分科会報告 : 【 中日の金融システムと通貨政策 】

2007年8月29日

p_070829_18.jpg【報告者】
小島明(日本経済研究センター会長、日本経済新聞社顧問)
こじま・あきら

1942年生まれ。65年早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社入社。ニューヨーク支局長などを経て、97年取締役論説主幹、常務取締役論説主幹、専務取締役論説担当。2004年論説特別顧問、日本経済研究センター会長。05年中国ハルビン工科大学客員教授・同大学中日貿易投資研究所長も務める。88年度ヴォーン・上田記念国際記者賞受賞、89年度日本記者クラブ賞を受賞。主著書に『グローバリゼーション』などがある。

【 中日の金融システムと通貨政策 】

 金融分科会では、アジア地域全体、とりわけ日中で金融問題においてどういう協力ができるか話し合いました。

 まず、専門家の五味先生から日本のバブル崩壊について紹介がなされました。「バブル崩壊後の価値の喪失は大恐慌以来どこの国も経験したことがない。金利を0にする政策も、不良債権あるいは持続的なデフレも全世界が経験したことのないことだった。バブルのときの問題は金融機関が融資をしすぎた点であり、行政はその対応に時間がかかり、銀行も自助努力したものの、多くの時間を要した。そして現在、日本の金融機関はやっとスタートラインに戻った」とされ、現在の中国の経済状況が日本のバブル当時と似てきたことが指摘されました。そして、往々にして我々は成功よりも失敗で学ぶことが多いことから、経済困難に対する処理の宝庫である日本から中国はぜひ大いに学び、経済の調整期を見越して準備すべきであることが述べられました。

 為替問題については、中国の外貨準備高は世界でも突出している点、金利水準が実体経済を反映していない点が指摘されました。マクロコントロールするには為替調整を行わなければならず、柔軟に為替政策を行うべきであるとされました。


 後半はアジア共通通貨についての議論が行われました。特に、日本と中国がイニシアチブをとって共通通貨を作っていくという議論がありましたが、一方で一部の方から日中間の信頼関係が薄い、特に日本側が中国側を信頼していないという発言もありました。
 
 しかし今フォーラムも3回目を迎え、益々議論の深みを増しており、相互信頼関係は確実に生まれていると考えています。