政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/松沢神奈川県知事

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071028_kanagawa.jpg松沢成文(神奈川県知事)
まつざわ・しげふみ
1958(昭和33)年、神奈川県川崎市に生まれる。1982(昭和57)年、慶應義塾大学法学部卒業後、松下政経塾に入塾。1984(昭和59)年、米国ワシントンD.C.にて、ベバリー・バイロン連邦下院議員のスタッフとして活動。1987(昭和62)年、神奈川県議会議員に初当選。1991(平成3年)年、同2期目当選。1993(平成5)年、衆議院議員選に初当選。1996(平成8)年、同2期目当選。2000(平成12)年、同3期目当選。 2003(平成15)年、神奈川県知事に就任。2007(平成19)年、同2期目就任。[主な著書]「破天荒力-箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち」(講談社)「インベスト神奈川-企業誘致への果敢なる挑戦」(日刊工業新聞社)「拝啓 小沢一郎殿 小泉純一郎殿」(ごま書房)「知事激走13万㎞!現地現場主義-対話から政策へ」(ぎょうせい)「実践 ザ・ローカル・マニフェスト」(東信堂)「僕は代議士一年生」(講談社)

第3話 道州制による善政競争で日本を活性化

 道州制が実現すれば、文部科学省とか厚生労働省、経済産業省などの実務官庁はほとんど要らなくなります。大部分の実務は道州に移るわけです。今まで都道府県がやってきたことは市町村に移ります。

 そうすると、霞が関が決めることは全国的な制度のプランニングぐらいです。例えば、年金制度の全体像は国が決めなければなりません。年金制度が都道府県ごとに違ったらおかしいですから。あるいは、小学校や中学校で教える最低限のことのプランニング。だから、私は中央教育委員会でいいと言っている。文部科学省なんて要らない。学校をどう運営するか、どういう教育予算をつけて力を入れていくかなどは、全部、自治体が行うわけです。

 そうなると、東京の一極集中は今より大分解消されると思います。道州制によって、中央省庁の権力がなくなれば、何も本社をこんな過密でオフィス代が高い東京・大手町に置く必要はないじゃないかということになる。生まれ故郷の札幌に本社を戻そうかと、こうなってくるのです。

 道州制を導入した時点ではかなりの格差があると思います。でも、それは段階的にどんどん権限移譲もやっていくし、経済の方も分散化してくると思います。戦略的に韓国や上海、北京あたりと付き合いたい企業は、むしろ福岡県がいいか、熊本県がいいか、こういう選択になってくるのではないでしょうか。導入後10年、15年、20年かかると思うけれども、そうやって行政権限が分散化するのだから、それに合わせて経済も分散化してくるのです。

 そうなると、道州の知事がいい意味での善政競争に入れるわけです。良い政治行政の競争になる。それが地方分権なのです。発展のチャンスがあると同時に、没落するリスクもある。でも、それがあるからこそ世の中というのは発展するのです。

 三位一体改革の第2期改革をこれからやらなければいけません。しかし、その改革と道州制の改革がごっちゃになると、改革をやりたくない人が、そんなことは道州制をやるときにやればいいじゃないかと言い出し、混乱が起きるでしょう。だから、私は、この3年間は、三位一体改革の続きを徹底してやるべきという意見です。つまり、税源移譲のさらなる実現です。消費税を移譲してもらえば一番の安定財源になるのです。 
 
 あと、補助金の削減も補助金の件数でやればいい。それで補助金自体をどんどん少なくしていく。それから、交付税の改革もやればいい。

 そういう一連の地方分権改革を3年間でやる。その3年間に道州制のプランをつくっておいて、その次に推進法をつくって道州制に入る。ここは分けないといけません。

全4話はこちらから

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