言論NPOとは

言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果 -令和三(2021)年度版-

令和三(2021)年度 評価結果

1)ネガティブチェックリストによる評価結果

 ネガティブチェックリストによる評価では、令和三年度の言論NPOの活動を7分野に分類し、非政治性では19の評価項目で、非宗教性は12の評価項目によって、宗教性・政治性に該当する活動であるかを判断した。評価結果は以下のとおりである。

 なお、これらの評価項目はいずれもネガティブチェックリストによる評価である。①非政治性については、言論NPOの7分野の活動を19の評価項目で評価した結果、以下の4分野9項目で非政治性の判断ができなかった。(評価結果の詳細は別紙1参照)

(1)民主主義を考える事業で実施した分野において3項目
(2)北東アジアの平和構築に向けた事業として実施した分野において2項目
(3)世界の課題解決に向けた事業において2項目
(4)ウェブ論壇・海外発信において2項目

 これらの4分野9項目についてはネガティブチェックリストで判断がつかないため、下記の2)のコンテンツ判定基準で追加の評価を行った。

 ②非宗教性については言論NPOの活動の7分野を12の評価項目で評価した結果、全ての項目で「非宗教性」を完全に満たしていると判定した。


2)コンテンツ判定基準方式による評価結果

 ネガティブチェックリストにおいて判断できないとされた4分野9項目について、コンテンツ判定基準方式による評価を行った。5つの評価項目は以下の通り。

①活動の目的の明確性
②活動に当たって言論NPOが拠って立つ立場の明確性
③活動のターゲットの明確性
④活動に当たっての主要なコンテンツ形成活動に係る方法論の明確性
⑤活動の方針決定に係るガバナンス及び透明性

 この結果、全ての項目に置いて基準をクリアしており、「非政治性」を満たしているものとされた。

 この結果、言論NPOの令和3年度の全ての7分野の活動は、非政治性、非宗教性における評価基準において、問題がないとの結論が得られた。従って、令和三年度における言論NPOの活動は、全てにわたり「非政治性・非宗教性」を満たしているものと評価される。(評価結果の詳細は本稿ならびに別紙2参照)。


「非政治性・非宗教性」に関する言論NPOの今後の取り組みについて

 「非政治性・非宗教性」の説明力をより強化するために令和四年(2022)年度は下記の点について重点的に取り組む予定である。


①歴史的な困難に立ち向かう言論NPOの取り組みが幅広い共感を得るためにも、その活動が独立し、中立であることの証明は不可欠

 世界では経済の分断や対立など歴史的な困難が表面化しており、民主主義の後退も堅調になっている。言論NPOが昨年行った世界55カ国の調査によると、その中での日本の国民の政治不信が際立っている、ことも明らかになっている。

 言論NPOの活動は昨年来、こうした困難に向かっており、「知見武装」という市民が自らこうした問題を自分で考えることを提起し、そのために判断材料を提供する取り組みが強まっている。こうした状況下で、我々の事業がより多くの人の理解と信用を得るためにも、事業内容が特定の政治や宗教の利害から独立し、中立であることの意味は極めて大きくなっている。

 言論NPOは、設立当初より、日本で初めて米国IRS(内国歳入庁)の基準をもとに、「非政治性・非宗教性」に係る自己評価システムを開発し、自己評価を毎年行い、評価プロセスや評価内容の結果を、第三者である言論監事が判定するというシステムを採用し、それらをすべて公表し続けている。中立性の評価は日本国内のシンクタンクではどこも行っておらず、当団体の取り組みは世界でも稀有な存在になっている。

 世界や日本国内の課題に立つ向かう言論NPOの信頼をさらに向上させるためにも、こうした中立性の評価を実施していることの意義を様々な形で世界に発信し、言論NPOの活動の正当性をより広く普及すると同時に、さらに世界的にも認知されるシンクタンクとしての当団体の評価の向上に努めたい。


②活動の信頼と影響力をさらに向上させるために支援基盤拡大に向けて、組織の抜本的な見直しに着手

 言論NPOの活動の中立性を維持するためには透明性を強化すると同時に、多様性のある幅広い市民に支えられる資金基盤を確立することが重要だと考えている。

 世界的に直面する歴史的な困難やこの日本の未来に向けた、我々の取り組みがより多くの人の理解や共感を生み出し、新しい動きとなるためには、言論NPO自身がより多くの人たちに支えられる仕組みをつくると同時に、社会に対して影響力を持つ必要がある。

 そのため、令和4年の言論NPOの事業計画は、組織の抜本的な見直しに加え、コンテンツや議論の中身、さらには発信方法の全面的な見直す作業を開始している。

 さらに会員制度も多様化し、多くの人が参加しやすいような制度を取り入れるなど、特定の資金に偏らず、多くの人たちがこの活動に参加し、支えてくれる組織をつくっていきたいと考えている。


参考資料
言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る中立性評価について

評価の目的

 特定非営利活動法人が寄付金無税団体としての公益性を十分に満たす団体であるためには、その活動が特定の政治的ないしは宗教的な立場に偏らずに行われる必要がある。本評価では言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」(注1)を満たすものであることを示すため、前年度に引き続いて令和三年度の活動全体について自己評価を行った。

 (注1)「非政治性・非宗教性」とは特定非営利活動促進法(NPO法)第2条第2項の二に規定された次の要件を満たす活動を行っていないことを指す:A.宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること。B.政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること。C.特定の公職の候補者、若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対すること。


1. 評価対象

令和三年度の言論NPOの活動では、下記(1)~(7)の通り、7つの分野で評価を行った。

<図表 1 評価対象>
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 (注)ここでは、「言論活動等」を次のように定義する。
(1)当該団体の正式な活動として設営する場や当該団体が管理運営する発信媒体上において、設営された場への参加者、社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信することを想定して、当該団体関係者あるいはそれ以外の者が行う、①意見表明、講演、報告などの発言、②質疑応答を含む討論、③論文などの執筆、④これらの編集。
(2)当該団体以外の者が設営する場や当該団体以外の者が管理運営する発信媒体上において、当該団体あるいは代表者がその名の下に、設営された場への参加者、社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信することを想定して行う、①意見表明、講演、報告などの発言、②質疑応答を含む討論、③論文などの執筆。
(3)上記(1)の内容を社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信する活動。
(4)上記(1)の活動への参加を呼びかけ、場を設営するなど(1)の活動の準備を行い、あるいは議論を設計する活動。


1.評価方法

 自己評価は令和元年度における言論NPOの全ての事業について、最初に1)で説明するネガティブチェックリストによる第1次評価を行う。その要件で「非政治性・非宗教性」を満たすとするには疑わしい事業については、2)「コンテンツ判定基準」で再評価を行う。こうした2つの評価基準を組み合わせて評価を行った。各評価基準による評価方法は次のとおりである。


1)「ネガティブチェックリスト」による評価

 米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて言論NPOが作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価(「非政治性・非宗教性」を満たすためにクリアしなければならない項目に対する該当有無のチェック)を基本とする。

 言論NPOの令和元年度の全ての事業を対象に、このリストの項目毎に評価し、外形上から明らかにその活動が「非政治性・非宗教性」を満たす事業は「○」、「非政治性・非宗教性」を満たさない事業は「×」とした。外形的な判断のみでは評価できない事業は「△」とした。(評価結果の詳細は別紙1参照)

 ネガティブチェックリストのチェック項目は「禁止項目」と「注意を要する項目」の2つに分けられる。前者は「非政治性・非宗教性」を満たすために必ずクリア(「○」)しなければならない項目で、後者はその要件を満たすことが望ましいが、その要件を満たさなくとも、直ちに「非政治性・非宗教性」を満たさないとは言い切れない項目である。

 「△」とされた事業(例えば別紙1のチェック項目2-1の(1)政策評価事業)であっても、その詳細を更に追加のチェック項目(例えば同表 項目2-1-1)で検討し、その要件を満たすとされた場合には、ネガティブチェックリストによる対象事業の評価は「○」として、救済することとする。なお、別紙1において、このように追加の項目で更に詳細をチェックした事業は、「△」との混同を避けるため「▽」と表記し、追加項目の行で「○」「△」「×」による評価を行っている。


2)「コンテンツ判定基準」に基づいた評価

 ネガティブチェックリストにおいて、いずれの事業も各チェックリスト項目が全て「○」の場合は、令和三年度の言論NPOの活動は「非政治性・非宗教性」が完全に満たされているとする。一つでも「×」があった場合は、「非政治性・非宗教性」が完全には満たされていなかったものとする。

 ネガティブチェックリストにおける要件で救済されない事業(「△」が一つでもあった事業)が残った場合は、その事業についての評価は「コンテンツ判定基準」に委ねることとする。「コンテンツ判定基準」による評価とは、個別の事業の形成プロセスを、5つの客観的な基準(①目的の明確性、②立場の明確性、③ターゲットの明確性、④コンテンツ(事業)形成に係る方法論の明確性、⑤方針決定に係るガバナンス及び透明性(詳細は別紙2参照)により、評価することである。ネガティブチェックリストでは評価できない事業についても、「コンテンツ判定基準」によって、個々の事業の形成プロセスが「非政治性・非宗教性」を満たすと判断できる場合には、最終評価としてその事業の内容自体も「非政治性・非宗教性」を満たすとみなすことができる。


3)自己評価結果の理事会での議決、言論監事による判定を経て、通常総会に提出

 以上の評価は、言論NPOによる事後的な「自己評価」であり、これを毎年度、理事会で議決の上、通常総会に提出する。通常総会への提出にあたっては、この自己評価について言論監事による判定を行い、その結果を通常総会に報告する。


4)公表

 評価の信頼性を最終的に担保するものは、公開の原則に基づく評価のアカウンタビリティーである。

 評価の公表は、インターネットなどにより行い、自己評価結果と、その根拠に係る概要、及び、言論監事による判定を公表する。また、公表に際しては、評価結果について疑問等がある場合には評価根拠の公開申請を受け付ける旨を明示し、一般から公開申請があった場合には、ウェブ上に評価結果の根拠をより詳細に公開する。




令和三年度における言論NPOの活動に対する
「コンテンツ判定基準方式」による評価結果

1. コンテンツ判定基準方式による評価結果

 言論NPOの活動はネガティブチェック方式によって「非宗教性」を満たしていたものの、「非政治性」については、4分野9項目についてはネガティブチェックリストで判断ができないとされた。 

 この9項目については、さらにコンテンツ判定基準方式による評価を行ったが、その9項目はいずれもコンテンツ判定基準の5つの評価項目すべてをクリアしており、「非政治性」を満たしている。従って、令和三年度における言論NPOの活動は、全てにわたり「非政治性・非宗教性」を満たしているものと評価した。


(1) 民主主義を考える事業

 私たちが令和3年度に行った世界55カ国の民主主義の調査は、世界中で民主主義が危機に直面する中、世界各国の現状を調査したものであり、その目的は民主主義を機能させていくために、有権者本位の政策選択を軸とした議会制民主主義を機能させることである。そのため民主主義の仕組みを点検し、議論することは、特定の政治的な立場を超越した活動であって、予め特定の政治的立場に立った議論を形成することを目的としているものでないことは明確である。日本国内における議論も、また海外のインタビュー等についても特定の政治家を応援するようなものになっておらず、議論の内容はウェブにて動画やテキストで公開されている。

 また、第9回エクセレントNPO大賞は、「市民性」「課題解決力」「組織安定性」の観点からNPOの質の向上を目指して市民社会の好循環につなぐ明確な目的のもと実施している。
全体的に見て、国内外の民主主義の統治構造が機能しない中、それを点検し、これからどうしていくのか、といった大きな視点に立って議論しており、各国の有権者や国民に民主主義を改めて考える機会を提供している。こうした活動も事業の目的に合致している。

 いずれも、①活動の目的は明確にされており、②立場の明確性の要件も満たしているといえる。さらに、本事業のターゲットとしては、民主主義における主権者であることは明確であり、③ターゲットの明確性の要件を満たしている。議論は一定のルールの下で自由な討議形式で行われ、インターネットを利用し、その内容を動画やテキストで幅広く公開するなど④方法論の明確性の要件を満たしているといえる。

 これらの企画や議論の計画は総会での議決や理事会での承認がなされている。したがって⑤方針決定に係るガバナンス及び透明性についても、要件を満たしていると判断できる。


(2)北東アジアの平和構築に向けた事業

 本事業の目的は、北東アジアの紛争や事故の回避、持続的な平和秩序を作り出すことに貢献することである。この地域では国民間のナショナリズムが政府間レベルの課題解決の障害になり、この間、政府間外交に何度も空白を生み出す状況に陥ってきた。そこで、民意に基づき、多くの市民の支持を得て課題解決に取り組むというアプローチが有用であり、地域の課題に解決に向けて民間が一歩でも、半歩でも進めることが重要になっている。

 こうした目的は、言論NPOがこれまで17年にわたって行ってきた、「東京-北京フォーラム」や「日韓未来対話」において貫かれており、その完成形として、米中対立下でも米中両国が参加する「アジア平和会議」が創設されるに至っている。これらの活動の目的は明確である。

 なお、議論には国会議員等も参加しているが、それらの発言内容は、特定政党の政治的主張ではなく、北東アジア地域における議論環境の整備や、地域及び世界の課題解決に向けた各国間の協力を促進する内容であり、特定の政党に偏っておらず、活動の目的の明確性に合致している。

 いずれも、①活動の目的は明確にされており、②立場の明確性の要件も満たしているといえる。さらに、本事業のターゲットとしては、これらの議論を聴くことになる国民全般となっており、民主主義における主権者であることは明確であり、議論の全てが公開されている。そのため、③ターゲットの明確性の要件を満たしている。議論は一定のルールの下で自由な討議形式で行われ、インターネットを利用し、その内容を動画やテキストで公開するなど④方法論の明確性の要件を満たしているといえる。


(3)世界の課題解決に向けた事業

 この事業は、世界が直面する課題を、世界を代表するシンクタンクと日本の有識者が日本を舞台に議論を行い、その議論の内容を世界に発信していくこと、さらに議論の成果をG7の議長国や日本政府、国際機関に対して提案することにある。

 こうした事業の目的は明確に示されており、国際社会の課題の解決に向けて世界に発信する言論の舞台をつくるという団体設立当初に掲げたミッションに基づいている。

 ロシアがウクライナへ侵攻した直後に開催された令和三年度の「東京会議」には、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダのG7各国にインド、ブラジルなどを加えた10カ国の世界を代表するシンクタンクのトップが東京を舞台に議論する常設対話の場である「東京会議」の6回目をオンラインで開催した。さらに、この「東京会議」と前後して、オンラインで世界課題に取り組んでいる国内外の識者とも議論を行った。こうした議論は日本語と英語で発信されており、世界に向けて日本の主張を届けるとともに、日本国内においても有権者が国際問題について幅広く考え議論する場づくりとして定着し始めている。

 いずれも、①活動の目的は明確にされており、②立場の明確性の要件も満たしているといえる。さらに、本事業のターゲットとしては、民主主義における主権者であることは明確であり、③ターゲットの明確性の要件を満たしている。議論は一定のルールの下で自由な討議形式で行われ、インターネットを利用し、その内容を動画やテキストで公開するなど④方法論の明確性の要件を満たしているといえる。


(4)ウェブ論壇・海外発信

 言論NPOの活動については、前述の(1)~(3)の全ての活動において目的やターゲット、言論NPOの立場が明確化しており、かつ、代表工藤泰志のプロデュースのもと、理事会、及び「アドバイザリーボード会議」の協議と合意を経て意思決定がなされており、政治的な恣意性が入る等の問題点は認められず、5つの要件全てを満たしていると評価できる。

 上記、該当する3つの事業はいずれも、①フォーラム等の議論の場、②インターネット、③出版事業の3つの手段を有機的に組み合わせて「三位一体の言論空間」を創出する要素である。この言論空間で形成された事業はいずれも、前記(1)~(3)の事業と不可分のもので、これら3つの事業については前記(1)~(3)の評価結果がそのまま適用される。そのため、(4)ウェブ論壇・海外発信ではいずれも、「非政治性」に係る5つの要件全てを満たしていると評価できる。 

コンテンツ判定基準について

 コンテンツ判定基準の評価項目とその詳細は次の通りである。

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