言論NPOとは

平成21年度 言論NPO活動報告

 平成21年度は、同年から始まった3ヵ年計画の初年度として、「議論の発信力や影響力の強化」と「資金基盤の多様化」の2つの目標に関して取り組みました。


Ⅰ.議論の発信力や影響力の強化

 「議論の発信力や影響力の強化」では、言論NPOのウェブサイトをリニューアルし、議論を4つのカテゴリー「政治に向かい合う言論」、「世界とつながる言論」、「市民を強くする言論」、「次の日本をつくる言論」に分け、顧客目線での議論を構築しました。また、ウェブサイトの議論と連動して、フォーラムや討論会の開催とブックレットの発行を定期的に行うことによって、市民が直接参加できる議論の舞台を作り、同時に事業基盤のインフラ整備を行いました。

 「資金基盤の多様化」では、顧客基盤について具体的な数値目標を設定し、データベースの整理や定期的にフォーラムやニュースなどが送られる仕組みを取り入れ、基盤の拡大を図りました。また、小口寄附を容易にすることによって、多様な寄附金収入を得るようにしました。


 言論NPOの議論は、当事者意識を持って日本の社会の課題解決に向かい合い、建設的で質の高い議論を行うことで健全な民主主義を作ることを目的にして行われています。そのために、言論NPOの議論の発信力や影響力を高め、より多くの人がこの議論の舞台に参加できるように、21年度は顧客目線での議論の展開、ウェブサイトと連動したフォーラムの実施やブックレットの出版、及び戦略的な広報活動やメディアへの露出を行いました。

1. 顧客目線での議論の展開

 言論NPOの議論の発信力や影響力を高めるためには、言論NPOの活動内容や議論の進め方と内容が、より顧客目線で分かりやすく公開されなくてはなりません。
 そこで、平成21年度は特にウェブサイトでの議論の参加者、アクセス数を増やすことによって言論NPOの議論をより影響力のあるものにするという目標を掲げ、活動を進めてきました。
 その中で、今年は半年をかけて言論NPOのホームページの全面的なリニューアルを行い、平成22年3月1日オープンしました。言論NPOが行う議論を「政治に向かい合う言論」「世界とつながる言論」「市民を強くする言論」「次の日本をつくる言論」の4つのカテゴリーに区分し、一般の方々にとって、どのような議論が、どのような目的で行われているかが明示的に分かるようなサイトを開設しました。
 また、「政治に向かい合う言論」ではマニフェスト評価専門サイト「未来選択」を8月の総選挙前に立ち上げました。他にも「世界とつながる言論」では5回目となる「北京-東京フォーラム」の公式サイトをオープンし、フォーラム当日の議論の中身だけではなく、フォーラム実行委員やパネリストとの会議の内容も公開しました。
 その結果、検索エンジンでの「言論NPO」のヒット数は4倍に跳ね上がり、一時は170万件以上に達しました。また、言論NPOのウェブサイトの訪問者(アクセス数)は、7月の選挙前には月ベースで3万1千件以上まで伸び、20年度に比べ発信力や影響力をより高めることが出来ました。数値としてはまだ3ヵ年計画の目標を達成していませんが、大きな進展をもたらしました。

2. ウェブサイトの議論と連動したフォーラム運営・ブックレットの出版

 平成21年度は、新ウェブサイト内の「4つの言論」の議論に連動し、様々なフォーラムや討論会の開催及びブックレットの出版を行いました。
 「政治に向かい合う言論」では、言論NPOの評価のプロセスを一般に公開し、双方向での議論を行なうため、8月の総選挙前に「自民党・民主党政策別公開討論会」を9つの政策分野で開催しました。討論会の各分野には毎回100名以上参加し、生中継された各分野の議論は延べ約10万人が視聴し、毎日10万件を超えるコメントが寄せられました。また、平成21年度は、これまで行なっていた政権100日の有識者アンケートに加え、新政権の政策評価の内容を「鳩山政権の100日評価」として記者会見を行い一般に公開しました。その後、その評価の内容をブックレットとして販売し、評価活動のオープン化を実現しました。
 「世界とつながる言論」については、11月の「第5回北京-東京フォーラム」に日中の政界、経済界、メディア、学会を代表する約1,800人もの方々が参加し、50以上の中国のメディアがこのフォーラムを報道するなど、フォーラム内の議論の影響力がより拡大しました。今回の第5回フォーラムにおいて、いくつかの分科会では日中のパネリストと会場の一般参加者との間でやりとりがあり、会場が一体となった議論が成功し、会場参加型で公開型の議論形成を行うという目標について大きな前進がみられました。フォーラムにて議論は専門サイトで随時一般公開し、3月には報告書を発行しました。
 「市民を強くする言論」では、強い民主主義には強い市民社会が必要との考えの下、様々な形で議論の中身を公開し発信していきました。21年4月から4回連続で開催した「市民社会フォーラム」に加え、今年度の終わりには、ブックレット「『エクセレントNPO』とは何か」を出版し、ウェブサイト内の非営利組織評価基準検討会のメンバーの議論に連動し、フォーラムやブックレットの作成を行いました。この「『エクセレントNPO』とは何か」は発売3週間で1,692部売り上げ、複数のメディアでも取り上げられるなど大きな反響がありました。

3. 戦略的な広報活動・メディアへの露出

 平成21年度は、言論NPOの活動自体を広く一般の方々に知っていただくために戦略的に広報活動を行いました。政権実績評価・マニフェスト評価、「第5回北京-東京フォーラム」、「エクセレントNPO」を中心とした活動などについて、ウェブサイト内で行われる議論の中身を公表するため、記者会見や代表工藤がメディアに出て発言する機会を増やしました。


II. 資金基盤の多様化と安定的な経済基盤の構築

 言論NPOの資金基盤は寄附の比率が最も高く、基本的に大口寄附に依存する構造となっています。3カ年計画で掲げた、寄附、会費収入、事業収入の3つがバランスの取れた資金基盤として成り立つことを目標に、21年度は多様な形で寄附を集める仕組みを導入し、同時に言論NPOの活動に参加する顧客基盤の強化を行いました。

1.寄附金の多様化 

 21年度は、一般の方々からも広く寄附を募るため、インターネット上でクレジットカード決済が行なえる仕組みやクリック募金を導入しました。他にも5月に定額給付金の寄附の募集を行なうなど、このウェブサイトを活用していただいた寄附は総額で259,479円となりました。今後も多くの方々に支えられている活動にしていくために、寄附を一つの参加の仕方として位置付け、広く一般の方々より寄附を集める仕組みを開始しました。

2.顧客基盤の強化

 言論NPOの資金基盤を強固なものにするため、21年度は顧客の目標設定を行い基盤を整えました。3カ年計画最終年の23年度末までに、基幹会員200名、一般会員1,000名、メイト会員を含む言論NPO活動の参加者20,000名、ウェブサイト訪問者80万人へと拡大するという目標を設定し、今現在ある顧客のデータベースの整理を行い、同時に新しい顧客を増やす努力を行いました。その結果として、メイト会員が2010年3月末時点で335名になり、昨年比で2倍以上増加し(表1参照)、メールマガジン読者は2,750名(表2参照)、言論NPOの顧客(言論NPOデータベース登録者数)は4,188名になりました。

3.事業基盤の拡充

今年度はフォーラム、討論会、パーティーの開催や2冊のブックレットの販売などの収益事業を「4つの言論」内の議論と連動して行ないました。年間で2冊のブックレット「鳩山政権の100日評価」、「『エクセレントNPO』とは何か」と「第5回北京-東京フォーラム 報告書」の出版を行い、「『エクセレントNPO』とは何か」は発売3週間で単体損益で初めて赤字を脱却し収益の改善に大きく寄与し、同時に出版物の販路の拡大も行いました。
 フォーラム開催による事業収入の点では、4~7月の間に4回継続で開催された「市民社会フォーラム」、7月に行なわれた「自民党・民主党政策別公開討論会」、11月の「第5回北京-東京フォーラム」、「言論NPO8周年記念パーティー」など様々なイベントを開催し、同時に積極的に参加費収入を集め、フォーラムを言論NPOの議論を公開する場としてだけではなく、活動を支える収益源へと発展させました。


III. 平成21年度言論NPOの組織運営

1.言論NPOには、日本の将来に対して真剣な議論形成を求める民間経営者、官僚、エコノミスト及び多様な分野の学者・研究者など会員以外の方も含めて約1000名が個人の資格で活動に参加しており、議論形成や成果報告あるいは提言の作業に協力し、あるいは携わっていただいています。

2.平成22年3月末現在で理事8名、監事1名、言論監事2名、会計監事1名、常勤雇用者5名、アルバイト3名の計20名に加え、委託業者、学生インターンをはじめ多くのボランティアの参加を得て、事務所運営及び言論活動の本格的な展開を行っています。

3.当期末現在の会員数は、定款の規定により、退会届提出者、死亡者・連絡先不明者、継続して2年以上会費を滞納した会員資格喪失者を除外した結果、正会員の基幹会員60名及び法人会員8社で、その他会員の一般会員83名及び学生会員1名の合計152名となっています。尚、本年度の新規会員数は基幹会員3名、法人会員0名、一般会員6名、学生会員1名の合計10名となっています。


活動の記録

総 会:第8回 平成21年6月27日
理事会:第45回 平成21年6月 2日、第46回 平成21年6月11日

平成21年4月
   「第1回市民社会フォーラム」(ゲスト辻元清美氏)
   「第1回非営利組織評価基準検討会」
5月
   「第2回市民社会フォーラム」(ゲスト増田寛也氏)
   「第2回非営利組織評価基準検討会」
6月
   「第5回北京-東京フォーラム」第2回実行委員会
   「第3回市民社会フォーラム」(ゲスト喜多悦子氏)
   「第3回非営利組織評価基準検討会」
   「第5回北京-東京フォーラム」公式サイト開設
7月
   自民党×民主党 政策別公開討論会
   「第17回言論NPOメンバーフォーラム」(ゲスト園田博之氏)
   「第4回市民社会フォーラム」(ゲスト山本正氏)
   「第4回非営利組織評価基準検討会」
   「第5回北京-東京フォーラム」第3回実行委員会
8月
   自民・公明連立政権の政権実績検証大会
   政権公約検証大会
   マニフェスト評価専門サイト「未来選択」 開設
   第5回日中共同世論調査結果発表記者会見
9月
   「民主党の大勝」をどう見るか―有識者へのアンケート結果を公表
   「第5回非営利組織評価基準検討会」
   「第5回北京-東京フォーラム」第4回実行委員会
10月
   「第6回非営利組織評価基準検討会」
NPO座談会「強い市民社会のあり方や非営利組織の役割等」
11月
「第5回北京-東京フォーラム」(11月1日・2日・3日、中国大連市)
   「第7回非営利組織評価基準検討会」
   日本評価学会全国大会参加
12月
「第5回北京-東京フォーラム」総括実行委員会
「鳩山政権の100日評価」結果発表記者会見
「鳩山政権の100日評価」アンケート公開

平成22年1月
座談会「鳩山政権の外交政策に関する評価」(明石康氏、白石隆氏、添谷芳秀氏)
言論ブログ・ブックレット「鳩山政権の100日評価」出版
2月
特別座談会「市民社会は民主主義のセーフティネット」(小林陽太郎氏、山本正氏、小倉和夫氏)
  「第8回非営利組織評価基準検討会」
  「第5回 北京-東京フォーラム」報告書出版
3月
言論NPOウェブサイト全面リニューアル
  座談会「鳩山政権の半年を考える」(増田寛也氏、武藤敏郎氏)
「第6回 東京‐北京フォーラム」第1回実行委員会
  日本NPO学会
  言論ブログ・ブックレット「『エクセレントNPO』とは何か」出版