経済分科会「自由貿易とグローバリゼーションの未来と日中協力の在り方」報告

2017年12月17日

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 経済分科会の後半部分は、「日中間で具体的にどのような協力関係を作ることができるか」というテーマで、中国側の傳成玉氏より基調報告がありました。


どのような分野で関係を深化させるか

0B9A3435.jpg 傳成玉氏は、日中関係はポテンシャルを出し切れていないとの課題認識を投げかける一方、世界の政治が多極化に向かっていることについては、各国の調和がとれた共存に繋がる可能性があるとの見解を述べました。また、現在のサプライチェーンは流動化し、グローバル化することによって、多国籍企業が大きな役割を担っており、このトレンドは将来的にも強まるだとうとの見方を示しました。

0B9A3727.jpg 次に日本側の基調報告者である木下氏は、サービス産業が伸長していく中で、課題先進国である日本が強みを持つ分野を指摘しました。具体的には、少子高齢化や環境問題等があり、高齢者向けサービスでは、日本のきめ細やかさが中国でも武器になると述べました。加えて、アジア通貨危機等における日本の海外投資の失敗経験は、一帯一路の取り組みに協力できる可能性があると指摘しました。

0B9A3028.jpg 中国側二人目の報告者として、遅福林氏より、これからはサービス貿易でのブレークスルーが焦点になるとの指摘がありました。中国のサービス産業はGDPの成長を超える勢いで成長しており、新しい消費の時代が訪れだろうと説明し、その中で、医療や教育等のサービス分野での協力が、日中の重要な位置付けになるとの見方が示されました。

0B9A3740.jpg 日本側二人目の河合氏より、民間協力は経済的便益と人的交流の機会が増えるという二重のメリットがあると述べました。一方、今後の日中の企業間協力について、多くの中国人が「伸びる」と回答しているのと比べ、日本人はそう答えていない。その背景として、経済の自由化と逆行する分野、例えばテーマ―パークや温泉、ドラッグストアなどがあることを指摘しました。

 後半部分も基調報告を踏まえ、日中企業間で協力できる分野について更なるディスカッションが行われました。


様々な分野における日中協力の可能性

0B9A3362.jpg 李暁氏は、コーポレートガバナンスの問題は、その国のカルチャーと密接に関わっており、重要視する問題ではないと述べました。これに対して、森氏は、金融機関の立場から、日系企業は自由で開放的な企業活動が担保されているかを気にしおり、予見可能なシステムが求められていると主張しました。傳成玉氏は、80年代から共産党が企業経営に関与するリスクは存在していること、中国政府が改革・開放の方向性を示していることを踏まえれば、中国側に課題のある部分は日本企業のチャンスであると指摘。これに対し、守村氏は過剰債務解消への道筋はつける必要があると主張しました。

0B9A3737.jpg また、河合氏が、中国からの訪日観光客が増える一方、日本からの訪中観光客が増えていないと指摘したのに対して、李暁氏は、日本人がリスクを過度に気にしすぎていることに加えて、日本のマスメディアが中国のスモッグを過剰に報道していると説明しました。また、故鞍鋼氏は、米国と比べて、日本は中国とのマルチビザ等の取り組みが遅れていると述べました。

0B9A3383.jpg 劉徳冰氏は、第三国における健康を中心としたサービス産業での連携の望ましい形に関して、日本側のアイデアを求めました。木下氏は、発電所等のインフラ整備において、中国企業がその建設を担うことがあるという事例を挙げました。

 
0B9A3405.jpg 船岡氏は、自社におけるスマートシティの事例を交えながら、イノベーションには長期的な視点が必要であると述べました。これに対して、李氏と數土氏は日本には老舗企業が3万ほどあり、ここに日中協力の大きなポテンシャルがあるとの共通認識を示しました。

 後半でもパネリストと会場との間でディスカッションが行われ、中国製品に関する日本国民の認識に関する質問に対して、中国製品の品質は向上しており、日本の生活に溶け込んでいるとの説明がありました。また、日本はAIIBに参加する意思があるのかとの質問に関して、日本側からは、AIIBのガバナンスへの懸念は払しょくされつつあるものの、拠出金の問題や環境基準の適合等についてはさらなる議論が必要であるとの回答がなされました。

0B9A3360.jpg 経済対話の締めくくりとして、張燕生氏から、中国経済が品質の高い経済発展を進めていく見通しに関する合意が取れたことや、健康や医療といったより具体的な分野の協力が話し合われたことから、今回の経済対話が双方にとって大変価値のあるディスカッションだったと総括しました。

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