政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/井戸兵庫県知事

このエントリーをはてなブックマークに追加
080104_ido.jpg井戸敏三(兵庫県知事)
いど・としぞう
1945年生まれ。68年東京大学法学部卒業後、自治省入省。鳥取県、佐賀県、宮城県、静岡県、国土庁土地局、自治省税務局を経て、運輸省航空局、自治省行政局、財政局、大臣官房各課長を歴任。1995年自治大臣官房審議官、96年兵庫県副知事(2期5年)、01年兵庫県知事に就任。現在2期目。著書に「随筆集 一歩いっぽ」「随筆集 歩みながら」「随筆集 歩みながら続」、「地方自治総合講座」(編集代表)等。

第3話 創造的復興の次は「元気」と「生活の質」と「交流」がキーワード

 これからの時代は、少子高齢社会に合わせて人口減少社会に到達します。人口減少社会の一番のキーワードは交流です。定住人口をメルクマールにするのではなく、交流人口をメルクマールにしなければいけません。交流しようとすると、それは地域資源や地域の魅力をどう磨いて発信できるかにかかってくる。そういう意味で、地域の持っている良さ、伝統、文化、人々のライフウェイ、生きざまなどをトータルにいろいろな面で発揮しなければいけないと思いますが、そういうものを発信していくことによって魅力化していく、これが非常に大切になってくると思います。ですから、自立性と自主性、そして創造性です。クリエイティブということが必要になります。

 今までの兵庫県は震災の復旧、復興でした。それを「創造的復興」でやろうとしてきました。そのステージを越えて、次のステージへ入った。次のステージの目標は何かというと、「元気で安全・安心な兵庫」だと言っております。なぜ「元気」かというと、この10年で、実質経済成長で日本全体は 14.5%成長していますが、兵庫は2.7%しか成長していません。約10ポイントも開いています。震災の物理被害だけで10兆円もありました。兵庫県の 2005年のGDP(県内総生産)は20兆4000億円ですから、12年前にその半分が飛んでいるわけです。それを埋めてゼロにするには、10年で1兆円ずつ埋めたとしても、毎年5%成長しなければいけないということですから、今の10ポイント差は仕方ありません。しかし、景気もようやく浮上しだしたのだし、今度はこの10ポイントをどう埋めて、追いつき、追い越していくか。そういう意味でも「元気」というのは必要だと思っています。

 「元気」と言っているときに4つの要素があります。産業の元気だけではなく、人の元気、地域の元気、社会の元気です。兵庫県はこの4つの元気を取り戻そう、それから伸ばしていこうということを呼びかけています。1つのキーワードは元気なのです。

 もう1つ、私が兵庫らしいと思っているのは、生活の質、クオリティーです。おもしろい数字があります。2000年と2005年の国勢調査を比較しますと、兵庫県の場合、人口が7000人の社会増となっている。関西では滋賀県が1番ですが、2番が兵庫県で、あとはみんな社会減です。兵庫県は60歳未満が1万人減り、60歳以上が1万7000人増えています。ですから、お年寄りがたくさん来ている。マイナスに評価すると、介護保険の対象者がいっぱい来て困るという話にもなるのですが、私は、住みやすさ、生きがいづくりの環境がある、生涯学習のしやすさがある、自然環境がいい、そういう兵庫県の持っている魅力に惹かれて、終の棲家にしようとしている方々もかなり来られているのではないかと思っています。兵庫県人として、もっとこういう生活の質を伸ばしていかなければいけないのではないでしょうか。

 3番目は、先ほど言いました交流です。交流をもっと盛んにする。ツーリズムのような観光も交流ですが、生活の質を高めて、そこに来ていただくというのも交流の1つです。

 地方は経済的な発展をめざしてこれからどうするのかという話になりますと、兵庫県の場合は、「ものづくり県」です。神戸のようなファッション産業、スイートに象徴される食品産業もありますが、やはり特色はものづくりです。重厚長大からオンリーワン企業、あるいは中小企業に至るまで、ものをつくっているところ、ものに携わっているところが多い。自動車関連企業は、組み立てはありませんが、第1次、第2次部品メーカーがかなりあります。また、自然科学系の大学が23、企業の研究所も300以上あるなど、ものづくりを支える高水準の研究教育機関も備わっています。ものづくりの将来に向けて、グローバル化の中でこれからも推進していきます。

全5話はこちらから

このエントリーをはてなブックマークに追加

言論NPOの活動は、皆様の参加・支援によって成り立っています。

寄付をする

Facebookアカウントでコメントする


ページトップに戻る