【議事録】2008.4.22開催 アジア戦略会議 /
テーマ「グローバリズムの中で日本がいかに生き残るか」(会員限定)

2008年4月22日

080422アジア戦略会議

松田(司会)  このアジア戦略会議では、2030年頃の将来を想定して、アジアにおける日本のあり方を描く議論を展開してまいりました。私たちはこれまで、戦略形成の方法論に従いつつ、ステップを踏みながら、日本の将来像についてのいくつかの仮説に到達しておりますが、現在は、その仮説の検証作業を行った上で、日本の将来に向けた選択肢を提示する議論へと発展させていくことを目指しております。その中で、日本を取り巻く世界の中長期的な潮流と、そこから日本に問われる課題は何かという基本的なテーマを改めて議論しており、この会議でもすでに、アジア開発銀行の黒田総裁、谷野元駐インド・中国大使、渡邉元駐ロシア大使をお呼びして、それぞれ、アジア経済や、インドや中国といったアジアの大国との関係、ロシアや日米中のトライアングルといった視点から、さまざまな論点をぶつけていただき、議論をしてきたところです。本日の会議では、さらに視野をグローバルな視点にまで広げた議論を試みるべく、岡本行夫さんをお迎えしました。我々が日本の将来像を考える上で踏まえるべき国際情勢等について、幅広い視野から問題提起をしていただければと考えております。


知的コミュニティーの強さを支える民間対話の「トラック2」

岡本行夫氏(問題提起)  皆さん、よく存じ上げている方々ばかりなので、一緒に考えていければと思います。外国へ行く機会が非常に多いので、ここ2~3回の話をします。3週間前、私はブカレストにいました。NATO首脳会議があり、そのときにトラック2のブカレスト会議というのが開かれました。トラック1というのは政府間の対話で、トラック2は民間人の対話。その間に政府の人が個人的な資格で入って、民間も入るというトラック1.5と言うべき会議もあります。欧米はトラック1だけでなくトラック2が重視されていて、うらやましいと思いました。

NATO加盟国は28カ国ですか、そこの首脳が皆集まる。それと並行して、民間人の会議を開いて何をするのかと思ったら、民間人の会議のほうも首脳会議と同じ議題をやるのです。首脳会議に参加している大統領や首相がパネリストとして我々の会議に来て、我々民間人と一緒にやっていく。ブッシュ大統領の演説をみんなで聞く。非常にインターアクティブな格好でやっており、議論に厚みが加わる。日本の政策は、基本的には民間が何を言おうと関係なく進めてしまいますが、トラック2協議を開催して多様な意見を包摂していくという、あの知的コミュニティーの強さに大変に感銘を受けました。

同時に、うらやましいと思ったのは英語です。10年前であれば、あのような欧州での会議では少なくとも4分の1ぐらいはフランス語でした。それから自国語でそれを同時通訳でという人たちも多かった。しかし、今回の会議では全員が英語でした。ロシアから来ている人も英語でとうとうとまくし立てる。ウクライナとグルジアをNATOに入れるかどうかというNATOの拡大が欧米の最大関心事になっていたので、グルジアの大統領が来て我々との間で議論するのですが、完璧な英語でした。

日本は、我々の世代は無理でしたが、これからは、英語で皆が議論するところに入っていける国にならないとだめです。ある文部科学大臣が小学生から英語を勉強させると言ってくれたのに、その次の文部科学大臣が、そんなことより、まず国語を習えということを言って、せっかくの子供のときから英語をという動きをとめてしまった。国語をやらせるべきだと言って、英語をやめることによって、どれだけの国語能力が小学生の間にさらに追加的につくのか。子供というのは、勉強をさせればさせるだけ、何でも本当に吸収します。

ピアニストとかバイオリニストを見ていて思うのですが、我々から見たら、もう人間わざではない。1つの協奏曲を弾くのに1万ぐらいの音符を全部暗記しているわけです。3歳とか4歳からやっているから自然にそうなっていくわけです。英語も、教えれば子供たちは無限に吸収していくと思うのですが、我々、日本人だけが英語で議論できない国民になってきてしまっている。

アジアの中の会議においても同様です。さすがに中国がいるので、我々はまだ安心していられるのですが、ほかのアジアの国の閣僚は、全員が英語です。日本の閣僚だけが自国語で発言する。しかも、議論の位相がちょっとずれている。日本のプレゼンテーションは、必ず我が国ではこうなっております、憲法上の制約から云々というものです。日本からは専ら自国の説明だけに来る。

ところが、欧米はもちろん、このごろアジアの国々も、普遍的なところから話を始めて、自国のところへと落としていく。こういう議論のパターンですね。しゃくなことに中国が最近それを皆やる。自分たちの民主主義は、これはこれで立派なんだという結論にもっていく前に、まず民主主義の一般から話を始める。言っていることは間違っていても、おもしろいわけです。ですから、日本の話を聞くオーディエンスがいなくなってきている。


日本は中途半端なサイズの国

経済では、困ったことに、日本はちょうど中途半端な市場のサイズです。日本国内だけを相手にやっていこうと思えばできる。いままでは特にそうでした。国際的なマーケットのかなりの部分を日本が占めていたからです。しかし、いまでは、中途半端なサイズが足を引っ張っている。いい例が携帯電話です。国内には多くのメーカーがいて、すばらしい性能の電話機をつくっている。こんなにきれいな携帯電話はほかにはない。多機能満載です。でも、日本以外のどこにも売れていません。

1980年代、我々が日の出の勢いにあったとき、アメリカに対して、アメリカは国内のマーケットが大き過ぎるから、国際的なスタンダードに合うものをつくろうとしないと、よくそう言って笑いました。ところが、日本が80年代に豊かになってしまったものだから、その言葉は、我々に今そのまま当てはまってきている。ノキア(フィンランド)は、自国民が五百数十万人しかいないから、最初からグローバルマーケットを目指さざるを得なかった。それでグローバルスタンダードになってしまう。韓国もそうです。人口4500万人ですが、日本に比べると所得も低い。だから、彼らはグローバルマーケットを最初から目指している。そのための戦略をつくっているわけです。

中途半端な大きさだというのは、外交、政治、そういうところでも同じです。日本人は英語なんか習わなくていいよと言う。確かに習わなくても日本国内では不都合はない。海外を歩くたびに、これは、日本は大変だな、姿が見えなくなってしまったと思わせられるエピソードを必ず体験して、しょんぼりというか、危機感にとらわれて成田へ着く。けれども、成田に着いた途端に、非常に居心地のいい天国が待っているわけです。

日本の改革をしないことがどこで我々の生活を不便にしているかというのは、実は日本の中にいるとよくわからない。成田へ帰ってくる。滑走路は30年たっても、いまだに1.5本です。先日のアメリカ行きは、まずアトランタへ行ったのですが、シカゴ乗り換えでした。シカゴの滑走路は6本。アトランタは4本です。日本はこのごろ満杯で飛行機が予約できない。日本から飛行機をもっと飛ばそうと思っても、それは無理です。成田空港会社は、日本の特殊な制約の中でよくやっていると思うけど、大変です。

ジャパンパッシングという言葉がありますが、これは、昔は日本にアメリカが振り向かないで、そのまま中国へ行ってしまうのをジャパンパッシングと言っていたのですが、今はそうではなく、世界中のダイナミックな動きから日本だけがパスされて取り残されている。そういうジャパンパッシングになったという気がしてなりません。


国が消滅し、国が生まれ、個人が活躍する時代

話をNATOのほうに戻しますと、とにかく驚天動地のことが起こっている。仮にウクライナとグルジアがNATOに入ってしまうと、ロシアは下腹にナイフを突きつけられたような格好になる。まさにNATOとロシアが前線でぶつかり合うわけです。グルジアとの間で国境紛争が起こって、もしもロシアが武力を使えば、極端な言い方をすれば、NATOは集団自衛権を発動して、ロシアとNATOの戦争になる。NATOとロシアの間の緩衝国家というのがなくなってしまったから、ロシアは必死です。それに対してアメリカは、これで最終的に冷戦後の線引きが完了するので、絶対にウクライナとグルジアをNATOに入れたい。

ロシアを支援しているのはドイツです。ドイツはアメリカと大げんかをしてでもグルジア、ウクライナの加盟に絶対反対。半歩引いて、フランスも反対しています。ロシア、ドイツ、フランスの連合軍に対して、アメリカを支援しているのはどこか。一番強く支持しているのは旧東欧諸国です。ポーランド、ハンガリー。とにかく本当に驚くような対立構造になってきているわけです。

もちろん背景の1つは、ロシアがヨーロッパの天然ガスを支配していることです。今は25%ですが、2030年には全ヨーロッパの50%がロシアからのガスに頼ることになるという予測もあるぐらいです。だから、ロシアはこれを実にうまく使って分断を図っていく。そこへ、ポーランドの首相が激しくロシア攻撃をやる。ワルシャワ条約機構というのはワルシャワでつくられたのではなかったか。非常にダイナミックな動きの中で、国家間の合従連衡をめぐったせめぎ合いが行われているわけです。

バルカンはすごい。ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、スロベニア、クロアチア、コソボ、モンテネグロ、マケドニア。ユーゴスラビアは存在しなくて、7つの国家が新しくできている。我々は国境というものを固定的に考えていますが、世界ではああやって国が消滅し、新しく国がどんどんと生まれてくる。活火山が爆発してドロドロと溶岩を吹き出しているような。日本は島国ですから、およそそういうこととも無縁で平穏無事に暮らしていられる。ブカレスト会議に出てみて、国家というのは有為転変、劇的にかわっている感じを抱きました。
 

日本の国は沈み、個人や会社が自ら輝くしかない

アラバマのホテルでインターネットを使おうとしたら、全然通じない。ホテルは、サービスセンターにつないでくれた。かけると、相手はこのアイコンをクリックしてくださいとか、いろいろ言う。それ今から直しに来てくれと言ったら、いや、私は今ワルシャワにいますからと答えました。ロサンゼルスに行ったら、またインターネットが通じない。これも同様で、またワルシャワのセンターにつながれました。あとバンガロールとかいろいろなところにもあります。有名な話ですけれども、ハンバーガーショップがお客さんの注文をとって、それを10m後ろのキッチンに伝えるのに、コロラドスプリングスを経由する。わずか10mの間の情報伝達を、何千kmも離れたところを経由して瞬時に処理している。リカードの生産性比較優位論がいかんなく発揮されている。今、世界というものはそれだけばらけて、個々の国、その国の国境すらなくなってきている。

個人の時代になっている。ある巨大企業の社長さんに「岡本さん、日本がこれだけ地盤低下してきて、うちの会社は一体何をやればいいのか。」と聞かれました。私は、「残念ですけれども、国のことは当分あきらめてください」と言いました。残念ながら、どうあがいても無理なところに来てしまっている。あとは、例えば会社とか個人とかがミクロの活躍、活動をしていくよりしようがないと思うのです。

この間、外務省の後輩があるところへ赴任するのであいさつに来てくれた。岡本さん、私は何をやっていけばいいですかねと聞かれたので、日本の宣伝をしようとしても無理かもしれないよと答えました。したって、すぐに馬脚が現われる、と。レトリックの積み重ねでやってきたけれども、日本は何もやっていないじゃないかということになってきている。だから、それよりは君が個人として輝けと言いました。ああ、あの大使は、あの総領事は立派だ、やはり日本はすごい国だなと思われるように。個人のレベルでやっていくよりしようがないのではないかと思います。

私は2カ月ぐらい前、グーグルのニューヨーク本社を訪ねたときに、ちょっといい経験をしました。案内してくれたのは、そこで広報係として働いている日本人の女性です。その女性に、グーグルのニューヨーク本社のオフィスには日本人は一体何人働いていますかと聞いたら、知らないと言う。全くわかりません、と。みんなアジア系の顔をしているけれども、話すのは英語だし、あなた、どこの国の人?なんていう会話もありませんから、誰が日本人で、誰が中国人かわからないし、意識もしていないと言うのです。これはいい話だと思いました。
このままいったら、日本のオーディエンスがいなくなってしまう。日本人だけが固まって、日本人だけのコミュニティーができていってしまう。そういう意味では、グーグルのその日本人女性は希望でした。


世界は多様化し、開放系の社会に

おもしろいことが起こっているのはシリコンバレーです。あそこには日本人が何千人かいる。我々の若い時代には、まず隣近所と仲良くなり、お医者さんはどこにいるのか、食べ物はどこで買うのかなど、いろいろ聞かなきゃいけなかった。英語の勉強もしていきました。ところが、企業の経営陣の方々に聞いて同じ答えが返ってくるのですが、最近は、幾ら駐在に出しても英語がうまくなってこないというのです。それでも企業の駐在の方はビジネスをしなければならないので別ですが、インターネットの世界で生きているシリコンバレーにいる日本人は、日本同士でSNSを向こうへ持っていっている。シリコンバレーコミュニティーをインターネット上につくって、グルメ情報とか安売り情報とか、そういう情報をすべて日本語で入手する。

皆さん、どういう言葉でブログがつくられているか、ご存じですか。圧倒的に英語だと誰もが思いますね。英語のインターネット人口は6億ぐらいいるのに対し、日本は2000万人ぐらいしかいないから。ところが、何と第1位は日本語なのです。日本語のブログが全体の37%、英語は36%です。我々は、日本人同士のコミュニケーションは物すごく密度濃くやっているわけです。

セットトップボックスをテレビの上に置くと、日本のテレビ番組がリアルタイムでアメリカで見られるそうです。ですから、シリコンバレーの日本人たちが見ているテレビは、ABCやNBCではなく、日本のチャンネルだそうです。Skypeを使えば電話はただですから、日本と常時つないでる。シリコンバレーのお孫さんと東京のおじいちゃん、おばあちゃんがテレビ電話で一緒に団らんしながら、食卓を囲むというふうになってきていると聞きます。

そこには孤立感はない。しかし、それでは日本語コミュニティーが隔絶してしまわないか。6億の人たちが構成するネットのコミュニティーと、2000万ぐらいの人がつくるコミュニティーとでは、やはりむこうの方が厚い。ウィキペディアで科学用語なんか検索してみると、英語では物すごい量の説明がある。日本語ではそうはいかない。

英語世界と日本語世界が断絶し始めていないか。では、世界の言語体系でそういうところがほかにどこかにあるか。結局、みんな外へのインターフェースをとっていかないと、自分のところだけではだめです。あの中国ですら、そうですね。私は時々中国に教えに行きますけれども、あの学生たちの外への関心と英語には舌を巻きます。しかし、日本は国が豊かだから外と関わらなくてもやっていける。

きょうのテーマは、これから30年後、どういう世界になっていくのか、そのトレンドはということですが、一つの結論は、世界はこれからますます多様化していく。そして、開放系の社会になっていく。そこに入っていかない国は、結局、置き去りになっていくということです。


世界の動きからずれている日本のメディアと官僚

もう1つは、世界の勢力関係、強弱が物すごい勢いで変わってきていることです。もちろんBRICsが動きの中心にあるわけです。我々も資源が欲しい、そして海外で鉱山を買いに行く。しかし、中国勢にオーバービッドされる。もう勝てません。

レアメタルも話題になってきています。私は、レアメタルというのは、3年前から大変だと言ってきました。今の資源獲得競争はどうなるのか。

それから、ようやく日本の新聞も書き始めましたが、食料危機です。既にこれは起こり始めています。

ついでに、クレームをつけたくなるのが、日本の新聞の内向き志向です。例えば今朝の日経は、「野村社員、インサイダー容疑」、野村の中国人の職員が数千万円インサイダー取引でもうけたというのが一面トップ、白抜き見出しです。日経というのは、一番バランス感覚のいい新聞だと思ってました。日経よ、おまえもか、です。世界がダイナミックに動いているときに、どうして、こんなちっぽけな2、3人のインサイダー行為が白抜きで、これこそ世界でいちばん重要なニュースなんだと派手に報道されるのかと思います。

要するに、日本がおかしくなってきてしまったところの一因には、マスコミの責任もあるのではないか。つまり、マスコミの優先順位のつけ方がおかしい。いっときはとにかく赤福、赤福で、私の友達が言っていたのは、朝のニュースが5日間連続して赤福がトップニュースだったそうです。饅頭のつくり方を日本全国民がテレビで教えられる。その間に世界はどんどんと動いているのです。

しかし、官僚の責任も大きいと思います。今、決定的に日本が乗り遅れ始めているこのタイミングでさらに足を引っ張ってるのは、結局、政治のデッドロックです。言うまでもなく、参議院選挙の自民党の大敗によって引き起こされたものですが、それは基本的には年金問題です。私も役人生活をやっていましたけれども、社保庁のような、あんないい加減な仕事をやる人々が存在するのかと信じられません。結局、あれが今の政治のデッドロックを起こしてしまっているわけです。だから、役人が国を壊してしまった。民間なら、当然、休日返上です。ところが、あの社保庁の人たちは、土曜日も日曜日もちゃんと休みをとって、別に誰も責任をとるわけでもない。

成田へ帰ってくる。日本政府は、外国の方、ようこそ!とレトリックのほうは物すごいけれども、成田に入った途端に目にはいる外国人の長蛇の入国審査の列。あんなのは窓口の数さえ変えればいいわけでしょう。外国人はひどいときは1時間から、長いときは1時間半待たされるそうです。怒り心頭ですよ。なぜそんなこと1つ変わらないのか。


欧米の知的コミュニティーの関心からはずれてしまった日本

こういうことをずっと重ねていっているうちに、経済のグラビティーというか、中心、収れん点は、アジアではもちろん、いまもう中国に移ってきてしまっている。政治的、それから社会的なグラビティーも中国のほうに移ってきている。私はそれをいろいろなところで感じる。国際会議で日本の名前がメンションされることがなくなってきました。

この間、ブカレストへ行ったときに、それについてなぜかと聞いたら、僕は慰められました。「ミスター・オカモト、それはしようがない。いまは皆、中国に関心がある。インドですらメンションされることが少なくなってきている。ましてや日本がメンションされなくたって、そんなことは心配するな、当たり前だ」というわけです。彼は本当に心から慰めとしてそう言っていました。そういう扱いになってきているのです。

特にアメリカの関心の低下ははっきりしてる。私は何とも悲しい気分ですが、私の友人たちが、いや、アジアでは日本がもちろん一番大事だといってきたインテリの人たちが、このごろ中国のことにしか関心を持たなくなってきている。


日本はもうレトリックではなく現実で勝負すべき

さて、もう結論を言わなければいけませんが、どうしたらいいのでしょうか。こうなったら、個人とか企業とか、ミクロのベースで輝くよりしようがないということが1つ。それから、国としては早く居場所を見つけなければいけないと思います。レトリックだけの外交政策はだめだと思うのです。安保理の常任理事国立候補というのは考え直すべきかもしれない。そんなものができる国柄ではなくなってきているのではないか。ブカレストの会議でも、カナダのハーパー首相が我々のところへ来て、パネルディスカッションをしましたが、ご承知のとおり、カナダはもう80人死んでいます。ISAF(国際治安支援部隊)ですね。それでも彼らはまだやっています。

日本は、小沢さんがとにかく混乱させるだけを目的に何でもかんでも反対して、インド洋からも海上自衛艦隊を引き揚げた。では、どうするのだと言われたら、ISAFに参加すべきだと言った。これはいいなと思ったら、彼はそれを引っ込めました。それじゃどうするのかと思ったら、今度は民主党はPRT(地方復興チーム)に参加すべきだと言う。民主党は、PRTというのは平和的な貢献だと思っている。専門家が地方に行って、復興を支援するのをPRTだと思っている。そうではない。PRTというのは、その支援する専門家たちを警護する部隊のことを言うわけです。それは警察とか国境警備隊とか、それぞれの国によって違うわけです。日本はいくわけがない。

それで、「いや、日本は平和をつくるのです。安保理の常任理事国に」と言ったって説得力がない。現に、安倍さんが去年の1月、NATOの閣僚理事会に行って、日本はアフガニスタンに自衛隊を派遣することを躊躇しませんと言いました。満場の拍手です。あれは何を意味したのか。そのとき格好よく見せることだけになった。それは安倍さんの責任ではないですが。

それで、日本は一体どうするのか。これは大変です。せめてPRTぐらいには出てくるだろうと思われているけれども、出ません。少なくともイラクへの補給活動は続けるのか。そうしたら、名古屋高裁の裁判官が、集団自衛権に抵触するからイラクでやっているC130の支援業務は憲法違反だという。裁判官、現場へ行って見てくださいと言いたい。どうしてこれが武力行使との一体化なんですか。たった一人の裁判官がそうやって国の行く道を決める。論マスコミのほうもそういうものだと書く。

それでは、もうそれもやりません、インド洋の給油も同じ話だからやりませんという法理になっていきますね。それで、なおかつ、安保理常任理事国だという。日本が安保理に3年前に立候補したときに、どこが日本を支援してくれたか。ブータンとモルディブとアフガニスタン。アジアではその3国だけが日本のために共同提案国になりましょうと言った。同時期に立候補したドイツのためには、フランスを始めとする11カ国が共同提案国になろうと立ち上がりました。日本は、アジアの3カ国を、それも、インドとともに獲得したにすぎない。日本が最も支援を必要としているときに、東南アジアの諸国は誰も立ってくれなかった。どうしてそうなったのかは、真剣に考えなければならない。

日本は本当に何を世界に主張していくのかを考え直さなければいけない。世界に対しては、言葉ではごまかさず現実で勝負していくんだということしかないと思います。では、どういうところで勝負していくか。ここから先は議論のほうに移りたいと思います。

松田  日本の将来選択に関して、大変わかりやすい論点を出していただき、ありがとうございました。以下、自由討議とさせていただきます。


民間企業も受け身でなく、ビジョンを持って

出席者  私も仕事柄、旧運輸省で航空局長をやり、次官などを務められた方々とお話しする機会がよくありました。何年か前、小泉内閣のときに、ビジット・ジャパンという画期的な予算がつき、そのキャンペーンに私たちが駆り出されました。そのとき、食事した次官OBが私に「進さん、よかったですね」と言う。「おたくもJALさんも、空港の制約条件が厳しいから、余り外国の会社が入ってこられなくてよかったですね」と。今はどうか知りません。少し事情が変わってきているとは思いますが、これは当時の運輸官僚の本音だったのではないかなと思います。

全日空も国際線へ進出して、いろいろな航空会社とつき合うようになると、ドイツ人も、アメリカ人も、インドネシア人も、皆、成田はどうなっているんだと言う。だから、あれは民主主義というよりはガバナビリティーが欠落しているんだよとしか言いようがない。業界も全部受け身で、成田をつくるときも、政治家と官僚が相談してやったことなのでしょうが、30年前、業界には何の打診もなかった。すべてがそういう形で行われて、業界は受け身の形でそこを使うのです。

そんなことではいけないのではないかなと私たちは随分前から社内でも言っていまして、これはさっき引用された日経新聞の記事ですが、私が今までいた会社の山元峯生社長が「外資参入、チャンスにつなげる」「『航空自由化の時代を勝ち抜ける力をつけろ』と各部署にハッパをかける」とある。山元さんは、私より4年ばかり後に京都大学を出て会社へ入ってこられた。彼はほとんど法務とか客室乗務員の労務とかやっていて、役所とのコンタクトは余りなかった。だから、結構思い切ってこういうことを言うのは、そのせいではないかなと思います。

私は社内でわかりやすくするために、「四流官庁の下請企業みたいなことをやるな」と一生懸命言っているのです。何をやりたいか、自分なりのビジョンを持って、業界のそれを統一した意思として、世論を味方にしてやらなければいけない。羽田の国際化は本当に急務だと思います。30年前に成田が開いたときと、日本の事情が全く変わってしまっているのですから。でも、それすら今も、役所の中ではメンツもあるのでしょう。


あいまいさを好む日本特有の文化は心地よい

出席者  去年でしたか、スウェーデン国王が来日したとき、天皇がソメイヨシノの桜見物にご案内した。天皇はにこやかに本気になって桜をめでているようなのですが、スウェーデン国王は関心がなさそうでした。ずっと見ていると、日本人はああいうぼやっとしたものが好きです。ところが、ほかの国の人はチューリップにしろ、バラにしろ、物すごくはっきりした色の花が好きです。アジアもそうですよ。

ですから、いろいろな議論をしても、本音でぶつけ合うということを我々は文化的に嫌いなように、家庭教育でも学校でもされてきている。もともと自己主張を余りしない。あいまいさにこそ何か奥行きがあると。ですから、和歌でも俳句でも、ずばっと山頭火みたいにはっきりしたものよりは、それぞれの人が共鳴するようなあいまいな言葉ですね。言葉の問題もあるのですが、物の考え方の、文化の基本の部分が、島国特有のものがあるのです。だから、それを克服するのは、どうも、岡本さんがおっしゃったような英語だけではなさそうです。

韓国は今から15~16年前ですか、世界に太刀打ちしていくために、国が国民をどう持っていくかということは4000万の人口ではできないとし、韓国国民は、子供を含めてそれぞれが生きていく場所を自分で見つけろという方向を打ち出した。ですから今、韓国は留学は、金持ちはアメリカ、イギリスへと行きますが、ちょっとレベルが低くなると、マレーシアに行って英語の学校に入って教育を受ける。だから、女子のプロゴルファーがあんなに出てくるのは、これは十何年前からそういう流れがあるからです。

ところが、我々は国が何とかしてくれる。いろいろな海外留学をする人たちも、現地で働いて、そこで金持ちになるという人はいなくて、留学組は皆、日本に戻ってきてしまう。スペインとかに別荘を持っていても、日本の円が安くなると耐えられない。これまた皆戻ってくる。日本に戻ってくると、ほんほかで気持ちいい。しかも、いろいろなことを面倒見てくれる。だから、こういう風土は、民族の何かもう宿命的なものを感じる。しかし、そこから打開の道はどうするのか。

国債もこれだけ発行して大変になってしまったら、韓国と同じように、あなたたちの将来を政府は見られない、だから、自分で自分の生き方を考えなさいと、放りっ放しにするしかない。現にエール大学とかハーバード大学に行って話を聞くと、日本からの留学生のレベルが低い。特に企業派遣が物すごい低い。個人で来た人は曲がりなりにもやっています。だから、これらの大学は今、中国人を10倍ぐらい受け入れる。日本は企業が金を出してもなかなか受け入れてくれなくなっている。

日本国内の人はほとんど対立しない。皆、優し過ぎるんです。心地いい。それでは生きていけないということを、皆が認め合って、はっきり言わないとだめなのではないか。

私が社長をしている銀行がこの間上場しました。上場のためにIRに行ったら、「あなた、成功報酬はあるのでしょうね」と聞かれた。「ありません」と答えた。私はわずかな株を持っているだけなので、「あなた、それでは、我々少数株主のために何ができるのですか」と言われた。ちゃんと自分でリスクを負ってくれというわけです。帰ってきてから我がオーナーに言いましたら、オーナーは、「いや、安斎さん、それは我がグループ、日本では無理だよ」と言う。もう2人で辞めようやという話になったけれども、せっかく友達になったのに別れるのは寂しいから、オーナーがとにかくごちそうするよと言ってフグ料理をごちそうになった。それで、1回だけですかと言ったら、いや、これくらいはこれからもやりましょうという話になる。私もそのほうが気持ちいいんです。だから、これは大きな壁というよりは、我々の文化そのものを、どう世界のレベルの中で克服できるのだろうかということだと思うんです。

出席者  パラダイス鎖国というのはそうですね。

出席者  実質、今、起こっているのはそういうことでしょう。本当に日本は気持ちいいです。


科学技術力と金融力に期待

出席者  私はもう公務を終わってしまい、かつ70歳を超えたものですから、今までの経験に基づいて、これからの国の行方などをいろいろ考えていきますと、岡本さんが問題提起された通りで、私もこのごろあちこちでいろいろしゃべるようになっています。岡本さんのような鋭い切り口のものではありませんが、同じ問題意識を持っている。

簡単に言うと、日本が外からどう見られるのかなと。それはどう見られたっていいという人も、日本には一杯いると思いますが、いや、決してそうではない、日本の生きていく道は国際国家で、食料でも資源でも何でも、あるいは将来的には労働力も、みんな外からお世話になりながら生きていく国だから、それがしっかりした基盤の上で生きていくためには、日本が外からどう見られるかというのは非常に大事なことである。そう思いまして、そうした話をいろいろしています。

では、日本はどうするのか。岡本さんの問題提起と結果的には同じようなことになるのかなと思いますが、中身的に見てみると、例えばワールドエコノミックフォーラムが出す国際競争力ランキングでは、日本のバブルに幻惑されたせいだと思いますが、1位とか2位とか、そういう国際競争力の地位を1990年代の初めぐらいは日本に与えていた。今は確か8位か9位かその辺ですね。スイスのIMD、インターナショナル・マネジメント・ディベロップメントというものですが、この国際競争力ランキングだと17~18位になっている。

しかし、国際競争力ランキングの中の要素を1つ1つ見ていくと、科学技術力という項目だけは、ほとんどトップクラスでずっと来ている。ですから、トップクラスで来ているそういうものは大事にして、まず1つ徹底的に磨かなければならない。それは、岡本さんの言う個人と個別会社が輝けばいいのだという話が、それに結びつくのかもしれませんが。

もう1つ、これは到底無理かなと思いますが、小島さんや安斎さんの意見をぜひ伺いたい。金融力というのをもう少し磨けば玉になるという部分はないかなと思います。科学技術力と金融力。今のような不安定な世の中だと、資本調達は、相当程度日本に来ている。だから、サムライ債の発行額は、ひところの3~4倍に大きくなっている。

それから、日本にはもう1つ、個人金融資産1500兆円という世界に冠たる眠っている金融資産がある。私自身も預金ばかりしていて、何も動かしていないのですが、日本の金融資産をうまく動かす方法を考えさえすれば、その金融力はものすごい。SWF、ソブリン・ウエルス・ファンドの世界全体の規模が2.5兆ドルか3兆ドルといわれますが、日本の個人金融資産は15兆ドルぐらい。そのうち、動かせるのはおそらく3分の1と見ても、5兆ドルぐらいあるのではないかなと、勝手に私は推測するわけです。そういうものを動かすのだというような戦略を立てる方法がないのか。

また、昔からの伝統的な日本の文化能力をもっとうまく生かす方法がないか。具体的に何か玉を見つけていって、それで光る。だからといって、それによって日本が第2位をずっと守れるということはないので、4番目とか、5番目とか、6番目とか、そういう国にはなっていくだろうなと思います。

岡本さんのおっしゃり方だと、結論は同じかもしれませんが、少しペシミスティックな印象にすぎるかなと思います。新前川委員会のようなところで、具体的に、多少夢を持った物言いをしていただいたほうがいいのではないか。

出席者  個人金融資産1500兆円というと、アメリカは4000兆円近い。むしろ、差し引きでみるべきで、債権超過額が日本は世界第1位。ですから、動かし得る金が日本は世界一です。中国は、民間が持っていない外貨準備高が1.5兆ドルです。そういうふうにして見ると、日本の国力はまさにそこの差し引きにある。

しかも、日本はどうしても、ものづくりだといって、円高が嫌だ嫌だで、今日に至っている。もし金融分野を強くするのなら、通貨が強いことを皆が受け入れたほうがいい。そうすると、個人金融資産の1500兆円がもっとドルベース、ほかの通貨ベースで大きくなるのです。金融機関が資本金を円でやっているから物すごく強くなる。そのような物の考え方になれるかどうかです。ところが、依然として経団連を始め皆、ものづくり。そうすると、どうしても通貨は強くないほうがいい。けれども、よくよく考えたら、世界のドルベースなりユーロベースでどうなっているかが重要なのです。

出席者  しかし、ものづくりというのも捨てがたい。ものづくりナンバーワンとやっていれば、さきほどの科学技術力とも近いと思います。


人材を含む資源の争奪戦の時代

出席者  ものづくり、製造業を見ると、直接投資でしょう。自動車も含めて海外でものづくりをしている。海外で雇用して、海外で税金を払って。それが半分以上です。

出席者  だから、こちらの賃金を上げられない。向こうで成長する。どんどん製造業も世界に入っている。

出席者  企業のバランスシートと国民経済のバランスシートがどんどんばらけている。金融全体は今、お粗末なていたらくですが、可能性がある分野です。アメリカは今、2兆ドル以上のネットの債務国です。日本は世界最大のネットの債権国で、その収入はどんどんふえているけれども、もっとふやす余地はある。2年前から日本のものづくりを中心とした貿易経常収支の黒字よりも、金融収支というか、所得収支が大きくなった。海外で資金を運用し、投資をし、配当、あるいはその利子やらキャピタルゲイン、それで得ているネットの収入は、経常収支の黒字を上回っていっているのです。今、物も強いし、金融も能力が徐々に芽生える過程。しかし、まだ今の金融の資源からすると、収益力が欧米と比べてまだまだ圧倒的に低い。ここをどうやって上げていくかということなのでしょうね。

天然エネルギー資源の争奪戦について言われましたが、今もう1つ、日本にとって重要なのは、世界は、あらゆる優良な資源、人材も含めての資源の争奪戦だということです。日本には人材という視点がない。移民はブルーカラーだけですが、今、世界は高等人材をいかにして取り入れるかという競争をしているのです。

例えば最近、万能細胞で山中教授が発表した途端に、アメリカはもうキャッチアップして、アメリカの研究所は世界中に研究者を公募した。この研究に携わる優秀なやつは来いといったら、世界中からトップクラスが何百人も応募して、かなり採用されて、共同研究している。それに連邦政府も州政府もどんどん資金をつぎ込んでいる。日本では、科技庁が早く動いて、10年間で500億円ぐらいの予算を用意したようですが、アメリカは州レベルで、その何倍ものお金を即座に用意しているのです。そういうダイナミックな、システムの問題ですよ。素材としては日本にあるけれども、それをシステムとして全体、社会の活力に資するような発想が、アンシャンレジームから抜けていないために機能していなくて、むしろ逆効果になっている。

日本は観光、観光といっていますが、最近の数字を見ると、中国が2年前に受け入れた外国人観光客は4970万人。ある見込みでは2015年には1億人になるという。日本はせいぜい500万人とか600万人でしょう。

出席者  今、800万人です。

出席者  シンガポール程度でしょう。全くそういう国際的な資源の奪い合いであり、魅力があるところに優秀な資本が来る、人材が来る。このグローバルなダイナミズムをうまく活用していない。

出席者  東京大学が日本語ができるなんていう条件をつけているからだめなんです。東京大学の先生も海外留学から帰ってきているのだから、本当に英語で講義するぐらいにならないと、人材という面で来ないですよ。

出席者  本当にそうですね。文化的な緊張感がないと、文化は育たない。森鷗外はドイツ語がすごかった。しかし、ドイツ語をやればやるほど、彼の日本語がブラッシュアップされたし、夏目漱石は英語が大変ですよ、立派なものです。レベルがあがると、今度は日本語がブラッシュアップされる。文化の緊張感は両方大事にされる。今、英語が全然実用的でない英語の教育であって、日本語の教育もだらしなくて、それがだんだん片仮名語になってもう言葉そのものが今崩壊しつつある。

出席者  日本語的なブロークンイングリッシュがへっちゃらでしゃべれるようにならないとだめなんです。ところが、日本人はみんな完璧を求めるから。

出席者  でも、今はブロークンジャパニーズしかない。


中国にやられっぱなしのODA

出席者  私は、昔の経済協力、まだ賠償のころからやってきました。何十年もかけてようやく日本が育ててきた東南アジアの国々が、みんな今は中国にやられてしまっている。すさまじいODAを中国は無条件で出しているからです。中国はなぜそんなに金が出せるのかというと、経済が伸びているからです。この数年は、中国の国家の歳入は毎年30数%伸びている。その金が防衛費になり、20年連続の2けたになり、あるいはODAになるということです。そこが日本は、財政がもうだめですから。経済力がだめだと、財政がだめになるという典型ですね。

本当にこれは残念なことです。では個人と企業で光るというのは大事なことだと思うのですが、そこまで私は悟り切れない。アジアの国々を回りますと、アジアの中には、中国はすさまじい力で席巻し始めていますが、中国に対する不信感がまだある。余りにも中国の品が悪いので、日本が助かっているところがありますが、日本のような成熟した大国が引き続きアジアでかなり大きな存在感を持っていてほしい、そういう気持ちをアジアの国々は余り言わないが、皆、持っている。

それを考えると、日本国としてもう一遍、力を何とかつけたいなと思います。それは財政です。財政がないと、もうODAを出せないし、防衛力もつかない。日本は今後とも一目置かれる国であり続けなければいけません。明治以来140年、戦後60年、これだけ諸先輩、我々も含めて一生懸命名誉ある地位をつくってきたのに、今これががらがらと崩壊するのは見ていられない。

それにはどうしたらいいか。科学技術も本当に大事なことで、技術水準を高く維持する以外に方法はない。けれども、中国はすさまじい勢いでR&Dを、国の科学技術予算を物すごい勢いで増やしています。欧米もそうです。科学技術を進めるということは、予算の質と額の競争でもあり、決して容易ではない。でも、やらなければいけない。

外交力の強化というものもあります。日本の外交官はレベルとしては非常に高い。しかし、外交というのは、常に意識する、しないにかかわらず、必ず総合国力を背景に持っている。総合国力というのは、防衛力であり、経済力、財政力、何か困ったときに助けてくれるかもしれない、そういう期待を持たせるような力がないとだめなのです

最近は、麻生さんなどはJ-POPや漫画が大事だと言います。そういうソフトカルチャーも大事ですが、いざというときの対外交渉の背景にある総合国力というのは、防衛力と経済力、ODAの能力とか、そういうものです。それが今、中国が30数%税収が増大していて、日本は平らですから、何も増やせない。寂しいことです。

だから、結局、これはとにかく日本の経済を強くする、民間経済を強くしていく以外にない。どうしたらいいか、これはもう既に答えは今までかなり出ています。要するに、日本を含めて内外の人も金も企業も、もっと日本に来たいというようにすることです。日本を今の何倍も魅力あるところにするための努力は、前から言われているけれども、全然実行されていない。その1つが飛行場のさきほどの話です。日本を内外の企業、金、人にとって、もっと何倍も魅力あるところにして、みんなに来てもらい、ここで法人税を納めてもらわなければ困るわけです。そのためにやらなければいけないことは、もう既に勉強して蓄積があるわけです。今さらにそれをポリシーアップしていただいているわけですが、かなり蓄積がある。要するに、それを実行することができていない。


政治家を含め危機感が非常に足りない

出席者  なぜ実行できていないかというと、政治家を含めて非常に危機感が足りないからです。日本の置かれた状況の危機感が足りない。これはぜひマスコミにも頑張っていただいて、日本が非常に危ない状況にあるということをもう少し国民に訴えてもらいたい。本当にそう思います。何かこのままぽしゃるのは残念だなという感じがするので。

例えば、法人税の税率が今40%です。シンガポールは去年、20%から18%まで下げました。それは香港が17.5%に決着して国際競争力をつけたからです。シンガポールは小さい国ですから、私は学ぶべきところがいっぱいある国だと思う。いろいろなハブをつくりたいとか、自分の国は小さいから外国からの投資をどんどん入れたい。そのためには政治の安定といろいろな自由化が大事である。そこで、彼らの国は強いデモクラシー、デモクラシーといっても指導力でどんどんそれらをやってしまう。日本にはそれがない。

出席者  篠沢さん、法人税を全部下げるのはなかなか難しいですか。それなら、法人税を地域ごとに変える、そういう方法は考えられますか。地方で経済力が弱いところに企業進出したら、海外から来ようと、国内から動こうと、税率を20%にする。ばらまくのではなくて、そこに企業をつくれば、もうかっていく。

出席者  法人事業税のほうで調整する方法もあると思います。総合的な法人税制を誘致にうまく活用するという方法は当然ありますよ。それはできると思います。

出席者  国がやると憲法違反になる。法の下の平等に反する。だから、本格的特区ができないのです。

出席者  法人税なら法人税だけの問題として議論するのではなくて、例えば航空だと、着陸料がべらぼうに高いとか、施設利用料が非常にかかるとか、諸外国は全く取っていないですが、航空機燃料税がかかるといったことがあるのです。日本の輸送業者のコスト水準は、アジアとかアメリカとか外国と比べてみると、かなり特異なものがあるのではないでしょうか。そういうところも総合的に考えないといけない。どうも法人税も高いけれども、それ以外にプラスアルファが、企業の国際競争力を随分弱めている面もあるのではないか。

出席者  ドルとの関係では別ですが、円は安くなってきている。総体的に日本のコスト高はかなり弱まってきているのです。だから、これからは、余分にかかっていた部分がかからなくなる。問題は、製造業以外の生産性が低い部分―官僚組織も含めて―の生産性をどうやって上げるかだと思うのです。私がいる流通業はひどいですよ。金融もそうです。

出席者  今度の社会保険庁の話は本当に参ったですね。あんなことが起こるというのは、本当に抗弁しようのない話です。ほかに幾つもいろいろな話が出ていますが、防衛省の「あたご」問題もひどい。あんなことが起こる組織というのは...。

出席者  みんなのんびりしてしまったのでしょう。緊張感が薄れているのです。政治もそうではないですか。緊張感がないです。

出席者  本当にそう思いますね。すごい国際競争の中にあって、日本はやばいという意識が物すごく弱い。だから、例えば防衛省で、次官がゴルフへ行ったとか、船がぶつかったとかがあると、皆、社会記事の観点から見るので、防衛予算はどうしても締めるみたいな感じになっていく。本当は、もっと防衛について大事なことは、そういうことよりも、中国がとにかく20年2けたで伸びていて、日本の数倍の防衛費を今使っている。もうどうしようもない。日本はどうするんだとか、日米安全保障条約は本当に有効なのかとか、もっと基本的な問題がすごくある。

さっき言われた、日本がちょうど中途半端な規模で、そんなに外国のことを考えなくても済むような、何とか食っていけるコンファタブルな国だというところに問題があるのかもしれません。今はコンファタブルですが、そのうちコンファタブルでなくなる。それは怖いです。その辺りの危機感をどうしたらもっと醸成できるのかという考え方でやったほうがいい。日本人は、一旦これはやばいぞと思ったら、力を合わせてやれば、かなり力が出る民族だと思います。今、危機感がないものだから具合が悪い。


落ちるところまで落ちるしかない?

出席者  グリーンスパンの翻訳本がこれだけ売れるという国は日本以外にない。オランダの人は、オランダ語で書かない。全部、英語で小説を書く。そうでないと、採算がとれないのです。日本は1億2000万人いて、翻訳業がここまで成り立つ。そういう国は珍しい。経済力もあって、人口も多い。だから、岡本さんがお怒りになるのは、もともとある意味でそういう恵まれた存在になってしまったことが余計そうさせているのです。だから、危機感をどうして醸成するかといっても、しようがない、落ちるところまで落ちるしかない、そのときに復活できるのかどうかという感じではないですか。政治のあのていたらくを見ていたら、そうではないですか。落ちる過程に今入っている。

出席者  今は落ちるところまで落ちている部分が相当あると思いますよ。

出席者  落ち方がまだ足りない。

出席者  でも、余り落ちてしまうと、上がるのが大変です。

出席者  英語が本当に大事だと思う。それだけではないと安斎さんが言いましたが、リスクをとって何か行動するというマインドも物すごく大事でしょう。だから私は、『トム・ソーヤの冒険』とか『ハックルベリー・フィンの冒険』を小学生のころから読ませて、英語とリスクをとるマインドを一緒に育てたらいいと思います。日露戦争で活躍した英雄たちの話も英語にして読ませてもいい、もっとそういう工夫をしたほうがいい。子供がおもしろがることをやったほうがいい。ハックルベリーやトム・ソーヤなら必ず興味を持つと思いますよ。その後の読書癖にもつながると思います。

出席者  今度、私どもスポンサーで、6月15日、BS朝日で、日露戦争のときに日本に正統性ありという議論をしたエール大学教授、朝河貫一のテレビ番組をやります。最後は日米開戦回避のために、天皇への親書をルーズベルトに書くよう働きかけた男です。海を渡った侍という題です。日露戦争について日本に正義ありという朝河の本のおかげで、アメリカないしヨーロッパの世論が日本をサポートしてくれた。最後は、本当は続けたら日本は負けるのに、勝った形で終わらせるように持っていくのです。そのときに天下の朝日新聞は、黄色い顔をした外人の言うことを聞いていたら、もらいが少ないと批判した。それが日比谷焼き討ち事件の原因をつくっていく。のちに、緒方竹虎は、朝日新聞の自分の失敗を朝河貫一に死ぬ前に謝りに行っている。

出席者  大体、外国の首脳クラスが日本を訪れたときに、日本の新聞はほとんど取り上げませんね。1ページ目に、必ず写真入りで載せなければだめですよ。

出席者  小さくてもいいから、必ず写真入りで、どこの国でも首脳が来たら取り上げる。何も常任理事国になるためではなく。

出席者  そういうセンスを持たなければなりません。

出席者  そうすると、喜んで帰るのです。日本では、大きい国以外、どこの新聞も取り上げないのです。こんな国はないです。

出席者  さっき言われた野村證券の中国人社員がインサイダー取引をしたというのがトップ記事になるということへの批判には、本当に同感です。今、そんなことを言っている暇はないのです。

出席者  NHKニュースを見ていると恥ずかしい。ああいう映像を飛行機の中でやるでしょう。大方は日本人が見ているのですが、外国人も見ている。非常に恥ずかしい映像がある。例えば松井秀喜がどうしたというのがトップニュースだとか。CNNなんかを見ているあの緊張感が何もない。

出席者  日本の新聞は自前のニュースがなさ過ぎます。


製造業も危機感が足りないのでは

出席者  とどのつまりは、岡本さんが言われたようなところが落ちかなとはいつも思いながらも、もう少しポジティブにこの問題には取り組む必要は今現在あると思います。ポジティブな表現方法によってです。

出席者  日本の力の源の1つは製造業、それはおっしゃるとおりですが、ここすらも危機感が足りなくなってきているのではないか。私はいろいろな国を回って電気店を見ていますが、一時期、日本の会社がRCA、ゼニスを駆逐したように、ほとんどのところでサムスン、LGがみんな取ってきています。

それから、自動車は日本の最後のとりでと言われていますが、この間、アラバマ州にある現代自動車の工場を見て、驚きました。いろいろな自動車の工場を見ましたが、要するに、日本が製鉄であれだけとってしまったように、後発国の強みです。今までのトヨタなどが集積してきた知識、産業装置、全部全く合理的なところで入れてしまって、ばんばんつくり始めている。年産30万台体制にする。トヨタは勝つでしょうし、本当にものづくりこそと思っていますが、アセンブリーのところにくると、相当大変です。中小企業のレベルまでくれば、日本は世界に冠たるものですが。

安斎さんは、日本人は優しいとおっしゃいましたが、確かにその通りなのですが、もう少し闘争心を持たないと大変ですよ。

出席者  闘争心がないのです。穏やかなのです。それと、円高というか、国際関係でこういうBRICsその他が出てくると、その人たちに負けないようにといって、今度、自分たちがそこに行って事業をやる。そういう産業はもともとそこに任せてしまったほうがいいものについて、競争力を保たなければいけないという物の考え方ですね。日本の製造業は目線が物すごく低くなっているのです。

そういう人たちが出てくるのなら、そこはそっちに渡し、我々は、ものづくりなら新しく何のものづくりで勝つか。そういう発想がない。製造業の目線は、どんどん後進国に負けないようにとなってきてしまったのではないか。問題はこれからどうするかです。

松田  本日は、活発な議論をありがとうございました。個人や個々の企業が輝くだけでなく、やはり国全体のレベルにおいても、日本は自らのどのような強さを活用してどのような道を進んでいくのか、アジア戦略会議では、引き続き、日本の将来選択に向けた論点形成を進めていきたいと思っております。

-了-