分科会報告 : 【 アジアの安全保障と中日の役割 】

2007年8月29日

p_070829_16.jpg【報告者】
呉寄南(上海国際問題研究所学術委員会主任)
ウー・ジナン

研究員。日本総合研究開発機関(NIRA)及び東京大学教養学部の客員研究者。現在.上海国際問題研究所の学術委員会主任を担当、長期にわたり日本の政治、経済動向を追い、主に日本の国家戦略と中日関係を研究。


【 アジアの安全保障と中日の役割 】

安全保障の分科会ではまず、日本側から中国側に対して、
① 中国の軍費の透明性が足りない、また、軍事費がここ何年も二桁の成長を見せているのはなぜか
② 中国が持つ核の問題
③ 上海協力機構や日米同盟に関する問題
④ 東アジアは中国を頭として安全保障体制を築いていくことになると思われるが、中国はどう考えているのか
という疑問がなされました。

 これに対し、中国側からはそれぞれ以下のような意見が出されました。

 ①に関して、軍事透明性のコアは、両国の政治の相互信頼に依存している。中国の軍事透明性は徐々にではあれアップして来ている。透明性がないからといって他国を侵略するということはない。

 ②中国は核兵器を先制攻撃で使うことはないし、それをもって威嚇することはない。中国の軍事力は平和的なものであって、アメリカに対抗するものではない。逆に日本はどうなのか。アメリカの核の傘下に入っていることで、台湾問題への姿勢が不透明になっている。しかも近年軍事力は強化されている。日本の中でも台湾問題の意見が分かれ、日本の台湾問題に対する姿勢に一貫性がないのではないか。

 ③上海協力機構は平和的なものであり、決して日米同盟に対抗するものではない。中国は、アメリカをアジアから政治面でも経済面でも排除しないし、アメリカがアジアにおける建設的な役割を果たすことを決して否定しない。


次に中国側から日本に対して、
① 戦略的互恵関係の構築と今の価値観戦略は矛盾しているのではないか
② 台湾海峡は日本の戦略地域にふくまれているか。

といった疑問が呈され、さらに日本が軍事を増強した理由が分からない、そもそも政治上での代表の往来が少ないのではないかといった意見が出されました。

 これに対し日本側は、①に関しては価値観外交は日本の中でも政治家の一部の考えであり、決して全体の意見ではない、②については台湾問題に関しては日米同盟の関係上、状況判断によって決断するとし、また、日本国内でも様々な意見があり、関与するとの意見はあくまで少数意見であると述べました。

 そして、両国で意見が一致した点として、「東アジアにおける統一した安全保障メカニズムの必要性」が挙げられました。
 
 東アジアの安全保障システムは立ち遅れており、EUにまったく及ばないものではあるが、冷戦思考を放棄して交渉を続けることが重要である。そのためにも軍事力の透明性を高めることが大切で、できる限り国防白書に載せてはっきりと疑問に答えていくことによって、日中間の誤解を減らしていきたいということが確認されました。また、東アジアにおける安全保障システムを構築する上でアメリカを排除することはできないということも確認されました。

 そしてその際、六カ国協議を発展させて北東アジア地域の安全保障フォーラムにしてはどうかという意見が出されました。これを基盤にして安全メカニズムを構造していくのです。

 中国側は、東アジアの安全保障を語る際に、朝鮮問題、台湾問題は大きな問題であり、中国は台湾の独立を認めることは決してできないとしました。


 最後に、日本の有識者やメディアなどのマルチルートの交流を深め、安全保障に関する継続的な交流を行うことが重要であり、その際メディアが密接に絡んでくるとの指摘がありました。