言論NPOとは

言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果 - 2006年度版 -

1.評価の目的

 特定非営利活動法人が寄付金無税団体としての公益性を十分に満たす団体であるためには、その活動が特定の政治的ないしは宗教的な立場に偏らずに行なわれる必要がある。本評価では言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」注1)を満たすものであることを示すため、前年度に引き続いて2006年度の活動全体について自己評価を行った。

注1)「非政治性・非宗教性」とは特定非営利活動促進法(NPO法)第2条第2項の二に規定された次の要件を満たす活動を行っていないことを指す:A.宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教科育成すること。B.政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること。C.特定の公職の候補者、若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対すること。

2.評価対象

2006年度における言論NPOの活動を評価対象とする。(この評価対象は前年と同じである。)

評価対象

A.「言論活動等」(7つに分類)

(1) 政策評価事業(2006年12月実施の安倍政権100日評価アンケート調査と結果分析で行われた政権評価)
(2) 日本の将来像の形成に向けた「アジア戦略会議」事業
(3) 地方の自立・再生の議論形成に向けた「地方再生戦略」事業
(4) 日中での議論のプラットフォーム形成に向けた「第2回東京-北京フォーラム」及びその関連事業(アンケート調査等)
(5) 会員等向けフォーラム(一般フォーラム、モーニング・フォーラム、その他アドホックに行われたフォーラムや会議)
(6) ウェブ論壇(HP上で行う言論活動。上記(1)~(5)について行われたものは、それぞれの活動の一環として審査。ウェブ論壇独自のものとしては、代表工藤の見解表明、言論ブログ、その他アドホックな記事)
(7) 出版・広報宣伝(出版は、報告書「第2回東京-北京フォーラム 2006年東京」、冊子[言論ブログ・ブックレット]:「日中対話」「国と地方」「メディアの責任」「日本の外交と安全保障」「安倍政権の100日評価」の6点であるが、これらはそれぞれ(1)、(3)、(4)、(6)の一環として評価。広報宣伝は、メルマガ、行事等の案内等のうち「言論活動等」に該当する部分。)

B.その他、「言論活動等」の実施に必要な諸活動

会員拡大活動、寄付拡大活動、言論NPOの組織運営など

(注)ここでは、「言論活動等」を次のように定義する。
(1)当該団体の正式な活動として設営する場や当該団体が管理運営する発信媒体上において、設営された場への参加者、社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信することを想定して、当該団体関係者あるいはそれ以外の者が行なう、①意見表明、講演、報告などの発言、②質疑応答を含む討論、③論文などの執筆、④これらの編集。
(2)当該団体以外の者が設営する場や当該団体以外の者が管理運営する発信媒体上において、当該団体あるいは代表者がその名の下に、設営された場への参加者、社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信することを想定して行なう、①意見表明、講演、報告などの発言、②質疑応答を含む討論、③論文などの執筆。
(3)上記(1)の内容を社会の特定の層(当該団体の会員等を含む)、ないしは不特定多数の者に向けて発信する活動。
(4)上記(1)の活動への参加を呼びかけ、場を設営するなど(1)の活動の準備を行い、あるいは議論を設計する活動。

3.評価方法

 自己評価は2006年度における言論NPOの全ての事業について、最初に「1)」で説明するネガティブチェックリストによる第1次評価を行う。その要件で「非政治性・非宗教性」を満たすとするには疑わしい事業については、「コンテンツ判定基準」で再評価を行う。こうした2つの評価基準を組み合わせて評価を行った。各評価基準による評価方法は次の通りである。※参:「自己評価の手順/コンテンツ 判定基準」

1)「ネガティブチェックリスト」による評価

 米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて言論NPOが作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価(「非政治性、非宗教性」を満たすためにクリアーしなければならない項目に対する該当有無のチェック)を基本とする。

 言論NPOの2006年度の全ての事業を対象に、このリストの項目毎に評価し、外形上から明らかにその活動が「非政治性・非宗教性」を満たす事業は「○」、「非政治性・非宗教性」を満たさない事業は「×」とした。外形的な判断のみでは評価できない事業は「△」とした。

 ネガティブチェックリストのチェック項目は「禁止項目」と「注意を要する項目」の2つに分けられる。前者は「非政治性・非宗教性」を満たすためには必ずクリアー(「○」)しなければならない項目で、後者はその要件を満たすのは望ましいが、その要件を満たさないからと言って、直ちに「非政治性・非宗教性」を満たさないとは言い切れない項目である。

 「△」とされた事業(例えば別表2のチェック項目2-1の(1)政策評価事業)であっても、その詳細を更に追加のチェック項目(例えば同表 項目 2-1-1)で検討し、その要件を満たすとされた場合には、ネガティブチェックリストによる対象事業の評価は「○」として、救済することとする。なお、別表2において、このように追加の項目で更に詳細をチェックした事業は、「△」との混同を避けるため「▽」と表記し、追加項目の行で「○」「△」「×」の評価を行っている。

2)「コンテンツ判定基準」に基づいた評価

 ネガティブチェックリストにおいて、いずれの事業も各チェックリスト項目が全て「○」の場合は、2006年度の言論NPOの活動は「非政治性、非宗教性」が完全に満たされているとする。一つでも「×」があった場合は、「非政治性、非宗教性」が完全には満たされていなかったものとする。

 ネガティブチェックリストにおける要件で救済されない事業(「△」が一つでもあった事業)が残った場合は、その事業についての評価は「コンテンツ判定基準」に委ねることとする。「コンテンツ判定基準」による評価とは、個別の事業の形成プロセスを、5つの客観的な基準(①目的の明確性、②立場の明確性、③ターゲットの明確性、④コンテンツ(事業)形成に係る方法論の明確性、⑤方針決定に係るガバナンス及び透明性)により、評価することである。ネガティブチェックリストでは評価できない事業についても、「コンテンツ判定基準」によって、個々の事業の形成プロセスが「非政治性・非宗教性」を満たすと判断できる場合には、最終評価としてその事業の内容自体も「非政治性・非宗教性」を満たすとみなすことができる。

3)自己評価結果の理事会での議決、言論監事による判定を経て、通常総会に提出

 以上の評価は、言論NPOによる事後的な「自己評価」であり、これを毎年度、理事会で議決の上、通常総会に提出する。通常総会への提出に当たっては、この自己評価について言論監事による判定を行い、その結果を通常総会に報告する。

4)公表

 評価の信頼性を最終的に担保するものは、公開の原則に基づく評価のアカウンタビリティーである。

 評価の公表は、インターネットなどにより行い、自己評価結果と、その根拠に係る概要、及び、言論監事による判定を公表する。また、公表に際しては、評価結果について疑問等がある場合には評価根拠の公開申請を受け付ける旨を明示し、一般から公開申請があった場合には、ウエブ上に評価結果の根拠をより詳細に公開する。

4.評価結果

1)ネガティブチェックリストによる評価結果

 ネガティブチェックリストによる評価の結果、2006年度の言論NPOの活動は、まず、非宗教性では、全12チェック項目で非宗教性は完全に満たしている。その一方で、非政治性については、全18チェック項目で評価した結果、13項目については非政治性を完全に満たした。ただ、5項目については判断がつかず、コンテンツ判定基準にゆだねることにした。その内訳は、(1)政策評価事業5項目、(2)アジア戦略会議事業1項目、(3)地方再生戦略事業2項目、(4)「第2回北京-東京フォーラム」及びその関連事業2項目、(5)会員等向けフォーラム1項目、(6)ウェブ論壇1項目、(7)出版・広報宣伝1項目である。

2)「コンテンツ判定基準方式」による評価結果

 ネガティブチェックリストにおいて、判断できないとされた全評価対象分野について、コンテンツ判定基準方式による評価を行ったところ、いずれも「非政治性」を満たしているものとされた。これによって、既にネガティブ・チェックリストで非宗教性が認められたことに加え、そこで判断ができなかったすべての項目で「非政治性」が問題がないとの結論が得られた。 従って、2006年度における言論NPOの活動は全てにわたり、「非政治性・非宗教性」を満たしているものと評価される。

5.今後の課題

■「非政治性・非宗教性」の説明力をより強化するために

 今般の評価結果には影響しないが、「言論活動等」のプロセスの非政治性・非宗教性の説明力をより強化するためには、2007年度の言論NPOの活動において、もう一段の努力が必要である。

 例えば、①ウェブでのキャンペーンにおいて参加型の議論を展開しており、議論形成においてアンケートの導入など工夫も見られるが、公開型のフォーラムと組み合わせるなど、さらに参加型の発言を促す努力を行っていきたい。これは政策評価も同じで、評価委員会の開催やフォーラムとの組み合わせなど、評価作業自体をより公開する工夫を行いたい。

 ②「東京―北京フォーラム」は民間主体の議論であり、そのプロセスや議論内容も幅広く公開されているが、昨年は二つの分科会が非公開とされている。デリケートな時期での議論で発言者の安全を配慮することは理解できるが、政治家などの参加も多いため「非政治性」の説明力をより強化するためには基本的に完全公開にするなど、さらに透明度を高めていく必要がある。

 言論NPOの事業の広がりに比してふさわしい人員や資金などの体制がまだ十分ではないことが、これらの実現の障害となっている要因もある。そのミッションを十分に担い得るための体制を整備することが、非政治性・非宗教性の説明の観点からも急がれる。


以上