【座談会】政治主導の政治決定システムは可能か

2002年3月16日

根本匠氏根本匠(衆議院議員)
ねもと・たくみ

1951年生まれ。74年東京大学経済学部卒業。建設省(現国土交通省)入省。各局で都市政策、米国で都市政策研究を経て、93年より衆議院議員。厚生政務次官、党国対副委員長を経て、現在、党行革本部次長等。著書に「日本経済起死回生トータルプラン」、「21世紀の政権構想」等。

曽根泰教氏曽根泰教(慶應義塾大学大学院教授)
そね・やすのり

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、21世紀臨調政治会議主査。1948年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了。政治学、政策分析を専攻。著書に『決定の政治学』(有斐閣、1984)、『現代の政治理論』(放送大学、1989)、共著に Politica Dynamics in ContemporaryJapan (Cornell University Press,1993)、『政治学』(有斐閣、1996)、『この政治空白の時代』(木鐸社、2001)など。

山本一太氏山本一太 (参議院議員)
やまもと・いちた

1958年生まれ。中央大学法学部卒。米国ジョージタウン大学大学院にて国際政治学修士号取得。国際協力事業団(JICA)等を経て、95年より参議院議員。参議院自民党副幹事長、遊説局長等を歴任後、99年第2次小渕内閣の外務政務次官に就任。現在参議院外交防衛委員会、国際問題に関する調査会理事、自民党外交副部会長、青年局次長等。

概要

国家戦略本部は、政治システム改革案を発表した。総理のリーダーシップと官邸機能を強化し、政府主導の政治決定システムを構築するのが狙いだ。政と官の相互依存体質が問題になっている鈴木宗男氏の問題では、さっそく総理がリーダーシップを発揮し、悪弊を断ち切ることができるかが問われている。改革案の起草に携わった根本匠衆院議員と山本一太参院議員が、政治学の第一人者・曽根泰教慶大教授を交え、激しい議論を交わした。

要約

3月13日、国家戦略本部が発表した政治システム改革案と緊急アピールは、総理大臣のリーダーシップと官邸機能を強化し、内閣主導の政治決定システムを構築することを主なテーマに掲げている。事前審査の全会一致を多数決に変え、党議拘束を部分的に解除するというくだりはその代表例だ。根本・山本両代議士は事前審査制を廃止するだけでは改革は進まず、与党と政府を一体化し、国会の機能が停滞しないようなルール作りも必要になると言う。いっぽう曽根教授は「並行審査」、すなわち与党と政府による同時審査システムの導入を主張する。

こういった政治主導による政治改革の断行が議論されるなか、鈴木宗男代議士の問題がもち上がった。鈴木代議士は役所に圧力をかけ、地元に利益を誘導するという古いタイプの政治家、「陳情型政治家」の典型例だという見方がある。しかし、戦後長らく続いてきた「官」と「民」の相互依存体質という、構造的な問題の一角に過ぎないとも考えられるのではないか。法案を通すために声の大きい議員に対応せねばならない官僚。逆に、官僚に頼らねば政策の一つも作れない国会議員。このような現状を変えないかぎり、根本的な政治家改革は望めない。政治家は官僚から完全に独立せねばならない。官僚はあくまで政策オプションを提示する役割で、政治家が具体的な決定権を行使し、責任を負うというシステムを早急に作ることが求められている。

加藤紘一代議士の問題では、総裁選に出るために莫大なカネがかかる旧来のシステムがクローズアップされた。しかし、この問題が露見したのは、有権者の意識が変わり、カネの力では求心力を維持できなくなってきていることの表れではないか。鈴木代議士の件も、加藤代議士の件もあいまいにせず、改革のために旧弊は断固として潰していくのだと、首相自身がハッキリと意思表示せねばならない。


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 国家戦略本部は、政治システム改革案を発表した。総理のリーダーシップと官邸機能を強化し、政府主導の政治決定システムを構築するのが狙いだ。政と官の相互依存体質が問題になっている鈴木宗男氏の問題では、さっそく総理がリーダーシップを発揮し、悪弊を断ち切ることが