小泉政権の実績に関する全体総括

2005年9月02日

小泉政権の「官から民」で小さな「効率的な政府」を目指すという小泉首相の理念は基本的に現在の日本における課題解決にとって妥当であり、またこの理念はこれまでの自民党のマニフェストに反映され、その元で政策体系が提示されてきた。

しかし、自民党の場合、その公約の大部分が評価可能な目標設定や政策の体系の提示を伴っておらず、マニフェストと重点政策の関係は十分に整合的ではない。これは、政府と自民党内でマニフェストを中心とした政策決定と実行というマニフェストサイクルが不完成であることを物語っている。

郵貯解散はある意味ではその歪みの是正ともいえるが、郵貯改革が構造改革の本丸ということは理解できても、これが自民党内で遅れているマニフェスト型政策決定の実現に向かうかは現時点で評価できない。

政策面では、構造改革に向かう小泉政権の基本的な方向と政策体系は基本的に評価ができる。小泉政権の実績評価はそのもとで、04年までの不良債権処理を初めとした「集中調整」をほぼ実現し、財政の規律を一応取り戻したが、ほかの大部分の政策は不十分であり、結果的に失敗に終わった国連の常任理事国入りと中国との対立をあおる靖国参拝のように整合性もない行為が繰り返されてきた。

むしろ、私たちは小泉政権に改革の限界を評価の中で痛感している。構造改革を断行するには制度を壊すだけではなく、持続不可能な制度を再設計すること、さらに構造改革の結果、目指すべき社会について説明をし、有権者の間に合意を形成する努力が今の政治には必要不可欠と考えている。

小泉政権与党、自民党と公明党の実績評価総論要旨

「自民党」→総合点43.8点

不良債権処理など集中調整に期間の公約はほぼ達成し、また焦点の郵政改革は関連法案は否決とはなったが、修正でも背骨を抜かれない段階で民営化の設計ができた。ただし、そのほかの年金や道路公団などの改革では、成立した法案などが公約に掲げた「抜本改革」や「民営化」の所期の目的と合致はしておらず、構造改革後に目指す社会、制度の再設計の中身で国民に説明をし、合意形成をする努力が不足。さらに大部分の公約が曖昧で白紙一任状態であり、また各省庁で決定したことが羅列されるだけの完成度が低マニフェストのため、目標対比の実績評価は低評価となった。

自民党の個別政策(20分野)の実績評価はこちら。

「公明党」→総合点28.8点

公約は具体的で生活者の視点で分かりやすい。公明党の自己評価では123項目のうち現時点の達成したのは15項目。大部分の公約が目標達成の手段(インプット)にであり、実質的な達成度は高くはない。構造改革の中身など中核的な政策課題で公約を示せず、連立を組む自民党との政策の対比も示されず、政権公約として不十分だったことが低採点の理由となった。

公明党の個別政策(20分野)の実績評価はこちら。

年金を初めとする社会保障や三位一体、さらの財政再建ではその課題解決に向けてのビジョンや道筋を描くことが必要であるが、公約の実行過程を見る限り、まだ小泉政権はそれらを描けていないことがはっきりしている。それが、実質的に課題解決の先送りとなり、国民への後だし説明になり、マニフェストの曖昧さにつながっている

小泉政権の「官から民」で小さな「効率的な政府」を目指すという小泉首相の理念は基本的に現在の日本における課題解決にとって妥当であり、またこの理念はこれまでの自民党のマニフェストに反映され、その元で政策体系が提示されてきた。