非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)は3月1日、3月13日から15日かけて開催する「東京会議2024」の開催に先立ち、言論NPOの議論や活動に参加する2000人の有識者を対象に行ったアンケート結果を公表しました。今回の調査は2月16日から27日までの12日間で行ったもので、441人が回答しました。
さらに、7割を超える人がウクライナとガザ戦争で見られた欧米の姿勢は「ダブルスタンダード」だと答え、民主主義国に問われることとして、「世界の平和秩序の修復に向けた努力」が最多となり、「ダブルスタンダードのような態度を取らず、法の支配を貫徹すること」続くなど、ウクライナとガザ戦争に対して、非常に厳しい見方を示していることが明らかになりました。
さらに、今年秋に行われる米大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の米大統領再選について「可能性は高い」が45.4%と半数近くになっており、「可能性は半々」が44.9%で続いています。
トランプ氏が大統領再選した場合、日本の有識者が特に懸念しているのは「民主主義の世界的な後退が加速すること」で、これが51%と半数を超え、次いで、「米国のウクライナへの支援が停止すること」の38.6%となっています。
詳細な調査結果は、下記をご覧いただくか、言論NPOウェブサイトでも見ることができます。報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。
【主なポイント】
ウクライナ戦争について「膠着状況が続き、勝利者はいない」が半数を超え、「停戦に向けた努力を始める局面」との回答が6割を超える
開戦から二年が経過したウクライナ戦争の先行きについて、「膠着状況が続き、勝利者はいない」との見方が53.5%と半数を超えています。
ただ、数年以内に「ロシアの勝利で終わる」との見方が22.2%と2割ある一方で、「ウクライナの勝利で終わる」は5.2%にとどまりました。現段階では判断できないも19.1%と2割近くいます。
ただ、侵攻開始から二年を経過した今が、「停戦に向けた努力を始める局面」だと考えている有識者は65.1%と6割を超えています。
イスラエルのガザへの攻撃を国際違反だと考える人は7割を超え、
戦後統治の担い手として「パレスチナ自治政府」「国連」との声が突出している
パレスチナ自治区ガザではイスラエルによる攻撃が続いていますが、この攻撃を国際法違反だと考えている有識者は74.6%と7割を超えています。
また、ガザ地区の戦後統治の担い手を訊ねたところ、「パレスチナ自治政府」が60.3%と6割を超え、これと「国連」(48.1%)の二つが突出する構図になっています。
「イスラエル」は12.2%と1割程度であり、日本の有識者は二国家共存を求め、かつ国連の関与を期待するかたちになっています。
「その他アラブ諸国」を選ぶ有識者は11.1%、「エジプト」は4.1%でした。
ウクライナ、ガザへの進行に対する米欧諸国の姿勢に対して「ダブルスタンダート」とする批判に賛同する人が7割を超え、民主主義国に「世界の平和秩序の修復に向けた努力」や「法の支配の貫徹」を求める声が多数となる
ロシアのウクライナ侵攻を国際法違反と断じる一方で、イスラエルのガザ攻撃を擁護する米欧諸国の姿勢に対し、グローバルサウス諸国からは「ダブルスタンダードだ」といった批判が出ています。こうした批判に賛同する日本の有識者は71.9%と7割を超えました。
続けて、先進民主主義国が特になすべきことを訊ねたところ、「世界の平和秩序の修復に向けた努力」との回答が60.3%で突出し、「ダブルスタンダードのような態度を取らず、法の支配を貫徹すること」が47.4%と5割近くになっています。それに「世界の課題解決に向けて強いリーダーシップを発揮すること」が39.9%と4割で続きました。
一方で、国際協調はこれからも「全体的に維持されていく」は16.1%だったものの、全面的な協調は困難でも「一部の課題では協調した取り組みも可能だと思う」との見方が76.6%あり、この二つを合わせると9割以上は国際協調自体が可能だとの見方を示しており、日本の有識者は国際協調自体には強い期待を持っています。
トランプ氏の米大統領選について9割を超える人が再選の可能性は高いと考え、
「民主主義の世界的な後退が加速すること」に懸念を示す人が半数を超える
今年秋の米大統領選でのトランプ氏の米大統領再選についての見方は、「可能性が低い」と見る有識者は6.8%しかいません。これに対して、「可能性は高い」が45.4%と半数近くになっており、「可能性は半々」が44.9%で続いています。
再選可能性が少なくとも50%以上はあると見ている有識者は9割を超えています。
さらに、トランプ氏が大統領再選した場合に、日本の有識者が特に懸念しているのは「民主主義の世界的な後退が加速すること」で、これが51%と半数を超えています。
次いで、「米国のウクライナへの支援が停止すること」の38.6%となっています。そして、「気候変動への対応が後退すること」が22.2%で続いています。
「台湾有事のリスクが高まること」は10.4%、「北朝鮮の核保有を容認すること」は5.9%、「日米同盟が弱体化すること」は14.5%で、東アジアの安全保障面への影響を懸念する声はそれぞれ1割程度でした。
8割を超える人が世界の分断や多極化は今後も進んでいくと予想しているものの
国際協調自体に強い期待を持っている人は9割を超える
戦争や気候変動など世界の危機が複合化する中で、欧米諸国と中ロ、グローバルサウスとの間で"溝"が拡大しています。日本の有識者の8割はこうした分断や多極化が今後も進んでいくと予想しています。
一方で、国際協調はこれからも「全体的に維持されていく」は16.1%でしたが、全面的な協調は困難でも「一部の課題では協調した取り組みも可能だと思う」との見方が76.6%あり、この二つを合わせると9割以上は国際協調自体が可能だとの見方を示しており、日本の有識者は国際協調自体には強い期待を持っています。
ルールに基づく自由経済については終焉を迎えていない、との声が半数近くとなり、今後の世界経済について「保護主義は進むが、自由貿易は完全に崩壊しない」が7割を超える
これまでの世界経済の発展を支えてきたルールに基づく自由経済について、有識者の45.6%と半数近くは、「まだ自由経済は終焉を迎えていない」と回答しました。ただ、終焉を迎えたとの見方を示す人も18.1%と2割近くいます。「わからない」も36.1%と4割近く存在しています。
一方で、世界経済の分断が進む中でも、今後の世界経済について、「保護主義は進むが、自由貿易は完全には崩壊しない」と見ている有識者は71%と7割を超えています。経済の「ブロック化が進む」との見方は19.3%でした。
平和構築のための努力していくことは必要、との声が6割を超える
世界では軍事紛争が多発し、紛争管理や人道支援で精一杯の状況について、今の世界は平和構築のための努力をしていくことはもう難しい局面にあるのかを訊ねたところ、有識者の63.5%と6割を超える人が「そう思わない」と回答しています。ただ、「そう思う」との回答も28.3%と3割近くあります。
有識者調査概要
今回の有識者調査は、言論NPOの議論づくりに参加している2000人を対象に行い、441人から回答を得ました。回答者の性別は、男性が84.1%、女性が14.1%。職業は企業経営者・幹部15.9%、企業従業員9.1%、メディア幹部3.4%、メディア従業員7.3%、国家公務員3.4%、地方公務員1.4%、NPO・NGO関係者5.0%、学者・研究者25.2%、各団体関係者5.0%、学生:5.0%、その他:19.5%。年代は、20歳未満0.9%、20~29歳5.4%、30~39歳5.0%、40~49歳12.0%、50~59歳23.6%、60~69歳26.5%、70~79歳19.1%、80歳以上:7.5%。
言論NPOとは
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のシンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして19年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25ヵ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。
さらに、米中対立下で、米国と中国が出席する4カ国の「アジア平和会議」を2020年1月に創設し、歴史的な作業に着手しています。
電話:03-3527-3972 FAX:03-6810-8729
担当:言論NPO事務局 宮浦・和田