世界25ヵ国のシンクタンクのトップは世界の課題をどう評価したか ~CoCレポートカード総論~

2016年5月18日

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 我々は世界的激動の時代に生きている。世界は、国際テロから気候変動、感染症のパンデミック、集団移住、金融の不安定、サイバー犯罪、核拡散に至る様々な困難に見舞われている。これらはすべて、地政学的対立の復活や世界的成長の停滞、不平等の拡大、国家の失敗、怒れるポピュリズムといった文脈の中で生じている。このような厳しい状況に対し、Council of Councils (CoC) の2015-2016年国際協力に関するレポートカードでは、かすかな希望をいくつか提供している。2015年、世界では気候変動抑止及び気候変動による変化への適応、核兵器拡散防止、国際開発の促進の面で希望の持てる前進が見られた。このような成果により、国際協力の面で、テロや国内暴力紛争、国際的紛争の阻止の点での成果は引き続き散々なものであったものの、昨年のCから向上し、Bの総合的評価が得られた。

 2015年に世界が最も希望を持てた瞬間が、パリ気候変動サミットに訪れた。長年にわたる分裂を乗り越え、先進国と発展途上国が新たな「ボトムアップ」アプローチを採用し、各国が自らの計画した、国家としての断固たる貢献を表明した。CoCメンバーはこのような決意に対し、この調査で最高のA評価を与えた。また同メンバーは、各国が自らの約束を実行し始めているため、気候変動を2016年に世界的なブレークスルーが最も得られやすい分野として認めている。同時にCoCメンバーは、パリが最初の頭金にすぎないことも認めている。世界の気温が2℃以上上昇することを防止するために (それ以上の温暖化は破局的であろう)、各国が、共有する野心を引き上げるべきである。

 これとは別に、核拡散防止と国際開発の促進が2015年における2つの明るい材料として、それぞれA-とB+の評価を得ている (2014年はB-とC+)。核分野の最も重要なブレークスルーは、イランに対する制裁解除と交換に同国の核関連活動を制限する包括的共同作業計画であった。この合意が誠実に実施されれば、イランが核兵器を開発する可能性が塞がれることになる。CoCメンバーは持続可能な開発目標に関する国連の合意にも感銘を受けたが、これは2030年までの、世界の貧困や不平等を改善するための努力指針となるものである。この世界的政策ネットワーク (CoC) は、国際的なサイバーガバナンス (C-からB-へ向上) や公衆衛生 (C+からB+へ) にも著しい改善を認め、それぞれ、サイバースパイ活動に関する米中合意、西アフリカのエボラ出血熱流行の終息における国際的成功を称賛している。国際貿易の拡大と国際経済システムの管理についても、主に環太平洋パートナーシップ協定と国際通貨基金の改革により、2015年にまずまずの改善が示された。

 昨年版と同様に、2015-2016年レポートカードでは、国際テロ対策、国内暴力紛争の防止と対応、国際的紛争の管理という3つの課題に対する国際的努力に、最も低い評価が付けられた。3つの課題のすべてがシリアで絡み合っており、そこでは2015年に戦争状態が泥沼化、さらに5万人が死亡し、隣国からヨーロッパに向けて脱出する大量の難民や移民を生んでいる。シリア内戦は、イエメンや南スーダン、ウクライナなどにおける人道危機とともに、世界における難民や国内で行き場のなくなった人間の数を6,000万人以上にしている。一方で、ロシアのシリアに対する積極的軍事介入は、自称イスラム国を撲滅しようとする米国主導の有志連合の努力を複雑化させ、情勢を不透明なものにしている。

 CoCは、この3つの問題、すなわちテロ、国内暴力紛争、国際的紛争を、2016年における最も切迫した世界的優先課題であると同時に、最もブレークスルーのチャンスが少ないものと考えている。シリア内戦がこういった懸念の中心にあり、CoCの悲観の原因である。戦争が外部勢力を引き込む状態が続き、地域抗争や宗派対立を受けての代理戦争となっている。その結果、この地域の難民の急増をもたらし (国際人道システムはすでに限界点に達している)、イスラム国 (今や、中東やアフリカにおいて紛争の影響を受けている広範な地域に勢力を拡大しつつある) の脅威が増大するおそれがある。

 幸先の良いことに、CoCメンバーは、貿易やグローバルヘルス、気候変動の分野で2016年にかなりのブレークスルーのチャンスがあるものと認識している。これらの分野では、2015年の成果により2016年も同様の成功がもたらされる可能性がある。

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