【論文】適応か停滞か ―日本のジレンマ―

2003年4月30日

pempel_p030423.jpgT. J. ペンペル (カリフォルニア大学バークレー校教授、同校東アジア研究所長)
T.J.Pempe Ph.D.

1972年コロンビア大学でPh.D取得。コーネル大学、ワシントン大学ジャクソン国際問題研究所教授を経て、2001年よりカリフォルニア大学バークレー校教授。2002年より同校東アジア研究所長。著書に『The Politics of the AsianEconomic Crisis』『Regime Shift:Comparative Dynamics of the Japanese Political Economy』等。

概要

短期的な競争力の喪失は、長期的な結末につながる可能性がある。アジアの政治経済に詳しいカルフォルニア大学バークレー校のT.J.ペンペル教授は、日本が経済問題への真剣な対応を先送りにすればするほど、隣国からの遅れを取り戻すことは難しくなり、解決も困難になると指摘する。アメリカがかつてそうしたように、日本も新しい発想で、過去ではなく現在の強みを活かした変化を目指し、外国との相互関係を考え直さなくてはならない。

要約

経済困難に陥っている日本の問題解決は、アメリカの経済慣行の採用にあると提案するつもりはないが、アメリカの経験にも日本が学ぶべき点はある。競争力の喪失が進んだ日本は今や、雁行形態の中で、あまねく認められた先頭の飛雁ではもうない。景気回復に手間取るだけ、日本が遅れを取り戻すのは難しくなり、解決のコストが膨らんで日本の次世代に引き継がれていく。問題解決のスピードが死活問題になっている。かつてうまく機能した日本のモデルは、もう同じような成果をあげられず、過去のやり方を見直して、モデルの中で今なお適切な要素は残し、障害と化したものを切り捨てる必要がある。グローバリゼーションとは、世界中に発信源を持ち、日本はその受け手であるのと同様、促進者にもなり得るという、双方向の両面交通の道路である。しかし、日本は外国に門戸を開くことに立ち後れ、未だにどの国にも見られないような多くの障害を外国人に対して設けている。アメリカの復活は、一つの政策や思想ではなく、いくつかの一見多様でばらばらな、しかし究極的には相互に結びついた、異なる分野における行動がもたらした。その過程では、政治的対立や、抜本的かつ痛みを伴う過去からの決別が求められた。そして、変化には、アメリカと広い世界との関係についての根本的な発想の転換が必要だった。アメリカは、過去ではなく現在のアメリカの強みを活かし、よりダイナミックなギブアンドテイクを外国と始める方が得策だと考えを改めたのだ。日本も外国との相互関係を考え直さなければならず、冷静かつ率直に、現在の日本の資産・負債と新たな世界の状況を見つめることが必要だ。今後も日本の強さの源泉となり得る資産を新たな強みに変える過程では、新鮮な発想と新たな展望が必要であり、その源は、若者、女性、外国人、非政府組織(NGO)の4つにある。今重要なのは、日本の権力内部のサークルが、このような、これまで伝統的に歓迎しなかったものからの入力に門戸を開くことだ。


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