言論NPOと中国国際伝播集団は「第19回日中共同世論調査」の結果を公表世界の核戦争の可能性について、中国国民が初めて言及しました

2023年10月10日

 非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)と、中国国際伝播集団(総裁:杜 占元)は、2023年10月10日、「第19回 東京-北京フォーラム」の開催に先立ち、「第19回日中共同世論調査」の結果を公表いたしました。今回の調査は、今年の8月下旬から9月下旬にかけて実施しました。

 今回の世論調査は昨年に続いてロシアのウクライナ侵攻や台湾海峡についての中国国民の意識が分かるほか、世界の核戦争の可能性について、さらに、調査期間中に実施された福島第一原発の処理水についても、日中両国民の認識が明らかになっています。

 詳細な調査結果は、言論NPOウェブサイトで公開いたします。報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。



【主なポイント】

日中平和友好条約について、両国民の半数近くが「機能していない」と回答。中国にはこの条約を改善すべきとの声が6割を超える

 今年は、日中平和友好条約の45周年の節目の年ですが、この条約が「あまり機能していない」「すでに形骸化している」とする日本人は41.2%となり、「わからない」(51.2%)を加えると、日本人の9割がこの条約を評価していないとの結果でした。一方、「あまり機能していない」「既に形骸化している」と回答する中国人も6割近く(59.1%)となり、日中両国民の多くは、日中平和友好条約に厳しい見方をしています。この条約が機能していないと判断した人に、その理由を尋ねると、日本人で最多となったのは「両国間に軍事的な対立や不安が存在するのに、この条約に基づいて解決する努力がない」(30.3%)で、中国人で最多となったのは「平和と繁栄に責任を持つという国交正常化以来の外交努力がない」(45.7%)となり、日中両国民とも外交努力の附則を指摘する声が最多となりました。

 さらに、この状況をどのように打開するのかについて、日本人では「政府間で改めてこの条約の意味を確認し合う」が34.5%で最多となり、中国では「条約の機能化のために首脳間で新しい文章の合意や条約に付帯決議を付け加える」が、43.5%で最も多い回答となっています。中国側には「新たな条約を作り直す」も18.1%もあり、この条約を改善すべきとの声は合わせると6割を越えています。


中国人の半数を超える人が、世界で核戦争が起きると回答し、その理由としてロシアのウクライナへの対応を挙げる

 ウクライナ戦争が長期拡大し、世界が未だにそれを止められない状況にある中、米中対立が世界を分断する傾向にあります。こうした中、今後の世界における核戦争勃発の可能性について、近年中あるいは遠くない将来に「あり得る」と考えている中国人は52.6%と半数を超え、日本人も39.9%と4割近くに達しました。その理由を尋ねたところ、日中両国民共に、「ウクライナ戦争で、核保有国のロシアが核の使用を示唆し、原発を攻撃するという、これまでに考えられなかった事態が起こったから」という回答が最も多く、特に日本人では57.6%で突出しています。(中国人は34.7%)

 北朝鮮の核、ミサイル開発に関しては中国側も関心を持っており、「日中が協力して対処すべき」と回答する日本人は50.9%、中国人は48.9%とそれぞれ半数程度が、共同での対処を支持しています。


福島処理水について中国国民で心配する声はあるが、日中関係の障害と考える人は5.8%にとどまる

 福島原発の処理水放出問題では、中国人で「大変心配している」(22.1%)、「ある程度心配している」(25.5%)との回答は47.6%と半数近くとなり、日本人も併せて33.2%が心配しているとの結果でした。一方で、処理水問題が日中関係の障害となるかでは、日本人の36.7%が日中関係の障害になると回答するものの、中国人では5.8%にとどまっています。


日中両国の政府首脳は「適切な時期に相互訪問を行うべき」が半数に迫る

 今後の日中関係の向上について、日中関係の今後に関する協議」が必要だと考える中国国民は25.6%で、首脳同士や政府間の信頼向上を上回りました。「日中関係の今後に関する協議」を選ぶ日本国民も19.3%と2割、存在しています。

 さらに、政府首脳の相互訪問に関しても、「適切な時期に相互訪問を行うべき」が日本国民は45.9%(昨年は22%)、中国国民は49.7%(同28.1%)と昨年から20ポイントも大幅に増加しており、国民の中に、現在は対立でしか語られない日中関係を、どのような関係にしていくのか、骨太の議論が求められ始められていると考えられます。


相手国に対する印象はこの一年で悪化し、日本人は9割を超える

 今の日中関係が「悪い」と見る日本国民は68.4%と昨年の56.2%から12ポイントも大幅に悪化、中国国民も「悪い」が41.2%あり、改善傾向にあった昨年の37.7%から、再び悪化に転じている。

 同時に、日本国民の中国に対する印象はこの一年でさらに悪化し、日本人の92.2%(昨年87.3%)、中国人の62.9%(昨年62.6%)が相手国に対してい「悪い」印象を持っており、相手国への印象は改善していません。その理由として、昨年よりも大幅に増加したのは、日本人は「中国メディアが反日報道を繰り返すから」の40.7%(昨年21.9%)、中国人では「日本が一つの中国の原則に消極的な態度を示すから」が37.3%(昨年26.5%)、「外交において米国に追随する行動が理解できないから」が27.6%(昨年21.1%)となった。


共同世論調査の主な結果は以下の通りです。

日中平和友好条約45周年について


日中平和友好条約について、両国民の半数近くが「機能していない」と回答

今年が日中平和友好条約の締結45周年であることを「知っていた」日本人は17.8%と2割に満たないが、中国人では52%と半数が「知っていた」と回答している。

 全ての紛争を平和手段で解決する、武力による威嚇に訴えないことなどを内容としているこの平和友好条約が、現在「機能している」と評価している日本人は7.4%に過ぎない。「あまり機能していない」(29.1%)、「既に形骸化している」(12.1%)の二つを合計すると、日本人の4割がこの条約は機能していない、とみていることになる。この条約を知らないも含め、機能しているか「分からない」も51.2%と半数を越えており、9割がこの条約の意義を理解できないでいる。

 中国人でも「あまり機能していない」と「既に形骸化している」を合わせると59.1%と6割近い。ただ、「機能している」との見方も34.6%ある。

 その「機能していない理由」としては、日本人で6割、中国人で7割は両国政府の外交努力の欠如を問題視している。「条約締結当時と環境が変わった」という外的要因を理由とする人は日本人で24.8%、中国人で14.5%に過ぎない。


中国にはこの条約を改善すべきとの声が6割を超える

 この平和友好条約を機能させるために何をすればいいのかという点については、日本人では「この条約の意味を確認し合う」が34.5%で最も多いが、中国人では「新しい政治文書あるいは付帯文書」が必要との見方が43.5%で最も多い。これと「新たな条約を作り直す」の18.1%を合計すると中国人の6割超は、現行条約のアップデートが必要だとみていることになる。さらに、「破棄」すべきとの回答も14.7%ある。



世界の核問題について


中国人の半数を超える人が、世界で核戦争が起きると回答し、その理由としてロシアのウクライナへの対応を挙げる

 今後の世界における核戦争勃発の可能性について、近年中あるいは遠くない将来に「あり得る」と考えている中国人では52.6%と半数を越えており、日本人も39.9%と4割近くになっています。、

 その「あり得る」理由としては、日本人、中国人ともに「ウクライナ戦争で、核保有国のロシアが核の使用を示唆し、原発を攻撃するという、これまでに考えられなかった事態が起こったから」という回答が最も多く、特に日本人では57.6%で突出している。中国人では「威力が小さいために『使いやすい核兵器』の小型核の配備が保有国で進んでいるから」も26.4%と3割近く、共にウクライナ戦争でロシアの行動を問題視する声が広がっています。「北朝鮮が核開発を進めており、世界がそれを抑止できない状況になっている」を問題視する声は日本人で17.8%、中国人で13.3%います。

 核兵器不拡散条約(NPT)体制の下、国際的な核兵器の拡散を防止する上でその動向を最も懸念している国を選んでもらったところ、日本人では「北朝鮮」という回答が62.9%で突出している。一方、中国人では「北朝鮮」を挙げた人は11%にとどまり、「日本」が36.3%で突出しています。


北朝鮮の核・ミサイル開発に対して日中両国で協力すべきとの声が両国民で半数近くに達する

 北朝鮮の核・ミサイル開発が進む中、まず日本調査のみ北朝鮮の非核化の可能性について質問した。その結果、43.5%と4割を超える日本人が「不可能だと思う」と判断している。「不可能ではないが困難だと思う」が37.9%となり、「可能だと思う」は3.3%に過ぎない。

 次に、北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、日本と中国は協力して対処していくべきかを訊ねたところ、日本人の50.9%、中国人の48.9%が「そう思う」と回答している。ただ、中国人では「そう思わない」という人も23.7%いる。



福島第一原発処理水海洋放出問題について


福島処理水について中国国民で心配する声はあるが、日中関係の障害と考える人はわずか

 福島原発の処理水放出問題では、中国人で「大変心配している」(22.1%)、「ある程度心配している」(25.5%)との回答は47.6%と半数近くとなり、日本人も併せて33.2%が心配しているとの結果でした。一方で、処理水問題が日中関係の障害となるかでは、日本人の36.7%が日中関係の障害になると回答するものの、中国人では5.8%にとどまっています。



日中関係の重要性


日中関係の重要性をどう見ているか

 日中関係を「重要」だと考える日本人は65.1%となり、昨年の74.8%から9.7ポイントも減少した。中国人でも、「重要」という回答は71.2%から60.2%へと11ポイント減少し、調査開始以来、最低となったが、いずれも6割は維持している。

 「重要」と考える理由で、日本人で最も多いのは「重要な貿易相手だから」の60.8%で、「アジアの平和と発展には日中両国の協力が必要だから」は昨年よりは後退したが、4割を超えて、続いている。中国人は、昨年は73.7%で突出していた「隣国同士だから」という一般的な認識が39.5%に減少し、「重要な貿易相手だから」が54.6%で最多の理由となった。ただ、「アジアの平和と発展」を選んだ中国人は41.6%から22.8%へと18.8ポイントも減少した。


日中関係の向上について、日中両国の政府首脳は「適切な時期に相互訪問を行うべき」が半数に

 日本人の6割近くが日中関係向上のためには「首脳同士の相互信頼の強化」と「政府間の信頼向上」という政府レベルでの関係強化が有効だと考えている。次いで、新設の「日中関係の今後に関する協議」(19.3%)となっている。「国際課題の解決に向けた協力」と「尖閣諸島に関する領土問題の解決への努力」は、それぞれ10ポイント以上減少しており、日中関係の現状はこうした努力以前の段階、との認識が示された。

 中国人では「歴史問題での和解」が32.3%で最も多いが、昨年の40.6%からは大幅に減少している。また、「尖閣諸島の領土問題の解決への努力」も40.4%から22.2%に半減した。また、「首脳同士」や「政府間」の信頼強化もそれぞれ10ポイント以上も後退している。その代わり目立ったのは今年新設の「日中関係の今後に関する協議」が25.6%で二番目に多い回答となったこと。さらに、自由貿易、気候変動,AIなどの「自由国際課題の解決に向けた協力」が、日本人ではほぼ半減したが、中国人では逆に5.6%から12.4%へと倍増している。さらに、「日中間の安全保障分野の危機管理に向けた協力」も9.9%から19.4%へと大きく増加している。

 日中首脳の相互訪問については、両国民ともに「米中対立など国際情勢を見極めながら、適切な時期に相互訪問を行うべき」との回答が半数近くあり、それぞれ昨年から20ポイント以上増加している。「すぐにでも相互訪問を実現するべき」は両国で後退したが、合わせると7割近くが、相互訪問を期待している。



日中関係の現在と将来


現在の日中関係について「悪い」との回答が日中共に増加。日中関係の今後についても、悲観的な見方が最多となる

 現在の日中関係を「悪い」と判断する日本人は68.4%あり、昨年の56.2%から12.2ポイントも悪化している。「良い」は調査開始から最低の0.8%にまで落ち込んだ。
中国人も、現状の日中関係を「悪い」という判断する人が、37.7%から41.2%に増加まで増えたが、「良い」と考える人も17.5%から29.7%へと12.2ポイント増加している。
この一年間の日中関係の変化については、日本人では「悪くなった」との見方が41.8%から55.9%に増加している。中国人も「悪くなった」との見方が37.1%から42.6%に増加したが、「良くなった」も9.5%から27.7%へと18.2%増加、ここでも見方が分かれている。

 今後の日中関係の見通しについては、日本人では今後も「悪くなっていく」という悲観的な見方が39.7%で最も多く、5年連続の悪化となった。中国人では「悪くなっていく」が29.1%から40.1%に増加しているが、「良くなっていく」も23.3%から31.6%に増加しており、見方が分かれている。


日中関係の発展を妨げるものは何か

 日中関係の発展を妨げるものとして、日中両国で最も多いのは昨年同様「領土をめぐる対立」だが、両国ともに昨年からは減少しており、特に中国人では56%から39.5%にまで減少している。
日本人で二番目に多い回答は、新設の「福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出問題」の36.7%だったが、中国人でこれを選択した人は5.8%に過ぎなかった。

 中国人で二番目に多かったのは、「経済摩擦(貿易摩擦、技術移転、知的財産権など)」で、昨年の17.4%から28.6%へと11.2ポイント増加している。

 他に昨年調査からの変化が目立ったのは、日本人では「中国のメディアの反日的な報道」で、11.7%から25.2%に増加している。また、例年は両国で「国民間」あるいは「政府間」に信頼関係ができていないこと、を日中の発展を妨げるものとして選択する人が多いが、今年はいずれも減少している。



日中両国民の相手国に対する印象


相手国に対する印象はこの一年で悪化し、日本人は9割を超える

 日本人で、中国に対して「良くない」印象を持っている人は92.2%と昨年よりも悪化し、調査開始以降で二番目に悪い結果となった。

 日本に対して「良くない」印象を持つ中国人も、62.9%と昨年から改善もなく依然として6割を超えている。ただ、「良い」印象はわずかながら増加し、37%と4割近い。


相手国に対する「良い印象」の理由

 日本人が中国に「良い」印象を持つ理由で最も多いのは、新設の「日本と長い歴史的な関係を持つ国だから」(29.5%)。次いで「中国古来の文化や歴史」(26.9%)、「中国の観光地や雄大な自然」(23.1%)と「これまでの民間の様々な交流により中国人の存在が身近になったから」(23.1%)が並んでいる。

 中国人が日本に「良い」印象を持つ理由では、「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高い」が50.3%で突出している。昨年調査では上位を占めていた「日本製品の質は高い」、「日本の技術は先進的」、「日本は経済発展を遂げ、国民の生活水準も高いから」などの、日本経済に基づく項目ははいずれも20ポイントから30ポイント減少した。増加が目立ったのは「これまでの民間の様々な交流により日本人の存在が身近になったから」で、8.9%から25ポイント増の33.9%となった。


相手国に対する「良くない印象」の理由

 一方、日本人が中国に「良くない」印象を持つ最も大きな理由は、中国の「尖閣諸島周辺の侵犯」が57.2%で最も多く、「国際的なルールと異なる行動をするから」が49.1%で続いている。大幅な増加となったのは、「中国のメディアが反日報道を繰り返すから」で、21.9%から18.8ポイント増の40.7%となった。

 中国人が日本に「良くない」印象を持つ最も多い理由は、「魚釣島周辺の国有化で対立を引き起こした」が、昨年からは後退したものの、46.4%で最も多い。昨年調査では78.8%で突出していた「日本は侵略した歴史をきちんと謝罪し反省していないから」は、47ポイント減の31.8%となっている。「日本が一つの中国の原則に消極的態度を示しているから」(26.5%から37.3%へ)、「外交において米国に追随する行動が理解できないから」(21.1%から27.6%へ)の二つの増加が目立つ。



東アジアの安全保障


軍事的脅威を感じる国が「ある」とする日本人は8割近いが、中国人では35%まで減少している

 自国にとっての軍事的脅威を感じる国が「ある」と感じている人は、日本人では76%と8割近いが、中国人では35%まで減少しており、調査開始以降で初めて5割を切った昨年からもさらに12.1ポイント減少している。

 軍事的脅威を感じている人にその具体的な国を挙げてもらうと、日本人では「北朝鮮」(80%)、「中国」(68%)、「ロシア」(60.4%)の三カ国が突出している構図は昨年と同様である。

 中国人では、「米国」が最も多いが、昨年の89%から56.9%へと32.1ポイント減少した結果、「日本」(49.9%)と同水準になっている。増加が目立ったのは「韓国」で、10.8%から22.4%へと倍増している。


現在の東アジア地域が、紛争や衝突が起こり得るとした両国民は、昨年よりわずかに増加

 現在の東アジア地域が、紛争や衝突が起こり得る切迫した状況にあると考えている人は、日本人では27.4%、中国人では40.2%で、昨年よりはわずかに増えている。

 その危険性がある具体的な地域としては、日本人、中国人ともに「台湾海峡」が最も多い回答だが、日本人では昨年から微増であるのに対し、中国人では48.6%から32.9%へと15.7ポイントも減少している。中国側で昨年から大きく増加したのは、「東シナ海」で、4.3%から10.5ポイント増の14.8%となった



台湾海峡における軍事紛争の可能性とその原因


台湾海峡で軍事紛争の可能性について、日本人の4割、中国人の6割近くが数年以内、将来的には起こると回答

 台湾海峡における緊張の高まりは、「中国」に原因があると日本人の59%が見ているが、中国人では昨年まで最も多かった「米国」に原因があると考えている人が34.5%で、昨年の52.5%からは18ポイント減少している。そして、「米国と日本」が25.8%から29.2%に増えたほか、「日本」が原因との見方が4.4%から18.9%に増加した。合計すると半数近くの中国人が日本に原因の全てないし一端があると考えていることになる。自国「中国」に原因があると見ている中国人は4.2%に過ぎない。

 台湾海峡での軍事紛争勃発については、日本人の40.5%が「数年以内」あるいは「将来的」には起こると予測している。これに対して中国人では、59.1%と6割近くが、紛争が起こると見ている。



ロシアのウクライナ侵攻と世界の平和


ロシア進行に関する評価について、ロシアの事情も配慮すべきとの中国人が大幅に増加

 ウクライナ戦争の終結・停戦に向けてリーダーシップを期待する国・地域・組織として、日本人の回答では34%の「米国」と27.3%の「国連」が突出している。中国人では自国「中国」が38.3%で最も多く、次いで「米国」(30.7%)である。中国人で「国連」を選んだ人は12.4%で、「日本」に期待する11.2%と並んでいる。

 ロシアのウクライナ侵攻に関する評価については、日本人では「国連憲章や国際法に反する行動であり、反対すべきである」との回答が70.6%で突出している。

 一方中国人では、「ロシアの行為は間違っているが、ロシアの事情も配慮すべきだ」が昨年の29%から46.9%に増加している。「国連憲章や国際法に反する行動であり、反対すべきである」の16.3%と合計すると、ロシアの侵攻を「間違い」「反対」と見ている中国人は63.2%と6割を超える。「ロシアの行動はNATOの東方拡大に伴う自衛行動で、間違っていない」は39.5%から27.2%に減少した。



「第19回日中共同世論調査」概要

 日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に2023年9月2日から9月24日まで訪問留置回収法により実施した。有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性が48.2%、女性が51.2%。最終学歴は小中学校卒が5.1%、高校卒が46.2%、短大・高専卒が21.5%、大学卒が23.9%、大学院卒が1.5%、その他が1.2%。年齢は20歳未満が2.6%、20歳から29歳が11.7%、30歳から39歳が13.3%、40歳から49歳が17.5%、50歳から59歳が15.9%、60歳から69歳が17.3%、70歳以上が21.7%となっている。

 これに対して、中国側の世論調査は北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州の10都市で18歳以上の男女を対象に8月18日から9月1日にかけて調査員による面接聴取法により実施された。有効回収標本は1506である。回答者の性別は男性51.2%、女性48.8%。年齢は20歳未満が0.5%、20~29歳が18.5%、30~39歳が27.0%、40~49歳が22.4%、50~59歳が11.7%、60~69歳が19.7%、70~79歳が0.2%。最終学歴は中学校以下が14.6%、高校・専門高校・短大・専門学校卒が35.9%、大学在学中が21.8%、大学卒が20.1%、ダブルディグリーが2.0%、大学院卒が5.5%である。


【言論NPOとは】

 言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして19年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。

 また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。
 さらに、米中対立下で、米国と中国が出席する4カ国の「アジア平和会議」を2020年1月に創設し、歴史的な作業に着手しています。


【中国国際伝播集団とは】

 1949 年10 月に設立された。中国で最も歴史が古く、最も規模が大きい専門的な外国向け出版発行機関で、60年余りにわたり、多言語で国際社会に向けて中国の歴史や文明を紹介し、中国と世界の交流と理解、協力と友情を増進するために積極的で重要な役割を果たしてきた。出版社7 社と雑誌社5 社、チャイナネット、中国国際図書貿易グループ、対外伝播研究センター、翻訳資格審査評議センター、デジタルメディアセンターなど計20の組織を傘下に持つ。毎年40余りの言語で約5000 種の図書を刊行し、30 余りの言語の定期刊行物を180 以上の国・地域に届けている。

 同時に30 余りの多言語ウェブサイトと100近いソーシャルメディアのプラットフォームを運営し、対外的で国際的な多言語、マルチメディアの新しい事業枠組みを作り上げている。2022年1月より中国国際伝播集団に名称変更。


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