「第18回東京-北京フォーラム」は、両国間で「平和協力宣言」に合意し閉幕しました

2022年12月08日

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 12月7日に開幕した「第18回東京-北京フォーラム」の全てのプログラムの締めくくりとなる全体会議が8日午後、開催されました。


来年、両国関係の安定、改善を引き続き推し進めていく一つの契機に

017Z0448.jpg まず、中国駐日本国大使で、中国人民政治協商会議第 13 期全国委員会外事委員会委員も務める、孔鉉佑氏が挨拶に立ちました。

 孔鉉佑氏は、今から50年前に実現した中日国交正常化は、中日の平和や友好、Win-Winの新たな1ページを切り拓いた、と振り返りました。それから50年が経ち、コロナウイルスによるパンデミック、地政学的な情勢の激変に触れ、今、人類は再び岐路に立っていると指摘。そうした中で、中日両国は①平和的な発展の道を堅持する、②中日は互いに協力するパートナーであり、互いに脅威とならない、③中日両国はアジアの平和・安定と団結・協力を共同で守る、④中日両国は国際的な公平、正義を断固として守る、という点に、日中両国は共通した責任を果たす必要があると語りました。

 そのための具体策として、戦略的相互信頼を高めること、共通利益の絆を守ること、友好エネルギーの活性化、中日関係のリスクをコントロールすることを挙げ、11月に行われた習近平主席と岸田文雄首相の首脳会談で合意した共通認識や、これまでの4つの政治文書の諸原則を順守して、中日平和友好条約締結45周年を迎える来年を一つの契機に、両国関係の安定、改善を引き続き推し進めていくことを強く提案しました。


日中関係の改善に向け、助け合いの二国間関係の歴史に目を向ける

タ.jpg 続いて挨拶した駐中華人民共和国特命全権大使の垂秀夫氏は、日中国交正常化50周年の節目の年に日中首脳会談が開かれ、首脳間で少なからずの共通認識を達成し、日中間でいかに建設的な関係を構築していくかが明確になったことが一番の成果だった、と強調しました。

 一方で、中国が日本の領土である尖閣諸島で領海侵入を繰り返していること、国際法に明確に違反し、ウクライナ侵略を行っているロシアと中国が日本近海で軍事訓練を行っていることに触れ、「こうした行為が続くと国民感情が容易に改善しないことは明らかであり、日中関係の本格的な関係改善に向けたプロセスはこれから本番」との見方を示しました。

 ここで垂氏は、中国から漢字が日本に伝来されてから1600年後の明治時代、日本が西洋文明を積極的に吸収する過程で、漢字を新たに組み合わせて多くの和製漢語が生み出されていったことを紹介。こうした和製漢語を、日本に亡命していた、中国近代史を代表する思想家、ジャーナリストである梁啓超氏が、中国に逆輸入し、世界、社会、経済、科学、革命といった様々な語彙を中国にもたらしたことで、日本が中国の近代化に寄与することになったとして、漢字を巡る日中関係の歴史は、助け合いや学び合いの歴史の象徴だ、と語りました。こうした例を挙げながら、間もなく終わろうとする国交正常化50周年の節目の年に、「日中関係は世界でもまれに見る、助け合いの二国間関係の歴史であることに目を向ける必要があるのではないか」と語り挨拶を締めくくりました。

 大使の挨拶を終え各分科会から議論の報告がなされた後、「平和協力宣言」と題する合意文を、日本側主催者を代表して言論NPO代表の工藤泰志が読み上げました。(評価全文はこちら)


対話の基盤にあるのは、18年間培ってきた互いへの信頼

閉会式_工藤さん2.jpg この宣言に先立ち挨拶に立った工藤は、今回のフォーラムに参加したパネリストを始め、開催を支えたスタッフやインターン、ボランティアなどに謝辞を述べました。

 その上で工藤は、今回のフォーラムを通じて、紛争回避やこの地域の平和、そして世界の平和や発展に向けて、日中が協力するという流れをどうしても進めたい、という強い思いがあったと説明。一方で、初日の議論を受けて、「今回の合意は難しい」と感じたことに触れつつも、合意文づくりの過程で、日中間では、少なくとも世界とアジアの不安が高まる中で、何をなすべきか、ということを互いに理解しており、お互いの状況に応じて、どのようにまとめていくのか率直に話し合ったと語りました。そこには、一から議論するのではなく、少なくとも我々の対話の基盤というものが、信頼に基づいてつくられている、ということに関して本当に驚き、嬉しかったと振り返り、合意文を読み上げました。(評価全文はこちら)

閉会式_副総裁.jpg プログラムの最後を締めくくる閉会の挨拶には、中国側主催者を代表して、中国国際伝播集団副総裁兼総編集長の高岸明氏が立ちました。

 高岸明氏も今回のフォーラムに参加したパネリストを始め、開催を支えた全ての人に謝意を述べました。その上で、100年に一度の未曽有の国際情勢の変化と、世紀のパンデミックが交錯する中、中日両国が今回のフォーラムを通じ、「率直で踏み込んだ対話を行い、平和と友好を堅持し、協力と相互信頼を深め、共に手を携え、地域の安全、世界の平和に貢献するという力強い声を発信することができた」とし、その成果を合意文に凝縮することができたと振り返りました。そして、来年こそは対面での開催を望む、との期待を示し、閉会の挨拶を締めくくりました。