言論NPOとは

令和3年度活動報告

 令和三年度も開始直後から、コロナウイルスの感染拡大に伴う3回目の緊急事態宣言が発出され、我々の活動の本格的な取り組みには至っていなかったものの、20周年という節目の年に、言論NPOの組織基盤を抜本的に変えるために、中核の人との意見交換や、次の動きに向けた準備として以下のことに取り組んできました。
  • アドバイザリーボードや理事会などの組織基盤を見直し、翌年度から本格的な会員組織の運営と組織拡大に向けた準備に着手。さらに、資金・組織基盤の強化に向けた理事会機能の強化(副理事の選任など)、具体的な検討に着手。
  • 「東京-北京フォーラム」の実行委員会も強化するため、実行委員長を武藤敏郎氏に交代、さらに財務委員会の設置など組織の強化も実施。
  • ふるさと納税で2000万円の目標達成。
  • ウェブサイトの全面的な見直しによって会員管理の仕組みが稼働。
  • 言論フォーラム定期的な開催と、議論の内容を見直し、ミャンマー、ESG等、これまでにないテーマで言論フォーラムも7月から13回開催。
  • 「知見武装」を社会に提起し、社会の問題や時事問題について解説する工藤泰志のyoutubeチャンネルを開設し17回更新。
  • コロナ禍でも、世界のシンクタンク等とオンラインで「東京会議」、「東京-北京フォーラム」、「日韓未来対話」、「アジア平和会議」、を継続的に開催し、それぞれの目標をすべて達成。
  • 言論NPOの20周年企画として、これまで運動を支えて頂いた方やこれまでの協力者に、言論NPOの20周年の意義について対談やインタビューを行い、動画やとテキストにてウェブサイトで公開した。


組織基盤の見直しと強化に取り組んだ1年

 令和三年度も開始直後から、コロナウイルスの感染の影響もあり、私たちが取り組む多くの活動は自粛に追い込まれ、8月までは休業状態を続けながら、最低限の出勤者で事業に取り組む体制で何とか活動を継続する形を採っています。

 ただ、世界が不安定化し、世界が分断に向かって動き出す中、それらに対応するだけではなく、新しい変化に向けた動きを起こすためにも、言論NPO自身がより多くの人たちに支えられる仕組みをつくると同時に、社会に対して影響力を持つ必要があると考え、組織の抜本的な見直しに加え、コンテンツや議論の中身、さらには発信方法の全面的な見直す作業を開始しました。

 具体的には、翌年度から本格的に会員組織の運営と組織を拡大していくための準備として、アドバイザリーボードや理事体制、「東京-北京フォーラム」の実行委員会の見直し、拡大に向けた動きを開始しています。
アドバイザリーボードには、経済界から三井不動産会長の岩沙弘道氏、日立製作所会長の東原敏昭氏にご参加いただき、今後も拡大していく予定です。また、理事会のメンバーも大幅に入れ替え、シティグループ証券シニア・アドバイザーの田中達郎氏、前財務事務次官の岡本薫明氏等に新たに加わってもらい、理事会で一体的にメンバーの増員や支援基盤の拡大に向けて取り組む体制ができましたが、翌年度以降、メンバーの大幅な拡大に向けて本格的な取り組みを動かせていきます。さらに理事会の機能強化の一環として、企業の中堅、若手経営者、女性などからなる副理事会の人選も進め、来年度早々に会議を行う予定です。

 また、「東京-北京フォーラム」の実行委員長には2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長の武藤氏が就任し、新たに財務委員会ができるなど、組織的に資金基盤を拡大していく動きた始まっています。

 一方、支出面では、前年にコロナウイルスの影響から寄付金や会費などは減少しており、スタッフも最低限の人数を継続して人件費を圧縮している状態が続いています。
さらに、理事会の刷新などの結果、「ふるさと納税」による寄付は、令和二年度の1400万円から大幅に増加し、2000万円を超える寄付額に達しました。


国内外の課題を私たち自身が考えるため「知見武装」という取り組みを開始

 言論NPOは2021年11月で20周年を迎えるに併せて、国内外の課題を私たち自身が考えるため、「知見武装」という取り組みを開始しました。多くの人が当事者として、課題に向かって議論し、その解決のために取り組む。

 その覚悟を固め、少しの勇気を出し、行動することでしか、日本の閉塞した状況を立て直すことは困難だと考えたからです。そのために、私たち市民が自分自身で考えるための材料を提供しようと、7月以降ウェブサイトをリニューアルし、会員管理・顧客拡大の仕組みを稼働させ、クレジットカード決済での会費納入、ログインすることでフォーラム等の参加申し込みが簡単になるなど、可能な限りの自動化に取り組みました。

 今年度から、ミャンマー、ESG等、これまでにないテーマで言論フォーラムを7月から13回開催し、各界の論者、40氏が出席し、議論には延べ約300人が聴衆として参加する等、必要最低限の議論を発信することはできました。

 加えて、「知見武装」の一環として、社会の問題や時事問題について解説する工藤泰志のyoutubeチャンネルを開設する等の取り組みを行い、下記の発信を行ってきました。その結果、実質的な休業下でも言論NPOの活動は継続しています。

 また、3月22日には、「第9回エクセレントNPO大賞」の表彰式が行われました。今回の審査には76団体の応募があるなど、「エクセレントNPO大賞」も非営利団体に定着してきており、全国紙でも大きく取り上げられ、高い評価を得ています。

 
 コロナ禍ではあったものの、「東京-北京フォーラム」「日韓未来対話」「アジア平和会議」「東京会議」といった中核事業については、オンラインを活用して必要最低限の人数で開催することになりました。


「東京会議2022」はロシアがウクライナに侵攻した直後に開催され、
岸田文雄総理大臣がメッセージを寄せました

 昨年度の「東京会議2022」は、ロシアがウクライナへ侵攻した直後の3月14日に開催されました。今回の会議には、岸田文雄総理大臣も10分にわたるビデオメッセージを寄せました。その中で岸田総理は、「国際秩序の根幹が脅かされている」とし、「国際社会が、結束し、毅然と行動することにより、この危機を乗り越え、国際秩序の根幹を守り抜くことができるのか」が問われていると、世界10カ国のシンクタンクに呼びかけました。

 世界10カ国のシンクタンクの議論の結果、一方的な力で主権や領土を奪うことは許されないということ、紛争を平和裏に解決するという、国際社会の共存の最低限の合意を改めて確認し、そうした問題意識の下、来年の東京会議につなげることで合意しました。

 また、来年はG7の議長国が日本ということもあり、来年の議論の内容は、日本政府へ提案することになります。

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米中対立が深刻化し、ロシアがウクライナ侵攻を行った直後に開催された「アジア平和会議」

2.png 歴史的に重要なタイミングで開催された「アジア平和会議2022」(2月22日・23日開催)「において、米中の軍幹部レベルを含めた、日米中韓4ヵ国のトップレベルの軍事・安全保障、外交の実務者・専門家30名以上が集まり、台湾有事から現在進行形で進むウクライナ侵略まで議論を行ったことです。会議内では、北東アジアの安全保障環境が冷戦後最悪で一触即発と言う共通認識の下、政府や民間団体が主催する他の多くの対話で見られないような、重要な意見や論点が示されました。

 世界が分断に向かう歴史的な岐路にある今、北東アジアでいかに紛争や偶発的な事故を回避するかという点から国際秩序まで、多くの論点を米中の有力者を交え議論する場は極めて異例であり、こうした民間の多国間対話は貴重であり、更に強化すべきだという点でも全参加者は一致しました。


「日韓若者対話」を昨年に続き開催

3.png 「第9回日韓未来対話」は2021年10月2日、東京とソウルを結ぶオンライン会議方式で行われ、日韓両国を代表する有識者27氏が集まり開催されました。

 米中対立が深刻化する中で、世界の多くの国が内向きとなり、世界的な課題での国際協調が行き詰まり、アジアの平和でも緊張が深まっています。新型コロナの世界的な広がりは、こうした世界の分断の動きを加速させています。

4.png そうした時だからこそ、民主主義や人権などの価値観を共有する日本と韓国は、このアジア地域だけではなく、世界の平和と協力のために力を合わせなくてはならないとの考えの下、「中国の強硬姿勢に日韓はどういう対応するのか」「民主主義は日韓共通の基盤になりえるか」「日韓関係の改善をどう進めるのか」をテーマに議論を行いました。

 また、昨年に引き続き日韓両国の若者が議論する「日韓若者対話」も行われました。

 今回の対話は日本側と韓国側それぞれでオンライン配信され、両国の多くの市民が傍聴・視聴し(日本側:532人、韓国側:282人)、各セッションの議論は傍聴者からの質疑応答を交えて進められました。また、対話の模様は日韓両国に加え世界のメディアでも報道され、フォーラムに先駆けて行われた世論調査と共に、広く世論に発信される機会となりました。


困難な局面だからこそ、民間の取り組みが政府間外交の環境づくりになる

5.png 「第17回東京―北京フォーラム」は10月25日から2日間にわたって東京と北京を結ぶオンライン会議方式で行われ、日中両国を代表する政治外交、経済、貿易、安全保障、メディア、感染、デジタル経済などの有識者約100氏が集まり開催されました。

 今回のメインテーマは、「不安定化する世界での日中関係と国際協調の修復」です。米中対立が深刻化し、日中の政府間関係も目立った動きができない状況下にある中、台湾や尖閣諸島の問題で緊張が深まるアジアの紛争回避だけではなく、分断化になる世界経済やデジタル問題、そして、急速に進む気候危機への対応などの諸課題に向けた国際協調と日中関係の修復について議論しました。

6.png 議論の成果文書として最終日に発表された「共同声明」では、6点について日中が合意し、これらを踏まえて世界やアジアの未来を見据えて、民間の対話を通じて現在の困難に答えを見いだす努力を行うと同時に、日中の新しい協力に向けて一層の努力を行う決意を示しました。

 フォーラムは日本側と中国側それぞれでオンライン配信され、両国の市民のべ2800人が傍聴・視聴し、各分科会の議論は傍聴者からの質疑応答を交えて進められました。また、フォーラムの模様は日中両国に加え世界のメディアでも報道され、フォーラムに先駆けて行われた世論調査と共に、広く世論に発信される機会となりました。


設立20周年を迎え、海外では日本のシンクタンクとして定着

 言論NPOが行う全ての議論は、言論NPOの日本語サイトで公開し、約10,000人を超える有識者にもメールで伝えられます。継続的に英語のウェブサイトを充実させる他、発信を行ってきました。さらに、英語でのニュースレター配信を通じて、世界の有力シンクタンクやメディアや、世界の知識層、数百人にも直接伝えています。さらに海外の知識層にもオンラインでインタビューを行っています。

 さらに、今年は設立20周年という節目の年だったものの、コロナ禍ということもあり、大規模なパーティなどは開催できませんでした。しかし、国内から48氏が、海外からもアナス・フォー・ラスムセン氏(元、NATO事務総長、元デンマーク首相)や、クリスティアン・ヴォルフ氏(ドイツ元大統領)等からもメッセージが寄せられるなど、海外では言論NPOが日本のシンクタンクであると定着しています。

 年間ウェブサイトの訪問者数(UU)は14万1,412人、総ページビュー(PV)数は41万612と微減しました。活動が飛躍的に広がりながらも、発信がまだ十分でないという課題は継続しており、今後、一層の発信を増やしていくこと、さらに他のメディアと連携し、顧客層を広げると同時に、外部から顧客を誘引するかも、今後の課題となっています。

 現在、Googleアナリティクスを利用したアクセス解析などを進めており、PV数の増加などは引き続き進めていきます。

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