安倍政権4年実績評価 専門家コメント【財政再建】

2016年12月28日

私も評価に協力しました

小黒一正
法政大学
経済学部 教授

亀井善太郎
東京財団研究員
立教大学大学院特任教授

国と地方の基礎的財政収支について、2015年度までに10年度に比べ赤字の対GDP比を半減、20年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
小黒一正氏
内閣府は2016年7月の経済財政諮問会議において、「中長期の経済財政に関する試算」の改訂版を公表しており、同試算によると、楽観的な高成長の「経済再生ケース」でも、政府が目標する2020年度のPB黒字化は達成できず、約5.5兆円の赤字となることが明らかになっている。このような中、2017年度予算において、社会保障関係費を含む一般歳出の伸びを計画通りに抑制できたことは評価する。他方、2016年度の補正予算では、財務省は2016年度の税収を当初57.6兆円と見積もっていたが、法人税を中心に約1.7兆円下振れし、赤字国債を約1.7兆円増発する事態に陥った。税収見積もりの下方修正は、リーマン・ショックの影響で景気が低迷した2009年度以来、7年振りであり、この主な原因の一つに「景気循環」である可能性がある。現在の景気拡張は安倍政権発足直前の2012年11月からスタートしたが、過去の拡張期平均である約3年を既に超えていることから、景気拡張期はいつ終わってもおかしくない。以上の理由から、現状の財政再建では目標達成は難しく、目標達成のためには、財政・社会保障の抜本改革のスピードを上げていく必要がある。現状では、2020年度までのPB黒字化は不可能に近い。
亀井善太郎氏
消費税率引き上げの先送りにより、20年度までの黒字化、また、その後の債務残高の安定的なコントロールの道すじをまったく描けていない。また、先送りによって、政治の場での検討、社会的な合意の機会を失わせている。2025年以降、団塊世代が後期高齢者となり、医療や介護に関する負担の増大が明らかであるにも関わらず、きわめて無責任な対応である。
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消費税率10%への引き上げは2019年10月に行う


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
小黒一正氏
2019年10月の消費税率引き上げについては、2019年度予算が決まる2018年12月頃までに政治判断すると考えられ、現時点では評価不可能であるが、上記の景気循環もあることから、2015年10月や2017年4月に引き上げておいた方が良かった可能性も高い。
亀井善太郎氏
現時点では、状況は不透明であり、判断できない。ただ、これまでの経緯を見れば、この引き上げも先送りする可能性が高いのではないかと思われる。

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2019年10月に消費税の軽減税率を導入する


点数
5点満点

評価理由に関するコメント
小黒一正氏
軽減税率の導入は消費税率引き上げと一体であり、消費増税については、2019年度予算が決まる2018年12月頃までに政治判断すると考えられることから、現時点では評価不可能。なお、軽減税率はその対象となる財・サービスの品目と対象外の品目との線引きが困難であること等、非効率な制度であることから、給付付き税額控除での対応を含め、再検討が必要。
亀井善太郎氏
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そもそも、軽減税率は、政策の目的とされる低所得者向けの対策としては適切な政策手段ではないことは諸外国の経験から明らか。それにも関わらず、これを選択している時点で評価に値しない。
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評価コメントは以下の基準で執筆いただきました

・すでに断念したが、国民に理由を説明している
1点
・目標達成は困難な状況
2点
・目標を達成できるか現時点では判断できない
3点
・実現はしていないが、目標達成の方向
4点
・4年間で実現した
5点

※ただし、国民への説明がなされていない場合は-1点となる

新しい課題について

3点

新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目的や目標、政策手段が整理されているもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの
(目標も政策体系が全くないものは-1点)
(現在の課題として適切でなく、政策を打ち出した理由を説明していない-2点)