【国と地方】 増田寛也氏 第2話: 「地方が自ら考える、分権の一歩は始まった」

2006年6月19日

増田寛也氏増田寛也 (岩手県知事)
ますだ・ひろや
profile
1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少の知事として現職に就く。「公共事業評価制度」の導入や、市町村への「権限、財源、人」の一括移譲による「市町村中心の行政」の推進、北東北三県の連携事業を進めての「地方の自立」、「がんばらない宣言」など、新しい視点に立った地方行政を提唱。

地方が自ら考える、分権の一歩は始まった

 三位一体改革は補助金が減った代わりに、税源移譲が住民税で行われました。全体では数字の辻褄は取れましたが、損得勘定だけで考えると、自治体によっては補助金も減り、住民税も減るということもあります。岩手県も大変な損です。

 しかし、物事を進めていくには、ある種の覚悟を決めなければならないのだと私は判断しています。

 国が嫌がる税源移譲を3兆円は取りましたが、補助金の削減では自分たちが作ったリストに入っていないものがたくさん出てきたわけです。自治体の仲間からは怒られるかもしれませんが、相手と戦っていく上では、こうした国の対応を飲み込むだけの覚悟をしていなければ、物事は進まないのです。

 岩手でも住民からは大変なマイナスになったと言われます。しかし、そういう過程を経ないと前には進まないのです。この改革の中で私たちも議論を行ったし、住民にもいろいろなことがわかったはずです。

 地方財政の姿が今どういう構造になっているのか。また、中央省庁が色々な縛りをかけているということも、そこで理解をされた。例えば、保育所などいくつかのものについては、自治体の方で物事を決められる。そういうものもはっきりとしてきた。これに対して中央省庁が絶対に手をつけさせなかった公共事業のような分野があります。

 それは戦ってみて初めて、向こうのガードの厚さとガードの薄さというものが分かってくるわけです。

 やはり、最後は地方は自分たちの税収で物事をやっていきましょうということですから、そういう過程を経て、中央省庁でこれまでやってきたことも今度は全部、自分たちでやっていかなければいけない。

 今までは、失敗した責任を中央省庁におっかぶせているケースもあったのが、そうは言ってはいられなくなる。そうした問題に対して、中央のガードの厚さ、薄さのようなものを自分たちで判断することが、今度のことでより明らかになってきたと私は思います。

 つまり、地方は自らの頭で考えることが必要になっている。その一歩には間違いなくなったと私は判断しているのです。


※第3話は6/21(水)に掲載します。

三位一体改革は補助金が減った代わりに、税源移譲が住民税で行われました。全体では数字の辻褄は取れましたが、損得勘定だけで考えると、自治体によっては補助金も減り、住民税も減るということもあります。岩手県も大変な損です。