【国と地方】 増田寛也氏 第6話: 「交付税改革と地方の破綻法制について」

2006年6月27日

増田寛也氏増田寛也 (岩手県知事)
ますだ・ひろや
profile
1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少の知事として現職に就く。「公共事業評価制度」の導入や、市町村への「権限、財源、人」の一括移譲による「市町村中心の行政」の推進、北東北三県の連携事業を進めての「地方の自立」、「がんばらない宣言」など、新しい視点に立った地方行政を提唱。

交付税改革と地方の破綻法制について

  三位一体改革の次にテーマに向けて様々な議論が始まっています。竹中総務大臣の下には、地方分権21世紀ビジョン懇談会(大田弘子座長)がありますが、そこで議論されている地方の破綻法制などについてはあまり違和感はありません。

 地方の財政規律を市場の規律で貸手責任も含めてやっていくというのは、自治体が本当に自己責任の体制になれば当然要求される話です。過去債務といったところには及ぼさないという話ですので、言葉は破綻と言っていますが、再建型のかなり会社の再建に近いような仕組みを考えているのであれば、それはそれで議論すればいいのではないかと私は思います。

 大事なのは、現行の交付税という制度についてどうするかです。地方財政計画で総額を出して、その不足分を交付税で埋めるという現行のシステムをどうすべきかについては、色々な議論があります。そのようなことはやめて、歳入だけを保障したらどうかという議論もありますし、不足分の計算の積み上げの基礎となる基準財政需要額というのはいったい何かという議論もあります。今までそういうところに手をつけていませんから、そこは時間をかけても、研究はすべきだと思います。

 その場合、重要なのは、まずそういう交付税の総額確保さえ言っていれば何か自治が守られるようなことを、地方自治体側も言わないようにするということです。そして、透明性が低く、公共事業を誘導するために飴玉として使われていると言われている部分を自己改革的に変えていけば、あとは交付税というのは中間的な歳出ですから、最終的に、住民が何に使うかということについては、やはり自治体が知恵を絞るべきですし、交付税の総額だけを減らしても駄目で、歳出のところを無駄遣いしないということを、みんなでチェックして考えていくということでしょう。

 交付税のあり方は本当に精緻にやればやるほど、制度は複雑になりますから、その積み上げと、一方で、人口と面積といった指標を前提にして、ある一定の自治体ごとの歳入を保障するような仕組みとを、作り出して突き合わせていく。最後は、それで整合がとれるようなところに落ち着くような気がします。ただ、そこに、財政規律とか透明性、貸し手側のインセンティブといった様々な要素をどこまで持ち込めるのかという問題はあります。

 ただ、セーフティーネットに必要なミニマムの議論から見れば、やはり、地方には財源が不足している部分もあります。ですから、本当に人口と面積だけで必要な財政需要を計算すれば、あまりにもラフになってしまうと思います。そういうところで算定する割合を意識しつつも、本当に制度設計で検証してみて、確かにこの地域には最低限のものは保障されているというものが出てくれば、本当に不足する部分も見えてくるはずです。

 しかし、現在の交付税の配分が、翌年から急激に変わるのは良くないと思います。やはりこれは、10年がかりの作業になって、順次実現していく話です。

 また交付税は法定率だけでは足りないので、一般会計からの加算とか交付税特別会計の借入れで賄ってきた部分があります。過去に借りた分は返さなければならず、それをやろうとすると財政破綻してしまうということが、問題なのです。ですから、財政規律を持ち込みつつも、それは将来に向けてのこととして、時間をかけてやっていくという考え方で制度設計をして欲しいと思います。


※第7話は6/29(木)に掲載します。

三位一体改革の次にテーマに向けて様々な議論が始まっています。竹中総務大臣の下には、地方分権21世紀ビジョン懇談会(大田弘子座長)がありますが、そこで議論されている地方の破綻法制などについてはあまり違和感はありません。