市民を強くする言論

【特別議論】「強い市民社会の実現に向けた議論づくり」/編集会議new4.gif

「市民を強くする言論」編集会議

 12月3日、言論NPOが今月から開始する「市民を強くする言論」プロジェクトの編集会議が発足し、第1回目の会合と同時に委員による座談会が行われました。

 このプロジェクトは、言論NPOが今月中旬に予定しているホームページの全面リニューアルに伴い、市民社会の論壇をつくり上げることを目的とし、各分野の研究者やNPO・NGO関係者などの参加を得ながら、今後「強い市民社会をつくる」ための議論を広範に行っていくというものです。

 本編集委員会は、議論づくりに際して問題提起を行い、議論を社会に広く発信していくという役割を担っており、田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)を主査として、現在計9名の委員で構成されています。第1回目となったこの日の会議には、田中氏と言論NPO代表の工藤泰志のほか、武田晴人氏(東京大学大学院教授)、辻中豊氏(筑波大学大学院教授)、山内直人氏(大阪大学大学院教授)の5名が出席し、今後の議論づくりに向けて意見交換を行いました。

 なお、本委員会にはこの他、目黒公郎氏(東京大学教授)、齊藤誠氏(一橋大学大学院教授)、ウォルフガング・パペ氏(元日欧産業協力センター事務局長)、デニス・ヤング氏(ジョージア州立大学教授)の4名も委員として参加しています。


 まず田中氏と工藤より、本プロジェクトおよび編集委員会の役割と、今後の議論の展開などについて説明があり、その後、委員による意見交換が行われました。その中では、市民の参加による議論のプラットフォームをつくるために、情報発信をどう展開していくのか、具体的な議題をどう設定していくべきか、といった点が挙げられました。

 後半は座談会というかたちで、「市民社会が強くなるとはどういうことなのか」「そのために必要な議論とは何か」などをテーマに、議論が行われました。


辻中豊氏
 最初に発言した辻中氏は、「市民社会」という言葉に対して何となく抵抗があるという人とのギャップをどう埋めていくかが重要だと述べたうえで、「生身の人や体験を通じて、市民が強くなることにどんな意味があるのか、ということを伝えていく必要がある」としました。

山内直人氏
 続いて山内氏は、「市民が強くなるということは、国家がやろうとしていることを正しく批判できることだと思う」と述べ、そのための判断材料を提供していくことが重要ではないかとしました。
田中弥生氏
 田中氏は、「事業仕分け」などの民主党の施策に触れ、政治との距離が縮まったことで「当事者性」が問われるようになってきたことはチャンスであると述べ、キーワードは「教育と参加」であるとしました。そして、NPOやNGOへの参加を通じて、隣人や社会を視野に入れて判断を行う力が養われていくような「市民性創造」の機能を強化していくことが重要である、とまとめました。
武田晴人氏
 自身の専門分野である経済史の視点から発言を行った武田氏は、経済学の世界で想定される「参加する市民」が意思決定を行うためには豊富な情報が必要になると述べ、現在の社会は「受け取る情報があまりにも偏りすぎているために、質的な評価ができなくなっている」と指摘しました。そのうえで、幅広い選択肢や多様な情報を提供していくことで、個人の意識、政治や社会との関係などを変えていくきっかけとしたい、と語りました。
工藤泰志
 これらの発言を受け、工藤は「なぜ市民社会が強くならければいけないのか、という議論を発展させていくための突破口として、どのような問題提起を行っていけばいいのか」と問いかけました。各委員からは政治やメディアの問題が挙げられ、当事者性を持つ市民による議論やコミットメントをどう促進していけばいいかについて、活発な意見交換が行われました。


 最後に工藤が、「今後も市民を強くしていくことの意味について各自の考えを語っていただき、市民にとって身近なところからアジェンダ設定をして、議論をつくっていきたい」と、改めて委員に協力を求め、議論を締めくくりました。

 言論NPOでは編集委員会で出された意見や提案をもとに、「市民を強くする言論」プロジェクトとして様々な活動を進めていきます。今後はNPO・NGO関係者による座談会や、市民社会で活躍されている方々との対談、新たなメールマガジンの配信などを行っていく予定です。
※この座談会の詳細な模様は後日公開いたします。

文責:インターン 楠本純(東京大学)

更新日:2010年03月01日

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