「第7回日韓共同世論調査」の結果をどう読み解くか

2019年6月12日


2019年6月11日(月)
出演者:
小倉和夫(国際交流基金顧問、元駐韓国大使)
澤田克己(毎日新聞外信部長)
塚本壮一(桜美林大学リベラルアーツ学群教授、元NHKソウル支局長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


 言論NPOは6月22日の「第7回日韓未来対話」を前に、韓国の東アジア研究院と共同で実施した「日韓共同世論調査」の結果を発表しました。今回の調査は、歴史的な変化に直面する北東アジアにおいて、ともに米国の同盟国でもある日本と韓国の間で徴用工訴訟やレーダー照射など様々な対立が生じ、政府間関係が困難に直面する中で行われました。調査結果から見える両国国民の意識をどう読み解き、また、それを踏まえ、10日後の対話ではどのような議論が求められるのか。対話の日本側座長を務める小倉和夫・元駐韓国大使、そして、ジャーナリストとして日韓関係を見つめ続けてきた澤田克己氏と塚本壮一氏を招き、意見を聞きました。


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前半:日韓間で相違が見える国民感情の傾向が持つ意味とは

kudo.jpg工藤:言論NPOは6月12日、第7回目となる日韓共同世論調査の結果を発表しました。この内容が非常に興味深いのですが、これをどう読み解けばいいのか、今日は3人の専門家の方に来ていただきました。

 では、早速ゲストを紹介させていただきます。まず、私の隣が、国際交流基金の顧問で、元駐韓国大使の小倉和夫さんです。続いて毎日新聞外信部長で、ソウル支局長も務められた澤田克己さん、最後に桜美林大学リベラルアーツ学群教授で、以前にNHKのソウル支局長や解説委員も務められた塚本壮一さんです。今日はこの3人で、世論調査を分析していきたいと思います。

 今回、私たちは、世論調査をやる前にちょっと心配していました。つまり、今、日本と韓国の政府間関係はあまり良くないし、私たちが韓国と対話をすること自体がなかなか難しかったのです。結局、私たちは6月22日に「第7回日韓未来対話」をやることになったのですが、対話自体が懸念されたのが調査結果にどう反映されていくのか、非常に注目していました。

 興味深い点はたくさんあるのですが、まず、最初に私が感じたのは、相互の印象の問題で、日本と韓国は、お互いの相手国にどういう印象を持っているかということです。日本は昨年、韓国に「悪い」印象を持つ人の割合が若干、改善(48,6%→46,3%)していたのですが、それがまた悪化(46,3%→49,9%)しました。そして、韓国に「良い」印象を持つ人の割合が、世論調査を始めた2013年に31,1%だったのが、一番悪く(20,0%)なったのです。

 ただ、不思議なことに韓国では、日本に対する印象自体は改善傾向を続けているのです。つまり、今、日韓の政府間関係が悪いという状況の中で、国民の意識の中にはある意味で対照的な傾向が出ているわけです。この傾向自体が生ぬるいとか、本当に実態に合っているのか、という議論があるかもしれませんが、さて、皆さんはまずこれをどう読んでいるのか、ということからお聞きしたいと思います。小倉さんからどうでしょうか。


相手国への印象が日本側は悪化、韓国側は改善。この要因をどう考えるか

ogura.jpg小倉:相手国に対する印象が、日本の方は非常に悪くなっている。世論調査の結果はそのように出ているわけですから、それは正しいというか、現状を反映していると思いますが、しかし、実は現状を反映していない部分もあると思うのです。この調査が間違っているという意味ではありません。ただ、相手国に対する印象といった時に、一体何をもって「相手国」と考えているのか、と考えると、例えば、観光とかスポーツとか文化とか、そういう面では、別に韓国だからといって印象が悪くなっているとかいうことはないと思うのです。むしろ、政治とか外交、経済・貿易はちょっと微妙ですが、政治とか外交という面を中心に相手国を考えると、印象が悪くなっている。そういう面があると思います。

 要するに、相手「国」に対する印象といった時に、国民の皆さんがどういう面を頭に描きながらそういう印象を持っているか、というところが問題です。むしろ、文化とかスポーツとか観光とか、そういう面を全部合わせれば、日本の韓国に対する印象が本当に悪くなっているか、というのは、ちょっと疑問なのです。必ずしもそうではないのではないか、と思うのですが、政治とか外交というのを前面に出すと、どうしても印象が悪い、ということになるので、そこのところをもう少し、よく考えていく必要があると思います。

工藤:今回の調査結果のクロス分析はまだちゃんと完成していないのですが、日本側もそうですが、韓国の若い世代に、日本に対する好印象が非常に大きいのです。一方で、日本への訪問経験がある人たちが依然として増えていますから、彼らの意識は訪問経験がない人に比べて全然違うわけです。日本の場合、確かに、韓国への訪問経験がある人は、韓国に対して良い印象を持つ人が多いのですが、韓国側ほどは、相手国への訪問者が増えていないので、全体の結果に大きく反映されてこないという状況があったわけです。ジャーナリストとしてソウルへの駐在経験がある澤田さんと塚本さんは、そのことを加味しながら分析していただきたいのですが、まず澤田さん、いかがでしょうか。


「政治・外交」をあまり意識せずに、相手国への印象を判断する両国の若者

sawada.jpg澤田:一つは、日本の側も、若い人たちと年齢が高い人たちとの間で、かなりギャップがあります。この調査のクロス分析の表はないので分からないのですが、毎年、内閣府が行っている「外交に関する世論調査」を見ても、去年の調査で、20代の人たちは韓国に親近感を持つ割合が6割なのです。これが70代になると3割以下に落ちるのですが、明らかに、高齢の人の方が親近感を感じないという傾向は強いのだと思います。小倉元大使がおっしゃったように、政治・外交を見ると印象は悪くなる。これは多分、日本も韓国も相手に対して同じなのですが、ですから、日本の若い人は政治・外交をあまり見ない。年齢の高い人の方がそれによく注意を払う、という傾向があります。

 もう一つは、韓国側ももちろんそういう年齢別の傾向はあるのですが、概して、年齢が高い人、実務で社会の中心になっているような世代の人たちでも、日本との関係について政治・外交であまり関心を持っていないというのが、日本との違いです。ですから、日本の方は、かなり政治・外交に引っ張られて見てしまう人たちが多いけれど、韓国の人たちはそんなに関心を持っていないので、そうすると、印象は悪くなりようがない、ということなのではないかと思います。

 それと、若い人がというのもあるのですが、韓国から日本に来る人は今、年間750万人と非常に多いのですが、日本から韓国に行く人は去年250万人くらいです。ただ、その前の年に比べると2割増えているのです。この前年比2割増というのは、今年に入ってもその勢いで続いているので、そういう意味でいうと、印象が「良い」、「悪い」と一口で切り取っていいのかな、というところは、小倉さんがおっしゃる通りだと思います。

tsukamoto.jpg塚本:やはり、若い人たちは、日韓ともに良い印象を持つ方だ、というのはその通りだと思います。私もこの4月に大学に移って、学生の韓国に対する関心の大きさに非常に驚いたのです。それはコスメであったり、旅行であったり、サブカルチャーであったり、K-POP、それが中心であるのですが、思いのほか、韓国に対する抵抗はないということなのです。例えば、授業で、ちょっと脱線してハングルの成り立ちとかそういう話をすると、皆、興味を持って聞いていたりします。

 一方、韓国の方も、日本のサブカルチャーに対する関心は引き続き大きくて、ソウルの大きい本屋に行きますと、東野圭吾とか日本の小説が平積みになっているわけで、若い人たちの傾向はそうなのだろうと思います。

 ただ、全体として言うと、やはり日本ではレーダー照射問題とか徴用工の問題、こういったニュースが大きく報道されますから、韓国に対する印象は全体として悪いということでしょうし、韓国では、これらの問題が日本に比べればさほど大きく報道されなかったので、旅行とかサブカルチャーでの日本に対する関心がもしかしたら先に立って、結果として良い印象が少し増えた、ということなのかな、と思います。

工藤:まだ私たちの分析が足りないのですが、先ほど20代だけを抽出してみました。韓国の方で、日本に良い印象を持っている20代未満の人は、その理由が「日本製品の質が高い」という点と、「日本の食文化やショッピングが魅力的だ」というところに非常に集まっているのです。一方、日本の20代未満の方は、「韓国のドラマや音楽や文化に関心がある」という声がかなり多いし、あと「韓国製品が安い」ということでした。生活や文化とか遊びという視点で見ていることは、間違いないと思います。

 ただ、政府関係という問題に話を移し、今回の世論調査で皆さんが現在の日韓関係をどう判断したかというと、日本側も韓国側も完全に「悪化した」、今の日韓関係は悪いというのが日本側は63.5%。去年は40%ですから、20ポイントも悪化しています。韓国側でも12ポイント増えるという形で、どちらもかなり悪化してしまったわけです。これをどう見ていくかということなのですが、ただ少なくとも、日本側では「韓国が日本を歴史問題で批判するから」が少し減ったのですが、今回はレーダー照射と徴用工の問題を選択肢に入れていて、それぞれ15%と9%、合計24%くらいあります。多分、そういうことを政府間関係の悪化としてとらえている人がけっこう多いのかもしれません。

 ただ、私が気になったのは、これからの日韓関係の先行きを見た場合に、日本の国民は先行きも「もっと悪くなる」と思う人が多いのです。韓国はそこまででもない状況です。その違いを踏まえながら皆さんに分析していただきたいのですが、小倉さん、どうでしょうか。


日韓関係の改善を望む割には、その先行きを楽観視していない両国民

小倉:私が気になるのは、韓国側はどちらかというと、問題の所在自体が問題だ、と。つまり、徴用工にしろ、慰安婦の問題にしろ、問題があって、それを解決しなければ関係は良くならないと皆思っているのが、だいたい世論調査で出ています。日本は問題そのものよりも、むしろ問題の取り上げ方、つまり、韓国政府がそういう問題を、こういうタイミングで、このような形で取り上げている、とか、市民運動はどうだ、とか。問題そのものよりも、むしろそういう問題の取り上げ方を問題にしているところがあって、そこにかなりのズレがあるのです。そこをよく考えなくてはならない面があるのではないか、と思うのが一つです。

 もう一つ、世論調査の結果を見て非常に心配しているのは、韓国側も日本側も「日韓関係を改善すべきだと思いますか」ということについては、かなり多数の人が「そうだ」と言っているのです。ところが、「将来、関係がどうなると思いますか」という予想については、「良くなる」と言っている人は非常に少ない。つまり、良くなるべきだ、関係は改善すべきではないか、とは皆思っているのだけれど、実際に改善しますか、というと皆、悲観的なのです。ここはやはり考えるべき点はあるので、そこをどのように考えるかというのが、これからの日韓関係を考える上での大きな問題点だと思います。


対日関係に関心がない韓国側?

澤田:「日韓関係が良いか、悪いか」と聞かれて、今の状況で「良い」と答えるのはなかなか難しいだろうな、と思うのは、「日韓関係は」と聞かれると、皆さんイメージするのはやはり政治・外交なのです。だから「悪い」と答えるのは普通ではないかと思うのですが、「今後の日韓関係はどうですか」という時には、韓国だって、そんなに楽観論ばかりというわけではないですが、それでも日本の人は1割、韓国の人は2割という感じで、楽観論が倍くらい多い。というのは、やはり韓国の方が問題を特に深刻に考えていないからだと思います。この間、東京の韓国大使館から本部に帰任した友人と話をしても、想像した以上に対日関係に関心がない。これは政府内でもそうだし、世論自体もそうだ、ということで、そこのところにあまり関心がないので、ざっくばらんに「そのうち良くなるのではないか」という答えになるのだと思います。

塚本:日本に対し、韓国人の意識がいかなくなってしまった、ということなのだろうと思います。日本はレーダー照射問題を非常に意識していますが、韓国では、一時は意識したけれども、それが長続きするわけではない、ということでしょうから、日本ほど深刻に考えていないということだと思います。それが、理由があるとはあまり思えない楽観論につながっているのかな、という気がします。

工藤:政府間関係について、例えば「文在寅政権をどう思うか」、「文在寅政権の日本への対応をどう見るか」という設問を今回入れました。ちょっと驚いたのは、日本の国民は今、文在寅政権に対してかなり厳しい評価で、去年と比べてかなり悪化している。今後の改善についても「今の政権である限り無視してもいい」とか、そう多くはなくても、そういう人もいるわけです。韓国も、安倍政権への評価が去年も今年も低いのですが、ダメだという理由がよく分からないのです。

 一方で、「文在寅政権の日本への対応はどうか」ということに対しては、日本だけでなく韓国の人も「あまり評価できない」という人が多いのです。つまり、今の韓国政権の日本への対応を疑問視している人たちが、韓国の中にもかなりいることが、この世論調査で見えるのです。このあたりを見て、政府間関係は今どんな状況になっているのか、塚本さん、どうでしょうか。


韓国内の政治対立が、文在寅政権の対日姿勢への評価にも表れている

塚本:特段、韓国の人たちが、徴用工問題とかレーダー照射問題の文在寅政権の対応が個別に間違っている、と言っているわけでは多分ないと思うのです。何となく、文在寅政権が全体として、北朝鮮を含め、対外関係がうまくいっていないという印象が非常に広まっていますし、実際、うまくいっていませんので、韓国が孤立を深めているというのが今の認識でしょうから、その反映だと思います。必ずしも、個々の対日関係のイシューについて、文在寅政権の対応策を批判しているということではないような気がします。

工藤:この世論調査を、経済のところまで今の文脈でずっと読んでいくと、やはり、韓国の中に、経済問題などいろいろな問題を含めて、日本というものを重要視したい、というのが、日本側の韓国に対する認識よりも出てきています。要するに、今起こっている政府間対立の問題と、今後の日韓関係というものを何か意味している意識だと受け止めていいのでしょうか。

澤田:塚本さんがおっしゃったように、個別のイシューに対して「徴用工問題でもっと日本に対して妥協的に出ないといけないのではないか」とか、そういうふうな感覚で考えている人が、韓国でそれほどいるとは思えないのです。むしろ、今の韓国国内の政治状況というのは、文在寅さんを支持する側と、文在寅さんを批判する側で真っ二つに割れていて、これがものすごい対立をしているわけです。その中で、「文在寅がやることは全部ダメ」という人も、かなりの数でいる。ですから、そういった人たちが、日韓関係における文脈でいうと、「経済的にも悪影響があるのではないか」ということを言いやすい。そういう良い材料が出てきたので、「これで文在寅叩きをすればいい」という内政上の文脈で言っている面も大きいと思います。


米国を軸とした安全保障戦略が機能している中では、
政治的関係の改善に動くメリットが両国政府にもない

小倉:私は若干冷たい見方をしていまして、アメリカを核にした日米韓の軍事的な戦略関係というのは、非常にうまくいっているとは言えないが、北朝鮮政策ではスムーズに行っているわけです。しかしその部分、国民一般から見れば、「どうぞどうぞ、そのままでいいんじゃないですか」ということでしょう。そうすると問題は、日韓の間で戦略的、軍事・安全保障的な面を超えて、何か政治的に近くなることのメリットは何か、ということなのです。そうすると、今のような両国の国民感情のこういう状況のもとに、政府がそういった面で友好的なジェスチャーをすることの政治的なベネフィット、政治的な意味はほとんどないという判断が、両国政府にあると思います。

 だから、別に敵対的ではないのだけれど、今、政治的な意味での友好関係を進めること、政治的なステップをとるということが、戦略的なところはともかく米国を中心に何とかなっているということであれば、今の両国民の感情を考えれば非常に難しいと思います。両国の政府関係者から見れば、何をしたら国民の皆さんの利益になり、かつ感情的にも受け入れられるか、となると、具体的にはうまい手がないと思います。あと、それをやることのメリットが何か、と言われてもなかなか答えが出ないので、今の国民感情の状況の中で、ある意味で冷静な判断、冷静な態度が必要なので、両国の指導者が感情的にならなければ、戦略的な部分がうまくいっていればいいのではないか、という漠とした感じが、両国民に、はっきりではないけれど、あるのではないでしょうか。


日韓の国民はなぜ、互いを「友好国」と認識できないのか

工藤:つまり、必要性という点でみれば今、大きく騒ぎ立てるような状況にはないような感じがある、という話ですよね。

 両国関係の問題は後からもう少し深めたいのですが、今の国民感情の問題で、私は今回の世論調査で加えた初めての設問の結果に驚いてしまいました。それも、なぜ驚いたのかよく分からなくなってきているのですが、日本と韓国はお互いに「友好国なのか」という設問を入れてみたのです。友好国という定義がどうなのかよく分からないのですが、レーダー照射の時もそうですが、お互いを批判し合うことが自己目的化してしまっている状況がありました。自国の世論のためだったと思うのですが、ただ、お互いが協力し合うという環境が、軍・自衛隊間には非常に強いと思われていたのです。それが何となく違うような光景をテレビなどで見た日本の国民の中に、「これは今、どうなっているのか」という戸惑いを持った人がいたと思うのです。それで私は「友好国かどうか」と聞いてみたのですが、日本側は、「今も友好国だと思う」が8%でした。この8%というのは、私は低いと思っていまして、今年1月、日本の有識者にアンケートをとった時は20%くらいあったのです。そして、「以前は友好国だったが、今はそうではないと思う」が21,4%あります。「もともと友好国だと思ったことがない」が22.5%だから、合計40%が「韓国は友好国ではない」と思っている。ただ、「どちらともいえない」も35%ありますから、何となくよく分からない状況になっています。

 驚いたのは、韓国の人は、「以前から日本を友好国だと思ったことがない」が52.9%に上ったことです。これをどのように見ればいいのか、小倉さん、どうでしょうか。

小倉:一つは、調査の仕方の問題があると思います。韓国の方には対面で、面と向かって聞いている。韓国で「自分は親日家だ」というのは、極端に言えば一種のタブーなのです。だから、対面した時に「日本は友好国だと思いますか」と聞かれて、「はい、友好国と思います」と答えれば、「あなたは親日家です」ということになります。だから、対面でそういう質問をすること自体に問題があると思います。

 ただ、それはそれとして、「友好国か、友好国でないか」という時に、恐らく、「相手国が自国に友好的な態度をとっているか」ということも判断の基準になると思うのです。自国が相手国をどう思っているか、ということは、結局、相手の国が自国をどう思っているか、と連動しやすいのですね。韓国の場合、日本は韓国に友好的な態度をとっていないと、特にそうだと思うのです。だから、ますます自分としては友好国とは言い難い、という一種の悪循環。つまり、日本の過去の問題と今の状況とが重なり合って、一種の悪循環を起こしているところが感情の面であって、そこが結果に出てきている面があるのではないかと思います。

澤田:最初におっしゃいましたが、「友好国」の定義をどのように考えているか、というのもあるのだと思います。同盟国と混同している人もいるかもしれません。もう一つは、最初に小倉さんがおっしゃったような話と重なってきますが、友好「国」かどうかで聞かれると、明らかに政治・経済の話と受け取るのだと思うのです。政治・経済の話だと、今の文在寅政権を支えているような、いわゆる進歩派と言われる人たちにとっては、ちょっと年齢が上の人だと、「軍事独裁政権を支えていたのは日本だよね」という感覚もあるわけです。そうすると、そういうふうに答えることもあるのかなと。

 でも、例えば、内閣府がやっているからここで聞く必要はないですが、「韓国に親近感を感じますか」とか「日本に親近感を感じますか」という設問にすると、全然違う数字が出てくると思います。

塚本:友好国と思う人が両国ともに少ないということは、これはやはり、今後、日韓関係は、「友好」とか「善隣」とか「親善」とか「隣国」だから親しくしなくてはいけないよ、という論理では、全く国民的に受け入れてくれないということを示唆しているのかな、と思います。かといって、韓国側では、「日韓の経済関係は重要だ」という人が日本よりはるかに多いですよね。「日本に期待するのは経済だけですか」という嫌味も言いたくなりますが、それはそれでちょっと問題だとは思いますが、しかし、他の設問を見てみると、思いのほか、日韓の防衛協力は韓国も「賛成」だという人が少なくなかったので、そういう個別のイシューで、何か日韓がともにやっていける余地があるのかどうか、というのは検討すべきではないか、という課題を、この設問は与えてくれている気がします。


韓国「人」への理解が足りない日本国民

小倉:今の問題と関連して、韓国の方は、「日本人は親切だ」とか、「真面目だ」と思っておられる方が非常に多く、日本「人」と日本「国」とを、かなりの程度区別しておられる点があるのです。ところが、日本側は、韓国「人」に対する印象と、韓国という「国」に対する印象とが、どうもぼやけて、もちろん日本人もある程度区別しているのだけれど、そこがはっきりしないところがある。そこのところが、日本人の韓国「人」に対する印象と韓国という「国」に対する印象、それから、韓国の方が持っている「日本」に対する印象と「日本人」に対する考え方。国と人との微妙な重なり合い、その程度と対応が、日本と韓国とで違っていると思うのです。そこは注意しなくてはいけないところで、日本人はもっと韓国「人」を理解する、あるいは韓国「人」と交流する。そういうところがもう少しないといけないのではないか、という気がします。

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