からいえば、これから中国との大変な競争が始まる中で、競争
   に勝てるだけの武器を備えなくてはいけないと思いますし、国内的に見ても、
   東京一極集中をこれ以上進めるかどうかが大きなポイントになると思います。
   私は、その流れをこれ以上進めたくないわけです。むしろそうした流れを人口
   減の中で止めてほしいと思っているので、東京の対抗軸ということになれば、
   相当強い連合を各地域につくっていかなければいけない。ただ東北の中で大き
   な固まりをつくったとき、文化や生活様式だけはそれぞれの地域で徹底的にこ
   だわりを持ってほしい。食文化などは残念ながら非常に薄れてしまっています
   が、そうしたら強い者が勝つに決まっている。だから、やはり地域の文化と
   か、生活様式にもっと誇りを持ってほしい。その思いが「がんばらない宣言」
   につながっているわけです。そこだけは絶対に地域のものにこだわりつつ、
   500万人とか1000万人規模の固まりのようなことを、これからそれぞれの地
   域でやっぱり考えてもらいたいし、県民の皆さん方にもいろんな意見を出して
   ほしいと考えているわけです。

北川 一つはヨーロッパでいう自治憲章、これは地方自治の憲法ですね。その点で先
   進的な例が日本でも数県出ていますが、これは自治体が今後大いに考えていか
   ないとならない問題で、まさに地方自治を進めていく上での重要なことだと思
   います。補完性の原理、サブシディアリティーというのも実はマストリヒト条
   約の前文に書かれていて、地域のアイデンティティーをどう残すか、もう一つ
   は文化のアイデンティティー、グローバルになればなるほど、ローカリティー
   をどう残していくかということが問われます。

   自治憲章を地域でつくるだけの能力がないとだめであり、そういう政策立案能
   力もまた、我々に問われているということです。

工藤 こうした議論をこれからも継続していきたいと考えています。今日はどうもあ
   りがとうございました。

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