総選挙での自民党、民主党、公明党のマニフェスト評価

2005年8月30日

〔自民党〕⇒総合点42.6点(政策分野20分野の平均点)

「郵政民営化」だけを事実上の争点とし、「120の約束」の他の公約は従来の政府方針などを並べた程度。数値目標や施策体系、ロードマップは大部分で描かれず、改善の努力なし。重点政策との整合性も完全ではなく、マニフェスト型政策決定のプロセスが党内で十分確立していない。

優先課題を郵政に絞ることは間違いではないが、法案が否決された以上、政府案をマニフェストでは十分説明すべきだが、それがなされていない。また、郵貯で党改革が進んだと説明するが、大部分の政策の決定は官庁や部会などで縦割りで進み、調整ができておらず、それが曖昧な公約の背景となっている。

内閣と党の一元的な政策決定と実行は、首相主導で進んだ郵貯改革以外見られず、郵貯改革で、自民党が改革政党になるかは現段階で判断はできない。選挙後、すぐにも政府部内で議論が始まる財政再建や社会保障関連は民主党と比べて解決の道筋は全く提起できておらず、「歳入--歳出一体改革」でもう避けられない状況となっている増税の問題では具体的な説明をしようとせず、またぞろ公約の「後だし」を繰り返そうとしている。

〔民主党〕⇒総合点43.3点(政策分野20分野の平均点)

マニフェスト、8つの約束(重点政策)、岡田政権500日プランともマニフェスト型政治の実現で整合性を持っており、内容の不十分さはあるもののマニフェスト型政策決定のプロセスが党内で確立しているように見える。目指すべき社会の理念とそのための優先的な課題も提案され、目標も大部分で明示されている。

ただ、政策面では党内の立場の差を反映してか、例えば食料政策で農家に補助金をばら撒くなど、農業の生産性をあげるための改革と逆行している側面も目立つ。

また、自民党が最優先課題に挙げた郵政での政策では改革の道筋は描いたが、民営化の是非、さらには公社方式を継続する場合の国民負担の水準や預金受け入れ額の引き下げを軸とした郵貯水準の減少に伴う経営のイメージを打ち出せず、結果的には郵貯民営化について判断の先送りをしている。

民主党のマニフェストは完成度という点で自民党などと比べはるかに高い。だが、総合点では自民党とそう差がつかなかったのは、郵貯改革での公約で出遅れたほか、民主党もまた国民の負担(増税)という点で説明不足であること、さらに財政再建や三位一体、年金などで改革の道筋は描いたが、その実行でまだ十分な信頼性を持つ説明ができていないことが背景にある。自民党は郵貯での党内調整で分裂という事態になたが、労組などを基盤に持ち、安全保障などでも考えの違いが党内で見られる中、民主党にもその実行の担保で疑問が残った。

〔公明党〕⇒総合点38.6点(政策分野20分野の平均点)

生活の視点からの政策提案は今回も貫き、これまで自民党に依存してきた骨太の政策もわずかだが公約に書き込んだ。だが、連立前提で自民党の政策との補完的な立場をとるならば、アジア外交、安全保障など骨格的な政策で自民党の政策を受け入れるのかの判断についても説明すべき。連立重視で郵政改革を冒頭に掲げたが、郵貯改革を構造改革の本丸と説明しながら、構造改革関連の政策はマニフェストにはほとんど書かれていない。

〔自民党〕⇒総合点42.6点(政策分野20分野の平均点)
〔民主党〕⇒総合点43.3点(政策分野20分野の平均点)
〔公明党〕⇒総合点38.6点(政策分野20分野の平均点)