米外交問題評議会(CFR)掲載コメント国連はウクライナ戦争を終結させられるか?

2023年2月28日

 ロシアによるウクライナ侵攻から一年が経った今なお、終わりの見えないウクライナ戦争について、言論NPO代表の工藤泰志は、世界の主要シンクタンク代表者と共に「世界をゆるがした侵略(The Invasion That Shook the World)」と題した米外交問題評議会(CFR)の企画にコメントを寄稿しました。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年、戦争の終結や機能不全に陥った世界の平和と安全の回復に向けて、この間各国政府や国際機関は十分な努力を行っていない。はっきりしているのは、国連の常任理事国で核大国が他国を侵略しても、世界が力を合わせてそれを止められない状況が、未だに続いていることである。

 世界の平和秩序の立て直しへの取り組みがより必要である。私の関心は、ロシアを世界から孤立させる努力と機能不全に陥った国連機能の修復である。その鍵を握るのは、いずれも中国だと考えている。

 私たちのシンクタンクは、中国の共産党大会の直後になるが、昨年12月、日中間のトラック1.5の戦略対話に100氏の専門家や有力者が集まり、台湾海峡や米中対立、経済安全保障を話し合った。その全体テーマに据えたのが、「平和秩序の修復」だった。議論は激しいものであったが、ただそれでも最終的に、日中の参加者間で「ウクライナ危機のエスカレートの回避、平和解決の努力を共に支持する」との声明を合意した。また、私たちが日中共同で実施した世論調査では、半数以上の中国国民はロシアの行為に賛成していない、ことが初めて明らかになった。中国を無視し続けることは国際協力の促進にも適切ではないことを教えている。

 それに加え、日中独といった影響力ある国々は停戦後の人道支援としてウクライナにPKOを出すべきである。国連の安保理は機能不全に陥っているが、それでも国連は動くことが出来る。冷戦の最中の1956年、スエズ動乱に対応するため、総会採択での国連軍の派遣が認められた。何よりも、日中独はカンボジアPKOでの経験がある。もし、実現したら、どれくらいの衝撃だろうか、国連ももう一度息を吹き返すことができるのではないか。それには中国の参加が重要である。


言論NPO代表 工藤泰志

原文は、米外交問題評議会のウェブサイトにて公開しています。


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