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「日本の知事に何が問われているのか」/井戸兵庫県知事

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080104_ido.jpg井戸敏三(兵庫県知事)
いど・としぞう
1945年生まれ。68年東京大学法学部卒業後、自治省入省。鳥取県、佐賀県、宮城県、静岡県、国土庁土地局、自治省税務局を経て、運輸省航空局、自治省行政局、財政局、大臣官房各課長を歴任。1995年自治大臣官房審議官、96年兵庫県副知事(2期5年)、01年兵庫県知事に就任。現在2期目。著書に「随筆集 一歩いっぽ」「随筆集 歩みながら」「随筆集 歩みながら続」、「地方自治総合講座」(編集代表)等。

第2話 財政再建に向けた兵庫県の創意工夫

 兵庫県が立てている2018年度までの財政フレームでは、歳入も歳出もほぼ一定です。ある程度の税収増を想定していますが、その分、交付税を減らしています。税収が見込みどおりにいかなかった場合には、交付税が増えるだろうということです。
 
 今までは、投資などについては、高い水準でやってこざるを得なかったのですが、震災復旧、復興は一段落していますので、これからは平均並みには下げなければいけない。下げなければいかんという意味では当たり前のことをやろうとしています。

 しかし、一挙にドーンと投資を下げられるかというと、兵庫県内では瀬戸内沿岸はいいのですが、内陸や日本海側、淡路など厳しい地域がある。そういう地域に対する配慮は求められる。やはり公共事業依存型のところも多いですから、ドーンと落とさないようにせざるをえない。

 新行革プランでは、定員については、一般行政部門および教育部門をそれぞれ3割削減と言っていますが、実際には団塊の世代の人たちがかなり抜けます。それに伴って退職金が増えるのは仕方がない。ただ、構造的にはスリム化していけますし、機構などの見直しをあわせて行います。例えば、今、地域の総合事務所として10の県民局があります。これは現地性と総合性をもつ地方機関ということで新しい試みだったのですが、合併で市町村の数が減りましたし、市町村自身の力がついてきていますから、県と市町村との役割を少し純化していくことが大事なのではないかと思っています。そういう時代を迎えているのではないか。県は県の役割、広域性あるいは先導性、専門性というものを磨いていく。市町村は住民に近い基礎団体として総合的なサービスをきちっとやる。そういう見直しも必要なのではないかと提案しています。

 事務事業では幾つかの提案をしています。一番問題になっているのは、老人医療費助成です。老人医療については、ほかの県はほとんどやめてしまっています。これを続けているのは兵庫の一つの特色だったのですが、これからは今までと同じような対象で維持していくことはなかなか難しい。どうしても必要な低所得の方々、負担能力のない方々を中心とした制度に衣替えしていこうではないかという提案をしています。

 特に、70歳から75歳までの高齢者については、政府が新しい医療制度で本人の2割負担を導入しようとしています。そうすると、低所得者の人で1割負担だった人が、年齢が上がって負担が上がるのかという矛盾も出てきます。そこをにらんだ見直しをしようとしています。ミニマムの保障はきちんとやっていこうというのが提案です。ただ、70歳から75歳までについては制度構築がまだ揺れていますので、少し様子を見なければいけないと思っています。いずれにしても、老人医療については、弱者である老人の医療費の軽減を図っていくという趣旨をどう徹底していくかということで提案をしています。

 ただ、この点を含めて新行革プランで徹底した歳出削減案を示したものですから、みんなから怒られています。井戸がリードしていながら、何でこんな財政状態を招いたのだと。だからこそ、県民の皆さんに対する丁寧な説明が必要です。既に5月に県民だよりに特集号を組んで全世帯に配布していますし、ホームページにも出しており、今、パブリックコメントを求めています。議会のほうには特別委員会までつくってもらい、ご議論いただいている。今度の2月議会には、財政再建スキームの枠組みを条例案として提出し、議会の議決をいただいて、毎年進捗状況を報告していく。その報告の前には第三者機関の評価もいただくという仕掛けも用意した上で進めていきたいと考えています。

 地方自治体財政健全化法ができましたが、あの健全化団体のスキームを自主的に先取りするようなスキームを考えています。議会や県民との関係では、きちっと情報共有化の仕組みをつくった上でやっていこうと考えています。今でもできるだけオープンに説明させていただいています。ことあるごとに、私自身が財政再建の話をたとえば挨拶の中に少し入れたり、趣旨を説明したりさせていただきながら進めているつもりです。

全5話はこちらから

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