政府外交から離れた、市民目線の議論が今こそ必要
「第8回日韓未来対話」公開会議 開会のあいさつ報告

2020年10月17日

 10月17日、言論NPOと東アジア研究院、崔鍾賢学術院は前日の非公開会議に続き、「第8回日韓未来対話」公開会議を開催しました。


日韓両国は同じ船に乗っており、世界秩序が不安定化している今こそ、
日韓協力拡大の好機である

HEE_3965.png まず、開会の挨拶として、韓国側主催者を代表して東アジア研究院院長の孫洌氏が登壇。その中で孫洌氏は、元徴用工問題で膠着状態にある日韓関係の打開を図ることが今回の対話の使命であると強調。その上で、そのヒントは15日公表された「第8回日韓共同世論調査結果」にあると指摘。例えば、元徴用工問題の解決を問う設問では、韓国政府の方針とは異なる解決策を選択した韓国国民が少なくなかったことを紹介し、こうした市民意識が改善に向けた手掛かりになるとの見方を示しました。

 さらに、孫洌氏は、米中対立が激化する中、両国に挟まれた日韓両国は「同じ船に乗っている」と表現。新型コロナウイルスのパンデミックも相まって世界秩序が不安定していることは、むしろ逆に日韓協力拡大の好機であると語りました。


民間対話の役割は、市民目線で議論すること

CF6A8457.png 日本側主催者を代表した国際交流基金顧問で、元駐韓国大使の小倉和夫氏は、日韓関係に暗雲が垂れ込める中での民間対話の役割として、「市民目線で議論すべき」と主張。関係悪化の主要因が、政治的思惑だけで動く政府間外交である以上、そこから離れた市民同士の社会的連帯が必要としました。

 同時に小倉氏は、世界中の反グローバリズムの高まりも、結局は個人を大切にしない政治が原因とし、市民目線での人間の安全保障の発想が必要であるとも語りました。

 米中対立に関しては、反中国の世論の世界的拡大といった懸念要素に言及。こうした状況の中では世界的視野に基づきながら中国を孤立させないように日韓両国が協力できることを考えていくべきとしました。

 また、今回は、「日韓若者対話」という新たな対話を創設したことに鑑み、人生の先輩たちが過去の日韓関係の構築の意義を明らかにしてこそ、若者も未来について語ることができる、と呼びかけました。


HEE_4007.png 韓国側のもう一つの主催団体である崔鍾賢学術院からは、同院長で、元国連大使の朴仁國氏が歓迎の挨拶に登壇。およそ八年ぶりに日本に新たな首相が誕生したことを受けて、心機一転両国関係が改善に向かうことに期待を寄せるとともに、米中対立と揺れ動く世界秩序にも言及。日韓両国がどのように戦略的な協力関係を構築するかは大きな課題であるとの認識を示しつつ、その手掛かりとなるような議論を展開するよう、居並ぶパネリストに呼びかけました。

HEE_4011.png 続いて、韓国政府挨拶を行った元国務総理の李洪九氏は、小倉氏の「市民目線の議論」という言葉に同意した上で、民主主義の危機について語りました。その中で李洪九氏は、日本は官邸中心、韓国は大統領府が中心となった政治が行われており、市民の要望をすくい上げた政治が実現できているのか疑問であると問題提起。市民の声を反映させた政治の実現こそが、政治の活性化につながるとしつつ、今回の対話でもそうした観点からの議論が展開されることに期待を寄せました。

 また、国際情勢に関しては、朝鮮半島非核化に向けて、唯一の被爆国である日本の役割や、中国への対処でどう協力するか、といった点でも議論を深めてほしいと語りました。

CF6A8570.png 日本政府挨拶に登壇した外務省アジア大洋州局参事官の遠藤和也氏は、新政権が発足した日本政府としても、日韓関係の厳しい現状は強く憂慮しているとしつつ、これを打開するような議論の展開に期待を寄せました。

 一連の挨拶の後、第1セッションに入りました。

 第1~第3セッションの報告は随時掲載していきます