2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻した際にもウクライナ大使として任に当たっていた松田氏はその講演の冒頭、「忘れてはならないウクライナ戦争の本質」として三点を提示。一点目としては、「国連安保理常任理事国ロシアによる一方的武力行使」を挙げ、これを「国連憲章及び国際法違反であり、第二次世界大戦後の国際秩序への挑戦だ」と断じました。二点目は、「欧州とアジア太平洋の安全保障がリンクしたこと」とし、「今日のウクライナは、明日の東アジアかも知れない」とその事態の深刻さを明らかにしました。最後の三点目には、この戦争が「世界大戦型の二陣営間の総力戦」になっていることを挙げ、同時に「この戦後処理は、21世紀の今後の国際社会の枠組みと秩序を決定することになる」との見方を示しました。
次に松田氏は、「戦争と戦闘は一緒ではない」とした上で、刻一刻と変わる各地の戦闘戦況ではなく、「戦争の全体像」を見ることがこのウクライナ問題を考える上でのポイントになると指摘。
その上で、ロシアの戦争目的達成(ウクライナ国家の消滅と全面的支配)が事実上失敗したことや、ロシアを取り巻く安全保障環境がむしろ劣化した(ウクライナ国内の団結、フィンランド及びスウェーデンのNATO加盟、シリアの喪失など)現状を浮き彫りにしつつ、ウクライナ側のみならずロシア側も苦境にあるとの認識を示しました。同時に、戦況についても、陸海空三領域の状況や両軍の損耗度などを踏まえながら、「ロシアが一方的に勝っているわけではない」との見方を示しました。
その後も、停戦・和平に向けた外交努力について、戦後処理について、ウクライナ戦争が日本にとっていかなる意味を持つのか等について、現地をつぶさに見てきた前大使ならではの講演となりました。
その後の参加者との質疑応答も活発に行われました。
国際課題勉強会は、今後も月一回程度の開催を予定しています。勉強会の様子については言論NPOホームページで随時ご報告いたします。是非ご覧ください。