政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/古田岐阜県知事

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071028_gifu.jpg古田 肇(岐阜県知事)
ふるた・はじめ
1947年生まれ。71年東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。JETROニューヨーク産業調査員、内閣総理大臣秘書官(羽田内閣、村山内閣)、経済産業省商務流通審議官、外務省経済協力局長などを経て、05年2月 岐阜県知事に就任。昨年発覚した不正資金問題に対しては「県政再生プログラム」を実施し、県民の信頼回復に全力で取り組む一方で、「地域の元気づくり」「暮らしの安全づくり」を基本に据えた政策本位の県政を進めている。

第2話 報公開時代に発生した不正資金問題に正面から臨む

 不正資金問題が発覚したのは、私が知事になってちょうど1年半たったとき。政策の総点検を終わり、新たな取り組みを始めていた時期です。最初は組合によくわからないお金があるということで、金額は1億円だ、2億円だという話でした。それが調べていくうちに、ずるずる不正資金の話に広がりました。かなり過去の話とはいえ、本庁のある一部の組織だけでなく、調べれば調べるほど広範囲で、県の組織全部といっていい状態でした。
 これはもう組織ぐるみの問題としてきっちり対処するしかないと思いました。ただ、この問題は証拠らしいものがなかなか出てこない。証拠がないから裏金というのですね。ですから、当事者に正直に言ってもらうしかありません。調査といっても、ヒアリングを中心にやっていくわけですから、しかも、これだけ広がっている話ですから、大変難航をきわめましたが、スタッフがよくやってくれました。それから、弁護士からなる第三者委員会もつくりまして、さらに検討作業をしてもらいました。結局、1カ月で内部調査、1カ月で第三者委員会による外部調査、それによって出た結論を今度は私が行政として処分と返還と再発防止と、この3つの柱でまとめて発表する。一応3カ月で枠組みをつくって結論を出しました。

 これが発覚したときに、あなたはどう思うかと聞かれ、次のように答えました。まだ全貌がわからない、だから、これから調べるが、政策の総点検をやった後にこういうことが出てきたということは、総点検が不十分であったということにもなるので、私としては大変残念だし、申しわけない気持ちなので、今度は政策ではなく、組織の総点検をやらなければいけない、この際、そこまできちっとやりたい、と。知事に就任して1年半の間、私も全くそういうことも知らずにきたわけなので、私自身も責任もとらなければいけないという話を最初から申し上げてやってきたわけです。

 この問題は一言で言いますと、十数年前、国のレベルで情報公開法ができた頃、、都道府県のレベルでも情報公開基本条例がつくられていました。岐阜県でも、平成7年4月1日に施行しました。梶原拓前知事のときです。不幸な話ですが、情報公開の時代が来て、情報公開しなければいけないまさにそのときに、情報公開が求められるがゆえに隠す道を選んだのです。

 情報公開が1つの節目になって、出すか、隠すかという二者選択に迫られて隠す道を選んだ。隠す道を選び、存在しないものにしたがゆえに、末端でいろいろなことが起こったわけです。それが根本ですが、その背景としては、県民からお預かりしている税金だという公金意識が非常に薄弱化していたことが挙げられます。裏金を表に出すことによって、公金意識をきっちりすべき時期があったのですが、そのタイミングを逃した。非常に皮肉ですが、情報公開というものに対し、本質的なところで取り組みが不十分でした。

 いずれにしても、この問題の本質は公金意識と情報公開です。特に情報公開です。一旦、右か左かを決めてしまうと、つまり、「ない」ことに決めてしまったら、ない、ない、ないでいくしかない。それでずるずると、しかも、10年以上の時空を経た結果、多くの部署に散らばったままになってしまった。この問題の発覚の発端は組合にプール金があるということでした。最初、プール資金問題調査委員会を設置したのですが、プール資金だけじゃなかったのです。
 
 この不正資金の問題は政策の総点検で出てきたのではありません。そこが問題です。私としては、総点検をやったつもりでいましたけれども、政策の総点検をやっていただけで、政策のむしろ土台となるところの情報公開、公金意識というところについては、まだできていなかった。その反省も込めて、不正資金の問題については、とにかく正面から向かっていくしかない、わかりやすい形で答えを出すしかない。そういう思いで臨みました。

全6話はこちらから

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