政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/古田岐阜県知事

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071028_gifu.jpg古田 肇(岐阜県知事)
ふるた・はじめ
1947年生まれ。71年東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。 JETROニューヨーク産業調査員、内閣総理大臣秘書官(羽田内閣、村山内閣)、経済産業省商務流通審議官、外務省経済協力局長などを経て、05年2月 岐阜県知事に就任。 昨年発覚した不正資金問題に対しては「県政再生プログラム」を実施し、県民の信頼回復に全力で取り組む一方で、「地域の元気づくり」「暮らしの安全づくり」を基本に据えた政策本位の県政を進めている。

第3話 財政規律、"ゼロ予算"などで累積債務の削減を目指す

 知事になってわかったことは、他県も同じですが、県の財政が大変厳しいということです。自由度が非常に少ない。岐阜県は平成18年度、約7700 億円の予算でしたが、人件費、公債費、固定費と、義務的経費をずっと差し引いていきますと、7700億円中、政策的に自由度のある予算が約500億円です。ですから、私は7%自治といっています。平成19年度は7660億円ですが、自由になるお金は395億円です。5%です。来年度はもっと減ります。公債費や社会保障関係費がどんどん増えているのです。ものすごく借金をしてきているものですから。

 教育、企業誘致、障害者、福祉、医療等々、新たにやらなければいけないことは山ほどある。小渕内閣のときに景気対策ということで、借金をし、地方も協力しましたね。そのツケが今どんどん来ているわけですから、ますます自由度がなくなるのです。

 ちょうど就任したときは、三位一体改革の1年目が終わったところでした。私どもなりに分析をしたら、平成17年度は、三位一体改革で、実質的には、岐阜県としては、2400万円の自由度をいただいたということでした。

 それに対し、2年目の18年度は3億円でした。この程度で地方分権を論ずるということでは、とてもお寒い感じです。

 せめて数年間の見通しと最低限の財政ディシプリン(規律)を持とうじゃないかということで、行政改革大綱を作りました。そこで県みずからに課したディシプリンは、平成22年度末で借金の残高をピークアウトする、腰折れにするということです。これは試算ですからいろいろ不確定要素がありますけれども、職員は、知事部局というか本体で5年間に13%減らすとか、投資的経費、公共事業は毎年5%ずつ減らす、一般の業務費は8%減らすという方針を出しました。そして、19年度予算を組むときに、もう七転八倒したのですけれども、何とかこの線に沿って今のところは動いています。

 20年度はさらに厳しいですね。とにかく固定費がどんどん上がってくる。公債費や社会保障関係費など、出費があと170億円増える。自由にできるお金が19年度で395億円ですが、来年度は当然増経費をそこで賄ったら、自由度のあるお金はもう200億円台でしょう。

 今、私はどういうことを言っているかというと、1つは、不正資金問題の反省で、とにかくお金を使い切らないと予算をとれないと思うから使い切るな、予算がついたからといって、慌てて使うな、と。今年度は年度初めにまず8掛け、8割使うことでプランを立ててごらんなさい。必要なものは使っていいけれども、まず8割で何とかできないか。そこから始めなさい、ということにしました。12月末になったから再度チェックをして、残せるものはそこで判断して残すことを決める。それは1月から3月には使わない。昨年の暮れから年明けにかけてそういう類の作業をしまして、23億円の節約ができました。それが翌年度のまた歳入になるわけです。
 
 ということで、とにかく使い残す、状況の変化のもとで節約できるものは節約をするというのが1つ。もう1つは、今年度予算から、「ゼロ予算」というのをやっています。「ゼロ予算」というのは論理矛盾ですが、予算のない予算をやろうということ。そもそも私どもの予算の31%は人件費なのです。人件費が予算の31%を占めているということは、職員がそこで養ってもらっていることですから、最大限のリターンを出さなければならない。

 何かしようと思うと、すぐ予算要求をする。そうではなくて、職員がみずから汗をかけ。みずから汗をかいたり工夫をしたりして、職員が働くことによって、予算を使わなくてもできる政策は幾らでもある。そういうものを一生懸命考えようじゃないか。これはある意味では当たり前のことですよ。だから、意図的にそれを「ゼロ予算」ということで、とりわけ若い人と一緒によく考えてくれと言っているわけです。お金を使わないで、しかも意味のある、例えばルールや制度をつくる、規制を緩和する、しっかりと分析した質の高い情報をタイムリーに提供する、やめるものはやめる、いろいろあるじゃないですか。あるいは、パンフレットなどをすぐ外注というのでなく、自分でつくってみる。
 
 ということで、「ゼロ予算」というのを一生懸命励行しています。

全6話はこちらから

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